精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

精神障害者ケアガイドライン(第2版)…その4

精神障害者ケアガイドライン(第2版)…その4

■4■ケアサービスの提供方法

 以下に、ケアマネジメントにもとづくケアサービスの具体的な提供方法を記します。

(1)実施体制について

①ケアマネジメントの実施主体等

 ケアサービスの斡旋、調整に関しては、市町村が第一義的に責任を負うことになりますから、市町村は自ら障害者担当窓口・福祉事務所・保健センター等においてケアマネジメントを実施するか、あるいは、精神障害者地域生活支援センターにおける相談支援においても実施します。また、一定の基準を満たす精神障害者社会復帰施設、精神科医療機関等でも実施できます。保健所や精神保健福祉センターにおける社会復帰に関する相談においてもケアマネジメントを活用すべきです。
 利用者はケアマネジメント実施機関を選択できます。実施期間中でも本人の申し出によって変更することができます。

②関係機関・団体との連携

 ケアマネジメントを実施するには、担当窓口と関係諸機関・団体との連携が不可欠です。医療機関や社会復帰施設などの民間機関が実施機関となる場合でも、可能な限り市町村(保健センターや市福祉事務所など)や、保健所などの行政機関と連携しながら進めます。
 ケアアセスメントやケア計画作成時に、あるいはケア計画の実施後にも、随時ケア会議を開催して、地域の多様なサービス提供者が参加できるよう配慮します。
 連携すべき関係機関・団体は以下のとおりです。

【関係機関・団体】市町村(保健センター、市福祉事務所など)、保健所、精神保健福祉センター、医療機関、地域医師会、訪問看護ステーション、精神障害者社会復帰施設、地域生活支援センター、グループホーム、小規模作業所、社会福祉協議会、児童相談所、公共職業安定所、障害者職業センター、ボランティア団体、障害者団体など

 ケアマネジメント従事者には専門職としての高い資質が求められます。精神障害に関する医学的知識、障害者の心理、保健・医療・福祉の制度等に関する一定水準以上の知識を持っていなければなりません。さらに障害者に対する人権の尊重といった倫理面からも資質が問われます。そのために研修会などを通じて、知識と技術を高めると同時に、ケース検討会などを通じて自己研鑽の機会を得ることが推奨されます。

③ケアマネジメント従事者とチームアプローチ

 ケアマネジメントの過程を通じて・利用者に対する援助を進める上で中心的な役割を担うケアマネジメント従事者を決めます。
 ケアマネジメント従事者は、ケアアセスメントの実施やケア計画立案のほか、計画されたサービスを依頼して利用につなげること(リンケージ)、サービス利用の調整をすること(ケアコーディネーション)、利用者の権利が守られるように社会資源を開発・改善すること(アドボカシー)、サービスが適切に実施されているか確認し調整すること(モニタリング)などの役割が期待されています。
 ケアマネジメント従事者は、利用者に対して自分が以上のような役割を持つ担当者であることを明らかにし、いつでも利用者の相談に乗ることができることを伝える必要があります。
 ケアマネジメントを進めるに当たり、必要に応じて多職種の援助者からなる援助チームを作り、ケアマネジメント全過程の責任者となります。
 ケアマネジメント従事者およびケアマネジメントチームは、必要に応じて利用者と直接的に関わり、具体的な援助を提供します。

 ケアマネジメント従事者には以下のような職種が考慮されます。
 精神保健福祉士、精神科ソーシャルワーカー、精神保健福祉相談員、保健師、看護師、准看護師、臨床心理技術者、作業療法士、公的扶助ワーカー、社会福祉士、介護福祉士、職業相談員など

(2)ケアサービスの内容

①既存の精神保健福祉サービスの利用

 精神障害者のために用意された既存の保健福祉サービス(精神障害者社会復帰施設や保健所の報恩、社会適応訓練事業など)を積極的に活用します。

②新規社会資源の開発

 新規に利用可能な社会資源を積極的に開発します。
 市町村等が行う一般的な保健福祉サービスを活用します。たとえば、ホームヘルプサービスや通所サービス、訪問看護(ステーション)、福祉のボランティア組織、公営住宅、福祉型公共借上住宅などです。
 特にホームヘルプサービス(公的サービスおよび民間非営利団体、営利企業の実施するサービスを含む)は積極的な利用を考慮します。

③インフォーマルケアの活用

 新規社会資源の開発を含めて、地域関係者の援助や当事者・家族の相互支援などのインフォーマルな援助資源をできる限り活用します。

④セルフケアの尊重

 利用者が自立的な生活を営むことができるよう、利用者の意志を尊重しながら、セルフケアの能力を高めるよう援助します。

(3)利用者

①ケアマネジメントが必要な利用者

 複数のサービスを総合的かつ継続的に利用する必要がある精神障害者が対象となります。
 障害者手帳や手当などの申請、他機関の紹介、1回だけの相談などで相談窓口を訪れる人は対象となりませんが、ケアサービスのニーズの有無には常に注意して対応します。

②明確な意思表示

 利用者のニーズに基づいてサービスを提供します。ケアマネジメントの各過程では、サービス利用に関する明確な意思表示がされ、それを確認することが必要です。

(4)ケアマネジメントの過程と使用用具

 ①ケアマネジメントの導入(主治医への報告)
 ↓
 ②ケアアセスメント
 ↓
 ③ケア計画の作成(主治医への報告)
 ↓
 ④ケア計画の実施(主治医への報告)
 ↓
 ⑤実施効果の評価
 ↓(ここで、再アセスメントが必要な場合は②へ戻る)
 ⑥終了と事後評価

 ケアマネジメントはいくつかの過程を経て行われます。
 まず、①利用者の確認が行われ、次に②利用者に必要なニーズのアセスメントが行われます。この過程で、利用者の生活全般にわたる情報が把握されます。
 集められた情報をもとに、③利用者の意向を踏まえてケア計画が作成されます。
 次いで、④ケア計画の実施とモニタリング、⑤実施効果の評価が行われ、ニーズの変化に伴って再アセスメントが必要な場合には②に戻ります。これらの過程を経てケア計画の目的が達せられたとき、ケアマネジメントは⑥終了します。
 このようなケアマネジメントの過程を図示すると上の通りです。
 以下に、各過程ごとの内容を説明します。

①ケアマネジメントの導入

a)ケアマネジメントの実施を確認

 対象となるケアサービスの利用者を最初に確認し、ケアマネジメントに導入します。
 通常、障害者本人やその家族から相談を受けますが、紹介される場合やケアマネジメント従事者自ら利用者を把握する場合もあります。
 ケアマネジメントを実施するのは、複数のサービスを総合的かつ継続的に提供する必要がある精神障害者です。アセスメントを行う前に、利用者の状況を良く把握するとともに、提供できるサービスを例示して本人に選択権があることを丁寧に説明します。
 以上の確認は、「相談票」を用いて行います。

b)主治医への報告

 ケアマネジメント従事者は利用者了解の上で、申請があったことを主治医に報告します。もし、利用申請者が医療を受けていない場合には、利用者と話し合い、その了解のもとで、できるだけ早期に適切な医療に結びつけるよう努力します。

c)ケアマネジメント実施の同意

 ケアマネジメントが必要と判断されると、利用者にはケアマネジメント(アセスメント、ケア計画、ケア計画の実施など)の内容と趣旨を、利用者本人が理解できるように丁寧に伝え、実施の同意を得ます。
 この手順には、「説明書」と「ケアサービスに関する申込書」を用います。

②ケアアセスメント

 ケアマネジメントの利用者が確認され、ケアアセスメントの同意が取れた後に、ニーズのアセスメントを行います。ここでは、本人(および家族)の具体的なニーズ、真のニーズを明らかにするために、利用者本人の希望と、現在利用している社会資源、ケアの必要度に関する専門職の評価、社会的不利に関する専門職評価、本人を取り巻く環境要因などを多角的な視点からアセスメントします。
 アセスメントに用いる用具は「ケアアセスメント票」です。

a)利用者側の参加について

 アセスメントには利用者本人が参加するとともに、必要に応じて本人の状況を良く知る家族や地域関係者、専門職が同席します。
 家族や地域関係者、専門職が同席する場合には、利用者本人の了解を得る必要があります。

b)アセスメント実施時の留意点

 アセスメントを行うためには、日常生活面の詳細について聞くことができる良好な関係を形成することが不可欠です。
 アセスメント面接は、一度にすべてを行う必要はありません。本人の状態に合わせて話を聞いたり、周囲からの必要な情報も得ながら無理のない範囲で進めます。

c)ケアアセスメントのまとめとケア目標の明確化

 アセスメントの結果を包括的に判断して「ニーズのまとめ」を作成します。また、ニーズに応じたケアの目標を明らかにします。

③ケア計画の作成

 アセスメントによって明らかにされたニーズを解決するために、公的サービス、民間サービス等の社会資源を活用し、また利用者(および家族)ができることを明確にして、仮のケア計画書(ケアマネジメント従事者素案)を作成します。仮のケア計画に基づいて、利用者と相談しながらケア計画書(ケア会議提出用)を作成します。

a)利用者の参加と同意

 ケア計画策定に当たって、利用者本人および可能な限り家族等身近な援助者の参加を得ます。
 ケア計画を作成する際には、利用者との同意により、ケアの内容や実施方法、期間などを設定します。
 ケア計画書が作成できたら、ケア計画書に基づいて提供されるケアサービスを利用者に改めて具体的に説明します。
 ケア計画の内容に、利用者本人の納得が得られれば、「ケアサービスに関する申込書」の記入を求め、利用者とケア計画の契約を結びます。その際、ケア計画の内容を途中で変更したり中断したりできることなどを説明書を用いて説明します。
 ケアマネジメント従事者は作成されたケア計画を、主治医や家族など身近な援助者に報告します。その時点で変更がある場合には、利用者を含めた関係者が十分に話し合って、最終的には、利用者の意向にそってケア計画を決定します。

b)ケア会議の実施

 ケア計画の作成に当たって、仮のケア計画書に記載されたサービス提供が想定される関係者に呼びかけて、ケア会議を開催します。
 ケア会議は、地域のさまざまな関係機関に働きかけて実施します。できるだけ1機関の中で完結することのないよう配慮します。また、利用者およびその家族も可能な限り参加して開催するようにします。
 ケア会議は、チームアプローチの現実的な一形態です。ケア会議は、ケア計画作成時のみならず、ケア会議が実施された後も、援助チームの調整が必要になれば随時開催します。

c)活用するサービス

 ケア計画を作成する際には、利用者本人の能力を最大限活かすよう配慮します。何ができるかによって必要な援助が決まってくるからです。
 利用するサービスには、公的サービスのほかに、民間のサービス、ボランティア、親類、近隣の人々等によるインフォーマルなサービスも検討します。
 可能な限り、市町村を中心とした一般の保健福祉サービスの活用を図ります。具体的には、主に高齢者や他の障害者を対象にしたホームヘルプサービス、他障害の通所施設、訪問看護(ステーション)、老人憩いの家、ボランティア組織、公営住宅、福祉型公共借上住宅などです。特に、市町村および住民参加型団体等のホームヘルプサービスは、利用を積極的に考慮します。
 それとともに、地域関係者の援助や当事者・家族の相互支援などのインフォーマルな援助資源を開発し、活用します。インフォーマルな援助資源の開発については、市町村や保健所などが利用可能な援助資源の情報を持っていることが多いため、連携しながら進めます。また別途、新規利用可能社会資源の開発を目指します。

d)満たされないニーズおよびその解決方法

 アセスメントによって明らかにされたニーズのうち、現在の社会資源では満たされないニーズ領域を明らかにし、その問題に対して、どのようなサービスが存在すれば良いのか明確にしておきます。
 日頃から、満たされないニーズに対応する社会資源の開発を行うよう心掛けるようにします。

④ケア計画の実施

a)サービスの依頼(リンケージ)

 同意の得られたケア計画を実施するために、ケア提供者にケアの実施を依頼します。
 サービスの依頼は、ケアマネジメント従事者が支援して利用者が行う方法、ケアマネジメント従事者が利用者と同行して行う方法、ケアマネジメント従事者が利用者に代わって行う方法等があります。

b)ケア計画実施過程における調整(モニタリング)

 ケアマネジメント従事者は、実際にサービスが実施されてからこれらのサービスが支障なく提供されているかどうか確認をする必要があります。
 その結果、サービスが計画通りに実施されていない場合には、ケア会議を開催するなどして、調整をする必要があります。
 ケアマネジメント従事者は、利用者とケア提供者の間に調整すべき問題が発生したら、速やかに対応します。

c)チームアプローチ

 ケア計画の実施は、関係諸機関・団体と連携して進めることが重要であり、必要に応じて随時ケア会議を開催します。

⑤実施効果の評価

 契約したケアマネジメントの実施期間が経過した場合、あるいはケア計画実施後のニーズの変化や新たにニーズが発生した場合、適宜フォローアップを行い、ケアマネジメントの実施の効果や解決されていない問題やニーズを評価し、実施したケア計画を見直します。
 評価においては、ニーズが適切に満たされているか、利用者がサービスに満足しているかなどを把握することが必要です。

⑥ケアマネジメントの終了と事後評価

 フォローアップと評価の結果、利用者のニーズが解消し、サービスの必要性がなくなったと判断される場合には、ケアマネジメントは終了します。
 ケアマネジメント実施期間中に、利用者が他地区に転出した場合にケアマネジメントは終了しますが、利用者の希望があれば転出先の機関に連絡を取り、必要に応じて利用者本人の同意の上関係書類を送付します。
 ケアマネジメントが終了した後には、サービス提供の過程を振り返り、ケアマネジメントの全過程において改善すべきことがあったかどうかを検討することが、今後のケアマネジメントの技術を向上させるために必要とされます。

(5)個人情報について

 ケアマネジメントの全過程を通じて、利用者の個人情報保護には特別な配慮を要します。
 ケアアセスメント票やケア計画書は、重要な個人情報が記載されていますので、保管方法に十分に注意します。
 得られた個人情報は、ケアマネジメントの目的以外に使用することはできません。
 利用者の個人情報をケアマネジメントチームで共有する場合は、必ず利用者本人の同意を必要とします。
 しかし、利用者の個人情報を提示できるのは、ケアサービスの提供を業務としている公的あるいは民間のサービス提供者です。インフォーマルな援助者は原則として個人情報の提示はしません。
 利用者の個人情報は、利用者に求められれば開示しなければなりません。

大島巌著『ACT ケアマネジメント ホームヘルプサービス 精神障害者地域生活支援の新デザイン』(2004年、精神看護出版)
Tracked from 引越しの掟!まちがわない.. at 2010-08-22 02:28
タイトル : 引越しの手順と方法
はじめての引越しでも安心しておこなえる方法を伝授!... more
by open-to-love | 2010-08-19 20:00 | ケアマネジメント | Trackback(1) | Comments(0)