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ローザンヌ アール・ブリュット収集館

ローザンヌ アール・ブリュット収集館

「芸術はわれわれが用意した寝床に身を横たえに来たりはしない。芸術は、その名を口にしたとたん逃げ去ってしまうもので、匿名であることを好む。芸術の最良の瞬間は、その名を忘れたときである」。
芸術家ジャン・デュビュッフェの言葉は、アール・ブリュットの概念を総括する根幹としてとらえることができる。アール・ブリュットの作者たちは、あらゆる文化的な操作や社会的な順応主義から自由である。彼らは精神病院の患者、孤独に生きる者、社会的不適応者、受刑者、あらゆる種類のアウトサイダーたちなのだ。
これらの人々は、沈黙と秘密、そして孤独の中、独学で創造活動を行っている。いっさいの伝統に無知であることが、彼らをして、独創性にあふれ、破壊的な作品制作を可能にしている。ジャン・デュビュッフェいわく、「われわれが目の当たりにするのは、作者の衝動のみにつきうごかされ、まったく純粋で生の、作者によって、あらゆる局面の全体において新たな価値を見いだされた芸術活動なのだ」。ジャン・デュビュッフェはアール・ブリュットという概念の提唱者であるのみならず、アール・ブリュット・コレクションの創始者でもある。1971 年、デュビュッフェは、当時すでに5,000 点を超えていたコレクションをローザンヌ市に寄贈したのである。
これをうけ、世界にも例をみないユニークな美術館が1976 年にオープンした。アール・ブリュット収集館は全世界における歴史的リファレンスを提示している。毎年3万5千人近くを数える来館者には、日本からの来館者も多く含まれ、美術館が収集してきた今日では3万点にものぼる作品との出会いがある。アール・ブリュット収集館が所蔵する作家は主にヨーロッパ出身であるが、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、アジアの作家の作品にもわたっている。
これらのコレクションのなかで6人の日本人作家を挙げておく:戸次公明(1952)、藤関美佐枝(1952)、西川智之(1974)、吉田修三(1956)。兵庫県出身の作家、坂上チユキ(1961)は幻想的な動物や創造物を喚起するデッサンを手がけている。
アール・ブリュット収集館は近年、松本国三(1962)の作品を見いだし、彼の主な作品群を入手した。松本は大阪に生まれ、魅惑的なカリグラフィーの作品を展開中。漢字を作り直したり、変化させたり、新たに創作したりとまったく自由な試みがなされている。
アール・ブリュット収集館の活動は、世界各国からの来館者にこれらの創意工夫に富む作品群を発見してもらうこと、他の研究機関と協力しつつ、所蔵品の研究および充実を図ることである。常設展と平行して、当館では企画展を開催しており、これは海外の美術館に巡回することもある。出版物の発行もてがけていて、写真や映像による、アール・ブリュット創作の記録も行なっている。
アール・ブリュット収集館は文化の混血を奨励し、また他の芸術的分野とともに相乗効果をあげることをねらっている。当館はこれまでにも幾度か、ローザンヌ市のヴィディー劇場の上演演目に共鳴した作品を展示している。同様に、シネマテーク・スイスやローザンヌ市内の映画館と提携して、アール・ブリュット作家をとりあげたドキュメンタリー・フィルムを上映。また、展示作品と直接関連のあるコンサートやパフォーマンスは、展覧会のまさにその場で上演される。
アール・ブリュット収集館の多岐にわたる来館者には大勢の子供たちも含まれる。そこで子供のためのワークショップが用意されている。子供たちは自由に想像力をはたらかせ、その時の展覧会のテーマ(群衆、エクリチュールなど)に沿った作品を作り上げる。当館ではまた、若い人たちにアール・ブリュットの世界に親しんでもらうため、楽しく演出された展示ガイドも行なっている。

2006-2007 年度の展覧会プログラム
・ネック・チャンド チャンディガル在住のインド人作家による独創性あふれる環境芸術の展覧会は、アール・ブリュット美術館、ローザンヌ、(2005 年10 月7 日から2006 年2 月26 日)をはじめ以下の3カ所にて同時開催:-フランス: ファビュロズリー、ディシーサリーヌ・ロワイヤル、アルケスナンテットドール公園の熱帯温室、リヨン-ベルギー: ギスラン博士博物館、ヘント
-イタリア: 地方図書館、アオスタ、・アレクサンドル・ロバノフ アール・ブリュット美術館、ローザンヌ(2006 年3月から9月)
・リチャード・グレーヴス、アナーキテクト アール・ブリュット美術館(2006 年10 月から2007 年1月まで)
by open-to-love | 2007-04-30 13:22 | 心の病とアート | Trackback | Comments(0)