精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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 「性同一性障害」とは、医学的な疾患名である。英語ではgender identity disorderと言い、性同一性障害とはその訳語である。性同一性障害には、かつては「性転換症(transsexualism)」という言葉が用いられてきたが、1980年より「性同一性障害」という言葉が用いられるようになった。この性同一性障害という疾患を診断するための国際的な基準には、現在WHO(世界保健機関)が定めたICD-10によるものと、米国精神医学会の定めたDSM-Ⅳ-TRによるものがある。性同一性障害には、「小児の性同一性障害」と「青年または成人の性同一性障害」があるが、ここでは「青年または成人の性同一性障害」について説明する。
 まず診断基準Aとして、「反対の性に対する強く持続的な同一感」がある。具体的には、反対の性と同じような考え方や感じ方や行動パターンをする。手術やホルモン療法で反対の性の体になりたい、反対の性で社会的に暮らしたいなどの強い気持ちを持つ。
 次に診断基準Bとして、「自分の性に対する持続的な不快感、またはその性の役割についての不適切感」がある。具体的には、MTF(男性から女性へ)の場合、ペニスや睾丸がいやだ、声が低いのがいやだ、ひげが生えているのがいやだ、がっちりした体つきがいやだ、スーツ・ネクタイ姿がいやだ、などがあり、FTM(男性から女性へ)の場合、乳房のふくらみがいやだ、お尻が大きいのがいやだ、月経がいやだ、スカートがいやだ、などがある。
 さらに診断基準Cとして、「その障害は、身体的に半陰陽を伴ってはいない」がある。半陰陽とは、性染色体(XX、XYなど)、性腺(精巣、卵巣)、内性器、外性器などの身体的な性別が、非典型的な状態を指す言葉である。つまり、性同一性障害においては、身体的性別特徴には、明白な形では非典型的なものはないということだ。
 最後に、診断基準Dとして「その障害は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」がある。この診断基準は、DSM-Ⅳ-TRにおける他の精神疾患でも多く見られるものであり、疾患とすべきか否かの議論の分かれるような概念に対して、この基準を入れることで、疾患としての閾値を示すという考えだ。
 以上の4つの診断基準を満たすと、性同一性障害と診断される。
 なお、性同一性障害者特例法では、性同一性障害者を「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」と言う)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する2人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致している者をいう」と定義しているが、これはあくまで性同一性障害者特例法における法律上の文言定義である。すなわち、この法律上の概念である「性同一性障害」と医学上の概念である「性同一性障害」は必ずしも完全には一致するものではない。
 日本で治療が取り組まれはじめた1990年代後半から2006年までにかけて、国内の主要医療機関で性同一性障害と診断された人は約5000人であり、その男女数はほぼ半々である。性同一性障害の可能性があっても、医療機関を受診していなく、診断されていない人、あるいは医療機関にかかることなく、個人輸入などでホルモン治療などの治療を行っている人も相当数いると思われるが、その実数は把握が困難である。

ジェンダー・アイデンティティ

「ジェンダー・アイデンティティ」とはgender identityのカタカナ表記である。日本語訳としては、従来は「性同一性」が用いられてきたが、カタカナ表記のジェンダー・アイデンティティのほうが理解されやすいとの考えで、最近ではそのままカタカナ表記することが多い。ほかの言い方では「性自認」「性の自己意識」「自己の性意識」「性の自己認知」などとほぼ同じ意味であり、より簡単に「心の性」という場合もある。アメリカの性科学者のジョン・マネーは以下のように定義している。「一人の人間が男性、女性、もしくは両性として持っている個性の、統一性、一貫性、持続性をいう」。
 典型的な男性や女性では、ジェンダー・アイデンティティは身体的な性別と一致する。つまり、体が男性の場合、心も男性、すなわち自分自身を男性と認識する。しかし、性同一性障害やトランスジェンダーでは、ジェンダー・アイデンティティは身体的性別とは必ずしも一致しない。つまり、たとえば体が男性であっても、心の性は女性である、といったアイデンティティをもつ。
 このジェンダー・アイデンティティは、生物学的要因に加えて、その後の養育環境や生活環境などが複合的に組み合わさって形成されていくと推測されている。
 なお、gender identityの従来の訳語である「性同一性」を、「「生物学的性」と「心理・社会的性」が一致するとき「性同一性(gender identity)」がある」という具合に間違った記述をしているものもある。これは、おそらくは性同一性の「同一」を「生物学的性と心理・社会的性とが同一」との意味に誤解し、生じていると思われる。しかし、identityの同一性とはこのような意味ではなく、自己の単一性、不変性、連続性という意味において同一なのであり、上記の記述は誤りである。

トランスジェンダー

 「トランスジェンダー」とは、transgenderをカタカナ表記したものである。出生時に割り当てられた性別(つまりは身体的性別)から規定される。伝統的な男性役割や女性役割、あるいはジェンダー・アイデンティティの枠から外れた人たちを包括する用語である。具体的には、異性装者、性同一性障害の人などを含む。そのジェンダー・アイデンティティのありようは、性同一性障害のように、身体的性別と反対の性別であることもあるし、あるいは「時には男性、時には女性」「男性でも女性でもなく」「男性と女性の中間」などさまざまである。
 この言葉はもともとは、アメリカの異性装者のコミュニティの指導者であったヴァージニア・プリンスによって、1970年代頃より、「身体的性別とは一致しないジェンダー・アイデンティティではあるが、性別適合手術までは臨まないもの」という意味で用いられはじめた。しかし、その後はより包括的で広範な意味に用いられるようになり、性別適合手術を望む人も含む意味に用いられるようになっている。
 またこの言葉は、「性同一性障害」「性転換症」などといった医学者によって命名された医学用語とは違い、医学疾患的な意味合いはない。そのため「自分たちは精神疾患ではない」「自分たちは障害者ではない」と考える当事者にとっても、用いやすい言葉であり、欧米では広く用いられている。それは、「同性愛(homo-sexual)」といった医学用語から「ゲイ・レズビアン」という非医学用語が好んで使用されるようになった流れと同様である。
 しかしながら、日本では医学用語の「性同一性障害」のほうが、人権擁護の訴えや、医学的治療の正当化に適しているという事情もあり、非医学的用語のトランスジェンダーは、必ずしも当事者が用いることは多くないことが現状のようである。

上川あや「変えてゆく勇気 −『性同一性障害』の私から」(2007年、岩波新書)より「もっと詳しく知りたい人のために」(監修・針間克己)
# by open-to-love | 2007-07-06 21:48 | セクシュアリティー | Trackback | Comments(0)

17歳のカルテ

 「17歳のカルテ」(「Girl, Interrupted」)は1999年のアメリカ映画。2000年に日本公開された。原作は1994年に出版されたスザンナ・ケイセンによる自伝。邦訳は『思春期病棟の少女たち』(吉田利子訳/草思社/1994)。

作品
 自らも境界性人格障害で精神科入院歴のあるウィノナ・ライダーは、精神病棟を患者の視点で赤裸々に描いた原作に惚れ込んで映画化権を買い取り、制作総指揮を買って出た。作品のテーマに於いて「カッコーの巣の上で」と比較される事が多いが、本作は原作がノンフィクションである点が異なっている。

ストーリー
 ある日突然、薬物大量服用による自殺未遂を起こして精神病院に収容されたスザンナ(ウィノナ・ライダー)。人格障害という自覚が無く、その環境に馴染めなかったスザンナだが、病棟のボス的存在であるリサ(アンジェリーナ・ジョリー)の、精神病患者である事を誇るかのような態度に魅かれていく内に、精神病院が自分の居場所と感じるようになっていく。しかし退院した患者の近親姦を喝破してその患者を自殺に追い込むというリサの行動から、徐々に彼女の行動に疑問を持つようになって行く。だがその事でリサに疎んじられ、他の患者も全員リサに同調して彼女は孤立する。やがてリサや他の患者との全面対決に至るが、その出来事によってスザンナは「リサはここ(精神病院)でしか生きられないからこれだけ強気な行動に出られるのだ」と気づき、自分は社会復帰を目指さなくてはならないと決意し、退院したところで映画は終わる。

キャスト
* ウィノナ・ライダー
* アンジェリーナ・ジョリー
* クレア・デュヴァル
* ウーピー・ゴールドバーグ
* ブリタニー・マーフィ
* ジャレッド・レト
* ヴァネッサ・レッドグレイヴ

邦題について
 邦題には「17歳」という言葉が使用されているが、これは2000年に17歳による少年犯罪が連続して発生し、マスコミが「キレる17歳」という言葉を流行させた影響である。原題にも物語にも17歳という言及はない。

余談
 この映画はウィノナ・ライダーが原作に惚れ込み映画化権を買い取って製作総指揮も勤めた作品であるが、当時新人であったアンジェリーナ・ジョリーのみがそのエキセントリックかつ繊細な演技力を高く評価され、ウィノナ・ライダー自身はまったく注目されなかった。この事について彼女はアンジェリーナ・ジョリーに対し「この役を演じれば誰だってオスカーを獲れる」と露骨に僻みを表した事から一時期マスコミを騒がした。
* アカデミー助演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)
* ゴールデングローブ賞助演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)
* 全米批評家協会新人賞(アンジェリーナ・ジョリー)
(出典:ウイキペディア)a0103650_2349459.jpg
# by open-to-love | 2007-06-30 23:47 | 心の病と映画 | Trackback | Comments(0)

カッコーの巣の上で

 「カッコーの巣の上で」(One flew over the cuckoo's nest)は、1975年のアメリカ映画。日本での公開は1976年4月。 アメリカン・ニューシネマの代表作。精神異常を装って刑務所での強制労働を逃れた男が、患者を完全統制しようとする精神病院の看護婦長から自由を勝ち取ろうと試みる、という物語である。原作はケン・キージー、邦訳が 『カッコーの巣の上で』 という題で富山房から出ている。邦題は当初「郭公の巣」であったが、後に映画のタイトルに合わせて改題された。なお、原作での主人公はチーフであり、彼の視点から物語は描かれている。

タイトルとストーリーの由来
 いずれの邦題も一読して意味を理解することは難しいが、原題は最後にチーフという名の患者が一人 (One) で自由を求めて、精神病院 (the cuckoo's nest) から飛び出して脱出する (flew over) ことを象徴しており、もともとの由来はマザー・グースの詩である。
Vintery, mintery, cutery, corn,
Apple seed and apple thorn;
Wire, briar, limber lock,
Three geese in a flock.
One flew east,
And one flew west,
And one flew over the cuckoo's nest.
 実はカッコウには巣というものはない。カッコウは自分で子育てをしないのである。モズ、ホオジロなどの、ほかの鳥の巣に自分の卵を押し込んで、そこで一緒に子育てをさせてしまう (托卵)。卵から孵ると、カッコウの雛は同じ巣にある他の卵を巣の外に押し出そうとする。ひとつの解釈としては、マクマーフィーをカッコウの卵に、看護婦長をほかの鳥の卵を大事に抱え込んでいるモズやホオジロに喩えることができるだろう。また、この詩の内容から、互いに対立するマクマーフィーと看護婦長とを、東と西に飛んでいったガチョウ(goose, 複数形はgeese)に、そして巣の上を飛んでいったガチョウをチーフに喩える解釈もある。

主人公は本当に詐病なのか
 刑事裁判での精神鑑定を手がける事の多い精神科医の小田晋は、主人公に明らかに虚偽性障害や反社会性人格障害、間欠性爆発障害の兆候が見られると言う。現実の精神病院でも、精神鑑定で責任能力なしとされた被疑者には「自分では精神障害者のふりをしてやったと思っているが、実際に人格障害などの兆候が見られる」事がままある。

ストーリー
 刑務所から逃れるために精神病院に(詐病によって)入院してきた主人公のマクマーフィー。向精神薬を飲んだふりをしてごまかし、婦長の定めた病棟のルールに片っ端から反抗していく。グループセラピーなどやめてテレビでワールドシリーズを観たいと主張し、他の患者たちに多数決を取ったりなどする。(当時精神医学で新しい療法としてもてはやされていたグループセラピーへの皮肉である)。また他の患者を無断で船に乗せて、海に出たりもする。こうした反抗的な行動が管理主義的な婦長の逆鱗に触れ、彼女はマクマーフィーが病院から出ることが出来ないようにしてしまう。マクマーフィーはチーフが実際はしゃべれないフリをしていることに気づく。
 クリスマスの夜、マクマーフィーは病棟に女友達を連れ込み、酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎをやる。その後逃げ出すつもりだったのだが寝過ごしてしまう。翌日、乱痴気騒ぎが発覚し、そのことで婦長から激しく糾弾される。そのショックで(マクマーフィーにかわいがられていた)若い男性患者が自殺してしまう。マクマーフィーは激昂し、彼女を絞殺しようとする。その後、婦長を絞殺しようとしたマクマーフィーは他の入院患者と隔離される。マクマーフィーは病院が行った治療(電気けいれん療法或いはロボトミー手術)によって、もはや言葉もしゃべれず、正常な思考もできない廃人のような姿になって戻ってくる。
 これは当時、アメリカの精神医学会で盛んに行われていた脳梁切断手術の揶揄であろう。この手術は凶暴性を持つ癲癇患者を劇的におとなしくする手術としてもてはやされたが、手術後の患者は感情の起伏や外界への反応が極端に乏しくなるものであり、人権的な側面で当時から批判が多かった。現在は、その効果に疑問が持たれている。
 ネイティブアメリカンである患者の“チーフ”はマクマーフィーを窒息死させ、「持ち上げた者には奇跡が起きる」とマクマーフィーが言った水飲み台を持ち上げて窓を破り、精神病院を脱走していく。

監督:ミロシュ・フォアマン
キャスト
* ジャック・ニコルソン - マクマーフィー
* ルイーズ・フレッチャー - 看護婦長ラチェッド
* マイケル・ベリーマン
* ブラッド・ドゥーリフ
* クリストファー・ロイド
* ダニー・デヴィート
* ヴィンセント・スキャヴェリ
* ウィル・サンプソン - チーフ・ブロムデン

 1975年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞と主要5部門を独占した。ちなみに、これら主要5部門の獲得は1934年に受賞した「或る夜の出来事」以来、実に41年ぶりの快挙であった。(出典: ウィキペディア(Wikipedia))a0103650_0311245.jpg
# by open-to-love | 2007-06-30 00:29 | 心の病と映画 | Trackback | Comments(0)
ビューティフル・マインド

実在した天才数学者ジョン・ナッシュの絶望と奇跡の半生を描いた、アカデミー賞4部門に輝く感動のヒューマン・ドラマ。監督は名匠ロン・ハワード。ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリーほか出演。

* 製作: 2001年 米
* 監督: ロン・ハワード
* 出演: ラッセル・クロウ / ジェニファー・コネリー / エド・ハリス / クリストファー・プラマー / ポール・ベタニー / アダム・ゴールドバーグ / ジャド・ハーシュa0103650_2318346.jpg

 実在の天才数学者、ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアをモデルにした主人公の数奇な運命を描く感動作。監督・製作は「グリンチ」のロン・ハワード。脚本は「プラクティカル・マジック」のアキヴァ・ゴールズマン。原作はシルヴィア・ネイサーのノンフィクション。撮影は「オー・ブラザー!」のロジャー・ディーキンズ。音楽は「スターリングラード」のジェームズ・ホーナー。美術は「僕たちのアナ・バナナ」のウィン・P・トーマス。編集は「グリンチ」のマイク・ヒルとダン・ハンリー。衣裳は「グリンチ」のリタ・ライアック。出演は「プルーフ・オブ・ライフ」のラッセル・クロウ、「レクイエム・フォー・ドリーム」のジェニファー・コネリー、「スターリングラード」のエド・ハリス、「ドラキュリア」のクリストファー・プラマー、「インデペンデンス・デイ」のジャド・ハーシュほか。第74回アカデミー賞作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞、第59回ゴールデン・グローブ賞最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀脚本賞ほか多数受賞。

 プリンストン大学大学院の数学科から優秀な成績でウィーラー研究所に進んだナッシュ(ラッセル・クロウ)は、周りに変人扱いされながらも数学の研究に没頭。ある時、諜報員パーチャー(エド・ハリス)にソ連の暗号解読を依頼される。世界の危機を救うことに喜びを感じ、密かにスパイ活動を続けるナッシュ。そんな彼にとって講師の仕事はつまらないものだったが、聴講生のアリシア(ジェニファー・コネリー)と愛を交わすようになり、2人は結婚する。結婚後も極秘でスパイの任務は続いていたが、プレッシャーは大きくなり、命の危険を感じる出来事も重なる。やがてナッシュは幻覚に悩まされるようになった。大学に勤めながらの、静かで長い闘いの日々。そして彼は老人になり、思わぬノーベル賞の報せを受け取る。幻覚症状は治っていないものの、ナッシュは穏やかな心を手に入れており、受賞のあいさつで妻への感謝を述べるのだった。
# by open-to-love | 2007-06-29 23:18 | 心の病と映画 | Trackback | Comments(0)

暴力はふれあい

暴力はふれあい(「養生のコツ」語り 第8回 神田橋條治)

家族の質問(神奈川県 61歳)
 32歳の息子です。2年前に暴力をふるい、警察に連絡し措置入院させました。警察に連絡したことが本人に大きなトラウマになり、交番の前を通ったり、巡査を見るたびに当時を思い出し、私たちに再々暴力を振るってきます。度重なる暴力に危険を感じ、私共(息子の父母)は夫の実家に避難しています。息子の食事を主人が一日一回届けてくれます。時間があれば夫と二人でテニスもするようですが、私は7月23日早朝に暴力を振るわれて以来、息子にあっていません。これからどうやって息子と向き合えばいいのでしょうか。一人暮らしもさせたい。もう一緒に住むのは危険だと思っています。私共も年々高齢になります。

 警察に連絡したことが本人に大きなトラウマになって、ということはね、警察が来たときにお父さんお母さんがどうしたかということなんです。警察に丸投げしちゃいかんですよ。緊急事態ですから、警察の手を借りなきゃいけないから、手を借りているんだということがないといけないんです。必要最低限度、警察の手を借りているんだ、自分たちではできないんだから、だからやっぱり入院するのに連れて行くのは親が連れて行っているんだ、警察は手助けなんだという雰囲気にならないと、一番つらいときに親子の関係が切れちゃう。丸投げみたいのはいけない。
 けど、もう済んでしまったことだから、今さらどうしようもないけれど、本人に、警察に連絡していたことがトラウマになっているんじゃなくて、「我々がちゃんとついていかなかったことがトラウマなんじゃないの」と聞いてみると、ひょっとしたらいいかもしれないです。

暴力は症状ではない
 どうしてかというと、この人は、この暴力を振るう人はあっちゃこっち行って暴力をふるっているようではないんですよね。親御さんだけに暴力を振るっているから、これは、僕は、何か言うにいわれぬ気持ちが親に対して向かっているんではないかと思うんです。それで、間に誰か入ってくれる人がいないでしょうかねえ…。ご主人は一日一回食事を…、じゃあ、このお父さんがそのことを話題にしてみるといいのかもしれないねえ。暴力の意味はこういうことなんではないかと問いかけてみる。
 暴力は体が触れるでしょう。だからふれあいですから、本質としての統合失調症の病状ではないと僕は思うんです。対処行動だと思うんです。「せつなさ」とか、「通じなさ」とか、「わかってよ」とか、「もうどうでもなれ」とかいうような気分だと思うんです。どうにでもなれということであると、近所の人なんかにも石投げたりするようなことになると思うんです。自己破壊に。だから、この人は、親にだけ何か通じてほしいという気持ちではないかなと思います。警察を見ると暴力になるというのは、せつない気持ちのフラッシュバックでしょうね。そう聞いてみることを主治医に依頼してごらん。

会場からの意見
 僕は32歳で両親と一緒に暮らしているんですけど、この人は少し親に甘えている分があると思います。精神的に少し子どものところがあると思うので、大人になるためにも一人暮らしを経験したほうがよくなると思います。

 今のあなたの意見はその通りだと思います。
 それからもう一つ。暴力ふるっているなかにね、甘えている部分と、一人暮らしをした方がいいと既に本人が感じている部分があると思うんです。だけど、統合失調症は、複雑な思いが脳のなかでまとまらないので、お父さんが面と向かって話しますとお父さんの表情、口調、それにしゃべりながらの自分自身の心のゆらぎもあり、それらが複雑な刺激として本人の脳が統合しにくい刺激になるのでしょうね。

考えをまとめやすい方法
 最初は、手紙がいいと思います。手紙は言葉と違って、本人が自分の好きなスピードで情報をとることができますし、繰り返し確認することもできますから。お母さんが手紙を書かれて、そしてお父さんが「お母さんがこれ、お前に会うのは怖いらしいけど、まあ、気が向いたとき読めや」とか言って渡すと、入ってくる情報が単一チャンネルで入ってきますので。表情を見て音を聞いて、意味を考えてということにならずに、安全でしょう。
 その一つの証拠は、統合失調症の人たちはメールとかチャットとかいうのはとても好まれるんですね。それはやっぱり、人間は皆、群れ動物ですから、人間関係きらいっていう人はあんまりいないですね。苦手っていう人はいる。苦手とする人が、ああいう機械を使ってのやりとりだと、しやすいのね。表情とか、「あんなん言ってたけど、表情は別の顔つきしてた」とか、レスポンス(反応)をせかされるということがないものですから、自分のペースでやっていけばいいので、ああいうものも一つの方法ですね。
 僕が知っている家族で、統合失調症じゃありませんけど、娘さんとお父さんが二階と一階でパソコン通信で対話をされている。「今日の食事はどうだったかね」とか、会話ができている。そうすると、今まで部屋の入り口のところに食事を置いて、空になっていたら下げるというだけだったのが、パソコンだけでもコミュニケーションになるのね。現代の機器はそういう風に使えます。
 今、息子さんの食事をご主人が一日一回届けてというのをやっているので、ここからさっき言った、一人暮らしの道につながったらいいのではと思います。
(月刊「ぜんかれん」2005年7月)

 ☆この引用が、暴力にどう向き合うかの答えとなるでしょうか。私には、分らない。だが、問いと答え双方の沈鬱な切実さという意味において、このやりとりは、このケースにおいて優れた回答であるし、かつ、それゆえに、一般論は通用しないということを如実に物語っているともいえます。
 その時、その場、その人、その暴力に対してどう向き合うかについての「正しい対処法」は、なければならない。少なくとも、その「正しい対処法」に至るまでの、いくつもの「正しくない対処法」を可能な限り排除することはできると思う。そのために、そして、その限りにおいて、であっても構わない。その時、その場、その人、その暴力に対して「誰か間に入ってくれる人」でありたい。(黒)
# by open-to-love | 2007-06-27 00:33 | 家族のスキルアップ | Trackback | Comments(0)
ハイ!相談室です
「借金を繰り返す息子にどう対処したらいいのでしょうか」
今月の回答者:池原毅和弁護士

問:統合失調症の息子は現在39歳、半年前まで一人暮らしをしており、障害年金二級を受給しています。浪費癖がありこれまで年金を担保にあちこちで借金をしまくり、放ってもおけないと家族が泣く泣く百万円単位の返済をしてきました。家族としては経済的にも精神的にも限界です。現在は浪費がらみで病状も悪化、入院中ですが、未返済の借金がまだあるようで借用書も散逸しており、今後を考えると眠れない日が続いています。ぜひ次の点につき教えて下さい。
 このような場合、親の責任はどこまでなのか。「自己破産」とよく聞くが、具体的手続きはどうすればよいのか。自己破産となった場合、借金の責任はどうなるのか。本人が入院中でも手続きが可能なのか。退院後、サラ金等から借金できないようにすることはできるのか。よろしくお願いします。

答:まず、親の責任ですが、親にもきょうだいにも、本人がした借金を返済する責任はありません。

家族が返済を求められた場合
 確かに、お金を貸している(債権者)側は、「家族なんだから何とか払うように」と催促してくることはあり得ると思いますが、本人の連帯保証人として自分自身も契約書にサインして押印しているような場合は別として、法律上、家族であるからというだけで支払い義務を負わされるようなことはありません。
 ご質問のご家族はすでに100万円もの返済を肩代わりされているようですが、こうしたことは本人のためにもならないのではないかと思います。家族が肩代わりすることで、本人は現実の厳しさを知ることがなくなりますし、結局、浪費をしても誰かが助けてくれるといった依存した気持ちを強めることにもなってしまいます。また、肩代わりした家族の側は、こんなに家族が協力しているのに本人は何の感謝の気持ちもないというような気持ちも強まってしまい、かえって本人と家族の関係が悪くなってしまうこともあります。
 ですから、債権者に対しては「法律上責任はないので催促には応じられない」ということを明確に伝えてください。

取り立てが厳しい場合は債務整理を委任する
 しかし、債権者からの厳しい取り立てが家族や本人の生活の平穏を脅かすような場合には、弁護士に債務整理を委任するのがいいでしょう。
 弁護士が債務整理を受任して問題の解決に介入する旨の通知を債権者に出すと、債権者は直接に本人や家族に取り立てをしてはいけないことになっています。そのため、生活の平穏を脅かされることもなくなります。その委任は家族が自分たちを守るためだけにしてもいいですし、本人と一緒に家族も含めて委任をしてもいいですが、最近では、本人が委任をすればだいたいの場合は十分な効果が得られると思います。
 弁護士に債務整理を委任する際に払う費用は、「任意整理」といって、長期分割返済や一部免除を求めてお金を返す方法の場合、標準的には一債権者あたり、着手金が二万円報酬です。さらに、分割条件などが折り合っていわば示談が出来た場合が二万円です。最初から破産が予想される場合は、着手金が二十万円くらいが相場でしょう。この場合、免責を受けられた段階で、着手金と同額程度の報酬が求められる場合もあります。

自己破産の手続き
 自己破産というのは、借金がふくれあがってすべての資産や収入を返済に充てても借金の返済が不可能だと認められるような場合に行うことができます。
 質問者の方の場合、障害年金だけでほかに収入はないようですから、100万円を超えるような借金がたまっていれば自己破産の申し立てはできると思います。ただ、自己破産は、文字通り自分から破産を申立てる手続きですから、本人がその手続きをする意思がなければなりません。最近では裁判所の破産係に自己破産申し立ての用紙なども置いてある所が多いので、自分で裁判所の破産係に行って手続きすることも可能ですが、債権者からの取り立てを受けながら破産の手続きを進めることを考えると、弁護士に任せてしまった方が楽に手続きを進めることができると思います。

地域での相談と費用
 地域によっても違いはあると思いますが、だいたいの弁護士会では「クレジット・サラ金相談」というコーナーがあり、そこで債務整理の相談や破産の相談を受け付けて、必要である場合は担当の弁護士を紹介してくれます。
 自己破産をするために弁護士に払う費用は二十万円程度を目安に考えておけばいいと思います。法律扶助協会に弁護士費用を立て替えてもらったり、肩代わりしてもらえたりする制度もあるので、都道府県の弁護士会に法律扶助協会を利用する方法も問い合わせるとよいでしょう。

借金から逃れられるか?
 破産手続きは破産状態にあるかどうかを決定する段階と、破産であるとして残りの借金を返す責任を免除するかどうか(免責)という段階の二段階からできています。ですから、破産と決定されても自動的に免責になるわけではありません。
 特に、詐欺的に人からお金を借りたとか、破産の手続きのなかで裁判所にうそをついたというような免責不許可事由があると、免責は受けられません。その場合は、借金を返す責任は破産をしても残ることになります。しかし、免責不許可事由の判断は比較的寛大なので、多くの場合は免責になると考えてよいでしょう。質問者の方の場合も、免責になる可能性は十分にあるといえるでしょう。免責されれば、借金を返さなくてよくなることはもちろんです。

入院中の手続き
 本人が入院中の場合、破産の手続で破産状態の判断のための裁判官との面接や免責決定の判断の場合の期日に出席できない場合があり、困ることがあります。しかし、そのような場合も、診断書を提出して弁護士が代理人として出席することや、場合によれば外出や退院が可能になるまで、手続きを事実上遅らせることも不可能ではありません。

借金を防げるか
 退院後に借金をさせない方法は、サラ金業者が加入している信用情報機関に、近親者として事情を告げて借り入れを許可させないように登録してもらう方法や、成年後見制度を使って、借金については成年後見人の同意がなければできないようにする方法が考えられます。
 けれども、破産になっていればそのことで信用情報機関に信用情報が登録されている場合が多いので、通常のサラ金業者は融資をしなくなります。
 また、本人のことが心配な気持ちも分りますが、借金をしても本人に資産がなければ、差し押さえなどを受ける心配はありませんし、最初に申し上げたように家族の財産が差し押さえられたり、家族が本人に代わって返済しなければならなくなったということもありません。
 そうすると、こうした問題は基本的には本人の自覚と責任に任せるべき問題だと割り切った方がよいのではないかとも思います。
 重要なことは法律で縛り付けるよりも、本人が地域生活をこなせる社会的生活技能をどう育ててゆくかということで、それを諦めて、法制度で押さえ込もうとすると、結果として本人の能力は育たないままになり、同時に、家族の干渉に対する本人の反発も深まるかもしれません。心を通じさせるコミュニケーションをいかにとっていけるかが、遠回りのようで一番大切な手法ということになるのではないかと思います。
(月刊「ぜんかれん」2005年5月号)

おいおい、その全家連が破産しちゃったじゃないか!
親子にとどまらず、あらゆる組織において「心を通じさせるコミュニケーションが一番大切」。それがなくちゃ、全家連の二の舞です。みなさん、頑張りましょう。
# by open-to-love | 2007-06-25 23:59 | 家族のスキルアップ | Trackback | Comments(0)
上森得男さん講演「回復を目指してわが子と歩む〜アドヒアランスについて」講演資料

 上森得尾男さんプロフィール:ご兄弟やご子息が統合失調症を発症、御自身もかつてうつ病で苦悩された経験をお持ちです。これまでぜんかれん編集委員、精神障害者の地域支援のあり方についての検討会委員等を歴任、ロサンゼルス自助組織「プロジェクトリターン」との交流を各地で実施されています。家族として、服薬する当人として、また教師としてのさまざまな立場から、服薬の必要性と可能性、近年の薬剤の進歩、海外事情と日本の課題などについて幅広く見識をお持ちです。

私の長男は統合失調症から回復
○名前は一郎、40歳
○発病は高校生のとき
○長い道のりでしたが…
○今は就労しています
○以前とは大きく変わりました

プラス思考で薬は自分で選ぶべきだ
○よい薬(単剤低用量)を飲み、就労に挑戦することで回復する
○前向きになり、あなたもよくなってください

息子の話の前に
○私の実家であったことを特急で話します
○私の兄弟2人が統合失調症
○当時は、今のように進歩した薬はなかった
○治療も不十分だった
○信じられないほどの偏見があった

一郎の場合
○いろいろありました
○やさしすぎるくらいやさしい子ども
○まじめすぎ、気を遣い過ぎる
○積極的ではない

高校生のとき、いじめに会う
○友達から「自殺しろ!」
○以後様子がおかしくなる
○何をやっても続かず
○幻聴(雨の日)
○高校教員だった私

専門医に連れて行くのが遅れた
○なかなか診断が下りなかった
○とうとう「精神分裂病(統合失調症)です」
○24歳、入院1年間

私自身もうつ病に
○実家、自分の家庭、学校関係の悩み
○不眠、味覚障害、脱力感、食欲喪失、頭痛、クリニックで薬を出してもらう。転勤、「がんばらなくては」、ついに倒れる。息子を入院させた後、自分も入院
○将来への不安、妻はもっと不安だったろう

私の抗うつ薬体験
○5カ月入院、不眠と頭痛
○ある日、薬が変わった
○めきめきよくなり退院
○副作用で排尿障害(授業中に困った)
○新薬に変わる
○薬の力は大きいな、という感想

それからの私たち
○一郎は作業所へ、8年間通う
○私は家族会活動へ
○自分の無知を自覚して、勉強を開始。作業所の手伝いに

家族として私が気付いたこと
○長い間、多種類の薬を大量に飲んでいた。これでよいのか? 副作用がありすぎる。だから元気が出ない
○ローレンス・H・スノウ(米国の精神科医)の処方箋「優しい看護婦さんの頬笑み、1日1回」これだ!

息子が就労を目指す
○ハローワークに通うが仕事はなかった
○「自分のほしいものを買いたいな」
○妻「体格ではパスよ」
○私「病気を分ってくれて雇ってくれるところ」
○一郎「挑戦するよ」
○精神保健福祉センターの紹介でスーパーマーケットへ2年間(無欠勤)
○でも、期限があった

いろいろやってみた
○職親制度を利用して農家へ
○期限がある
○個人大工に弟子入り
○長時間労働
○「親が甘いから、こういう病気になるんだ」
○社会福祉法人の世話でリサイクルの仕事
○今は4年目、特例子会社の正社員

妻はこの世を去る
○私は定年後また5年間働く
○妻がすい炎をわずらっていた
○死線をさまよう
○一郎は必死に看病、母への感謝、回復
○これが彼を成長させた
○65歳で教員生活を終えた私
○「長い間、お疲れさま」
○私が退職して7日目に死亡

一郎を変えたものは何か
○自分の病気を理解し、自分に合った薬を求めたこと
○母の死、叔母(がん)、祖母(認知症)を看病
○2人とも一郎に感謝しながら死亡
○一郎「末期がんの辛さに比べれば、統合失調症の症状は我慢できるよね」
○働くことを考えたこと

アドヒアランス(adherence)とは
1、患者が服薬の意義を理解し
2、主体的に治療方針を選択し
3、積極的に行う治療のもとで
4、薬を納得してきちんと飲む−実に大事!
5、自ら積極的に病気と向かい合う
6、自分に合う薬を主治医と相談

私の薬の話(一郎)
○父「非定型の薬(新薬)に切り替えてもらおう」結論「リスパダールがよさそうだ」
○主治医に頼んだ「いいですよ」
○2年かけてリスパダール錠剤の分量を増やし、他のものを減らす
○2005年9月、リスパダール液剤発売
○「吸収がいいはずだ、先生にお願いしてみよう」「自分で頼んでみるよ」

その後私に起きた変化
○初めて飲んだとき(05年9月)「目の前がパッと明るくなった、びっくりした」
○「思考力がついた、意欲がわいてきた」
○「働いても疲労感がなくなってきた」
○睡眠薬が不要になった
○他の薬が減った
○早寝早起きになった
○おしゃべりになった

液剤のよい点
○飲みやすさ。水なしで飲める
○1回分ずつ分かれている(0・5ミリ、1ミリ、2ミリリットル)携帯に便利=安心感
○効き目の速さ。血中濃度の上昇が速い、吸収と代謝がよい
○ある病院で24人の患者さんたちについて調べた→4週間後、19人が引き続き液剤服用を希望

社会を知る・自分の病気を知る
○もっと大変な病気があること
○もっと苦しい立場の人々がいる
○自分と同じ病気の人がたくさんいること
○病気を受け入れること
○治療には時間がかかるが、きっとよくなること
○液剤を6mgから4mgに減らしたら、以前よりよくなった!
○錠剤と液剤は違う薬ではないのか

積極的姿勢で明日に臨もう
○患者の権利を忘れるな!あなたが言わなければ何も変わらない!医者は治療に全力を尽くしてほしい
○横の連絡を取り合う。快復した人の体験から学ぶ→家族会など
○治療法や薬剤の進歩に期待を持つ

消極的姿勢では明日は訪れない
○「よくなりたい」と思い、願い続けよう!家族がその希望を共有しよう
実際には、回復は専門医との協働作業だ!(日本で協働体制作りが遅れている)
○よくなるために必要なことをやろう!

よい薬に出会って活用する!
○リスパダールの経験から、液剤に変えただけでも一郎にはこれだけの効果があった
○それによって他の副作用止めなどがぐっと減った
○睡眠なども改善された→生活の質の向上
○これがアドヒアランスの効果

カリフォルニア州の当事者たち
○「回復できる」と考える当事者→米国8割、日本2割というデータ
○元気いっぱい、明るい
○堂々としている
○意欲がある
○1人は薬をのまない(来日前にデポ剤を注射)

自分に必要な薬を必要なだけ服用
○統合失調症やうつ病などの治療には薬が欠かせない。食事と同じように重要だ
○食べ過ぎが体によくないように、薬の飲み過ぎもよくない
○自分に合った薬を正しい量だけ服用すれば、快復していく。調子もよくなっていく
○勝手に薬をやめたら、また悪くなる

日本ではまだ多剤大量処方が多いのではないか
○抗精神病薬の種類や量が多いと副作用も大きい
○副作用で参ってしまう人がたくさんいる
○副作用を抑えるための薬が追加される
○全国に約1万人いる精神科医にお願いしたいこと「患者と家族に希望を!」

結論
○進歩した薬を一定量きちんと服用する。
○昔と違って、よくなる病気になってきていることを忘れない
○人間らしい暮らしを目指し、やれることから手をつける
○自分が元気に明るく暮らすことが、自信を獲得し、社会の偏見をなくす最善の道

○服薬の目的は少しでもよくなり社会参加を目指すことです
○少しでも「効果があるよい薬」を使ってください。
○それ以外の薬は、患者にとって何のメリットもありません。
○ここまで回復できたので、今後の人生をもっと意義あるものにしたい=今までの苦労を無駄にしたくない
○仲間の支援、希望を分かち合いたい。税金を払えるようになりたい
○本日はお聞きいただきありがとうございました。

平成19年度岩家連春季研修会「家族の力と当事者力を知ろう」(2007年5月26日、ふれあいランド岩手 ふれあいホール)
# by open-to-love | 2007-06-24 01:49 | 家族のスキルアップ | Trackback | Comments(0)
DSM−Ⅳ−TRの分類(目次)

◆NOS=Not Otherwise Specified.特定不能
◆診断コード番号の中のxは、コードに特定の数字を入れる必要があることを示す。
◆点線(…)は、病名を記録するとき、疾患名の中に特定の精神疾患名、または一般身体疾患名を入れなければならないことを示す(例:293.0甲状腺機能低下症によるせん妄)
◆括弧内数字は記載頁を示す。
◆現在、基準を満たしている場合、診断の後に、以下の重症度の特定用語のどれか1つを記してもよい。
 ●軽症
 ●中等症
 ●重症
◆もはや基準を満たさなくなった場合、以下の特定用語のどれか1つを記してもよい。
 ●部分寛解
 ●完全寛解
 ●既往歴

通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害
 精神遅滞
  317  軽度精神遅滞
  318.0 中等度精神遅滞
  318.1 重度精神遅滞
  318.2 最重度精神遅滞
  319  精神遅滞、重症度特定不能
 学習障害
  315.00 読字障害
  315.1  算数障害
  315.2  書字表出障害
  315.9  特定不能の学習障害
 運動能力障害
  315.4 発達性協調運動障害
 コミュニケーション障害
  315.31 表出性言語障害
  315.32 受容ー表出混合性言語障害
  315.39 音韻障害
  307.0  吃音症
  307.9  特定不能のコミュニケーション障害
 広汎性発達障害
  299.00 自閉性障害
  299.80 レット障害
  299.10 小児期崩壊性障害
  299.80 アスペルガー障害
  299.80 特定不能の広汎性発達障害
 注意欠陥および破壊的行動障害
  314.xx 注意欠陥/多動性障害
  .01  混合型
  .00  不注意優勢型
  .01  多動性−衝動性優勢型
  314.9  特定不能の注意欠陥/多動性障害
  312.xx 行為障害
  .81  小児期発症型
  .82  青年期発症型
  .89  発症挑戦性障害
  313.81 反抗挑戦性障害
  312.9  特定不能の破壊的行動障害
 幼児期または小児期早期の哺育、摂食障害
 チック障害
 排泄障害
 幼児期、小児期、または青年期の他の障害

せん妄、認知症、健忘性障害、および他の認知障害
 せん妄
 認知症
 健忘性障害
 他の認知障害

一般身体疾患による他のどこにも分類されない精神疾患

物質関連障害
 アルコール関連障害
 アンフェタミン(またはアンフェタミン様)関連障害
 アンフェタミン誘発性障害
 カフェイン関連障害
 大麻関連障害
 コカイン関連障害
 幻覚剤関連障害
 吸入剤関連障害
 ニコチン関連障害
 アヘン類関連障害
 フェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)関連障害
 鎮静剤、催眠剤、または抗不安薬関連障害
 多物質関連障害

統合失調症および他の精神病性障害
  295.xx 統合失調症
    .30妄想型
.10解体型
.20緊張型
.90鑑別不能型
.60残遺型
295.40 統合失調症様障害
295.70 失調感情障害
297.1  妄想性障害
298.8  短期精神病性障害
297.3  共有精神病性障害
293.xx …[一般身体疾患]…による精神病性障害
.81 妄想を伴うもの
.82 幻覚を伴うもの
298.9  特定不能の精神病性障害

気分障害
 第5位数字に大うつ病性障害または双極Ⅰ型障害の現在の状態をコードせよ:
  1=軽症
  2=中等症
  3=重症、精神病性の特徴を伴わないもの
  4=重症、精神病性の特徴を伴うもの
  5=部分寛解
  6=完全寛解
  0=特定不能
 次の特定用語は以下のように(現在または最も新しいエピソードについて)気分障害に適用される。
  a 重症度/精神病性/寛解の特定用語
  b 慢性
  c 緊張病性の特徴を伴うもの
  d メランコリー型の特徴を伴うもの
  e 非定型の特徴を伴うもの
  f 産後の発症
 次の特定用語は以下のように気分障害に適用される。
  g エピソードの間欠期に完全回復を伴う、または伴わないもの
  h 季節型
  i 急速交代型

 うつ病性障害
  296.xx 大うつ病性障害
  .2x  単一エピソードa.b.c.d.e.f
  .3x  反復性a.b.c.d.e.f.g.h
  300.4  気分変調性障害
  311  特定不能のうつ病性障害
 双極性障害
  296.xx 双極Ⅰ型障害
   .0x  単一躁病エピソードa.c.f
  .40  最も新しいエピソードが軽躁病g.h.i
  .4x  最も新しいエピソードが躁病a.c.f.g.h.i
  .6x  最も新しいエピソードが混合性a.c.f.g.h.i
  .5x  最も新しいエピソードがうつ病a.b.c.d.e.f.g.h.i
   .7   最も新しいエピソードが特定不能g.h.i
  296.89 双極Ⅱ型障害a.b.c.d.e.f.g.h.i
  301.13 気分循環性障害
  296.80 特定不能の双極性障害
  293.83 …[一般身体疾患を示すこと]…による気分障害
  -----.--- 物質誘発性気分障害
  296.90 特定不能の気分障害

不安障害
  300.01 広場恐怖を伴わないパニック障害
  300.21 広場恐怖を伴うパニック障害
  300.22 パニック障害の既往歴のない広場恐怖
  300.29 特定の恐怖症
  300.23 社会恐怖
  300.3  強迫性障害
  309.81 外傷後ストレス障害
  308.3  急性ストレス障害
  300.02 全般性不安障害
  293.84 …[一般身体疾患を示すこと]…による不安障害
  -----.--- 物質誘発性不安障害
  300.00 特定不能の不安障害

身体表現性障害

虚偽性障害

解離性障害
  300.12 解離性健忘
  300.13 解離性とん走
  300.14 解離性同一性障害
  300.6  離人症性障害
  300.15 特定不能の解離性障害

性障害および性同一性障害
 性機能不全
 性的欲求の障害
 性的興奮の障害
 オルガズム障害
 性交疼痛障害
 一般身体疾患による性機能不全
 性嗜好異常
  302.4  露出症
  302.81 フェティシズム
  302.89 窃触症
  302.2  小児性愛
  302.83 性的マゾヒズム
  302.84 性的サディズム
  302.3  服装倒錯的フェティシズム
  302.82 窃視症
  302.9  特定不能の性嗜好異常
 性同一性障害
  302.xx 性同一性障害
  .6   小児の性同一性障害
  .85  青年または成人の性同一性障害
       ▼該当すれば特定せよ:
         男性に性的魅力を感じる
         女性に性的魅力を感じる
         両性ともに性的魅力を感じる
         両性ともに性的魅力を感じない
  302.6 特定不能の性同一性障害
  302.9 特定不能の性障害

摂食障害
  307.1  神経性無食欲症
  307.51 神経性大食症
  307.50 特定不能の摂食障害

睡眠障害
 原発性睡眠障害
  睡眠異常
   307.42 原発性不眠症
   307.44 原発性過眠症
   347   ナルコレプシー
   780.57 呼吸関連睡眠障害
   327.3x 概日リズム睡眠障害
     .31  睡眠相後退型
     .35  時差型
     .36  交代勤務型
     .30  特定不能型
   307.47 特定不能の睡眠異常
 睡眠時随伴症
   307.47 悪夢障害
   307.46 睡眠驚愕障害
   307.46 睡眠時遊行症
   307.47 特定不能の睡眠時随伴症
 他の精神疾患に関連した睡眠障害
 他の睡眠障害

他のどこにも分類されない衝動制御の障害

適応障害

パーソナリティ障害
 注:これらはⅡ軸にコードされる。
 301.0  妄想性パーソナリティ障害
 301.20 シゾイドパーソナリティ障害
 301.22 失調型パーソナリティ障害
 301.7  反社会性パーソナリティ障害
 301.83 境界性パーソナリティ障害
 301.50 演技性パーソナリティ障害
 301.81 自己愛性パーソナリティ障害
 301.82 回避性パーソナリティ障害
 301.6  依存性パーソナリティ障害
 301.4  強迫性パーソナリティ障害
 301.9  特定不能のパーソナリティ障害

臨床的関与の対象となることのある他の状態
 身体疾患に影響を与えている心理的要因
 投薬誘発性運動障害
  332.1  神経遮断薬誘発性パーキンソニズム
  333.92 神経遮断薬誘発性悪性症候群
  333.7  神経遮断薬誘発性急性ジストニア
  333.99 神経遮断薬誘発性急性アカシジア
  333.82 神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジア
  333.1  投薬誘発性姿勢振戦
  333.90 特定不能の投薬誘発性運動障害

 他の投薬誘発性障害
 対人関係の問題
  V61.9  精神疾患または一般身体疾患に関連した対人関係の問題
  V61.20 親子関係の問題
  V61.10 配偶者との関係の問題
  V61.8  同胞との関係の問題
  V62.81 特定不能の対人関係の問題
 虐待または無視に関連した問題
  V61.21 小児への身体的虐待
  V61.21 小児への性的虐待
  V61.21 小児への無視
  -----.--- 成人への身体的虐待
  V61.12 (配偶者による場合)
  V62.83 (配偶者以外の者による場合)
  -----.--- 成人への性的虐待
  V61.12 (配偶者による場合)
  V62.83 (配偶者以外の者による場合) 
 臨床的関与の対象となることのある状態、追加
  V15.81 治療遵守不良
  V65.2  詐病
  V71.01 成人の反社会的行動
  V71.02 小児または青年の反社会的行動
  V62.89 境界知能
    注:これはⅡ軸にコードされる
  780.9  年齢に関連した認知能力の低下
  V62.82 死別反応
  V62.3  学習上の問題
  V62.2  職業上の問題
  313.82 同一性の問題
  V62.89 宗教または神の問題
  V62.4  異文化受容に関する問題
  V62.89 人生の局面の問題

追加コード

多軸システム
Ⅰ軸 臨床疾患
   臨床的関与の対象となることのある他の状態
Ⅱ軸 パーソナリティ障害
   精神遅滞
Ⅲ軸 一般身体疾患
Ⅳ軸 心理社会的および環境的問題
Ⅴ軸 機能の全体的評定
# by open-to-love | 2007-06-24 00:40 | DSM-Ⅳ-TR | Trackback | Comments(0)

障害者差別禁止法とは

障害者差別禁止法
 障害のある人に対する差別を禁止する法律です。現在、日本にはありません。差別禁止法は、「障害」は個人に内在する機能の障害に基づくというよりも、むしろ社会環境のあり方に基づいているという考え方に立っています。米国の「障害のあるアメリカ人法」(ADA)をはじめ、英国・カナダ・オーストラリアなど、障害のある人に対する差別を禁止する法律を持つ国は世界で43カ国を超えています。
 差別禁止の規定を定める方法としては、憲法・刑事法・民事法あるいは社会福祉法による規定があります。憲法は広範すぎて実用的でない場合が多く、刑事法は重大な差別行為しか対象にしにくいという限界があります。障害のある人に対する差別は住宅の賃借・就労・作業所の設置など市民生活のなかで生じやすいので、民事法で差別の内容や類型(労働・教育・住居・情報・社会活動など)をできる限りくわしく規定する方法がその目的に適しています。民事法では「何が差別として許されないのか」を明らかにし、人々に行動基準を示すとともに裁判の基準を明確に提示することができます。
 差別禁止法の重要な要素として、差別を生じさせないための「合理的配慮義務」があげられます。障害のある人に対する差別は、社会の側から「行わなければならない合理的配慮」を行わないために生じるのであり、障害のある人は他の人と同様に社会参加の機会を与えられる権利をもっており、社会に対して必要な合理的配慮を行うよう要求できるというものです。たとえば、うつ病の人が就労に困難を生じるのは、雇用主が勤務時間や作業内容・作業量・通院や入院のための休暇などを調整することを怠っていることに基づいていると考えます。
 従来の社会制度は、障害のある人が参加・利用することを想定せずに設計されてきました。障害のない健康な壮年期の男性(ミスター・アベレッジ=平均的男性)が想定される場合が多いため、前提として想定されなかった人(女性・老人・病人・障害のある人など)には使い勝手が悪いものとなっています。しかし、性別・年齢をはじめさまざまな身体的・精神的特性を持った人々がいるのが通常の(ノーマルな)現実の人間社会であり、差別禁止法は社会をより現実に認識し、社会制度のあり方に即したものに変革してゆく意味を持っています。
 現在、国連では障害のある人の権利条約の策定を進めており、障害のある人の権利と平等を保障する方向は世界的な規模で進んでいます。
(池原毅和/いけはらよしかず/東京アドヴォカシー法律事務所)
(月刊「ぜんかれん」2004年4月号)
# by open-to-love | 2007-06-23 22:45 | 国連障害者権利条約 | Trackback | Comments(0)

ひとり暮らしのやりくり

特集「ひとり暮らしのやりくり」(「月刊ぜんかれん」2004年4月号)

退院後のひとり暮らし Mさんへのインタビュー
(聞き手 大谷正昭 精神保健福祉士・特定非営利活動法人「那須フロンティア」事務局長)

Mさん(56歳、女性)2002年まで精神科病院に7年間入院、現在は単身アパート生活中。経済基盤は生活保護。

Q.退院前に心配だったことはどんなことですか?
 家事などを含め生活していくことへの不安はなかったです。でも、本当に一人での生活ができるかが常に頭にありました。入院していた病棟は60人の人がいて、集団での生活が長くなっていたぶん、不自由な面はたくさんあったけど、いざ一人で話し相手もなく孤独に耐えられるかが不安だった。
 でも、退院に対しては意地があったんです。家族や病院やその他いろいろな人に対して、やれなかったらまた入院となったら自分自身に対して悔しく思うので、意地もあったんですよ。

Q.退院した当初困ったことはどんなことですか?
 はじめの1カ月間は孤独感で一杯になり、生活を続けながら孤独感を抱える状況を耐えることがつらく、「病院に戻って生活したほうが楽になるのではないか」と思ったりしました。この間は、夜に公衆電話に行っては病院へ電話を入れてスタッフと話をしたり、散歩をしたりなどして気持ちをまぎらわしていたんですよ。とにかく、三カ月間は振り返るととても長かった。一年くらいに感じました。
 退院後、訪問看護と外来作業療法を利用しました。自分にとっては利用してとてもよかったと思います。この二つを利用していなかったら今の自分はなかったと思う。訪ねてくれる安心感と目的があって、そのうえ安心して行ける場所があったというのは本当によかった。
 その後、ひと山は越えることができましたが、冬が近づくにつれて冬場を自分一人で越すことに対して大きな不安がありました。しかし、今思うと、気持ち的に張りがあったので逆に踏ん張ることができたのではないかとは思います。また、冬を乗り切れたことですごく自信がつき、強くなることができたように思います。
 それからは、近所の人などと知り合いになることができて、生活に活力が出てきました。たとえば、近所のおばさんと知り合いになって、その人から畑を借りて野菜をつくり始めたり、裁縫が得意で、たまたま行った近くの温泉で何人かの人と意気投合したことから交流ができ、注文を受けては裁縫でいろいろつくってあげたりする仲になりました。

Q.お金のやりくりはどうしていますか?
 入院中から生活保護を受けているので、退院後も引き続き生活保護で生活しています。お金については充分足りています。毎月のお金でバイクの免許を取ることができて移動するのには楽になったし、都内で開かれたお花の催し物にも行ったりしています。去年の退院後1周年には記念日として旅行に行ったりもしました。
 ただ、精神科病院へはきちんと通院はしているんだけど、けがをしたときとか身体に不調を感じたとき、生活保護ということに抵抗があり、医療費が無料になるので申し訳ないと思い、受診するのもとまどって、結局我慢してしまうんです。制度として認められていることはわかっているんだけど、やっぱり自分としてはとまどってしまうんですよ。

Q.現在はどんな生活ですか?
 現在は、外来作業療法へは1週間に1回顔を出す程度なんです。自宅で頼まれた裁縫をしたり、図書館へ行ったり、近所の知り合いになった人と話したり、温泉に行ったりして結構忙しいんですよ。
 時折、親やきょうだいに対して突然憎しみがわいてきてどうにもコントロールできなくなるときがあります。そんなときは、友達に話を聞いてもらって気を落ち着かせたりします。
 これからのことは、正直、「わからない」っていうのが本音です。人に迷惑かけたくないのでいつまでも自活して生活して行きたいけど、老後はのんびり老人ホームみたいなところで過ごしたいです。

 Mさんの退院に向けて、病院のソーシャルワーカーは関係機関の調整・家族との連絡・利用できるサービスの情報提供・住宅確保のアドバイスなどを行っていきました。「自分のことは自分でする」ことを基本として、退院までの実際の道筋はMさんがご自分でつくられました。
 退院当初はご本人も言われていた通り、不安やあせり、孤独といった状況のなかで本当に苦しい時期の山を越えられました。Mさんの苦しさは訪問などの際にも伝わってきていました。ひとり暮らしを行ううえで、不安を軽減できるようにまわりが支援していくことも大切なことですが、障害があろうとなかろうとその人らしく暮らしていく構えを早い時期から一緒に考えていくということも必要なのではないかとMさんと関わらせていただいたなかから教えられたように思います。(大谷)

インタビュー アパートを探している精神障害のある人へ 不動産屋とのつきあい方
(飯塚稔 有限会社ユマニテ(住宅仲介)代表取締役)

アパート紹介のはじまり
 東京都世田谷区で賃貸の仲介をする不動産会社を23年間経営しています。20年ほど前に世田谷区家族会の会長・幹事さんが来社され、精神障害者の共同作業所を開設するのに適当な場所を探しているので「賃貸物件を紹介してほしい」とのことでした。心当たりの物件があり貸主と交渉しましたが、すぐには貸主の了解が得られませんでした。精神障害者の置かれている立場を幾度となくお話しして理解いただき、共同作業所「さくら美術工房」が発足しました。その後、グループホームの物件を始め、家族会や二つの大きな病院のケースワーカーの依頼などで30戸近くを紹介してきました。
 アパートを紹介するときには、貸主の承諾を先に得てから紹介します。現在はもっぱら「世田谷区居住支援制度」を使っているため、物件を紹介しやすくなりました。しかし、入居される方の火の不始末など事故に対するおそれや、病気の悪化など入居後の生活について心配する大家さんが多く、まだまだ理解を得ることはむずかしい状況です。それでも20年前に較べればずいぶん変化が出てきました。

不動産屋でアパートを探す
 精神障害のある人が部屋を探しに不動産屋に来るとき、精神障害のあることをかくしたい気持ちはわかりますが、ご自分の状態・身分をはっきりとさせていただいた方が、私たちも適切な物件を紹介することができます。まったく紹介なしで精神障害のある方がご自分でアパート探しのために来られることもありますが、単独で来られる方には「ケースワーカーに相談してもう一度いらっしゃい」と言っています。入居される方の生活ぶりを知っている人の顔が見えないと、貸主(大家さん)に紹介はできないからです。
 私たちが紹介する精神障害のある入居者はすべて生活保護を受けている人です。家賃の支払いがとどこおったり収入が不安定だったりする人を紹介することはできませんので、生活保護を受けている方はむしろ安心して紹介できます。

保証人がいないときどうするか
 世田谷区では2001年に「居住支援制度」ができ、アパートを借りる際に保証人がいない高齢者・障害者に対して区と契約している保証会社が保証人を代行しています。
 ただし、制度を申し込んでも4割ぐらいの人は申請が通りません。手続きの申し込みの際に緊急連絡先を記入しなければいけないのですが、その人に連絡がなかなかつかなかったりすると申請が通りにくいようだと聞いています。ただし、私たちのところで制度を申し込む人は連絡先がきちんとしている人ですので、申請が通らない理由がわからないです。その場合は、私たちのところでつきあいのある他の保証会社を紹介しています。
 保証人の代わりに保証会社を使う場合には、不動産屋で保証会社を紹介してもらうと安心だと思います。だいたい保証料として家賃+共益費1カ月分を支払うことで、2年間分の家賃の保障を受けることができます。生活保護からはこの補償料が出ないので、補償料に対する助成があるとよいと感じています。また、世田谷区では生活保護の家賃は5万3000円以内になっていますが、この金額の範囲内でアパートを探すのは非常に見つけにくいのが実情です。

いざというときのために
 私たちの不動産店を通じてアパートに入居される精神障害のある人は、制度を利用する人もしない人も、すべて1人に1枚の「入居者関連事項」を作っています。そこには、複数の緊急連絡先・医療機関(担当医・ケースワーカー)・保健福祉センター(保健師・担当ワーカー)・居宅介護支援事業者・ホームヘルパー派遣事業者・デイケア・作業所・配食サービス・民生委員・住居仲介業者・貸主・協力者・緊急通報サービスの氏名・連絡先が書かれています。
 不動産屋は入居者と大家さん、関係機関の人たちとの連絡係のようなものです。日々、対応に追われています。長く入院していた人などは生活技術を身につけていない人が多いので、それが大家さんや近所とのトラブルの元になっています。そこで、私たちのところではアパートで暮らすための最低限度のルール(表)を紙に書いて、入居者に渡すようにしています。
 20数年間、アパートに暮らす精神障害のある人たちを見てきて、温かい気持ちで接すればだんだんよくなるのだなと思います。ストレスを受けやすい人が多いので、それをほぐせるところもあって、そのうえでだんだんに経験を積んでいく場所があることが大事ではと思っています。
(聞き手・構成・月刊「ぜんかれん」編集部)

表:アパート暮らしを快適にするための基本的なこころえ

表札:玄関ドアとポストに部屋番号と氏名を表示する。
公共料金の手続き:引っ越した日から電気・ガス・水道などが使えるよう、各自の名前で名義登録をする。

ゴミ出し:ゴミを出すには「ゴミの出し方のルール」を守り、ゴミ置き場が汚れているときはきれいにするなど気をつけて、お互いに気持ちよくする。
(ゴミの出し方のルール:決められたゴミ置き場に出す。出す日・曜日・時間が決まっているので守って出す。ゴミ袋の種類などのルールは役所で紙をもらうか、大家さんに聞いておく)

トイレ:トイレが故障すると悪臭が発生するので、きれいに使う。ティッシュペーパーなどを流すと詰まるのでトイレットペーパー以外は流さない。

台所:食べ物をこぼれたままにするとゴキブリが出たり、ぬれたままにするとカビが生えたりするので清潔にする。換気扇や排水口はときどき掃除する。

浴室:カビを防ぐため湿ったままにしないで換気する。排水口は髪の毛で詰まりやすいので、ときどき掃除する。風呂の沸かし方は説明書を読んで使用する。

部屋:ときどき窓・押し入れを開けて換気する。ポスターやフックは最低限に留める(なるべく新しい穴は開けない)。電話はコードの配置上、決まった場所につける。窓の手すりには植木鉢などを置かない。床を水洗いしない。穴を開けるなどの改造をしない。

共有部分:通路・階段などは非常時の避難経路になるので、物を置かない。

冷暖房:エアコンの設置で壁に穴を開ける必要がある場合は、事前に大家に相談する。

防犯・防火:タバコや火・ガス・電気を使う際には、まわりの物に燃え移らないよう十分注意する。外出時には火の元をチェックし、ドア・窓に鍵を掛ける。たき火はしない。消火器を1本用意しておく。

やってはいけないこと:ペットを飼うこと。駐車場以外の敷地内及び路上への駐車。近隣の人とケンカすること。騒ぐこと。賭博行為。火薬やガソリンなど危険物の持ち込み、TVやステレオを大きな音で聞いたり大声で歌ったりすること、これらは近所の迷惑になるのでやってはいけない。

その他:近所の人にあったらあいさつしよう。自治会に入会しよう。顔見知りのいる町内が安心。

世田谷区居住支援制度:アパートなどの民間賃貸住宅に入居しづらい高齢者や障害者が保証人の代わりに保証会社を利用できるなど、入居・居住継続を支援する制度。区内の協力不動産店(約1200カ所)で手続きを行います。
 入居者は保証料(家賃+共益費の30%×24カ月分を一括支払い)を保障会社に支払い、初回の保証契約に限り保証料の半額(2万円が限度)を区が助成します。
 利用できるのは、区内在住(2年以上)の60歳以上の高齢者・障害者(身体・知的・精神障害の手帳保持者)・18歳未満の子どもがいるひとり親家庭です。
問い合わせ先:(財)世田谷区都市整備公団まちづくりセンター

 なお、高齢者・障害者・ひとり親家庭・外国人などを対象とする「居住支援制度」はいくつかの市区町村で行われています。くわしくは市区町村の住宅課にお問い合わせ下さい。
# by open-to-love | 2007-06-23 22:29 | 地域生活 | Trackback | Comments(0)