精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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生活保護を使って 体験談

特集 生活保護の暮らし

生活保護についての読者はがきアンケートでは
「今は利用していないけれど、将来使うことになるかもしれない」
という質問を多くいただきました。
生活保護とはどのようなものか
どんな条件であれば利用できるのか
必要なとき困らないように聞いてみました。

体験談 生活保護を使って

子どもを育てながら(福岡県 男性 57歳)
 病院で仲良くなった人と結婚しました。退院したときに建築関係の仕事につき、結婚したときは大工でした。妻は子どもが生後4〜5カ月のころ再発し入院しました。私の母が子どもをみてくれましたが、子どもが1歳ぐらいのとき、また妻が再入院しました。そのころは母が亡くなっていて、私は仕事が朝早くから夜遅くまで家に帰れない状況のなか、子どもを施設に入れなければいけなくなりました。手続きなどで月の半分は仕事にならず、入院費や子どもの施設への入所費用など収入が少ないなか支出がかさみました。生命保険から最高限度額のお金も借りて、生活が苦しくなったので生活保護の窓口に相談に行ったところ、ケースワーカーから「借金は認めない!」と怒ったような口振りの対応を受けました。2万円ぐらい受け取れるとの結果が出ましたが、少し腹が立ったので受けませんでした。
 妻はこれまで4カ月ぐらいの入院を1〜2年おきに6回くらいしました。いろんな事情があり、1994年末に家の立ち退きの強制執行を受け、妻は5年、私は2年間の入院を強いられ、子どもも施設に入るはめになりました。私は5年くらい前にリウマチを患い仕事ができなくなり、共同作業所に通って、そこの運営主体の副会長もしています。現在は生活保護で暮らしています。作業所の賃金と年に3回くらいボーナスもあり、収入状況報告書を福祉事務所に出しています。作業所の工賃は、多いときは月に1万3000円くらいになることもあります。生活保護では8〜9000円以上の収入があれば全部引かれてしまいます。私の気持ちとしては割り切れません。もう少しの所得控除があってもいいのではないでしょうか。
 現在は結婚後24年になり、一人息子は2年前に結婚して、1歳3カ月になる女の子の孫がいます。

ふだんの生活(佐賀県 男性)
 受給のきっかけは入院でした。兄姉たちも生活に支障をきたすくらい収入が少なく、そのうえ私が入院となって入院費が出せないので、やむなく市役所に行き相談をして、生活保護受給の手続きをしてくれました。生活保護を受けるようになって25年になり、今はグループホームで暮らしています。生保受給者でも、喫茶店でコーヒーを飲んだり、スポーツ観戦、映画鑑賞等と人との関わりのうえでお金を使うことがあります。

生活の悩み(福岡県 男性)
 障害厚生年金と生活保護を収入の柱としていますが、私の生活は文化的というにはほど遠いものがあります。慣れない一人暮らしなので、収入のなかから家賃、ガス代、電気代、電話代を差し引き、残りのお金から食事代、風呂代、タバコ代を払うとほとんどお金が残らない。自炊をしているが、材料を使って調理をしていくのはとてもむずかしい。何をどのように使えばよいのか、どのようにして作ったらいいのかがわからない。それでどうしても同じ材料ばかり買ってきて同じ料理ばかりつくってしまう。また部屋の掃除がまったくできないで困っている。トイレの掃除や掃き掃除も1カ月に1度できればいい。洗濯はたまってから、1週間に一度のペースでしている。それも着替えがなくなって仕方なくしているのが現状だ。友人と食事をしに行きたいときもあるが、外食をするとすぐに家計が行き詰まってしまうので、外食はなるべくしないようにしている。

人とのつながり(青森県 男性)
 僕は病気の急性期のときに3年ほど生活保護のお世話になりました。当時いろいろ動いてくれた病院の人や職場の人々には感謝をしています。僕はあの場面では、生活保護しか生きる道はなかったと思っています。東京で働いていて病気になり、田舎に帰って、まわりの人たち、特に姉には世話になりました。地道にこつこつ苦労を積み重ねて働くことができたので、よかったと思います。障害年金が3級から2級になったときに基礎年金と厚生年金の二階建ての年金をもらえるようになり、生活保護を利用しないで済むようになりました。仕事でいきづまったときに保健所の保健婦さんが温かく励ましてくれ、助かったこともあります。

家族とのちょっと離れた関係(東京都 K.T. 33歳)
 去年の8月から生活保護を受け、世田谷のアパートで一人暮らしを始めました。5年前の退院後、家にいると父とケンカばかりして病気が悪くなるので、母が家族会で何かないかと探して、東京都の精神保健福祉センターのホステル(中期宿泊入所訓練施設)に申し込み、1年後に入れました。1年で退所後、グループホームに1年ほどいました。
 家族会で知った不動産屋さんがアパートを見つけてくれ、家具はエアコン、テレビなどはリサイクルショップで買い、食器や箸は100円ショップで買いました。服や靴は安いところを探したり、友達にもらったりしています。携帯電話代を使いすぎるので、母に「どのくらいかかったの、今月は?」と聞かれます。
 作業所で火・木曜日に昼食会があります。夕食はイブニングケア(火・木曜日)に行き、食事代400円で助かっています。普段はスーパーでお弁当を買っています。月に1回、妹が泊まりに来て、「薬を飲まないとウツっぽくなってすぐわかる」と言われます。
 前に入院していた千葉の病院に土曜日に2時間かけて通院しています。薬の量は大分減り、長いつきあいの先生が「だいぶ良くなったな」と言ってくれます。
 たまに会うと父とも仲良く、4人でサーカスに行ったり食事に行ったりしています。
○1カ月の生活費○
[収入]障害年金97500円
    生活保護58700円(家賃+医療交通費)
    計  156200円
[支出]家賃  54700円

一人暮らしを始める(栃木県 S)
 ハートピアにいたときは、障害年金と工賃で暮らし、ときどきお金が足りなくなることがあって、お金の使い方について自信がなかったです。退所後はハートピアの地域生活支援センターや授産施設に自由に来られることで、友達やスタッフと話したりできて、一人暮らしのさびしさを紛らわせてくれました。今のお金のやりくりは生活保護と年金でトントンです。無駄遣いしなければやっていけるし、慣れるとさびしくなくなり、楽しむことができて気が楽です。町の中でいろいろ見たり、いろんな人と接したりで世界が広がった感じです。これからも一人暮らしを守りたい。
○1カ月の生活費○
[収入]障害年金    63000円
    生活保護    46000円
    計      109000円
[支出]アパート代   32000円
    電気代    2〜3000円
    電話代      4000円
    タバコ代    16000円(1日2箱)
    食事・衣類・雑費56000円位

ハートピアきつれ川職員より=Sさんはハートピアきつれ川の入所施設を2年の満期で退所しました。入所中の収入は年金と工賃で毎月ギリギリの生活で、退所後にアパートを借りるお金がまったくありませんでした。
 この辺り(さくら市=喜連川町と氏家町が今年4月合併)ではアパートを借りる際、家賃、敷金、礼金合わせて14〜15万円必要と言われています。生活保護担当に貸借契約の費用がないことを何度か相談しました。そのなかで、住宅扶助内の3万2200円以内のアパートへの入居なら費用を出せるとの話をいただきました。しかし、アパートはどこも家賃4万円以上でした。職員のつてで、一戸建ての2階部分を扶助内で貸してもらえるところが見つかり、Sさんの母親が保証人になり、契約費用は施設(ハートピア)に一時借りました。布団や扇風機は家族からプレゼントされました。
 役場で住民票を移動し、生活保護担当との面接には、通帳や手帳、印鑑、アパート契約書等をそろえ(本当は障害年金証書も必要。見つからず後で探しました)、職員が一緒に同席しました。生活保護担当よりわかりやすい説明があり、家族、生活、職歴、今後の予定などを聞かれました。翌日には生活保護担当がアパートの確認に来て、その足で役場へ行き、生活保護の申し込みを行いました。Sさんが一人暮らしを始めて1年が過ぎました。

救護施設のOB会(大阪府 男性 63歳)
 救護施設を退所して6年になります。文化住宅(家賃3万5000円)に住んでいます。風呂はなく、銭湯(360円)、コインランドリー(洗濯機200円、乾燥機200円)を使っています。朝食は喫茶店のモーニング(350円)、昼・夕食は施設の運営法人(昼280円、夕300円)で食べています。退所者の親睦会に入っていて、寮でソフトボールやボーリングなどクラブ活動に参加しています。寮は日曜日もお正月も開いていて、退所後ずっと通っています。

救護施設を出て一人暮らし(大阪府 男性 56歳)
 1年前に救護施設を出て、アパート(家賃4万2000円)で暮らしています。退所後も運営法人には昼食を食べに来ています。クラブ部活動もあり、友人に会えて担当職員もいるので、週に何度か顔を出すと安心します。

救護施設=日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させ、生活の支援を行うことを目的とする施設(生活保護法第38条で規定)。2人の男性は、保護施設通所事業(生活保護受給者に対し通所訓練や訪問指導などを行う)の利用者です。
(月刊「ぜんかれん」2005年7月号 通巻462号)
by open-to-love | 2008-01-11 00:49 | 生活保護 | Trackback | Comments(0)