精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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障害問題と女性問題について-精神障害者家族として思うこと

 ※きょう6月15日、DPI日本会議in盛岡に参加してきました。盛岡ハートネットに参加されたことがある方も多数出席いただき、感謝です。
 なお、私は、午後の分科会の特別企画「女性障害者」の記録係のボランティアさんとして出席。意見交換会で、そんなに発言が出なかったらオレも何かしゃべろうかな、と思って準備はしておきましたが、参加されたみなさんが活発に発言され、中身の濃い、充実のひととき。私の出る幕はありませんでした。
 で、参考まで、下記が準備していたレジュメです。


障害問題と女性問題について-精神障害者家族として思うこと

(2008年6月15日 DPI日本会議in盛岡 特別企画「DPI女性障害者ネットワークによる映画上映会&意見交換会」参考資料)

盛岡ハートネット(盛岡精神障害者家族会連合会)事務局 黒田大介

 障害者の自己決定権の最大の阻害要因は「家族」です。その「家族」とは、往々にして「母親=女性」です。なぜか?日本には根強い性別役割分担、障害に対する偏見がある。周囲の偏見は当事者と母親の孤立を生み、夫の無関心あるいは暴力、離婚、母子家庭の生活苦といった社会、心理的要因が拍車を掛け、その結果母親は頑張りすぎて、ともすれば当事者を抱え込み、当事者の自己決定権の阻害につながる。だが、そうなってしまう根本原因は「男と金」、つまり、根強い性別役割分担意識とそれに基づいた、無償の家族介護を前提とした制度設計・労働報酬にあると考えます。なお、精神の場合は家族介護・抱え込みが、意識レベルのみならず、法的に「保護者制度」として定められています。
 「男と金」が変わらないと、女性と障害者の、あるいは当事者と家族の社会・心理的抑圧、生活苦、離婚率の高さといった現状は変わらないし、DVで女性精神障害者は増える一方。この現状を打破するため、私としては、障害者であることの困難、女性であることの困難に向き合い社会へ積極的に発言する「女性障害者」の活動に期待してます。

【根強い性別役割分担】
○「女性は産む機械」と位置付けられてきた近代日本国家において、非効率的な存在=産めぬ性、産ませぬ性として位置付けられ続けてきた女性障害者→①
○障害者の介護負担が母親に集中→②
○女性の無償労働(アンペイドワーク)の延長に位置付けられた福祉労働は、働きに見合わぬ低賃金→③
○障害者、生活保護受給者、母子家庭への「自立支援」の名の下に、国は社会保障切り捨てを始めている。それにより、障害者が公的なサービスを受給することはますます困難になり、家族介護への依存は強まる→④

【障害者家族をめぐる問題】
○障害者世帯の生活苦→⑤
○障害者世帯の夫の妻に対するDVは多い→⑥
○障害者世帯の離婚率、母子世帯率は高い→⑦
○周囲の障害に対する無理解に起因する孤立→⑧
○「母原病」という偏見→⑨
○上記の裏返しとしての、母親の頑張りすぎと、抱え込み→⑩


【精神障害者をめぐる問題】
○離婚率が高い→⑪
○自殺率が高い→⑫
○婚姻率が低い→⑬
○中絶率が高い→⑭
○子どもを産める夫婦はごく限られている(今なお生きる優生思想)→⑮

【精神障害者家族をめぐる問題】
○精神障害者世帯の生活苦→⑤
○精神障害者世帯の夫の妻に対するDVは多い→⑥
○精神障害者世帯の離婚率、母子世帯率の高さ→⑦
○精神障害者家族会のみが組織化され、進まぬ当事者会支援→⑯
○精神衛生法-精神保健福祉法における保護者制度→⑰

【DV】
○障害者世帯の夫の妻に対するDVは多い→⑱
○DVで精神障害者になる女性は多い→⑱
○DVの背景には、女性の経済的自立の困難がある→⑱

 上記の大半は、私の実感に基づくものです。2006年春、私の妻が統合失調症を発症して以来、精神障害者家族会の活動に参加するなどして、多くの精神障害者やその家族と知り合い、見聞きした実感です。でも、実感を裏付ける統計は少ないです。よって、上記を一個人の実感に過ぎないと切り捨てられても仕方ないのですが、私が思うには、男女共同参画施策は内閣府、障害者施策は厚労省が担っているという縦割り行政が、女性問題と障害問題を横断的にとらえることを阻害しているだけではないか。もし双方が連携してきちんと調査すれば、もしや私の実感より酷い実態が明らかになるのではないかと思っています。なお、統計や論考が示せるものについては、下記の通りです。

【根強い性別役割分担】
①DPI女性障害者ネットワークの取り組みのほか、優生思想を問うネットワーク編『知っていますか?出生前診断一問一答』(解放出版社、2003年)など参照
②「主たる介護者は母親」は96.8%(「障害(児)者・家族の暮らしと介護者の健康調査」1995年9月~12月調査)、94.4%(「重度知的障害(児)者の家庭での介護支援についての実態調査」2001年6月~9月)
参照:障害者生活支援システム研究会編『ノーマライゼーションと日本の「脱施設」』(2003年、かもがわ出版)
③「ホームヘルパーの平均年収は約260万円と、全労働者平均約450万円より格段に低く、介護職の離職率も全労働者平均に比べ高い」(05年、厚労省統計)
④各種新聞報道参照

【障害者家族をめぐる問題】
⑤「生活保護受給世帯は月平均7848世帯、うち障害者世帯13.2%、母子世帯5.6%」(06年度、岩手県)。なお、子に障害がある母子世帯の受給割合は統計がない。
⑥実感です
⑦実感です
⑧実感です
⑨滝沢武久『精神障害者の事件と犯罪』(中央法規、2003年)など参照
⑩前掲『ノーマライゼーションと日本の「脱施設」』参照

【精神障害者をめぐる問題】
⑪実感です
⑫日本は年間3万人以上が自殺しています。自殺防止に向けた厚労省調査などで「自殺者・自殺企図者の大半が精神疾患に罹患している」とされています。
⑬日本の婚姻率(15歳以上)は男性61.8%、女性58.2%(2001年、国勢調査)。精神障害者の婚姻率は、通院34.6%、入院14.6%、社会復帰施設入所3.6%(2003年、厚労省精神障害者社会復帰サービスニーズ調査)。そのほか、川崎市の社会復帰ニーズ調査(1997年)では26.3%、精神保健福祉ニーズ調査(2003年)では18.7%。全家連が作業所通所者を対象にした地域生活本人調査(1998年)によると、7.4%(月刊『ぜんかれん』2004年8月号「情報テーマパーク」)。
⑭実感です
⑮実感です

【精神障害者家族をめぐる問題】
⑯実感です
⑰精神衛生法、精神保健福祉法における保護者制度=保護者が精神障害者の自傷他害を監督する義務、適切な医療を受けさせる義務、医師への協力義務、医師の指示に従う義務(精神衛生法22条)1970年ごろ、通り魔殺人の犯人の父親に対し、患者の監督不十分により、被害者の妻に890万円支払え、という西日本のある地裁で判決(野田正彰『犯罪と精神医療 クライシス・コールに応えたか』岩波現代文庫、2002年)

【DV】
⑱女性の10.6人が配偶者から身体的暴行、心理的攻撃、性的強要のいずれかを受けたことが「何度もあった」、「1、2度あった」を含めると約3人に1人が被害を体験(05年、内閣府調査)。また「DV被害は身体的、精神的、性的暴力が複合的に生じ、長期にわたる。高頻度でPTSDやうつ病がみられる」(2002年、厚生労働科学研究)、「暴力を受けた女性の自殺念慮・企図率は、暴力を受けていない女性と比べ格段に高い」(00年~01年、WHO「DVと女性の健康国際調査」)。配偶者から暴力を受けた女性が相手と別れなかった理由で「経済的不安」が最多の27.7%(05年、内閣府調査)
by open-to-love | 2008-06-15 20:29 | 障害福祉と女性問題 | Trackback | Comments(0)