精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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みんなねっと岩手大会を振り返って

みんなねっと岩手大会を振り返って

 2010年、盛岡ハートネット事務局として、さまざまなテーマで例会を開きましたが、なんといっても10月6、7日に盛岡市のマリオスを主会場に開かれた第3回全国精神保健福祉家族大会(みんなねっと岩手大会)に追われた1年でもありました。
 みんなねっと岩手大会は、全国精神保健福祉会連合会(元:全国精神障害者家族会連合会)と、岩手県精神保健福祉連合会(旧称:岩手県精神障害者家族会連合会)の共催で開かれ、全国から1300人の精神障害者家族らが参加しました。どんなことをやったかについては、ブログの「みんなねっと岩手大会」のカテゴリーをご覧ください。
 さて、私がどういう立場で大会にかかわったかと言いますと、一つには、岩手県精神保健福祉連合会の事務局のお手伝いという立場。これは、実は「組織上、何の権限もない」立場です。大会資料集には実行委員名簿が掲載されていますが、当然ながらそこに私の名前はありません。
 もう一つは、盛岡ハートネット事務局としての立場です。大会資料集をお持ちの方は、総合問い合わせ窓口に「盛岡ハートネット事務局」として私の携帯番号が大きく記載されているのを覚えてらっしゃるかと。そして、大会には、盛岡ハートネットの取り組みに根ざした問題意識も当然ながら反映されています。
 さて、この2つの立場は、必ずしも同列にはありません。ある種、矛盾する立場とも言えます。なぜなら、盛岡ハートネットという取り組み自体が、岩手県精神障害者家族会連合会(現・岩手県精神保健福祉会連合会)の現状と課題を踏まえて誕生したからです。
 「岩手県精神保健福祉会連合会事務局手伝い」としての反省点は、大会終了からちょうど2カ月後の12月7日、ふれあいランド岩手で開かれた「大会事務局会議」の席上、「みんなねっと岩手大会に関する反省点等」と第して文書で提示しました。
 ここでは、「盛岡ハートネット事務局」としての問題意識にウエイトを置いて、振り返りたいと思います。

 まず、私は大会の内容面でも運営面でも、さまざまな役割を担うことになりました。
 大会の内容面に関して、私が主に担ったのは下記の通りです。

 ◎大会の全体会・分科会の意義についての立案
 ◎分科会のテーマ・講師選定
 ◎パンフレットの内容
 ◎資料集の内容

 また、大会の運営面に関して、私が主に担ったのは下記の通りです。

 ◎全体会の講師依頼
 ◎分科会の講師依頼
 ◎分科会担当者の選定、連絡調整
 ◎大会パンフレット作成
 ◎大会資料集作成
 ◎大会のタイムスケジュール作成
 ◎大会当日の問い合わせ窓口
 ◎全体会の進行・連絡調整
 ◎大会参加者の名簿チェック
 ◎第2分科会の担当者としての事務
 ◎閉会式の進行・連絡調整
 ◎写真撮影・記録

 さて、この種の大会においては、日程や場所を決めることも大切ではありますが、そもそも、なぜ大会を開くのか? が一番重要なことは言うまでもない。で、その「大会の意義」も、私が考えることになりました。
 下記の通りです。

  ①精神保健医療福祉に関する全国的な動向を知る
  ②精神保健医療福祉に関する最新の取り組みを知る
  ③岩手の優れた取り組みを全国に紹介する
  ④家族として何をなすべきか考える契機にする

 この4つの意義に照らし合わせて、全体会と分科会の意義付けや講師を選定させていただきました。具体的にどんな中身だったかについては、全福連発行「みんなねっと」や、ブログの「みんなねっと大会」のカテゴリーをご覧下さい。こうして私は大会の準備の一端を担い、無事に終了したのですが、その成果について「4つの意義」に即して振り返りますと…

①=厚労省の行政報告で示していただきました。
②=キラりん一座基調公演、高木先生の基調講演、特に第2・4分科会で示していただきました。なお、講師選定にあたっては、NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボの協力が大きかったです。今回初めて大会の後援団体に名を連ねていただき、当方のコンセプトを踏まえ優れた講師を紹介いただいたほか、コンボ編「ACTガイド」の参加者全員への配布など、多岐にわたって大会に尽力いただきました。より広い視野から日本の精神保健医療福祉の向上を図るためには、さまざまな関係団体の連携が欠かせません。その一歩を岩手で記すことができたのは、すごくよかったんじゃないかなと思います。
③=キラりん一座基調公演、第5分科会アートワークショップで示していただきました。
④=第1分科会では、家族会活動を超えた「当事者・家族・関係機関・市民のネットワーク」づくりの必要性について、盛岡ハートネット事務局が話題提供したほか、大会資料集の第1分科会添付資料でもハートネットの取り組みを紹介しました。その意味では、大会は、盛岡ハートネットの全国デビューでもありました。また、キラりん一座基調公演、高木先生の基調講演、第2分科会などで、家族に対し数々の提言をいただいたことで、多くの家族が気づきを得るきっかけになったと思います。

 一方、課題としては、何のために大会を開くのかについて、主催団体側はいささか目的意識が不明瞭だったのではないでしょうか? そもそも大会の意義や全体会・分科会のコンセプトを、主催団体側ではなく、事務局手伝い&盛岡ハートネットという微妙な立場の私が立案したことが象徴的です。さらに、家族会活動の今後を占う意味でも重要だったはずの第1分科会は、話題提供者が今後の参考になるような取り組みを紹介し、参加者みんなで前向きに議論する…ということで企画しましたが、仄聞するに、そのコンセプトからかけ離れた「思いの丈の言いたい放題合戦」の如き展開となったそうで、残念でした。
 なぜそうなったか? 日頃の単位家族会や都道府県連組織の諸課題が、大会でも現れたのではないかと考えます。
 課題とは、大会に関連して2つだけ挙げれば「お願い体質」「目的意識の希薄さ」です。これらについては、先に触れた大会資料集所収の第1分科会添付資料「盛岡ハートネットの取り組み」でも指摘しているのですが、私は大会を通じて、岩手の課題は、もしかして全国的な課題でもあるのかもしれないなと思い至りました。
 まとめると、4つの大会の意義のうち、1、2、3については達成されたが、4つ目の「家族として何をなすべきか考える契機にする」については、大会に至る準備段階でも、当日も、総じて、達成されたとは言いがたい。今後の課題と言えましょう。そして、今後、課題を解決していくために、まずは、日頃の家族会活動を見つめ直すことが必要ではないでしょうか。
 例えば、自分が属する家族会について、病院任せでも行政任せでもなく、自分たちで運営するという意識が醸成されているか否か。また、そもそも家族会活動は「相互支援(語り合い・相互交流・情報交換と手助け)」「学習(学び合い、知見を広める)」「社会的運動(外に向かっての働きかけ)」-の3本柱からなるが、それらを日頃から心掛けているか否か。こうした日頃の活動の検証こそ、まずは必要…というのが、私の結論です。

 関連して、本大会は、ACTが大きなテーマとなりました。全体会の高木先生の講演、第2分科会で取り上げました。ACTに対しては、みんなねっと誌で何度か紹介するなど、全国的に家族の関心が高まっています。その上で、今回の大会では、キラりん一座の基調公演と高木先生の基調講演、第2分科会ではキララ方式、ACT、退院促進(社会的入院患者の地域移行支援)をそれぞれ併置する構成としました。どうしてこういう構成にしたかと言えば、それはケアマネジメントの諸相だからです。そして、その結果、浮かび上がったのは、ACTが具体的にどういうふうにどういうことをやるのか・やってくれるのかというテクニカルな側面に先立ち、「どんなに障害が重い人だって地域で生きることができる」という理念を共有することがまずもって大事なのだ、ということだと思います。その理念の共有抜きだと、ただ単にACT待望論だけに終始してしまいます。
 ACTに理解を深めるのみならず、ACTなどさまざまな取り組み…家族会だって、ハートネットだってその一つと思いますが、この大会が、そうした取り組みの理念について、あらためて考える機会になったのであれば、うれしいです。

 ともあれ、大会に参加していただいたり、さまざまご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました。私自身、図らずも大会に深くかかわったことで、今後、盛岡ハートネットとしてやるべきことが明確になってきたという意味で、感謝します。やるべきことについては、ハートネットに参加されるみなさんのニーズを踏まえつつ、少しずつ、例会のテーマ設定の中に盛り込んでいきたいなと思っています。
 盛岡ハートネットは今後、大会を通じて実感した家族会の課題解決に向けて、あるいは、大会で実感した家族のニーズの実現に向けて、大会を通じて知り合った出会いを活かし、家族会の枠組みを超えたネットワークとして、地道に取り組みを進めていきたいと思っています。例えば、12月11日に開いた第16回例会「ACTを学ぼう!」も、このたび立ち上がった「地域生活支援&ACT勉強会」も、その一環です。
 どうぞ今後ともよろしくお願いします。
(盛岡ハートネット事務局 黒田大介)
by open-to-love | 2010-12-31 14:56 | 盛岡ハートネット | Trackback | Comments(0)