精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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第1回全国精神保健福祉家族大会(報告)…第2日目

第1回全国精神保健福祉家族大会(報告)…第2日目

みんなねっと東京大会へ テーマ「元気な家族・活力ある家族会をめざして」

◇とき 平成20年10月29-30日
◇ところ 東京厚生年金会館(東京都新宿区)

第2日目 分科会と第1回特別講演がありました。
第1分科会 家族会の活性化
第2分科会 地域生活支援の課題
第3分科会 精神医療の現状と課題
第4分科会 就労支援の課題
基礎講座 障害者権利条約と保護者制度

第一分科会に参加しました。
○家族会メンバーの高齢化、固定化、家族会の役割や目標を見失いがちの現状にある。どう克服していけばよいか…を主テーマに始まりました。
○発表や討論の中で、もともと子どもが精神疾患を発症するとき、既に親は40歳代から50歳代であり、役員のなり手がいない、固定化しているといってもムリして何も世代交代せなぁあかんということでもないのではないか。(役員は)終身刑お考えてやっています。自然とうまくいってくれるものと考えています。(福岡の発表者)
○また、家族会は5割を会の活動に、5割を自分の人生のくらしのために使うのがよいのではないか。(世代交代は)〝何とかなるべさ〟の気持ちでいます。高齢化のことは常に若い人が順繰りに上がってくるよう高低の関係作りをしていけばよいと思う。(横浜の発表者)
○家族会の活動は、「出来ないときは出来ないなりに、人が集まって元気が出ればやればよい、一人でも救われる人が出たら意味がある。」などと考えてやっている。家族会の活性化は家族の元気なくしてはありえない。
○家族会・行政・病院・他関係機関、人との信頼関係を大切にする。
○主治医さん・保健所相談員さん・病院CWさん・地域保健福祉課窓口担当さんなどから家族会へ紹介していただき会員を増やしていっている。
○親が変わらないと本人は変わらない。当事者とは適切な距離を置いて接していきましょう。

第1回特別講演「これからの精神障害者福祉」 堂本暁子 千葉県知事

(堂本知事は、東京女子大卒、TBS入社、記者・ディレクターとして教育・福祉・ODA問題、北極取材、日本女子マナスル登山同行取材など報道番組の制作に携わる。1989年参議院議員として障害者、環境、NPOの問題に取り組む。2001年から千葉県知事、現在2期目。2006年に全国初の「障害者差別禁止条例」を制定された)

〈講演要旨〉
○自分では人を差別していないつもりでしたが、イギリスを訪ねたとき、「日本では人権を守るために地域でどんなことをされていますか。」と問われ、何も答えることができなかった。そのイギリス人は人権を守ることについて何もしていない日本の現状を見て驚き、「あなたたちは何もしないでいて、どうして地域で人権を守っていくのですか、障害者の方々にどうしてほしいのかという観点から考え、世に問うたことがありますか。日本ではあなたたちが差別をつくっているようなものだね。」とロンドンの空港で言われ、こってんぱー、バケツの水を頭からかけられたような気持ちになりましたと自分を恥じる話から講演は始まりました。
○1987年、精神障害者の自助グループ「札幌すみれ会」の活動を正面からとらえ、当事者の素顔を全国に紹介し、大きな反響をよんだTBS報道番組「人間らしく生きたい」を制作したときの最初の取材で、札幌すみれ会の当事者の人に「あなたはどんなことを望みますか。」とお聞きしたら、返ってきた答えが「もっと人間らしく生きたい!」。これが第一声でした。逆に言えば人間扱いされていないことの表れでした。番組放送後放送局にたくさんの電話があった。抗議の電話は1本、あとは全部「良くぞ言ってくれt、ありがとうとう」の感謝の電話ばかりでした。
○イタリアでは、法をつくり家族に負担をかけない精神病院を認めない施策を進め、入院患者910万人がゼロになった。1970年代に行政が家族と一緒になってネットワークを作り病院がなくなった。
○宇都宮事件(昭和59年3月14日の新聞報道により入院患者2人に対する傷害致死事件が明るみになった。)がありました。アメリカの人は人権を大切にしない国は、決して他国から本当に尊敬される国とはなりえないといわれました。
○当事者はバカにされたり、きらわれたり…しかし、人間らしく生きたいと願っています。街で誰もが自分らしく堂々と生きられるとき、共生の社会が実現するという志をもつということが大切と思います。

千葉県の取り組みについて
1.官民の役割の逆転
 ・県民参加型の政策作り
2.当事者のニーズに合わせた政策作り
○タウンミーティング(行政の姿勢を180度転換した)
 ・つらく、悲しい思いをしている人はいませんかの話から入っていった。
○新たな地域福祉像①だれも②ありのままにその人らしく③地域でくらす
 ・21世紀の福祉の在り方は、県民自ら発し自ら課題を解決する。県民と県の協働から国・市町村へと。精神保健福祉も初めて法の対象となりましたが、地域で暮らせるサービスの予算の制度化は未だされていません。(例 ケアホーム、アパートの援助、食堂あって部屋あってとか)。障害があっても地域で暮らせる、そのためには差別をなくすことが必要です。その人らしく地域で暮らしたいの実現へ条例づくりに取り組みました。

○障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県条例(平成19年7月1日施行)
・平成16年9月 800余差別の具体的事例が寄せられた。差別をなくす研究会も持った。この会にはすべての階層の人たちに加わっていただいた。
・平成17年7月あるタウンミーティングで、たまたま私と同じ名前の〝あき子さん〟という人が「私はこれまで自分を隠しウソをついて生きてきました。つらい思いをして生きてきました。…」とのお話をお聞きし、「私にいま直に何かできるようなことは申せませんが、あなたのお気持ちを辛いおもいできいているわ」と答えました。2月県議会にかけたら反対意見がたくさん出てきて継続審議となりました。6月議会にかけたら拒否するといってきた。しかし、多くの人(障害ある人を含め)の声をつぶすわけにはいかない。ここはいったん取り下げ(この間に討議が深まった)9月議会に上程し全員一致で可決成立となりました。障がい者の人たちがたくさん議会を傍聴してくれました。
○絵に描いたモチにしないためにネットワークづくりをはじめた(どんな県に、どんな地域にしていくべきかを県民が考えるようになった)。
・やさしいお店づくりのプロジェクト・冊子の作成・セミナーの開催・医科歯科向けの研修・街のバリアフリーなど
○アメリカの例ですが、当事者が病院から退院してクラブハウスで立派に相談活動をしている。当事者が仲間同士で助け合う、精神疾患や障がいを経験した「障がい者」としての活動をしています。今や経験を力に変える時代です。(人)としてのプライドを取り戻してもらうことなのです。
○帯広の例では、地域に退院できるよういいネットワークをつくっています。

自立支援法の見直し
○法の理念は評価する。運営については当事者・家族・福祉に携わっている現場の声を反映しボトムアップ(底上げ)の地域づくり、家庭に負担がかからないように、国に負担をもっていく。

差別をなくしていくについて
○自分たちのやっていることに気付かない、差別なんかする人間じゃない、しかし差別は日本の風土の中にあるのです。無意識差別は恐ろしいことです。差別感に気付いていない。何も無い人がウロコを落とす。これができるのか。これが一番です。
○犯罪行動をなくしたい、人間らしく生きたい…の言葉、人権の前向きなキャンペーンをすることが大事です。人権や訴えはネガティブ(否定的)ではなくポジティブ(肯定的)にすることが大切です。人間性、優しさ、深さは接する中で感じとれるようになってきた。自分たちの中で発信したいんだ、自分たちで訴えたこと、自分たちも実践する立場に回ろう…ということが県条例になったのだと思う。
・知事だけ声を出しても出来なかったと思う。
○イタリアでは国全体でやり、取り組んでいる。イタリアで法を変えさせたのは地域・家族・関係者の力が国を変えたのです。30年の歳月がかかっています。国々の人に接していく中で(小さなネットワークから大きなネットワークまで)今の状況から180度ひっくり返すことができるのです。家族が代弁者になることが大切、変えていく努力が必要です。トップの行政の中にもちゃんと考えてくれている人(将来の精神障がいの人のことを心配してくれている)はいます。(官僚は)いい方向に持っていこうとする意欲はあると思う。
○ご家族のみなさま、地域づくりを自らの声と仲間とネットワークで、ムリの無い範囲で、負担に感じないで、誰もが暮らしやすい地域社会づくりをめざして、よい日本をつくりましょう。

◇〈講演が終了し会場からは大きな、大きな鳴り止まぬ拍手がありました。そんな中堂本知事さんは壇上から2度、3度と大きく連帯の気持ち、励ましの気持ちの込められた手(私にはそのように見えました。)をふられて会場に応え、右ソデ幕下にと退場されました。〉

感想
○全国大会だけに、開会から式典、基調講演、行政報告、分科会、特別講演と内容のある最新の情報がもりだくさんでとても勉強になりました。また刺激にもなり、反省したり、考えさせられもしました。
○つたない報告となりますが、ぜひみなさんにはこの報告に目を通していただき、少しでも大会の様子、そこで講演や報告のなかみを感じ取っていただければ幸いです。
○大会に参加させていただきありがとうございました。

平成20年11月5日(水)
特定非営利活動法人つくし会理事長
釜石(地区)精神保健福祉会みんなネットの会会長
金子親次
by open-to-love | 2008-11-28 13:21 | 全福連(みんなねっと) | Trackback | Comments(0)