精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

生活保護Q&A

生活保護についての読者の質問 Q&A
(回答 全国生活保護裁判連メール相談スタッフ)
Q1 生活保護にも関心があるけれど、今すぐとは考えていません。今のうちにしておいた方がよいことはありますか?
A1 生活保護制度は憲法25条によって保障された市民の権利です(生存権と呼ばれます)。市民であれば誰でも、「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されることになっています。
 ただ、生活保護制度は、できるだけ利用者を増やしたくないという国や自治体の引き締め政策のため、本来の趣旨からはずれ、残念ながら「使いにくい」「複雑な」「引け目を感じる」ような運用が長らく続いており、時には違法な運用をめぐってやむにやまれぬ不服申立や裁判が起こっています(少なくない原告や不服申立人が勝利しています)。
 したがって、これからの生活を考えて、生活保護制度の本来の在り方や趣旨を、今のうちから勉強することは重要な意義があります。
 さしあたり、制度の概要、困ったときのわかりやすい問答集として、『いのち くらし 生活保護Q&A50プラス1 あきらめる前にこの1冊』(全国生活保護裁判連絡会編・編集代表 竹下義樹、2200円(税込)、高菅出版 ☎075・222・6743)、生活保護をめぐる国や現場の動きの紹介等については、『季刊 公的扶助研究』(全国公的扶助研究会編、みずのわ出版 ☎078・242・1610)が役に立つと思います。また、全国生活保護裁判連絡会のホームページ(http://www7.ocn.ne.jp/~seiho/)において、生活保護の不服申立や裁判をめぐる動きや、「生活保護なんでも相談室 よくある質問(FAQ)」が紹介されており、無料メール相談コーナーも開設されています。

Q2 生活保護について、今、皆が関心をもっているがよくわかっていない。親と同居でも使えるのか、自立生活を送れるような元気な者でないと受けられないのか、知りたい。(福井県 家族 72歳)
A2 生活保護の必要性は、原則として世帯を単位として判断します(居住・生計を同一とする世帯を単位として判断し、これを「世帯単位の原則」と言います)。したがって、同居の親も含めた家族全員の収入と、生活保護の最低生活費を比べ、前者が後者を下回る場合には利用できることになります。
 ただし、親が重度の障害者を介護している場合などには、親の収入を除いて考えてくれる場合(「世帯分離」=親と重度障害者の世帯を分離する)もありますので、福祉事務所とよく相談してください。
 また、自立生活を送れる元気な人だけが受けられる制度ではありません。むしろ生活保護の利用者は病気や障害などのハンディキャップのある方が大半です。そして、このようなハンディキャップのある方の広い意味での「自立」を保障するために、経済的な保障(最低生活費の保障)や各種社会福祉サービスの利用やコーディネートなどを行うのが、生活保護制度の役割と言えます。

Q3 口べたな人が生活保護の相談や申請に行くとき、何かあらかじめ用意したり、誰かと一緒に行った方がいいでしょうか?
A3 役所に自分の生活が困窮していることを相談するのは勇気のいることです。見知らぬ職員と話をする時は緊張して、なかなかうまく話をすることはできません。一人で行くことに自信がないのでしたら、信頼のできる人に同伴してもらっても良いでしょう。同伴者同席の相談は、相談者本人が承諾している以上、当然認められます。もちろん法律でも禁止されていません。
 行くときは、印鑑を持っていって下さい。それだけで十分ですが、年金の証書、障害者手帳、預金の残高証明、家賃の通帳か領収書、健康保険証などが事前に準備できればそれにこしたことはありません。
 生活保護を受けたいということでしたら、相談時にはっきりと「申請します」と言うことが重要です。はっきりと生活保護を申し込む意思が表明された場合には、行政は申請を受け付けなければなりません。受け付けられれば、必要な書類等のことを担当者が説明してくれます。

Q4 生活保護に一度申請してだめだったとき、状況が変わらない場合は再申請しても無理でしょうか?
A4 預貯金がある、収入が最低生活費を超えている、などにより保護の要件に該当しない場合は、保護が受け付けられても、却下されます。その時は、決定通知書に却下する理由が書かれています。その後に預貯金がなくなったり、収入が低くなれば、却下となった理由に該当しなくなるので再申請ができます。
 A3にもあるように、生活保護は、申し込みの意思が表明された場合には、行政は申請を断ることはできません。もし受け付けてくれないときは、自分の住所と名前、同居家族の名前、困っている事情を紙に書いて押印して出せば、それが申請書になります。もめた場合には、内容証明付きの郵便で申し込みを行えば確実です。
 福祉事務所は、生活保護が必要かどうかの調査をして14日以内・遅くとも30日以内に保護の決定(保護を開始するか、却下をするか)をしなければなりません。その決定に納得できない場合には不服申し立てができますし、同時に再申請もできます。

Q5 私は市に生活保護を申請して断られましたが、作業所で聞くと、隣の市では私と同じような条件で通っているそうです。国がやっていることなのに、市の福祉事務所の対応が異なるのはなぜですか?
A5 生活保護は、国の責任で全国一律に行われる制度ですが、最近では、福祉事務所による対応の差が混乱を招いている話をよく聞きます。全く条件が同じなのに、保護が断られた場合には、その理由を納得のいくまで福祉事務所に聞くべきです。そのうえで、どうしても納得のいかない場合には、県知事に不服を申し立てて争うことができます。

Q6現在作業所に通っている統合失調症の長男(39歳)がいます。要件が満たされず無年金障害者となっています。親の所得の関係で国民年金の掛け金も半額免除です。将来は生活保護も視野に入れての生活設計を話し合っています。生活保護法にも目を通したのですが、具体的に何のことかわかりません。教えていただければありがたいです。
①長男の貯金の残高はいくらくらいまで認められるのでしょうか? 5〜6万円くらいまでとどこかで聞いたような気もするのですが。
②家や土地は親である私の名義になっているのですが、処分する必要があるのでしょうか?
③扶養義務者の件ですが、長男には妹が1人いますが、扶養できる状況ではありません。私(親)のきょうだい4人も今では孫のいる身です。扶養義務者の資産はどのように査定されるのでしょうか?(新潟県家族、64歳)
A6 資産調査の方法は、金融機関や生命保険会社への調査や、扶養義務者への問い合わせを福祉事務所が行います。本来は、調査先への保護申請者の個別の同意が必要ですが、あらかじめ保護申請者から一律・包括的な同意書を取り、一律に調査されるというのが実態です。
①貯金について 貯金については、現在の厚生労働省の運用はたいへん厳しく、一カ月の最低生活費(お住まいの地域や家賃の有無によって変わりますが、家賃なし・単身者で約6万円から7万5000円程度)の2分の1を超える収入=貯金があると、保護は開始されません。
②家や土地について 現に居住している土地・家屋は、保護を利用される方についても、原則として保有が認められます。息子さんが別の場所にアパートを借りられて、単身で生活保護を利用される場合には、親世帯が持ち家であっても、特に問題とされることはありません。
③親・きょうだい・親戚の扶養 成人された息子さんと、親もしくは妹の関係は、民法上「生活扶助義務関係」と呼ばれ、その人なりの社会的にふさわしい生活を送ったうえで、なお余裕があれば仕送りを検討すればよい、という程度のゆるやかなものですので、親・妹さんの家や土地など、社会的にふさわしい資産の保有は当然認められます。また、おじ(伯父・叔父)やおばになりますと、過去に息子さんからおじさん等に仕送りをしていた等の特別な事情がある場合で、家庭裁判所が認定したときに扶養義務が発生するとされているだけですので、問題とされることはまずありません。

Q7 現在70歳になる父と一緒に暮らしています。持ち家なのですが、土地が36坪しかなく、建坪も15坪ほどで、不動産屋さんに聞いたところ「売買の対象にならない」とのことです。現在は、私の障害年金と作業所の工賃、父の年金とアルバイト代で生活していますが、親なき後が心配です。将来安心して生活保護が受けられる状態になればと思います。(北海道、42歳)
A7 A6の②でも説明しましたように、所有している土地・建物については特に広大な広さがあるとは考えられず、仮にお一人暮らしとなられても、住居として利用していれば処分を求められることはまずないと思われます。
 また、一人暮らしとなった場合には、あなたの最低生活費(障害者の場合には、加算があるので最低生活費は健常者より高く設定されています)と、収入(年金と工賃)とを比較し、収入が足りなければ、他に貯金などの条件(貯金の保有はA6の①参照)をクリアできれば保護を利用できます。

Q8 生活保護の審査が厳しくなったと聞きますが、どこがどう厳しくなったのかをくわしく教えてください。金額や支給される条件を教えてください。(東京都、43歳)
A8 A1でも述べましたが、生活保護については、違法とも言うべき厳しい運用が続いています。
 特に、保護の申し込みの段階で必要以上の書類や就労の努力を求めて、保護の申し込みを抑制・排除する、いわゆる「水際作戦」(保護に入る水際で阻止する)が強化されています。また、保護の利用の条件では、働けない人にまでしつこく働くことを求める、関係が断絶している親族にまで援助を強要するような運用がまかり通っています。しかし、このような運用は違法・不当な場合が多いため、不服申立や裁判では行政側が負ける例が多くなっています。
 支給金額は、年齢・世帯人員・地域によって異なります。大都市部では、精神障害1級の重度の方(一人暮らし)の場合、生活費11万円程度(障害者の加算込み)、住宅費4万円程度が最低生活費とされ、この合計金額約15万円と収入(障害年金など基本的にすべての収入は含まれます)とを比較して、最低生活費に足りない金額の保護費と、介護、医療等のサービスが現物で支給されます。家屋・宅地などの不動産や貯金、親族からの援助等については、A6を参照してください。

Q9 今は1人で暮らしていて、生活保護を受けて農業をしています。親類の人たちから何の援助もなく、畑をさせてもらっています。無年金で、これからも畑仕事をしたいのですが、誰も相談に乗ってくれません。これからどうやって生活すべきでしょうか。(広島県 女性 53歳)
A9 生活保護を受けながら、なかなか自分ができる仕事がみつからず、何もしないままに暮らさざるを得ない人々がたくさんおられます。相談者の方は、病気治療をしながらも畑仕事をされておられるとのこと。作物が収穫できたときは、喜びもひとしおだと思います。
 しかし、健康のこと、これからの生活のことを考えると不安もつのるに違いありません。まず、生活保護を担当するケースワーカーや、通院先の医療機関のケースワーカーなどスタッフの人、保健所の保健師、相談員などに相談されたらいかがでしょうか。
 また、お住まいの地域に作業所やデイサービスなどの施設はないのでしょうか。農閑期などにこのような通いの施設が利用できれば、もしかするといろいろな人と出会えてさびしさも解消できるかもしれません。

Q10 私は現在生活保護を受けていません。でも将来は受けるかもしれません。そこで質問なのですが、貯金は一銭もできないのですか? 生命保険にも入れないのですか?(群馬県 女性 64歳)
A10 生活保護を新たに利用する場合の貯金の扱いについては、A6の①と同じです。
 生命保険については、解約すればお金が返ってくるタイプのものについては、その解約返戻(へんれい)金を貯金と同様に扱って、原則として解約するように求められます。ただし、解約返戻金が小額である場合(おおむね最低生活費の3カ月以下)で保険料も安い場合(おおむね最低生活費の1割以下)は生命保険への加入継続が容認されることもあります。

Q11 持ち家で親と同居しています。遠くに兄一家が住んでいます。今は障害年金の一部で暮らしています。自然に考えれば私よりも先に親が亡くなる。貯金があると生活保護は支給されないのはわかっています。家と土地があっても、生活保護は支給されるのでしょうか? エアコンはありませんが、MDコンポとDVDプレーヤーがあります。生活保護申請の際、没収されることはありませんか? 作業所にも、生活保護で暮らしている人はいますが、やはりタバコ代が高くつくらしく、なかなか厳しいようです。金額として、大体いくらくらい支給されるのですか? あと、生活保護を受けるデメリットについて、教えてください。(千葉県 男性 39歳)
A11 現に住んでおられる家と土地があっても、生活保護は利用できます。MDコンポやDVDプレーヤーについては、売却すればそれなりの高額で売れる場合は、ぜいたくな「資産」だとして売却が求められることが絶対にないとは言い切れませんが、普通は、売れないか、もしくは手間賃程度にしかならないでしょうから、「売却せよ」とは言われないでしょう。
 生活保護から支給される生活費は、都市部で約7万5000円から郡部で6万円弱まで、6段階になっています。
 生活保護を利用したときのメリットは、生活の安定、さらに医療費が無料になるなど、社会サービスの利用料が低額もしくは無料になり利用しやすくなることなどです。
 基本的にはデメリットはなく、市民的な権利はすべて保障されます(居住移転の自由や選挙権など)。しかし、厳しい運用のために、ともすればケースワーカーから生活を監視されるような側面があること、通院の際には、国民健康保険証がなく、福祉事務所で発行される「医療券」が必要なことなどがあります。

Q12 財産を売り、保険を解約しなければ生活保護がもらえないというところは間違っていると思いました。民間の年金保険はむだですか? 将来不安です。私は無年金障害者です。(東京都 37歳)
A12 生活保護は、できるだけの努力をしてもなお最低生活を維持できない場合に、国の定める最低生活費とその世帯の収入との差額を現金または現物(医療サービス、介護サービスなど)で給付する制度です。ここでいう「できるだけの努力」の中には手持ち資産の現金化も含まれますが、居住用不動産など一定のものについてはそのまま所持できるものもあります。
 また、民間の年金保険については、原則として資産とみなされ解約を求められますが、生命保険(Q10参照)や学資保険など、解約返戻金や保険料の金額がさほど多くない場合には必要に応じて認められることもあります。他方、支給された保険金については収入として認定され、「最低生活費に足りない部分」だけの保護費が支給されることになります。

Q13 以前交通事故に遭いました。その時生活保護を受けていましたが、慰謝料(6万8000円)は全部取り上げられてしまいました。示談の時の書類作成だって手伝ってくれなかったのに、重度の障害者に不当だったのではと今も思っています。(栃木県 51歳)
A13 確かに、あなたの疑問はもっともです。慰謝料は、実際は「痛み賃」ともいうべきものですから、交通事故に遭ったあなたが保有すべきものです。しかし、現在の生活保護制度では、残念ながら、いかなる収入であっても基本的には収入認定することになっています。
 ただ、自立のために役立つものについてはその控除が認められています。例えば、耐久消費財の購入や家屋補修費用などは認められる可能性があります。もし、そのような必要性についてあなたに何も確認しないまま全額返還だけを求めていた場合には福祉事務所の決定は不当であり取り消さなければならない可能性があります。
(月刊「がんかれん」2005年7月号 通巻462号 特集「生活保護の暮らし」)
by open-to-love | 2008-01-10 00:58 | 生活保護 | Trackback | Comments(0)