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自立求めて DV被害女性の軌跡①

自立求めて DV被害女性の軌跡①

執拗に「バカ」「死ね」

 彼女が面会場所に指定したのは、首都圏郊外の小さな喫茶店だった。ドメスティックバイオレンス(DV)被害から逃れて5年。目深にかぶった帽子を取り、思いのほか明るい声で彼女は語り始めた。「逃げ出さず、あのまま家にいたら…私は自殺していたかもしれない」
   ◇   ◇
 彼女は現在60歳代で、岩手県出身。20歳代後半で他県の男性会社員と結婚した。「今思えば、最初の夫もDVだった」。四六時中殴られ顔中あざだらけ。「パンダみたいな顔してた」
 暴力に耐えかね、小さい娘を連れ家出。だが、車で追い掛けてきた夫に捕まった。夫は娘をかばう彼女を殴打した。
 その日以来、彼女は逃げなかった。観念したというより、夫がめったに家に帰ってこなくなったからだ。給料が入ると、東南アジアなどに行って買春していたらしい。「ガイジンの女」から自宅にたどたどしい日本語の手紙が届いた。
 1年以上の空白後、夫は書類を手に帰宅。「離婚する。サインしろ」。約10年間の結婚生活は、唐突に終わりを告げた。
  ◇    ◇
 母子家庭の生活は厳しい。再婚した男は「最初の2、3年は優しかった」。だが、今度は四六時中、精神的暴力が始まった。
 「バカ」「死ね」「出て行け」…執拗に、汚い言葉が彼女に浴びせられた。言い返すとキレて、殴られた。娘が大学に推薦で合格したが、夫は入学金を払わなかった。
 夫の親族はいつも夫の味方。かといって、遠く離れて住む自分の親族とは疎遠だった。彼女は友人に相談し「話は聞いてくれた。同情もしてくれた」。でも、結論は「あなたが我慢しなくちゃないんじゃないの」。進展はなかった。
 転機は、ストーカー被害に遭った友人の口コミ情報だった。その友人は「あちこちの相談機関に足を運んだが取り合ってもらえず、法務局に行ったら親身に話を聞いてくれた」と話していた。
 意を決して、彼女は法務局へ。初老の男性職員が対応した。彼女の身の上話を聞いた職員は言った。「それはDVだ」
 5年前の夏。彼女はこのとき初めて「DV」という言葉を知った。
 「逃げよう」と心に決めた。既に関東へ移り住み自立していた娘も賛同。数日後、夫が用事で一日中家を空けた日、彼女は荷物を取りまとめ、貯金を下ろし、家を出た。
 途中、警察に電話を入れた。「夫から捜索願が出されても、受理しないでください」
 だが、どこへ。明確な行き先があったわけではない。娘の元に逃げ込めば、夫が追い掛けてきて、娘も巻き添えになるかもしれない。彼女は、本県に向かった…。
  ◇    ◇
 2008年1月11日、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)第2次改正法施行。「家」という密室の中の暴力を「重大な人権侵害」として、被害者の安全確保の仕組みを定めた2001年の法施行から7年、本県でも全国でも相談件数は年々増加している。その過酷な実態が徐々に顕在化する一方、支援の輪は構築の途上だ。本県出身のDV被害女性の行方を追いながら、本県、首都圏、札幌を舞台に、被害者支援の現状と課題を探る。

 【DV】配偶者や恋人など親密な関係にあるパートナーからの暴力。被害者の大半は女性。加害者の社会的地位や職業は関係なく地域差もないとされる。身体的、精神的、性的暴力、生活費を渡さない経済的暴力、行動を監視する社会的暴力などがある。内閣府調査(05年)によると、女性の10・6%が配偶者から身体的暴行、心理的攻撃、性的強要のいずれかを受けたことが「何度もあった」と回答。「1、2度」を含め女性の約3人に1人が被害を体験。本県の調査(03年)によると、配偶者等から何らかの暴力を受けたことがある女性は37・8%、暴力で命の危険を感じたことがある女性は4%。
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by open-to-love | 2008-03-01 20:45 | DV(IPV) | Trackback | Comments(0)