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自殺(「精神保健福祉白書」2006年版)

自殺
 毎年、警察庁が自殺に関する全国統計を発表しており、2004(平成16)年のものによると、1988(昭和63)年から1997(平成9)年までの10年間には、年間自殺者総数は約2万2000人であった。ところが、1998(平成10)年には年間の自殺者総数が一挙に1万人以上にも増え、3万2863人となり、その後、年間自殺者数3万人台という緊急事態が続いている。交通事故死者数は最近では年間8000人を割っているが、この数と比べると、自殺者総数は4倍以上にも上る。
 なお、自殺未遂者は少なく見積もっても、既遂者の約10倍は存在するとの指摘がある。また、既遂自殺および未遂自殺によって深刻な精神的打撃を受ける人は、1件あたり5人は存在するとも推定されている。したがって、自殺とは単に自ら死を選んだ人だけの問題にとどまらず、わが国だけでも年間、百数十万人の人々に衝撃を与える非常に深刻な問題である。
 遺書が残されていて自殺の動機が比較的明らかなもの1万443件をみると、「健康問題」(4087人)が第1位で、次いで、「経済・生活問題」(3436人)、「家庭問題」(1009人)、「勤務問題」(628人)の順だった。なかでも不況の影響をマスメディアは大きく報じている。「経済・生活問題」が自殺の動機とされた人々を年代・性別にみると、50代男性が36%と最多で、次いで40代男性の20%であった。
 なお、1990年代末に自殺が急増したこと、1990年代を通じて「電通裁判」などの一連のいわゆる過労死裁判が起こされ、司法判断が下されたことといった社会的な背景から、国レベルでの自殺予防対策も21世紀に入ってようやく開始された。ただし、自殺予防は短期的に効果の出るものではなく、最低でも10年単位の息の長い取り組みが必要であることは、自殺予防対策が進んでいるフィンランドの例でも明らかである。
 世界保健機関(WHO)が実施した調査によれば、自殺者の95%は最期の行動に及ぶ前に何らかの精神障害に罹患している。そして、うつ病、統合失調症、アルコール依存症を適切に治療することによって、自殺率を最低でも3割減少させることが可能であると主張している。
 また、自殺予防に全力を尽くすことは当然であるが、年間に3万件以上も生じている自殺を直ちに0にするというのも非現実的な目標である。したがって、不幸にして自殺が起きてしまった場合には、遺された人々に対するケアも重要な課題となっている。(「精神保健福祉白書」2006年版、第2部「地域生活支援」第7章 地域における精神保健)
by open-to-love | 2007-07-09 21:42 | 自殺未遂/自殺 | Trackback | Comments(0)