精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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「働きたい」ときの相談窓口・障害者職業センター

特定非営利活動法人全国精神保健福祉会連合会編
『精神障がい者と家族に役立つ社会資源ハンドブック』(2010年)

03 日中活動の場、就労や復学の支援

「働きたい」ときの相談窓口・障害者職業センター

◆「働きたい気持ち」の整理

 障害者職業センターでは、障がいのある方に対する就労支援を専門に行っています。
 職業センターに働きたいという相談があった場合、私ども職業カウンセラーは、その理由、働くことでどんなよいことがあるのか、ご本人にとっての働くことの意味などを確認していきます。相談の中で、働きたいという気持ちになった理由が少しずつわかる理由もあります。
 たとえば、こんなことが背景にある場合があります。
・友達が働いていて家庭を持っていることを知り、このままではいけないと思った。
・両親が定年を迎えたことなどをきっかけに、将来に不安を感じた。
・近所の人に昼間家の周りで会うのがつらい。
・働けるようになれば発病前の自分に戻れる気がする。
 そのような気持ちが背景にあることがわかれば、必ずしも就職の方向ですぐ支援するのが最善とは限りません。
 不安や焦りが就職へかきたてる大きな要因であるのなら、その気持ちを少しでも少なくしてあげるほうが先という場合もあります。

◆「働く準備」は整っているか

 働きたいとは言っても、ご本人の思いと現状とがかみ合っていない場合もあります。そんなときは相談に加え、職業評価を受けていただいて、今の状態の振り返りをしていただくこともあります。評価の中で、これはほんの一例ですが次のようなことについて整理していきます。
①生活リズムが整っているか。
②最近、毎日一定の時間働いた経験はあるか。
③どんな仕事をしたいのか。1日何時間くらい働きたいのか。
④病気のことをオープンにして働くかどうか。
⑤職歴がある人なら、なぜ前の仕事を辞めたのか。仕事を探すパターンに無理がなかったか。
⑥作業を体験してみて、どんな仕事がどのくらいできるのか。
 あとは、ご本人の現状とかみ合うような仕事が見つかるかどうかということになりますが、ご本人の現状と企業の受け入れ状況との間に差があった場合、解決するためには大きく分けて2つの方法があります。
A)ご本人が企業が求める課題をクリアしていただけるように支援する。
B)企業に理解を求め、受け入れのハードルを下げてもらうようにお願いする。または現状で受け入れ可能なところを探す。
 精神障がいのある方が働く場合、もちろんAばかりをご本人に求めてもいけませんが、Bだけで進めていこうとしても、実際には壁に突き当たることもありそうです。
 たとえば、朝が苦手だから夜働けるところを探す、という考え方もあります。実際、夜働ける職場を見つけた方もおられます。しかし、その場合は主治医との相談が必要でしょう。夜働く場合は、服薬や睡眠のリズムをどう組み立てていくか、また、深夜通勤する場合の交通手段などを考える必要があります。また、求人誌等で交代制勤務の仕事を見つける方もおられますが、この場合も同じです。それに、どちらかというと求人は朝から始まる仕事のほうが多いようです。

◆就職へのステップ

 このように、評価結果を踏まえつつ、労働市場の状況や企業の論理、病気と付き合いながら働く場合に気をつけたほうがよいことなどについてお伝えし、ご本人と今後の方向性について考えていきます。その結果、働きたいという思いを叶えるために、職業センターの職業準備支援などを受けていただくのが合っているのであれば、情報提供し、受講するかどうか考えていただきます。
 ご本人が実際に体験してみたい、と考えられた場合には、職業センターの中の作業場面を活用し、数日間通勤して一定期間作業を続けることを体験していただくこともあります。その中で、1日働くことのしんどさを実感し、もう少し準備が必要だという考えになることもあります。働くための第一歩を踏み出す場としてデイケアや作業所のほうが適当であれば、そちらの利用をおすすめする場合もあります。
 職業センターでは、ご本人の働きたい思いの整理をする一方で、ご本人の思いとは少し食い違うことになってしまう場合もありますが、働く人を取り巻く環境などの現実をお伝えしていきます。最終的に働くことに向け、どんな方法を選択するのかはご本人ということになりますが、その過程で一緒に考えるお手伝いをすることができますので、一度相談してみてはどうでしょうか?

◇障害者職業センターのサービス内容

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営する障害者職業センターは、各県に1カ所ずつあります。就職を目指す障がいのある方への相談、職業評価を実施し、ご本人の希望や職業評価の結果を踏まえてそれぞれに合った就職への道筋(職業リハビリテーション計画)を策定しています。
 精神障がいのある方が利用できるセンターのサービスには、センター内の模擬的就労場面で行われる「職業準備支援」がありますが、その中で「精神障害者自立支援カリキュラム」を実施しています。これは、場面に合ったコミュニケーションの取り方を練習する対人技能訓練や、グループミーティング、レクリエーション、簡易作業体験等を通じて就職や就職に向けた次の段階に移行することを目指すためのものです。
 また、実際の職場に出る準備が整っている場合は、「ジョブコーチ支援」により職場実習をしたり、就職した後に支援を得ながら働くこともあります。ジョブコーチは、必要があれば病気に関する配慮事項をご本人に代わって事業所に説明したり、ご本人は職場に慣れたり作業を覚えたりすることを支援します。
 その他、精神障がいのために職場を休職されている方のりワーク(職場復帰支援)や事業主に対する支援、関係機関に対する技術的援助なども行っています。
by open-to-love | 2011-02-27 23:24 | 第17回例会:働くために | Trackback | Comments(0)