精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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「精神障害者家族として、民生委員に期待すること」⑩

「精神障害者家族として、民生委員に期待すること」⑩

■10■おわりに…ある女性のメッセージ

 最後に、事例1に登場した女性のメッセージを紹介し、締めくくりたいと思います。私はその女性に「では、そのとき、民生委員にどんなかかわりをしてほしかったですか?」と問いました。

 「そうですね…。虐待と疑われた時は、涙が止まらなかった。でも、今、民生委員が大嫌いなわけではないです。何かをしたい、助けたいという気持ち自体には、感謝したいと思っています。
 あの時…民生委員さんに、虐待と決めつけないでほしかった。例えば、「お母さん、困っていることがあったらいつでも連絡して下さいね」と言って、ただ、名刺だけ置いていってほしかった。または、「お子さんはどうしてこうなっているんですか? 何故なんでしょうか? お母さん、原因をご存知でしたら教えてほしい。自分は専門的なことは分からないけど、まわりに聞いてみますね」みたいな感じで言ってくれたら、どんなに救われたろう」

 このメッセージと関連して、ここで、4章から9章まで、「解決法」として提示した6点について、▽短期的な解決法▽中期的な解決法▽長期的な解決法-に分類してみましょう。

▽短期的な解決法

■5■一つの原因に決めつけないようにしよう

▽中期的な解決法

 ■4■障害について学ぼう
 ■6■当事者の問題は、往々にして家族の問題でもあることに理解を深めよう
 ■8■世の中にはいろいろな課題があることに理解を深めよう
 ■9■女性問題に理解を深めよう

▽長期的な解決法

 ■7■住民と日常的な接点を持とう

 6つの解決法のうち「一つの原因に決めつけない」のは、今、ここから、すぐに心掛けることができます。ただ、みなさんが、ご自身の人生経験を客観的に見つめればいいのです。何ら、知識も技法もいりません。必要なのは、気持ちです。
 「障害について学ぼう」「当事者の問題は、往々にして家族の問題でもあることに理解を深めよう」「世の中にはいろいろな課題があることに理解を深めよう」「女性問題に理解を深めよう」は、たしかにそりゃそうなんですが、すぐ学ぶにはなかなか大変ですし、学ぶスピードも人それぞれ。ただ、少なくとも、民生委員がある困難な事態に遭遇したとき、それは「自分には虐待としか見えないけど、実は自分が知らない原因かもしれないな」「よく分かんないけど、背景には精神疾患・障害があるのかもしれない」といった感じで、「一つの原因に決めつけない」ことは、あなたのお気持ち次第ですぐにできます。
 「住民と日常的な接点を持とう」は長期的課題。そして、これは一義的に民生委員の課題とされるべき課題ではなく、この国全体の課題かと思われます。まして、これまであった地域社会のつながりを取り戻すのではなく、いまだかつてなかった、精神障害者などを含む地域社会のつながりを構築しようとするのですから、そう簡単にできるわけがない。
 今、ここで、こうして私がみなさんに話しています。また、誰かが、別の場所で話すこともあるでしょう。それぞれの言葉は、それなりに聞き手に受け止められ、いくばくかの学びとなることでしょう。そうした相互作用の積み重ねの総体として、ちょっとずつ理解の輪が広がっていくことと思います。そんな「共生社会」という目標があるからこそ、私なりにみなさんに自分の体験を話しているわけですが、その目標がすぐすぐ到達できるものとは、はなから思ってません。
 まずは、短期的な解決法から始めましょう。事例1を振り返れば、民生委員は、そのとき、自閉症について知らなくてもよかったのです。あるいは、精神疾患・障害についても、知らなくてもいいのです。知らなかったことは責められません。ただ、知らないことについて知っているかのように決めつけず、知らないままにただ受け止め、ゆるやかにかかわり、時と場合に応じては専門家につないでほしい。この女性と私の、共通した思いです。

 私は新聞記者です。いろんな人と出会い、話を聞き、記事を書くことを通じて見聞を広めることができる、恵まれた職業です。それでも、その仕事を通じて広がった世界は、ごく限られたものでしかなかった、と今にして思います。私が精神障害者の家族になって良かったことは、自分の価値観がすべてではない、見聞きしてきた世界がすべてではない、世の中にはいろんな人がいて、いろんな困難があって、その困難の中でも、頑張って生きている人がたくさんいる、大変なのは自分だけではない、と、つくづく実感することができたことです。
 民生委員は、これまで培ってきたさまざまな経験を地域のために生かせる、素晴らしい仕事です。加えて、民生委員になったことによって、ご自身がこれまで培われてきた価値観とは異なる価値観と出会い、さらに人生経験を豊かにする、またとない機会と思います。今後とも、みなさまの活躍に期待しております。

 付記…本論で不明な点あれば、私(090-2883-9043)まで気軽にご連絡下さい。あと、私はこれまで▽自殺と多重債務対策の連携シンポジウム▽明るく生きる2008こころのシンポジウム▽ふれあいin八幡平▽地域生活支援セミナーinにのへ▽ヘルパー2級研修-で、それぞれ今回のような小論を発表しています。盛岡ハートネットニュースも7号まで刊行中。興味ある方には差し上げますので、これまた気軽にご連絡を。

※というわけで、八幡平市から紫波町まで(ただし、盛岡市は除く)の民生委員・児童委員5、60人を前に、しゃべってきました。みなさん、真剣に聞いていただき、どうもありがとうございました。(黒)
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by open-to-love | 2009-05-29 11:23 | 民生委員協議会講演 | Trackback | Comments(0)