精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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滝沢武久著『こころの病いと家族のこころ』………その25

滝沢武久著『こころの病いと家族のこころ』………その25

滝沢武久著『こころの病いと家族のこころ』(1993年、中央法規)

九 危険説に揺れる家族
 教師や警察官のような社会規範を守る職業に就く者が、窃盗、強盗、殺人、傷害事件を起こすと、新聞やテレビなどのマスコミ報道は大きく取り上げます。しかし市民理解の中には「昔はこんなことなかった」と嘆くか、「まあ教師や警察官だとてしょせん人の子、人間だから数多くの中には不出来な人もいるよ」という程度です。
 日本社会が近代化され、精神医療も西欧精神医療技術、医学知識を導入し、大義として精神病院が精神病治療機関となって以後、高度経済成長とともに精神病院が増えました。しかしその多くが私的企業としての精神医療機関であり、そのほとんどが入院(閉鎖的)治療を伝統とするため、ほとんどの病院に鍵と鉄格子が装着されてしまいました。人間社会で古来から鉄格子がある施設は動物園の檻と刑務所(監獄)のそれが代表的なように、とりわけ後者の場合、犯罪に対する刑罰として応報的処置がとられることを市民社会の合意事項として了解されている感じがあります。それに似て、ちょっとした事故、事件でも過去の精神病院受診歴が少しでもあると、マスコミに一斉報道されることが多くあります。一般の市民(もちろん家族を含む)も現代社会では新聞やラジオ、テレビの報道が精神病(障害)に関して伝えられる唯一最大の情報源だから耳をそばだてます。永年こうした事故、事件の報道(情報)のみの蓄積により精神病者危険説の世論が形成されてしまいます。実際には稀に起きる殺傷事件など、確実に針小棒大に報道されれば、市民はおそれおののきます。私にとって好まない比較ですが、いわゆる犯罪白書をみても一般人のほうが犯罪率は高いのです。その上、事故当事者の心神喪失状態の場合の刑法適用除外で措置入院などが再び誇張されて無罪放免かのごとく伝えられ、市民へ挑戦的に報道したり、解説する専門家もいたりするのです。
 こうした世論形成の歴史は患者や家族にも少なからず影響し、我が子の中に万一の危機要素を連想させるマイナスも家族内で起こる心理的、情緒的な関係が大いに影響するのです。
by open-to-love | 2009-12-28 15:54 | 滝沢武久 | Trackback | Comments(0)