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相談を受けてー「訪問」がつなぐもの

相談を受けてー「訪問」がつなぐもの 地域生活支援センター、保健所、市町村、訪問看護

サービスを受けられない人たちに手を伸ばす
(東美奈子 地域生活支援センターウイング 山口県)

 地域生活支援センター(以下、支援センター)は、地域で生活されている精神障害者の相談・日常生活の支援の拠点として、精神保健福祉法に規定されている社会復帰施設です。山口県周南市にある地域生活支援センターウイングでは、電話相談は24時間・年中無休で受けており、相談者も相談内容も幅広く、まったく生活状況のわからない方からの相談も多々あります。生活の場で生活に合った支援こそ大切なことであると常々感じていた私は、電話相談を受けても具体的な相談や支援ができないことに疑問を持ちました。そのことがきっかけで「訪問にでかけよう」と思い、支援センターからの訪問活動が始まりました。もちろん、医療機関や訪問看護ステーションからの訪問看護とあらかじめ調整し、連携もしていきました。
 支援センターからの訪問は、①他からの支援を受けることができない状況にあること、②金銭的な問題で訪問看護などが受けられない状況にあることなど、必要な支援を受けられない状況にある方が対象であるという枠組みをもつことが必要になります。また、緊急時や必要時にすぐ訪問できることが大切です。
 何度か訪問して定期的な訪問が必要な場合には、医療機関の訪問看護などにつないでいくべきです。また、医療機関等の訪問看護を受けていても、緊急時や必要時には、連携を取りながら訪問することも必要です。なぜなら、利用者にとって「今、ここで」というタイミングをはずさないように訪問して、支援することは、信頼関係を高めるうえでとても重要だからです。そういう支援の積み重ねが、利用者にとって「自分を支えてくれている人がいる」という気持ちにつながり、安心感につながるのではないかと思います。地域で生活されている精神障害者にとって、信頼できる人が1人でもいること、自分からSOSを出せる相手がいることが再発防止という面からも大切なことです。

つながりがない人への支援
 支援センターには、医療につながっていない方のご家族からの相談もあります。多くは「病気かどうかわからない。医療機関にかかるべきかどうか」というものです。そのような場合も訪問してご本人やご家族と面接しています。話を聞くことによって安心される場合もあるし、医療機関を受診されるきっかけになる場合があるからです。もちろん何度か訪問し面接してから、ようやく受診につながっています。
 医療とつながっていない方の訪問の場合は、大抵の場合、その方が信頼されている方と一緒の同行訪問にします。それが安心感を与えるのに重要だと考えているからです。そのためには、その地域の社会資源との日ごろからの連携が必要となってきます。医療とつながっていない人を支えるためには、その地域で見守っている人との協働が必要となるのではないでしょうか。ゆっくり時間をかけて関わること、その関わりのなか、「この人なら大丈夫」と思ってもらうことが大切です。

関係機関との調整や連携
 精神障害者をとりまく現状は「病院」から「地域」へと変換しつつあります。そのなかで支援センターは、地域で生活されている精神障害者を支えていく上で『要』になっていくべきだと考えています。地域特性のなかで、地域が支援センターに求めているものは何かをしっかり見極め、地域に即した支援センターにしていくべきでしょう。支援センターは、地域のなかで足りないところを補いながら、利用者はもちろん、地域の人からも関係機関からも信頼される存在にならなければいけないと考えます。さらに、精神障害者をとりまく関係機関の連携や協働は重要です。それぞれの機関が自分の果すべき役割を認識し、うまく連携していくべきで、自己完結しようとせず、お互いを尊重しあいながら、自分の役割を果すことが協働の第一歩といえるでしょう。

保健師の訪問が大切にしてきたもの
(森田桂 東京都多磨立川保健所保健対策課 保健師)
 保健所には未治療および治療中断の相談が多く持込まれます。相談者の多くは本人ではなく、家族や近隣、関係者の方々です。保健師は、その相談者を大切にし、協働で問題解決をするスタンスをいつもとっています。その援助技術の一つに家庭訪問があります。本稿では、事例を通じて、保健師が相談を受けて家庭訪問に至る過程をお話したいと思います。
 相談者=同居の姉と故郷からの母親、本人=24歳女性(統合失調症)
 経過=相談の2年前より同居の姉との会話は減り、他者との関係を拒否する状況になっていた。姉への暴言や被害妄想などの症状で家を飛び出し、警察に保護されるなど問題行動を起こすようになり、姉は母にSOSを出し田舎から上京してもらった。本人と会った母親は、他者から自分を守る鎧をまとう行動をとる娘と暴言に恐怖を感じた。母と姉は自分たちで対処することの限界と恐怖を感じ、逃げるようにしてその場を後にした。その後、昼間は問題解決のために医療機関等への相談、夜間は24時間営業している施設(ファミリーレストランやマンガ喫茶)で過ごすなど疲労した状態であった。保健所へは、「娘の状態を確認したい(安否確認)が、自分たちではできない。いろいろなところで話を聞いたが、どうしたらよいかわからない」という相談であった。
 相談は面接という援助から始まります。第一相談者である母と姉の語りに共感し、受けとめることが保健師の最初の役割です。この事例の場合は、保健所に相談に訪れた段階で、母親の気持ちは医療機関等の説明で医療の必要性を認識していましたが、姉は病気という認識はまだしていませんでした。母親と姉の認識が一致しない状態であったこと、父親の存在が見えないなど、家族背景に疑問を感じました。しかし、相談者の不安の軽減と本人の状況確認が早急に必要であると考え、また本人が無理な侵入感を抱かないような働きかけの必要性から、家庭訪問という援助行為を選択しました。
 訪問時、まず母親から声をかけて、心配している家族の気持ちを伝えてもらい、次に、家族の力を借りながら保健師が本人へ声をかけました。本人に直接会うことはできませんでしたが、冷蔵庫には何もなく、空腹の状況が台所の様子からうかがえ、「弁当を買ってこようか」という問いかけには、「お願いします」という返事が返ってきました。屋内に入ることもできない姉に弁当購入を頼み、部屋の前に置き、保健師からの心配しているメッセージを残しその日は訪問を終了しました。訪問後、母と姉に対しては、父の協力を得ること、再度精神科医と話し合う機会を設けて今後の対応を一緒に考えることを提案しました。さらに、本人の状況を説明し、次の対応が確認できるまでは安否確認を含めて食べ物を運んでほしいことを依頼しました。もちろん、家族だけでできない部分は保健師が支援することを約束しました。翌日、母親から一人では行けないと連絡を受け同行訪問をし、弁当を置き、心配しているメッセージを再度伝えました。週末を迎え、父親が上京し、両親が保健師と同じ方法で本人の安否確認と弁当を運ぶことで、その間をしのぐことができました。訪問後、保健師は今後の見通しとして、医療の必要性、家族の限界などから強制的な介入も視野に入れ、病院に対して入院相談という形でベッド確保するなど、確実に医療につなげる準備をしておきました。
 週明け、精神科医との相談を経て家族全員の意志を確認後、入院支援をし、本人を医療へと繋げることができました。退院後は田舎での療養を希望していたため、入院中は家族支援を中心に行い、本人は3カ月後に退院、現在は田舎に帰り、医療中断をすることなく一般就労するまでに回復しています。

家族・本人との関係づくり
 事例からもわかるように、保健師の訪問が有効に働くためには、家族の協力は不可欠です。家族との信頼関係を築き、対応を一緒に考え、家族の協力を得ることで問題解決につながっていきます。保健師には力づくで入院させるという権力はありません。だからこそ信頼関係ということを大切にしているのです。本人、家族、そして関係者の語りに共感し、そこで信頼関係を築き、それぞれの人の力を引き出しながら協働して問題解決につなげています。
 また、保健師は、本人不在の援助が多くの危険性をはらんでいることを経験から知っているからこそ、家庭訪問という援助行為を大切にしています。家庭訪問は、緊急性などを判断するだけのために本人と会うことを目的にしているのではないのです。本人の生活の場、生活で障害をうけている部分などは、たとえ本人に会えなくとも感じることができます。現場を確認することで、本人の置かれた状況のたいへんさを共有できると考えています。いずれにせよ、家庭訪問は本人が守っている領域への侵入である点は否めません。それが故に、保健師は、初めての出会いを大切にするために、本人の領域を犯さない慎重な対応を心がけているし、そこでの偶然の好転の何かを期待してもいるのです。

市町村への一部業務移管後の役割分担
 東京都多磨地域の精神保健では、従来保健所が実施していた事業のなかで、2002(平成14)年度に精神保健福祉事業一部事務、2003(平成15)年度には精神保健福祉相談のうち一般相談が市町村に移譲されました。市町村は精神障害者の地域生活支援と日常的な生活相談を行い、保健所は未治療及び治療中断者を医療に繋げるための相談とアルコール・思春期等の専門的相談への対応を行うという仕組みができました。
 しかしながら、本人や家族にとっては、相談内容を明確に区別することは困難であろうし、相談者にとってアクセスしやすい相談場所が選択されると思います。まずは、窓口で相談を受けた者(保健師等)が、相談者の語りに共感し受け止めることから始めなければなりません。それは、単に相談場所を振り分けることで済ませるのではなく、その語りの本質を理解したうえで精神保健福祉の仕組みにていねいにつなげていくことが必要になってきます。

市町村の訪問活動
(前山憲一 愛知県半田市役所福祉課 精神保健福祉士)

 半田市=人口11.5万人
     保健福祉手帳所持者388人
     通院医療費公費利用687件(平成15年度末)
     両方とも年々増加の一途をたどっています。
     市保健師・PSWによる訪問活動実績 92人(延べ225件)

 2002年4月に保健所から精神保健福祉業務の一部移譲が行われて以来、半田市においても保健師と精神保健福祉士(PSW)による訪問活動を実施しています。

状況把握のための訪問
 本人や家族が直接福祉課に訪問を依頼されるほか、関係機関からの同行訪問や手帳の申請交付時の相談がきっかけになるなど、訪問に至る経緯はさまざまです。保健師、PSWのどちらが訪問するかは訪問の主目的(たとえば合併症対策や健康相談的なものは保健師)や本人の要望などを勘案して決めています。
 訪問目的は「日常生活相談」「(生活保護世帯や独居障害者等の)安否確認」「ホームヘルパー派遣の事前打ち合わせ」などが主流ではありますが、「地域からの苦情対応(病状不安定な障害者の迷惑行為等)」「受診援助(受診への声かけ)」といった、医療や緊急対応を要する内容のものも少なくありません。生活保護世帯については、生活保護ケースワーカーとの同行訪問が基本です。ケースワーカーからは、「精神保健福祉の専門職が同行してくれることの安心感といろいろな発見や問題の早期把握ができて助かる」と言われています。
 PSWの立場から訪問活動の意義を述べます。障害のある人への地域生活支援を行う場合、まず本人の生活を知ることから始まると考えています。相談室での面接や電話相談からでもある程度の情報は得られますが、生活の基盤である自宅を訪ね、そこから生活スタイルを把握することに大きな意味があります。たとえば、部屋の散らかりようで本人の状態を把握でき、食生活や金銭管理の様子をある程度は確認することもできます。訪問回数を重ねることで変化を知ることもできるので、その人となりがよくわかります。さらに市の職員であるPSWが訪問する、という信頼感から本人が心を開きやすくなることもあるようです。
 訪問から、表面化していない生活問題(近所との不仲、悪徳訪問販売との契約、琴線の浪費、健康・衛生面での問題など)を早い段階で把握し、関係機関と連携して対処することで大きなトラブルになることを防げたこともあり、生活問題を未然に解決または軽減することが精神症状悪化の予防にもなるのでは、と思われます。もっとも、きちんと同意を得た上での訪問でないと、本人にとっては「余計なお世話」であり、かえって反感をもたれてしまう場合もあるので注意しなければなりません。ふだんは窓口での相談や電話など、口頭で了解をとっています。

○市町村に持ち込まれた相談の流れ○
   相 談
    ↓
   訪 問
    ↓
  状況 把握
    ↓
ケアマネジメント会議
    ↓
  サービス利用
    ↓
 評価(モニタリング)

なかなか訪問できない場合
 訪問を重ねるうちに、訪問ケースが多くなって対応しきれない、あるいはあるいは訪問する状況にないと担当者が判断しても、相談者から訪問を期待されているため断りにくいなどの問題を感じることがあります。
 前者は、限られた人員で訪問活動を継続する上で、避けて通れない問題です。支援計画を明確にすることで、目標が到達に近づいたら段階的に訪問頻度を減らしていくことが可能になります。たとえば、PSWの訪問のみから、目的に応じて他の機関(ホームヘルパー、保健センター、訪問看護など)との協力体制をとる、本人が相談目的で役所や支援センターなどに出向くようにするなど、ケアマネジメント会議※などで調整をはかることもできます。こういった活動が行政の内外に評価され、「精神担当者を増員しなければ」という動きになればいいと思います。
 後者については「まきこまれ」とも呼ばれていますが、PSWの「相手を何とかしてあげたい」という思いが強くなるほど、この傾向も強くなるようです。やはり、「なぜ訪問が必要なのか」支援計画を明確にし、それを相手に理解してもらうことが重要です。相手の理解を得られにくい場合は家族や関連機関とも連携して対応することです。
 半田市の場合は担当者が2人いることと、福祉課の他の担当職員も電話や窓口業務にある程度対応してくれるので、訪問活動んいあまり支障はありません。一方、行政機関(市町村)で働くPSWの研修会などでは、他市町村ではなかなかPSWの訪問活動ができないという悩みを聞いています。担当者が1人しかいない(または、周囲の理解が得にくい)ので訪問に出にくいということが考えられます。「(精神担当者が不在だと)相談者が窓口に来たとき対応できない」「訪問先で何かあったらどうする」などと、訪問に消極的な市町村もあるようです。
 担当課内での精神障害の基礎的な理解と、いかに訪問活動が地域精神保健福祉にとって有効であるかを知ってもらうことが大切と考えます。周囲の職員に協力してもらいやすい環境をつくることも、PSWの役割では、と思います。

緊急対応を要する相談
 多くの市町村に持込まれている問題です。市町村が窓口になり、保健所に連絡することが基本です。県(保健所)からの一部業務委譲の際に、「市町村は手帳や居宅生活支援事業などの窓口と福祉相談、保健所は医療や緊急を要する事例の対応」と業務分掌がされていますが、住民にそのことが浸透しているとは言いがたく、〝まずは身近な市役所(町村役場)に〟相談が来ることは仕方のないことです。
 そういった相談のなかには、「本人が受診拒否するが、どうしたらいいか」というケースが少なくありません。この場合、本人が受診する気になるように働きかけ(訪問)を根気よく続けるしかなく、措置症状でもない限り医療機関に連れて行くのは家族の役割となります。思い悩んだ家族から「困っていても、どこも動いてくれない」と訴えられることがあり、市町村のみでは対処しきれない状況です。措置入院や移送制度といった法的な権限が必要な場合や、仮にそういった対処が不要であっても関係機関(保健所・医療機関など)と連携をとり、各機関がお互いの役割を明確にした上で協力し合う体制づくりに努めなければなりません。現状でどこまで本人の人権を守りかつスムースに医療につなげるためのセーフティ・ネットが構築できるのか、うまく機能しているのか、機能していないなら制度上に問題はないのか、協議していく必要があると思います。
 市町村の福祉課(PSW)が行う日常生活支援的な訪問と、保健センターが行う予防・健康管理目的の訪問がきちんと機能することは、精神障害者の地域生活支援において非常に効果があります。また、地域の区長・民生委員と連携することで、地域住民の精神障害者の理解促進につながるというメリットもあります。市町村の訪問活動が、精神障害者の生活基盤を支えるうえで、その一翼を担っているといっても過言ではないでしょう。しかも、精神障害のある人が常に医療の関わりを必要とすることを考えると、保健所、医療機関との連携は必須です。そのうえで、現在抱える問題点を精査し、〝障害者の人権擁護〟と〝苦悩する家族の支援〟が両立できるような体制づくりがぜひ必要であると痛感します。
※ケアマネジメント会議 「利用者の立場に立った上で、その要望を関連職種を交えて協議、調整しサービス計画として具体化する」ことと考えます。新規でサービスを利用する、サービスを大きく変更する、または複数の機関のサービスを利用する場合などにケアマネジメント会議を開催することが多いです。関連職種の価値観の相違によって、その調整が困難を極めることもありますが、事前の根回しである程度対応しています。

訪問看護が支えるもの
(櫻井久和、夏井佳寿美 宮城県立精神医療センター地域医療科訪問看護担当)
 訪問看護の実際場面では、退院した方が感じている地域での「生活のしづらさ」を少しでも軽減できるような支援を行っています。ここで言う「生活のしづらさへの支援」とは、主に治療(服薬・外来受診)の継続が必要であると本人が実感できるような支援と、疾病に由来する対人関係の障害に対する支援です。今回は2つの事例を通し、訪問看護活動を紹介したいと思います。

Aさん(50代女性、統合失調症)
 高齢の両親・姉・姪と同居。1988年に退院後は自宅で過ごしていました。昼夜逆転の生活でしたが、清潔面をはじめとする日常生活行動は問題なく、服薬の必要性は理解されており、服薬は継続されていました。しかし、1人での外出は困難で、外来受診は年1回でしった。
 訪問看護は1999年から月1回の利用。まずは本人が気にしているダイエットの話題を用いて、規則的な食事時間と睡眠時間が大切であることを説明しながら、生活リズムを整えることとしました。また、両親からも「日中起きて家事手伝いをしてくれる」とほめられることが多くなり、自宅での生活において自分の役割を見つけることができました。生活リズムが整うことで、今までの昼夜逆転の生活は自分にとって不利益なことであったと実感でき、2003年3月より毎月外来受診ができるようになりました。

Bさん(50代男性、統合失調症)
 母親と2人暮らし。20代より入退院を繰り返していました。経済的に困難な状況。一時、作業所へ通っていました。2001年に退院。タバコを買いに出かける程度で一日のほとんどを自宅で過ごしています。寡黙で、問いかけに「タバコね」「ジュースね」と早口に繰り返す程度で、話し掛けが多くなると不機嫌になりました。本人との関わりは血圧を測定するときなど短時間にし、外来通院できていることを認めたり、母親の料理をほめたり、看護者を知ってもらう作業を続けました。数カ月に一度、突発的に母親を蹴るなどの暴行がありましたが、医療者には伝えられず、なんとか地域での生活を続けていました。しかし、担当の訪問看護師が代わり2年経ったころから問題行動が多発するようになり、家族から入院させてほしいと相談されました。外来時、主治医に入院を勧められましたが、本人は拒み、同伴した訪問看護者から入院をすすめられると同意し、任意入院となりました。Bさんは短期間の入院の後、再び地域生活を送っています。

 Aさん、Bさんが通院ができ、地域で生活できていること、家族が介護できていることは、本人・家族の方の意思や努力の成果です。私たちは利用者の言動から、問題解決に向けた看護者の考えを伝えますが、決定は本人と家族に委ねています。Bさんのように主治医によって入院治療が必要と判断されたとき、本人や家族の思いを受けとめつつ、それぞれが納得できる治療が継続できることが大切です。また、利用者と支援者の関係成立のため、相手を認める作業をし、信頼関係の構築をはかっています。
 精神障害のある人が感じている生活のしづらさは、何気ない話や、困ったときに話を聞いてくれる人が少ないことだと思います。私たち訪問看護者もそのような不便さを補える存在になれればと思います。

(月刊「ぜんかれん」2004年8月号 通巻451号)
by open-to-love | 2008-01-05 20:11 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)