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東北地方の精神障害者グループホームの運営状況及び世話人の果たす役割に関する研究

東北地方の精神障害者グループホームの運営状況及び世話人の果たす役割に関する研究
[要約版]

研究代表:佐藤真由美(元NPO法人ハートピュア盛岡グループホーム世話人)

1.研究の概要
 グループホームとは,地域生活を送るための福祉的住居サービスの一つであり,支援付の小規模住居である。精神障害者が,無理なく日常生活を送りながら,自分の生きがいや楽しみ,社会参加の役割を果たすために,生活の一部分の支援を受ける場であり,グループホームには世話人を配置することが定められている。
 精神障害者の生活の質の向上のためには,最も身近で接している世話人の業務形態,専門性,接し方等の実態を明らかにすることが重要な課題である。このため本研究は,東北地方の精神障害者グループホームの運営状況とともに,そこで働いている世話人の現状と課題を把握し,世話人の果たす役割を明らかにすることを目的とした。
 調査方法は,東北6県の精神障害者グループホーム世話人を対象とした,郵送による質問紙調査及び面接調査である。調査期間は,2006年9月から2007年6月である。質問紙調査では,回答者の属性,施設状況,世話人の業務実態,世話人の意識等について問いを設けた。送付件数219件中,有効回答件数は118件で回収率は54%であった。面接調査では,各県のグループホーム(15か所)を訪問し,地域資源等を含め現状や苦労している点,運営にあたって心がけている点などの聞き取り調査を行った。

2.グループホームの運営状況と世話人の役割
 グループホームは,主に一戸建て住宅を賃貸し,4名~6名/戸で生活している。運営主体となる法人では,日中活動の場を併設していることが多く,一日の生活全般にわたっての支援体制を整えている。
 グループホームでの世話人の業務内容は,日常の家事一般,事務処理,健康状態の把握など多岐にわたり,グループホームの運営形態そのものも多様である。その結果,様々なニーズへの対応を可能としている状況が明らかとなった。
 世話人の果たしている役割は,自立を促進する役割であったり,地域生活を全面的にフォローする役割であったり,また,生活の苦楽を共有する者として見守に徹することを求められるケース,あたたかい家庭を創っていく役割を担うなど,実に多種多様である。
 多くの世話人はこの仕事にやりがいや生きがいを感じており,入居者の前向きな言動や,感謝の言葉,体調が安定していることなどに継続動機が促されている傾向がみられた。一方で,仕事への意欲はあるものの,入居者への対応の悩みや世話人自身の高齢化への不安を抱えている一面があることも明らかとなった。さらに,自立という観点から地域社会への参加の機会をつくることなどを課題と捉えているケースもみられ,世話人の役割意識はグループホーム内にとどまらず,地域での生活全体に及ぶ場合もあるという実態が明らかとなった。

3.今後にむけて
 グループホームの多様性は,利用者の選択肢の幅を増やすことになり,個々人が自分らしく生きることを可能としている。しかし,そのことが求められる世話人の役割を多様化していることも事実であろう。世話人の業務内容が多岐にわたっていることから,グループホームスタッフの中で果たしている役割に見合った「世話人」以外の呼称の検討も必要と思われる。働く側から世話人を見ると,日常生活全般に関わる業務が多く,過重労働に陥りやすい面もあることから,負担軽減策が求められる。利用者の側からは,多様な運営のなされているグループホームの情報は,自分自身の生活スタイルの選択に関わる重要なものであることから,精神障害者に対して常時提供できる体制づくりが求められよう。

要約版 080211 Mayumi
by open-to-love | 2008-02-15 09:30 | グループホーム | Trackback | Comments(0)