精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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領域と対象・精神保健福祉センター

乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
■26■精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■26■精神保健福祉センター(守屋小百合)

◇1◇精神保健福祉センターの業務

 精神保健福祉センター(以下センターと記する)は、「精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律」第6条に基づき、都道府県・指定都市における精神保健の向上および精神障害者の福祉の増進を図るための機関である。
 厚生労働省の定めた運営要領では、地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進から、社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のための援助を目標とし、以下の業務を行うとされている。

 1.企画立案

 地域精神保健福祉を推進するため、都道府県の精神保健福祉主管部局および関係諸機関に対し、専門的な立場から、社会復帰の促進方法や、地域における精神保健福祉対策の計画推進に関する事項を含め、精神保健福祉に関する提案、意見具申をする。

 2.技術指導および技術援助

 地域精神保健福祉活動を推進するため、保健所、市町村および関係諸機関に対して、専門的立場から積極的な技術指導および技術援助を行う。

 3.教育研修

 保健所、市町村、福祉事務所、社会復帰施設、その他の関係諸機関の精神保健福祉業務に従事する職員に対して専門的な立場から研修を行い、技術水準などの向上を図る。

 4.普及啓発

 都道府県規模で一般住民に対し、精神保健福祉の知識、精神障害者についての正しい知識、精神障害者の権利擁護などについての普及啓発を行うとともに、保健所および市町村が行う普及啓発活動に対して専門的立場から協力、指導および援助を行う。

 5.調査研究

 地域精神保健福祉活動の推進ならびに精神障害者の社会復帰の促進および自立と社会経済活動への参加の促進などについての調査研究を行うとともに、必要な統計および資料を収集整備し、都道府県、保健所、市町村などが行う精神保健福祉活動が効果的に展開できるよう資料を提供する。

 6.精神保健福祉相談

 センターは、精神保健および精神障害者福祉に関する相談および指導のうち、複雑困難なものを行う。心の健康相談から、精神医療に係る相談、社会復帰をはじめ、アルコール、薬物、思春期、痴呆などの特定相談を含め、精神保健福祉全般の相談を実施する。センターは、これらの事例についての適切な対応を行うとともに、必要に応じて関係諸機関の協力を求めるものとする。

 7.組織育成

 地域精神保健福祉の向上を図るためには、地域住民による組織的活動が必要である。このため、精神保健福祉センターは家族会、患者会、社会復帰事業団体など都道府県単位の組織の育成に努めるとともに、保健所、市町村ならびに地区単位での組織の活動に協力する。

 8.精神医療審査会の審査に関する業務

 以上のことからわかるように、センターは「地域精神保健福祉活動」の中核として、県全体の精神保健福祉の向上を目的として活動を推進していく機関である。また、上記の業務は個々ばらばらに位置するのではなく、相互に密接な関係があり、常に総合的な視野で実施されなければならないことは言うまでもない。

◇2◇ 職員の構成

 職員の構成として、医師、精神科ソーシャルワーカー、臨床心理技術者、保健師、看護師、作業療法士などを擁するとされており、精神保健および精神障害者福祉に関して、医療、福祉、心理、保健、看護など、それぞれの専門性を生かしながら総合的な観点から、判断し対応していくことが求められている。必要に応じて医師や、福祉、心理、保健の専門職が対応するが、医師による診療行為を除いては、それぞれの立場を複合的に取り入れた対応であると考える。

◇3◇領域と対象

 1.領域

 地域住民の精神保健の向上を目的とし、保健、医療、福祉などそれぞれの立場に偏ることなく、保健・医療・福祉の専門的な観点をもちながら、広い立場で住民の生活全体をとらえ、住民の心の健康の保持増進、それを支える関係機関の対応技術の向上、地域ネットワークづくりなど精神保健および精神障害者福祉に関して県全体が向上し、住民が安心して暮らせるための活動を推進している。
 県下1カ所であること、単なる医療機関・相談機関の役割ではないことなどが、センターの活動の特徴をおのずと作り出すことになっている。

 2.対象

 ①相談指導業務における対象

 a.複雑困難なもの
  相談指導業務においては、法律で複雑および困難なものを行うとされており、何を複雑および困難とするかは異論があるかもしれないが、筆者の在職する県では、複雑困難性の分析も視野に入れながら、他では相談・診察をあまり行っていない対象や新しい問題など相談援助の方法や見通しがいまだ確立されていない問題や対象を中心に受け入れてきている。

 b.問題提起者
 昭和46年開設当初から、問題対象者と問題提起者というとらえ方をしており、問題提起者の相談にのるという姿勢を貫いている。そのため、家族や地域でトラブルを起こす人の隣人、職場の同僚、上司、学校の教師などの相談を第一義的に受け付けているところが大きな特徴と言える。

 c.問題の内容
 相談の内容としては、昭和40年代は自閉症などの発達障害、昭和55年頃から10年間は不登校・家庭内暴力などの思春期の問題が大きな比重を占めていた。平成に入ってからは引きこもりの問題が中心となっており、最近では薬物依存の家族相談も加わっている。これらの問題に対する理解や対応方法などの開発を先駆的に行い、相談援助の充実を図るとともに、保健所や市町村の職員に対して研修や技術援助を行い、住民に身近な保健所や市町村において対応できるようにすることもセンターの役割である。その意味で住民からの直接相談は地域の新しいニーズを把握する上で大きな意味をもっており、常に広く先を見通した視点で業務を行うことが要求される。
 精神科救急、PTSD、障害者の人権擁護などが今後の課題として考えられる。

 ②その他の業務における対象
 主に精神保健福祉関係諸機関の職員を対象にコンサルテーションを行うとともに、その時代時代に必要な課題を常に模索しながら、県下の精神保健福祉の裾野を広げかつ充実していくために、今後何が必要となるか、一歩先を見通し、調査研究し、情報提供、啓発および研修に生かしていくことが求められている。
 業務の内容は多様で、平成13年度の活動報告の内容は以下の通りである。
○「市町村への技術援助について―市町村精神保健福祉関係職員研修を通して」
○「地域精神保健福祉活動の整備・促進に関する検討(第1報)」
○「社会的ひきこもりへの取り組みー『ひきこもり青年』の活動グループの経過を中心に」
○「薬物関連問題相談事業を開始して(その2)―平成12年度薬物問題に関する家族教室の実施報告」
○「中学校でのシンナー・薬物に関する調査」
○「虐待について考える」
by open-to-love | 2008-08-08 00:10 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)