精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
全家連の活動の報告

1.家族会の誕生
 家族会は、当初病院側の計らいで生まれた病院家族会が始まりである。1960(昭和35)年頃から、青森、茨城、千葉、東京等の地域を代表する大病院で徐々に家族会が開かれるようになった。
 地域家族会は、京都府と栃木県で先駆的な活動が実を結び、1962(昭和37)年から63(昭和38)年には県内で連合的な組織が生まれるまでになった。
 1963(昭和38)年、厚生省による戦後二度目の精神衛生実態調査が実施された。この調査によれば、精神障害者は全国に124万人おり、そのうち精神病者が57万人、知的障害者(精神薄弱)40万人、その他が27万人で、医療も指導も受けていない者が65%あった。精神病者に限ると、入院が必要な者28万人であるが、精神科病棟は14万床で、治療も指導も受けていない者53%であった。この結果は直ちに好評され、パンフレットの配布や新聞報道もされたが、関係者に注目されたに留まった。なおこの年、米国ではケネディ大統領が米国議会に「精神病及び精神薄弱に関する教書」を提示し、精神障害者の隔離収容策から地域ケアへの転換を国策とした。
 ところが翌1964(昭和39)年3月、ライシャワー米大使刺傷事件が発生、精神病院入院歴のある少年の犯行ということで、精神障害者に対する警戒感が一挙に高まり、わが国では監視を強める法改正を進める動きがみられた。
 これに対し精神医療界は反対運動を展開、人権侵害を指摘する新聞報道も現れる中、各病院で反対署名活動が始まった。東京、京都、栃木などの家族会も同調、署名活動に参加した。
 その結果、緊急的な法改正の動きは阻止され、精神衛生法の改正は精神衛生審議会に諮問されることになった。
 この運動の過程で家族会の存在が明らかになり、直後に開かれた日本精神神経学会総会でのシンポジウムに、急遽家族の代表が招かれる機会を得た。参加したのは発足したばかりの全国精神障害者家族会協議会東京部会会長の石川正雄氏で、家族の苦境と家族会の必要性を訴え、満場の聴衆に多大な感動を与えた。石川氏は元朝日新聞社記者で、厚生省の大谷藤郎技官らと家族会の全国組織をつくろうと精力的な活動をしていた人である。しかし、その後間もなく過労から急逝されて、深い信頼を置いていた大谷技官を大いに悲しませた。

2.家族会全国組織(全家連)の結成
 精神衛生審議会は、1964(昭和39)年7月、精神衛生法改正に関する中間答申を発表した。保健所や地方精神衛生センターの整備等による在宅精神障害者の指導体制強化や社会復帰施設の設置など当時としては画期的な内容が含まれていた。
 この答申案に対して、すばやく反応したのは、茨城・友部病院の家族会員たちであった。すなわち「全国精神障害者家族協議会茨城部会」の名で、精神障害者を監視、取り締る暴挙は止め、中間答申に沿う事項の実現に向けて、政府及び関係方面に陳情する署名を呼び掛けたのである。
 同年9月、厚生省は答申に基づき精神衛生対策費の概算要求を発表した。しかし、景気後退による財政難から新規予算の獲得は厳しい状況にあるとみられた。大谷技官からは、患者家族の切実な声が必要だ。各県の家族会を通じて全国的に議員に働き掛けるようにしなければ現状は打開できないと示唆された。
 この差し迫った状況に、友部病院の古川院長、永田医局員らは友部病院家族会会長の瀧山氏に、全国組織の代表として予算獲得等の陳情をする必要を説いた。意を決した瀧山氏は全国主要精神病院及び家族会に手紙を送り、全国組織(全家連)の結成を呼び掛けると共に、結成前に全家連名で活動してよいか同意を求めた。大方の了解を得た瀧山氏は、10月に開かれた日本精神神経学会・精神衛生法改正対策委員会に出席、家族会の現状と希望を述べ、精神衛生法の全面改正に向けて共に活動することを誓い合った。
 12月に入ると、「全国精神障害者家族連合会」として初めて厚生大臣への陳情を行い、瀧山会長、石川あき夫人、高山秋雄氏(鳥山病院家族会会長)ら代表9人は2千人が署名した要望書を提出した。
 同月下旬、予算折衝で全家連が要求していた内容が通らない報が伝わるや、瀧山会長、古川院長らは各家族会に決起を呼び掛ける電話を掛け、医療関係者と共に厚生省へ予算復活について統一陳情を行うことにした。当日は途中から雨が降る中、陳情団は厚生省、大蔵省にデモし、代表団は首相官邸でも会見をするなどして、予算復活に成果をあげた。
 このような中、全国組織・全家連結成の機運はいよいよ高まり、翌1965(昭和40)年、東京、茨城の家族会を中核として全国の家族、病院関係者など73人が出席して結成大会準備会が開かれた。そこで、全国組織の目的、会則、組織、運動方針、予算など結成大会で提案する内容について討議され、大会開催の準備に入った。
 同年9月4日、東京(新宿)・安田生命ホールに全国から500余人の家族と関係者が集り、結成大会が開催された。大会は第一部で全家連結成のための規約や役員が決定され、会長には瀧山氏が選出された。第2部では来賓を交え、家族の体験発表や大会の要請文確認などが行われた。こうして全家連の輝かしい一歩が踏み出されたのである。

3.全家連の活動と組織の発展
 発足した全家連は、事務局を友部病院に置いて直ちに活動に入った。年2回の全家連だよりを発行すると共に、翌年には全国家族会調査を行い、活動資金として100万円募金も開始した。事務局を東京の松沢病院に移転している。
 発足して3年目の1967(昭和42)年、財団法人の認可を得、初代理事長に瀧山氏が就任、事務局を東京・聖和病院に移した。
 翌1968(昭和43)年には、早くも月刊「ぜんかれん」を創刊、相談室も開設して本格的な事業の定着が図られた。同時に保健福祉施策に対する要望活動も動き出し、この年、医療費の10割給付の請願(3万5千人の署名)と中間施設設置の請願(5万人の署名)を行った。
 以後、全国大会の開催や福祉法を初めとする保健福祉施策推進の要請など活発な活動を続け、わが国の精神保健福祉の向上に大きな役割を果した。中でも全国の家族会を通じて行う家族のニーズ調査は、行政では得られない貴重な資料を提供した。また、制度のない中での作業所設置運動など、後の法整備を促す先駆的な活動もあった。それらのあらましは、14〜15ページの全家連の年表にて確認することができる。

4.本部ビルの建設
 家族の思いを込めた諸活動が徐々に功を奏し、精神障害者福祉を入れた法改正が進むようになり、1988(昭和63)年、精神衛生法は精神保健法と改正、施行され、初めて社会復帰施設建設が認められた。そうなると事業の拡大・活発化に対処できる活動拠点と全国のモデルとなる社会復帰施設を併せた、「全家連・全国精神保健福祉センター」構想が語られるようになった。
 そのような背景がある中、全家連常務理事で東京都の家族会連合会会長の中村友保氏から用地提供の申し出があった。「障害を持った娘のために用意した土地であったが、娘が急に亡くなったので全家連に寄付し、障害者のために役立てて欲しい」との趣旨である。種々検討の末、千葉県松戸市にある土地は売却し、全国の人が集り易い上野駅近くの土地を買い求めた(約4億円)。建物の建設資金は補助金、会員募金、寄付金、長期借入金等で確保し、その土地に地下1階地上7階のビルを建てた。建物の名称は中村友保、千恵子ご夫妻の名前から「恵友記念会館」とした。現在の全家連本部ビルである。全家連事務局、通所授産施設、小規模作業所、研究所等が入居し、「全国精神保健福祉センター」としての活動の本拠となった。

5.ハートピアきつれ川の建設(前半)
 精神保健法が施行され、各地に社会復帰のための施設が稼働し始めたが、厚生省の中で、「もう少し夢のある事業、例えば自然の中で障害者が働ける温泉付き保養所みたいなものができればいいなという構想」が持ち上がった。国の予算をつけたいと予算要求をしてみたが果せなかった。民間委託でやってみたいが、恵友記念会館建設で実績のある全家連で取り組んでみないかとの打診があった。
 全家連としてもこのような施設を望んだ経緯はあったが、膨大な金額の要る大事業なので、理事会では厚生省が全面的に支援してくれるならばとのことで趣旨に賛同した。
 夢のある事業は動きも速く、用地の候補が2、3挙がる中で、検討の結果、栃木県喜連川町の県有地に絞られ、有償の払い下げが実現した。地元での説明会を始める頃、温泉地で精神障害者が働いて社会復帰を目指す保養所の建設は、マスコミの注目を集め、1992(平成4)年には新聞やテレビで報道されるところとなった。
 住民の受け入れが進む一方で、多額の建設資金の確保には、当面、公益資金の補助申請とチャリティ事業での収益が期待され、全国10カ所で北原ミレイのコンサートが計画された。…

 ここまでが、全家連バラ色の半生。以後、暗澹たる展開となります。乞うご期待(?)(黒)

5.ハートピアきつれ川の建設(後半)

6.啓発活動の要務

7.補助金不正流用の発覚

8.新体制による対応

9.募金活動と返済・返還軽減の交渉

10.障害者福祉制度改正の動き

11.借入金返済・補助金返還問題
(月刊「ぜんかれん」特別号所収「『ぜんかれん』の皆様へ」2007年4月)
# by open-to-love | 2007-05-26 22:26 | 全家連 | Trackback | Comments(0)
「精神障害者の生活を支えるために」

はじめに
 このパンフレットには「精神障害者の生活を支えるために」という名前がついていますが、ほんとうは、このパンフレットを手に取る、すべての方の役に立つよう作成したものです。
 6ページまでは、こころの健康の基礎知識です。
 7ページから12ページは、精神障害者の生活を支える制度についてわかりやすくまとめました。
 13ページ以降は、精神障害者のことをとおして、生きることを支える社会のあり方について書いてあります。
 このパンフレットは、「こころの健康を育てる地域の会」のメンバーが、精神科医療の専門家の助言を得て作成したものです。メンバーは医師、保健師、市民の一員として地域づくりに取り組んでいる精神保健福祉士、それに精神障害者の絵が大好きなデザイナーです。
 悩むことは生きることです。
 このパンフレットが少しでも、皆様のお役に立てば幸いです。
 平成14年10月
 「こころの健康を育てる地域の会」を代表して
 国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部長 竹島正

こころとは?
 私たちはたえず、見たり、聞いたりして、いろいろな情報を取り入れ、それについて瞬時に反応したり、ゆっくり考えたりします。これを支えているのがこころ(精神活動)です。こころ(精神活動)とは、私たちの身体の中にあって、私たちの毎日の活動を支えているものです。
 たとえば買い物をしていて、ほしいなあと思う。でも高いと思って買わないこともあれば、迷いながらも買ったりする。あるときは希望に満ちて、あるときは悲しい気持ちでいっぱいになる。これがこころです。
 私たちは、たえず認知し、判断し、行動することを繰り返しています。それを支えているのがこころ(精神活動)です。
 こころ(精神活動)のはたらきは脳が担っています。専門的には「高次脳機能」といいます。

こころの病とは?
 こころが病むとは、認知し、判断し、行動することの繰り返しが、脳の障害や、ひどい疲れのために損なわれ、日常生活に影響が出ている状態をいいます。
 「こころの病」とは、脳のはたらきがうまくいかない状態と理解してください。

こころの病のなりたち
 同じくらいのストレスを経験しても、「こころの病」になる人もいれば、まったく平気な人もいます。
 「こころの病」になるかならないか、また「こころの病」になった場合の重さや病気の経過は、その人の個性や特徴、ストレスの大きさや性質、ストレスに出会ったときのその人の心身の状態、ストレスへの対処の仕方やどのような援助が得られたか、によって異なります。
 ストレスが相当大きくても、周囲の支えがあり、適切な休養や対処があれば、「こころの病」は軽くて済みます。
 「こころの病」は、決して人間らしさの根源が侵される病ではありません。
 「こころの病」は誰にでも起こり得る、ふつうのものであることを理解してください。「こころの病」になっている人も、あなたがとなりにいるごくふつうの人なのです。

「こころの病」のいろいろ
 コンピューターを例にとると、「こころの病」は次のように対比できます。
①コンピューター本体にあらわれた異常です。こころ(精神活動)をつかさどる脳の組織自体が明らかな損傷を受けた場合や、身体の病気やアルコール・薬物などの影響によって、脳のはたらきがうまくいかない状態です。痴呆症、事故による脳の損傷、アルコール依存症などがこれに当たります。
②コンピューターがよくフリーズしたり、ネットワークの異常を繰り返して、円滑に作動しなくなった状態です。こころ(精神活動)をつかさどる脳の組織自体の損傷は小さいですが、脳のはたらきが機能面でうまくいかない状態です。気分障害、精神分裂病(統合失調症)などがこれに当ります。
③コンピューターの機能が使用環境にうまく合わない状態です。脳の組織自体の損傷や機能の障害は見られないのですが、疲れや不調、こころ(精神活動)のはたらきの偏りのために、うまく社会の求めにこたえられない状態です。トラウマ反応(急性ストレス障害、外傷後ストレス障害)、神経症性障害、知的障害や性格の偏りなどがこれに当ります。

 ※このパンフレットでは、こころが病むことの意味をわかりやすく伝えるために「こころの病」という呼び方を用いました。

 脳とコンピューターの違いは? コンピューターはソフトを入れないと動きませんが、脳はソフトを入れなくても動きます。しかも脳はソフト自体をつくり出し、更新していくことができます。脳とコンピューターはずいぶん違います。

「こころの病」の呼び方
 こころを病むとは、認知し、判断し、行動するという繰り返しが、脳のはたらきがうまくいかないために損なわれ、日常生活をうまく維持できない状態のことでした。
 こころを病んだ状態は、「精神病」「精神障害」「精神疾患」などの名前で呼ばれています。
 精神病:脳の障害や極度の精神的疲労のために、すっかり混乱してしまい、現実的で皆と共有できる判断力を維持できず、自分自身の安全や他者への配慮を欠いている状態をいいます。
 精神障害:「精神病」よりも範囲が広くなります。脳のはたらきがうまくいかないために、自分自身の安全や他者への配慮はある程度できるものの、日常生活が維持しがたい状態です。日常生活において福祉サービスを必要とする状態にも使われます。

 精神疾患:「精神障害」とほぼ同じ意味です。こころの病のために、日常生活に影響が出ている状態を、医学的な立場から述べたものです。

 精神保健福祉法における精神障害者:精神保健福祉法では、精神障害者を「精神障害者とは、精神分裂病、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう」と、「精神疾患を有する者」という医学的概念で規定しています。精神保健福祉法における精神障害は、国際疾病分類(ICD-10)の「精神および行動の障害」全体が精神疾患の範囲とされています。個々の制度や条文によって対象となる精神障害者の範囲は異なります。たとえば措置入院は、医療および保護のために入院させなければ自傷他害のおそれがあると判定された精神障害者が対象になります。また福祉サービスの対象は、精神疾患によって、日常生活あるいは社会生活に支障を有する精神障害者となります。

精神障害と治療、リハビリテーション
 ここから12ページまでは、精神障害者(こころの病のために精神科医療の継続と日常生活における福祉サービスを必要とする人たち)について述べます。
Q:病気の治療にはどのようなものがありますか?
A:主な治療は薬物治療です。加えて、病気や回復の様子に応じて精神療法(カウンセリングなど)やリハビリテーションを併用していくことが再発予防につながります。
Q:薬の副作用が心配です。
A:どのような薬にも副作用があります。副作用を心配するあまりに、自分勝手に薬を止めることは病気の再発につながることが多いようです。最近ではより効果的で、副作用が少ない新しいタイプの薬も出ています。
Q:薬は一生服用しなければいけませんか?
A:糖尿病や高血圧と同じように、再発予防のためには長い期間、服用することが大切です。「薬をやめる」ことではなく、病気と仲良くつきあうための手助けとして薬を利用してください。
Q:カウンセリングとは何ですか?
A:普段の診察の中で、自分の生活や不安、将来の目標などを主治医、精神保健福祉士などと一緒に考えたり、話し合ったりすることです。
Q:リハビリテーションにはどのようなものがありますか?
A:「こころの病」によって、〝人づきあいが苦手〟〝集中力がない〟〝段取りが悪い〟などの後遺症が残る場合があります。この後遺症には、リハビリテーションが必要です。精神科デイケアや社会復帰施設等で、軽作業、レクリエーション、スポーツ、社会生活技能訓練(日常生活におけるコミュニケーションの技術などを学ぶ)をとおして、地域で生活するための力をつけます。

平成11年(1999年)精神保健福祉法改正について
 精神障害者が、安心して精神科医療や在宅福祉サービスを受けられるよう、精神保健福祉法が改正されました。主な内容は次の通りです。
1)精神障害者の人権に配慮した医療の確保
 精神科医療審査会の審査機能の強化などが行われました。
2)移送制度の創設
 緊急に入院が必要な精神障害者の移送制度が法制化されました。
3)精神障害者の保健福祉施策の充実
 精神障害者の在宅福祉サービスを、住民に身近な市町村において実施することとなり、保健所は市町村の支援を行うことになりました。そして福祉サービス利用の相談・助言を行うため、精神障害者地域生活支援センターが制度化されました。
4)保護義務の軽減
 保護者の自傷他害防止監督義務を廃止し、自らの意思で治療を受けている患者の保護義務の免除等が行われました。

 精神障害者の在宅福祉サービスを市町村において実施すること、精神保健福祉センターにおいて精神医療審査会の事務等の業務を行うことについては、平成14年(2002年)4月1日からの施行です。その他は平成12年(2000年)4月1日からの施行です。

市町村で行う在宅福祉サービス
Q:市町村で窓口になる在宅福祉サービスは、どのようなものがありますか?
1)精神障害者居宅生活支援事業の実施
 精神障害者のホームヘルプサービス、家族が一時的に介護困難になった場合のショートステイ、地域で共同生活を行うグループホームの提供を行います。
2)在宅の精神障害者の相談、助言、あっせん、調整等
 精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業、精神障害者社会適応訓練事業の利用に関する相談と助言を行います。また必要な場合は、これらの施設や事業が利用できるよう、あっせんや調整等を行います。
3)精神障害者保健福祉手帳の申請受理等
 手帳を所持する人が、日常生活における福祉サービスを必要とする状態にあることを示すことで、福祉的な支援につなげていくための制度です。手帳が交付されると、所得税や住民税の障害者控除があるほか、一部の公共施設や公共交通機関の利用料が減免されます。
4)通院医療費公費負担に関する手続きの申請受理等
 在宅精神障害者が継続して医療を受けやすくするための制度です。承認されると、医療保険と合わせて利用することで、通院医療費の95%が公費負担になります。

Q:市町村役場が窓口だとあまりにも身近すぎて相談しにくいのです。また通院医療費公費負担申請や相談内容が外部にもれることはないですか?
 市町村および関係する機関の職員には守秘義務があります。法律上の手続きを経ることなく、相談内容を第三者に伝えるようなことは一切ありませんのでご安心ください。また相談は来所だけでなく電話や手紙でも受付けています。場合によっては匿名の相談でもかまいません。プライバシーに配慮した対応をしておりますので気軽に相談してください。

 精神障害者居宅生活支援事業(精神保健福祉法第50条3の2)
 精神障害者居宅生活支援事業の種類は次のとおりとする。
精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)
 精神障害者の社会復帰の促進を図るため、精神障害のために日常生活を営むのに支障のある精神障害者につき、その者の居宅において食事、身体の清潔の保持等の介助その他の日常生活を営むのに必要な便宜であって厚生労働省令で定めるものを供与する事業とする。
精神障害者短期入所事業(ショートステイ)
 精神障害者であって、その介護等を行う者の疾病その他の理由により、居宅において介護等を受けることが一時的に困難となったものにつき、精神障害者生活訓練施設その他の厚生労働省令で定める施設に短期間入所させ、介護等を行う事業とする。
精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)
 地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行う事業とする。

居宅生活支援事業の具体例
 実際の在宅福祉サービスはどのように行われているのでしょうか。ホームヘルプサービスを受けている男性の事例を紹介します。
 Aさん 43歳男性 一人暮らし 精神分裂病(統合失調症)
 Aさんは一人暮らしということもあり、普段の食事は外食が多くなりがちでした。先日、近所の診療所を受診したところ、肥満傾向にあり食生活を見直すように指導を受けました。困ったAさんが病院の精神保健福祉士に相談したところ、「ヘルパーさんをお願いしたらどうか」とアドバイスを受けました。
 Aさんは町役場の保健師さんを訪ね、自分の気持ちや困っていることを伝えました。保健師さんは早速Aさん宅を訪問しました。そのあと、Aさん、保健師、病院の主治医、精神保健福祉士と話し合いを持ちました。その結果、Aさんはヘルパーさんの家事援助サービスを週3回利用できることになりました。
 「どんな人が来るのだろう」と心配していたAさんでしたが、最初の訪問では、ヘルパーさんの他に役場の保健師さんも一緒でしたので、リラックスして話をすることができました。
 訪問時には食事の支度や掃除をお願いしています。最近、ヘルパーさんがAさんに、電子レンジの使い方、簡単な調理方法を教えてくれたので、ゆで卵や味噌汁など簡単な料理は自分でもできるようになりました。次第に、Aさんは外食に行く回数が減り、標準体重に近づいてきました。
 何よりも、一人暮らしのAさんにとっては、ヘルパーさんとの世間話が楽しみで訪問が待ち遠しいようです。今では、ヘルパーさんはAさんのよき理解者であり、「生活者の先輩」として応援してくれる、かけがえのない存在になっています。

「こころの病」をもつ人の状況
 全国で「こころの病」のために入院または通院している人は約204万人と推定されています。そのうち入院している人は約33万人、通院している人は約171万人です。
 新たに入院となった人の多くは2〜3カ月で退院しています。また入院せずに精神科デイケアや社会復帰施設等を利用して回復していく人も多くなりました。
 しかし精神障害者社会復帰施設が制度化された昭和62年(1987年)より前に入院した患者さんは、なかなか退院できないまま高齢化しています。平成11年(1999年)患者調査によると、「条件が整えば、退院が可能な人」が約7万2千人いると推定されています。

精神障害と偏見、治るとは
 「こころの病」は誰にでも起こり得る、ふつうのものです。しかし長い間、人間らしさの根源である「こころ」が侵される「不治の病」と誤解されてきました。そのため本人も、家族や周囲の人も、相談や受診に抵抗を感じていました。その結果、治療が遅れ重症化を招いていたのです。
 確かに「こころの病」に人生の途中で出会ってしまうと、それまでは普通にあった社会生活や人間関係が、うまくできなくなることがあります。しかし正しい治療を受けて症状が落ち着いてくれば、糖尿病や高血圧のある人たちと同じように、病気とつきあいながらも、その人らしく、生き生きとした人生を送ることができるようになります。これが「こころの病」が治るということではないでしょうか。
 誰かが「こころの病」になると、その人だけでなく、まわりの人も疲れます。こころの病は「つかれの病」であることも知っておいてください。ご心配なときは、あなたの地域の市町村役場、保健所、精神保健福祉センター、身近な精神科病院や精神科クリニックにご相談ください。きっとあなたの力になってくれます。

これからの課題
 平成14年(2002)年4月から在宅福祉サービスの窓口が、私たちの身近な市町村になりました。「こころの病」をもつ人が、生まれ育った地域の中で〝生き生きと〟生活していくためには、市町村が中心となって、個々に応じた生き方を支援していくことが大切です。
 保健(保健所)、福祉(市町村、精神障害者地域生活支援センター等)、医療(精神科の病院、精神科クリニック)が、それぞれの専門性や役割を発揮しながら、相互に十分な連携を取って協力し合いましょう。
 「こころの病」に関する長年の誤解や偏見を解消するには、こころの健康についての啓発活動を活発に行い、少しでも多くの住民の方々の理解と協力を得て、NPO法人や市民グループを育てていきましょう。
 「こころの病」をもつ人、家族、住民、行政が共に一生懸命考えながら行動し、住まい(グループホーム)や働く場所(作業所・福祉的就労の場)などをつくっていきましょう。
 お互いに信頼関係のある、細やかなネットワークをつくることで、障害がある人もない人も、共に〝生き生きと〟生活していけるまちになるでしょう。

生きることを支える
 私たちの社会には、こころの健康の問題がたくさんあります。
 自殺による死亡者数は4年続けて3万人を超え、特に中高年の男性が増加しています。虐待による相談件数は過去10年間で10倍強に増えました。ひきこもり、家庭内暴力なども増加しているという報告があり、仕事の場でストレスを感じる人も多くなっています。
 みんな暗い話題ばかりです。
 自信をなくした人が増えているのです。
 だからこそ〝生きることを支える〟活動が必要といえます。
 「こころの病」は、〝脳のはたらきがうまくいかない状態〟であると同時に、〝疲れて自信をなくした状態〟でもあります。その意味で、きわめて人間的なものです。
 「こころの病」をもつ人も、もたない人も、みんなで支え合えるあたたかい社会をつくりましょう。

こころの健康を育てる地域の会(代表:国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部長 竹島正)編著「精神障害者の生活を支えるために」(岩手県、平成14年10月)
# by open-to-love | 2007-05-25 17:49 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
特別国会21日召集 政府、与党が方針

 政府、与党は2005年9月12日、特別国会を二十一日に召集し、会期を四十日間程度とする方向で調整に入った。野党側との各派協議会を十四日午後に国会内で開き、協議する。
 衆院選後の特別国会は、首相指名選挙や正副議長選出などにとどめ短期間で閉じる例が多いが、政府、与党は今回衆院選の公約に掲げた郵政民営化関連法案に加え、通常国会で廃案となった障害者自立支援法案や放送法・電波法改正案などの早期成立も目指しており、臨時国会並みの会期を設定する必要があると判断した。(2005年9月13日)


自立支援法案参院審議入り 廃案受け再提出

 身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれている福祉サービスを一元化し、費用の一割負担を利用者に求める障害者自立支援法案は五日午前、参院本会議で尾辻秀久厚生労働相が趣旨説明し、参院での審議が始まった。
 先の国会で審議中に衆院解散により廃案となった法案と同じ内容で、施行日が当初予定の来年一月から四月に変更されている。(10月6日)

障害者自立支援法が成立 サービス一元化 本人費用負担1割

 障害者への福祉サービスを一元化し、費用の原則一割負担を求める障害者自立支援法が2005年10月31日、衆院本会議で可決、成立した。来年四月から施行される。負担増に対する障害者や野党の反対が強く、先の国会では審議が難航。衆院解散に伴い廃案となったが今国会に再提出され、先に参院を通過し衆院に送付された。
 身体、知的、精神の障害種別ごとに分かれていたサービス体系を一元化。これまで障害者に対する在宅サービスなどの「支援費制度」の対象外とされてきた精神障害者も同じ制度を利用できるようになる。
 利用料は、収入に応じた負担となっている現行制度を原則一割負担に変更。負担上限額は月額四万二百円で、低所得者には負担軽減措置を設ける。これとは別に食費、光熱水費が実費負担となる。
 同時に国の補助金不足などが問題となってきた障害者福祉財政を安定させるため、市町村の在宅サービスに対する国の財政負担を義務化する。
 また、現在公費補助を受けている精神障害者の通院費が現在の5%から一割(10%)に引き上げられるほか、人工透析患者など「更生医療」対象者、心臓病の障害児など「育成医療」対象者の医療費負担も原則一割に引き上げられる。
 特定非営利活動法人(NPO法人)による通所施設の運営や、障害者が一般企業などで就労するための支援事業も盛り込まれた。(2005年11月1日)

特別国会が閉会 政府提出21法案成立

 衆院選での与党圧勝を受け、2005年9月21日に召集された第百六十三特別国会は、11月1日閉会した。先の通常国会で否決された郵政民営化関連法案がスピード成立したほか、高齢者虐待防止など政府提出の二十四法案のうち、二十一本が成立、三本が継続審議となった。条約は二本が承認された。議員提出を含む成立した主な法律の内容を整理した。

 特別国会で成立した法律、承認された条約は次の通り。
 【条約】万国郵便連合憲章の第七追加議定書など締結▽郵便送金業務に関する約定締結
 【政府提出の法律】郵政民営化法▽日本郵政株式会社法▽郵便事業株式会社法▽郵便局株式会社法▽独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法▽郵政民営化法整備法▽テロ対策特別措置法改正▽放送法・電波法改正▽労働安全衛生法改正▽銀行法改正▽風俗営業法改正▽一般職職員給与法改正▽国家公務員退職手当法改正▽特別職職員給与法改正▽防衛庁職員給与法改正▽裁判官報酬法改正▽検察官俸給法改正▽最高裁裁判官退職手当特例法改正▽建築物耐震改修促進法改正▽郵便法改正▽障害者自立支援法
 【議員提出の法律】政治資金規正法改正▽国会法・国会議員歳費法改正▽国会議員秘書給与法改正▽国会職員育児休業法改正▽会計検査院法改正▽高齢者虐待防止・介護者支援法(2005年11月2日)
# by open-to-love | 2007-05-25 09:25 | 障害者自立支援法 | Trackback | Comments(0)

家族会をご存じですか?

今はなき全家連のパンフレットによる、家族会の紹介です。

家族会をご存じですか?
家族会は、精神疾患(障害)がある人の家族の集まりです。家族としての悩みを語り合い、互いに励まし合い、助け合う会です。家族同士の体験や情報を好感する場でもあります。また、病気(障害)がある人が住みやすい地域にするための活動を行います。
 家族会は全国に1600カ所ほどあり、6万世帯以上の家族が地域や病院などで定期的な活動をしています。
 精神疾患の回復を支えるためには、正しい知識を身に付けることが大変重要です。そのため治療や対応についての学習をしたり、福祉制度を学んだりすることも家族会の活動の一つです。全国各地にある家族会によって都道府県連合会が組織され、地域独自の講座を開いているところもあります。
 都道府県連合会はそうした活動や精神保健福祉行政に関する情報がありますので、お近くの都道府県の連合会事務局へお問い合わせ下さい。

全国の家族会はこのようにつながっています。
地域家族会・病院家族会
地域の保健所やセンター等で定期的に活動(入院・通院している病院や通所している社会復帰施設にも家族会があるところもあります)
●勉強会などの定期活動(相談業務や施設運営をしているところも)
●懇談会・情報交換(月刊誌の配布や地域の情報交換、悩み相談)

都道府県連合会(県連事務局)
全国各地で家族会は活動しています。その地域家族会同士で都道府県レベルの連携をし、事務局を運営しています。
●都道府県の精神保健福祉行政への働きかけ、啓発活動
●都道府県での家族大会を開催
●相談業務や施設の運営をしている所もあります

財団法人全国精神障害者家族会連合会(全家連)
 47都道府県と連携して全国レベルの連合会事務局を運営しています。

 全家連は1965年、精神障害者の家族によって設立された団体です。全国に精神障害者の家族会がありますが、全家連は家族会の連合体です。設立以来、精神疾患に対する偏見や差別をなくすための啓発活動や知識の普及をはかるための出版活動も積極的に行っています。また、厚生労働省など行政に対して、さまざまな働き掛けを行い、法律や制度の改正や創設に大きな役割を果たしています。
●国の行政への働きかけ、啓発活動
●全国家族大会や全国8ブロックで研修会を開催
●精神障害者に対する社会理解の促進・啓発に関する活動
●月刊「ぜんかれん」、季刊情報誌「Review」発行、各種の出版物を発行、ビデオ制作
●全国からの電話相談
●精神障害者福祉への啓発活動として、ラジオ番組「こころのボイスマガジン きっと元気に!」の提供
●授産施設や共同作業所の設置・運営(東京都台東区)
●「ハートピアきつれ川」…精神障害者が働く温泉ホテル/福祉施設の設置・運営(栃木県)

(全家連相談室編「知っておきたい福祉制度~精神疾患をかかえる人のために」(2006年4月1日発行、定価100円)より引用)

 ちなみに、全家連がさまざま手掛けていたことがらのうち、国への働き掛け等については、全福連が引き継ぎました。授産施設、共同作業所、ハートピアきつれ川については、2007年春から、別の運営主体の下で活動を継続しています。(黒)
# by open-to-love | 2007-05-25 09:20 | 家族会 | Trackback | Comments(0)
2007年度春季研修会~家族の力と当事者力を知ろう

開 催 要 項

【  趣   旨  】

 本年4月17日、財団法人 全国精神障害者家族会連合会の突如の解散発表がありました。県内の皆様におかれましては、困惑、ご懸念など、さまざまにお受け取りになられたことと存じます。今回特別に時間を設け、一連の動きと岩家連のこれからについて、当連合会理事長より、ご報告を申し上げることといたしております。
 さて、今回の研修会は、浦河べてるの家関係者の中から、医療に携わっておられる「治さない医者」、川村敏明氏に語っていただきます。「非援助」、「わきまえのある医療」、これからの医療関係者と患者のあるべき(?)関係を探ってみましょう。また、神奈川県厚木市家族会「フレッシュ厚木」の理事、上森得男氏にも来て頂いております。統合失調症を発症し現在病気をコントロールしながら就労しているご子息を持ち、また自らも「うつ」を発症したご経験をお持ちです。こちらも患者や家族と医者とのより良い関係、服薬の可能性について語っていただきます。県内からも、家族と当事者1人ずつによるメッセージをお届けします。どうぞ、最後までよろしくお願いいたします。


 日時  平成19年5月26日(土)  10:00~
 会場  ふれあいランド岩手 ふれあいホール (盛岡市三本柳8-1-3)
 対象  精神障害当事者及びその家族、医療関係者、精神保健福祉関係機関及び団体の職員、その他一般市民
 定員  200名
 参加費 1,000円
 主催  特定非営利活動法人 岩手県精神障害者家族会連合会
# by open-to-love | 2007-05-22 09:17 | べてるの家 | Trackback | Comments(0)
家族会活動の課題と展望-支援法施行1年、全家連破産・解散、岩家連の危機の中で-

みなさま、ご紹介にあずかりました岩手日報記者で岩家連会員の黒田大介と申します。会員になってまだ1年経ってませんし、まだまだ勉強中の身ではありますが、個人として、記者としてこの1年、感じたこと、考えたことを、お話しさせていただきます。

まず、全国の動向について、話します。岩家連はじめ各都道府県連合会が加盟しており、国との窓口でもあった全国組織である全家連が4月に自己破産、解散しました。詳しくは、月間「ぜんかれん」最終号(4月15日刊行、でも届いたのは5月中旬)所収の小松正泰理事長のお詫び文章、あるいは、解散発表時の新聞報道などお読み下さい。ここでは、岩家連の今後を考える上で、示唆的な点のみ指摘します。

全家連破綻の大きな原因は、小松理事長も会見で話していた通り、栃木県の温泉保養施設「ハートピアきつれがわ」運営で赤字が膨らみ、最終的には10億円近い負債を抱えたことだったようです。企業の寄付金を当て込んで建設に着手したものの、バブル崩壊でさっぱり集まらず、赤字ばっかり膨らみ、国からの補助金を赤字補填に目的外使用し、それがばれ、返還しなくちゃなくなった。岩家連はじめ会員から寄付を募り再生を目指したが、結局だめで、破産・解散に追い込まれた、ということです。

多くの岩家連会員にとって、全家連は遠い存在でした。岩家連を通じて、全家連が毎月発行している月刊「ぜんかれん」誌が届くという関係でしかありませんでした。実際、岩家連から全家連への上納金はありません。にもかかわらず、全家連の解散により、「じゃあ岩家連も解散か」なんて、関係者の間でしばしばささやかれることは、ちょっと哀しいですよね。全家連と岩家連は全く別組織なのに。

さて、岩家連が全家連と同様、危機的状況であることは変わりません。で、岩家連までも解散せず再生するため、全家連解散をなにがしかの教訓とするならば、それは、ある作業所の人が言ってましたが「結局、善意頼みでホテル経営が成り立つほど、世の中甘くない」という現実をきちんと見据えることではないでしょうか。精神障害者の雇用がさっぱり進まぬ中、温泉保養施設を立ち上げ、障害者をホテルマンとして雇い、給料を払い、さらに接客を通じ対人関係を磨き、自立につなげ、かつ、社会=お客さんの理解を進めるという構想は素晴らしく、美しい。でも、世の中そんなに甘くない、という現実を見据えないと、岩家連も全家連の二の舞になってしまう。岩家連は何もすべきではない、というんじゃありません。そうではなく、身の丈にあったことを、実現可能なことを、少しずつ時間を掛けてやることこそ大事ではないかと思います。「善意頼み」でいえば、そもそも岩家連は、八重樫正美さんというボランティアの無償労働=善意を前提として成り立っている組織という意味では、全家連と大差ない。全然自立なんかしてない、という現実から、出発していきましょう。

それにしても、全家連は最悪の時期に解散しました。支援法が施行され1年、「3障害平等」(サービス一元化)となり、いざこれからというときに、解散しちゃいました。ですが、善し悪しは別として、全家連は密かに、自分たちが解散したあとの全国組織を計画していたらしいのです。それが「全福連」(東京都)です。「みんなネット」という機関誌を発行しています。岩家連に加盟要請があり、5月19日、総会で承認されました。

 ところで、もう一つの全国組織「全国精神保健福祉機構」(千葉県市川市)は、みなさんご存じでしょうか。略称は英語の頭文字を取って「コンボ」。こちらは、当事者向けの組織として、機関誌「こころの元気」を刊行しています。「全福連」「コンボ」とも、全家連本部にいた職員がかかわっているということですが、どうして2つの全国組織が生まれたのか?岩手の地からその内情をうかがい知ることはできません。ただ単に仲が悪いだけかもしれない。あるいは、厚労省と全家連幹部のシナリオに沿った形で全福連を作ろうという水面下の動きに対する反発があったかもしれない。

で、それぞれの活動方針・内容については、機関誌以外に判断材料はありません。創刊号を読み比べてみました。私見ですが、はっきり言って、クオリティーははるかにコンボの「こころの元気」が上です。むろん私は岩家連の会員だし、その岩家連が加盟した全福連について、その成長、その機関誌である「みんなねっと」の内容充実を願ってやみません。しかしながら、当面、「みんなねっと」だけじゃ、全国の動向はさっぱり分かりません。で、私はコンボの会員にもなっています。コンボは、全福連のように団体加盟する組織ではなく、個々人が会員になって機関誌を購読する形になります。みなさん、もし金銭に余裕があるならば、双方の購読をお薦めします。

岩家連の危機的状況については、岩手日報の「自立支援の名の下に」③で、温かくも厳しく指摘してましたね。その上で、話します。記事で指摘した通り、会員も理事も高齢化が進み、自然と会員も減少しているのが現状ですが、その理由としては、中途障害ゆえの構造的問題が大きい。こうした組織の脆弱さを背景に、決まり切った行事しかできない。ホームページも、岩家連を紹介するリーフレットすらもない。正直、驚きました。結局、組織維持に追われ、運動体としての役割も欠落してしまいました。

昨年春に支援法が施行されました。精神障害者にとっては、大問題です。定期的な通院が必要にもかかわらず、医療費が0・5%から1割へと倍増になったんです。家族会などでは、生活が厳しくなったという声がしばしば聞こえてきます。でも、岩家連として、その声を集約することはできなかった。岩家連は、それが運動体であるならば、1割負担がどう会員の生活に影響を及ぼしているかというアンケート調査をして、そのデータを取りまとめ、当事者や家族の置かれた現実と、施策の充実を広く訴えなければならなかったのに、悲しいかな、そんな余裕すらありませんでした。

また、貧弱な組織態勢も露わになりました。岩家連は、県組織(ふれあいランドにある事務局)と家族会個々のつながりがあるだけで、家族会の横のつながりがない。市町村や圏域レベルの中間ネットワークがありません。支援法により、サービス主体も財源も、県から市町村に移ったのに、岩家連は制度変革に対応できていない。サービス提供主体の市町村に何か要望するなり、協力して何かするなどの際、その主体が不在なんです。市町村の担当者だって困ると思いますよ。さあ、自分たちがサービスの主体になったぞ、でも、管轄内の当事者や家族にどんなニーズがあるのか、どんな現状なのか、どこの誰に聞けばいいんだ? 市町村対応まですべて岩家連事務局にお任せ、というのは、専従事務局員1人態勢の現状では無理です。さらに、岩家連の財政難で、家族会長会議の開催数も減少しました。交通費掛けて広い県内から一堂に集まることは、それ自体が大変なことです。よって、ますます家族会同士の横のつながりは希薄になっていく。

暗い話ばっかりですいません。でも、だからしょうがないかと諦めるのはまだ早い。まず、何かできることはないかを考えましょう。理事や事務局は何やってんだ、という声も聞こえてきますが、責めたってしょうがないんです。5月の総会で、新年度赤字の赤字分は、家族会単位で、会員数に応じて会費を払う事で補填することに話はまとまりました。これは対症療法でしかない。来年も、また来年も、そうやって補填していき、会員が減れば減るだけその補填額が増え…なんてことをやってれば、じり貧です。岩家連組織のピラミッドの頂点をいじったって、小手先の対処でしかありません。この現状を何とかするためには、まず足元を固めなければならない。なすべきことは、家族会員を増やすことのほか、ありません。底辺をどれだけ広げられるかなんです。

そして、昔のことは分かりませんが、少なくともここ数年は、「誰ががやってくれるだろう」という意識で、行政や理事や事務局にすべてお任せで続いてきた。その岩家連の体質こそ、問題です。岩家連の再生は家族会の再生から。家族会の再生は、家族会員一人一人の意識を変えるところからから始まります。

まず、一人一人ができることを考え、実践しましょう。私の場合。情報発信の不在を解消するために、今春から手っ取り早い、2つのことに取り組んでいます。まず、個人的に、ブログ「http://opentolove.exblog.jp/」を始めました。私設岩家連ブログです。みなさん、ご覧下さい。私はパソコンに詳しくなく、ホームページを作る能力がまだありませんが、そのうち勉強して、将来的にはホームページに移行を目指します。岩家連が定期的に機関誌を発行できれば一番いいんですが、財政的にも事務局態勢も、なかなか厳しい。あくまでパソコン持ってる人だけが対象ですが、ブログに最新情報を随時載せていけば、連携は少しずつスムーズになっていくことでしょう。

あと、リーフレットも作ってみました。見本をお見せします。A4判三つ折りで、これも将来は、なんとか財団の助成を受け、きっちりしたのを作りたい。モノクロでしょぼいですが、ないよりマシ。これを、研修会や家族大会などの際に配布します。病院や関係機関の窓口にも置いてもらおうと思っています。岩家連は最近、全家連解散がらみで有名になりましたが(笑)、まだまだ存在自体を知らない人もいることでしょう。存在を知っていても、何をしているか分からない人も多いことでしょう。リーフレットには、岩家連の活動内容や歴史などについてコンパクトに記載してますので、例えば病院などでリーフレットを手にした当事者や家族が、関心を示し、会員になるかもしれない。

こうして、私は自分ができることとして、2つのことを始めました。みなさんも、一人一人ができること、必ずあるはずです。例えば、リーフレットをコピーして、配って下さい。さっぱり集りに来ない会員に、参加を呼び掛けて下さい。知り合いの保健師さんらと、現状について話し合って下さい。

ついで、家族会相互の連携の不在という問題を解決するため、各医療圏域や市町村単位のネットワーク結成を提唱します。

そもそも家族会って何でしょうか?それは、一言で言えば「心のオアシス」です。この言葉は、実は私の言葉じゃなくて、盛岡市の地域家族会「たんぽぽの会」のある会員さんの言葉です。そうだよなー、と、家族会参加当時の一年前を振り返り、しみじみ思います。

みなさんも、家族の発病前後のことを思い出してみましょう。当事者も、その最も身近な家族も、無茶苦茶で、わけが分からない日々。病院に行くまでが一苦労。行ってからも一苦労。職場を変わった人、辞めた人、心中を思い立った人、隣近所に隠している人、家庭内不和になった人、離婚した人…いろんなケースがあるでしょう。薬で症状が治まったとしても、我が息子は、我が伴侶は、なかなか以前のような快活な笑顔が戻らない。治ったと思っても、また症状がぶり返す。症状が治まったとしても、今度は薬の副作用で不眠になったり。「医者が悪い」と転院したものの、あまり状態は変わらない…。

そんな時、家族会なる集まりがあることを知った。どぎまぎしながら、行ってみた。わが家の悩みを、わがことのように共有し、共感してくれる人たちと出会った。自宅と病院との往復から、新たな一歩の始まりです。我が家だけが苦労してるんじゃない。「ああ、よそもこんなに苦労してんだなあ」と、相手を励ましたい気分になれることもある。つまり、「心のオアシス」なんですよね。

家族がそういう気分になれるひとときがあるということは、当事者の回復にもつながります。定期的に薬を飲むのが治療の基本だとしても、その傍らで家族が泣いてばかりいたり、怒ったりどなったりばかりしていたら、回復の支えにはならず、むしろ妨げの要因となります。急がず騒がず、一関市で昨年、地域生活支援センター主催で開かれた「家族のための井戸端会議」で講演した家族SST講師高森信子さんの言葉によれば、ある種の「あきらめ」というか、長く付き合い、ゆっくりゆっくり直して行こうという気になることが、この病気には必要な家族の姿勢。そのためにも、家族同士が会い、ともに泣き、ともに笑い、うち解け会い、つかの間でもリラックスする場が必要なんです。

 では、その上で、家族会の現状について、類型化した上で考えてみましょう。一般に、家族会は病院家族会と地域家族会と2種類に分けられますが、私はそれでは現状にそぐわないと思います。地域家族会を、作業所運営型と、そうでないところに分ける。つまり①病院家族会②地域家族会(作業所運営型)③地域家族会(家族会型)の、計3タイプに分類したいと思います。

 まず、病院家族会は、高齢化、新規会員減少という問題を抱えています。そこには、診療報酬の改訂や、非定型抗精神病薬の進歩により、長期入院患者が減少していることが背景にあります。かつては10年、20年と入院するのが当たり前でしたから、多くの人が当然のように入会していました。ですが、今はたいてい3カ月で退院。すると「3カ月だけなのに、どうして1年分の会費を?」と考え、わざわざ家族会に入ろうという人は減っているわけです。

すると、長らく入院している患者の家族が現在の会員の中心となってしまう。高齢化が進めば進むほど、会員は病気がちになったり、体のあちこちが痛くなったり、耳が遠くなったりして、フットワークが重くなる。動きが鈍くなり、病院側スタッフに運営を任せることになり、家族会運営は病院におんぶにだっこ体質になってしまう。私の入っている岩手保養院のプラタナスの会は、もろそんな感じです。そして、会員がベテラン揃いだと若い人は入りづらい。もっと早くに、世代交代を図るべきでしたが、時既に遅しという感じ。すると、だんだんと、やってることがマンネリ化してしまう。そうなれば、毎月「ぜんかれん」誌が届く以外のメリットが見えず、ますます若い人の家族会離れが進む、という構図になっています。

 つぎに、地域家族会(作業所運営型)ですが、これも病院家族会と同様、高齢化、新規会員減少という同じ問題を抱えている。その理由は、作業所運営に手一杯で、先に話した「心のオアシス」としての家族会活動をやってるヒマがないからです。とりわけこの1年は、支援法の新サービス体系に移行する条件とされたNPO法人格取得、利用者一人一人の個別支援計画作成などの事務に手一杯で、家族会としての活動はさっぱりできなかったし、今後も補助金は増えないのに事務量は格段に増えますから、家族会活動は望めないでしょう。作業所の担い手が家族会の担い手である限り、これは仕方がないとも言える。どうしてこうなったかといえば、やっぱり日本の障害福祉の歴史において、身体・知的と比べ、精神の社会資源が格段に立ち遅れていたことが背景にあります。精神障害者は、退院しても行き場がない。結局、家族会が自分たちで作業所をやらざるを得なかった。そんな日本の精神障害者福祉行政の貧困さが問題なのですが、かといって将来、借金大国日本で、精神の社会資源が充実されることは、望むだけ無駄でしょう。つまり、地域家族会(作業所型)の会員は、ますます作業所に利用者を通わせている親兄弟に限定されていくでしょう。作業所を運営しながら、毎月定期的に集まったり、会報を発行したりするのは、現状ではとても厳しいから、会員にとっては、毎年会費を払っている以外のメリットがなかなか見えにくい。

 病院家族会、地域家族会(作業所型)は、当事者の視点からすれば、いずれも大きな存在意義があります。病院にとっては、家族が潰れられちゃ困る。作業所利用者にとっては、作業所運営母体である家族会が潰れられちゃ困る。それぞれが潰れることによる、さまざまな悲劇は、誰も望んでいない。だから、なくしちゃいけない。にもかかわらず会員減が続くのはなぜか。それは、会費を払うことに対する具体的なメリット(例えば定期的に家族会を開く、ニュースを発行するなど)が見えない限り、会員の新規開拓は望めないということです。

 最後に、地域家族会(家族会型)ですが、これがいわゆる家族会本来のイメージです。盛岡で言えば「たんぽぽの会」「助支安の会」が、ここに分類されます。例えば「助支安の会」の場合は、保健所主催の家族教室の修了生で結成。家族同士の交流会を超え、県立大教授を招いた家族のためのSST教室、当事者と家族のアート交流会など、実に活発に活動してますね。「たんぽぽの会」は、広く市民を交え、喫茶ひだまりを運営している「精神保健を考える岩手の会」と連携しているのが特徴。こないだは葉桜でしたが、お花見を楽しみました。6月には保健師を招き交流します。こんな感じで、いずれもフットワークの軽さが特徴といえましょう。

地域家族会(家族会型)の今後想定される問題は、新規会員増と適正規模のジレンマです。今までなら、保健所主催の家族教室が毎年開かれていました。そこで、盛岡でいえば「助支安の会」のような新たな家族会が、毎年誕生していくことも期待できました。ところが、保健所主催の家族教室が昨年度で終わってしまったのです。統合失調症は100人に1人。当然、新たな患者は出てくるし、その家族も出てきます。ですが、その新規会員はどこに行けばいい? その受け皿として、既存の家族会が想定されますが、数人ならともかく、あまり増えると、一家族会が受け皿となるのは無理です。

家族会の適正規模はだいたい十数人、多くても20人でしょう。一家族会の会員がかりに50人になったら、1人10分ずつ近況報告すると6時間超。これじゃ、家族はかえって疲れてしまいます。でも、保健所がもう家族教室を主催して新たな家族会作りを支援せず、市町村もやらないとしたら、そういう事態になってもおかしくないことになってしまいます。で、かりに次々に家族会入会希望者が出てきたら、「私たちの会は定員いっぱいです」と断れますか?無理です。断らないのが人情です。とりわけ自分自身苦しんだ家族会員だからこそ、苦しんでいる家族を救いたいと思うのが共通した思いです。でも、増え続けたとして、限度がある。でも、受け入れないと、自宅で孤独に引きこもり、苦しむ親子が出てくる。どうしよう?…それが、地域家族会(家族会型)のジレンマです。

 こうしたもろもろの困難な現状を、一挙に、とは行きませんが、少しずつでも解消していくための方策が、ネットワーク構想です。盛岡を例に挙げれば、岩家連と単位家族会の間に、「盛岡市家族会ネットワーク」「盛岡圏域家族会ネットワーク」みたいな組織をつくろう!というのが私の主張です。適正規模の家族会が個々に活動しながら、市町村や圏域単位のゆるやかなネットワークを構築し、自主的に家族教室を主催し新たな家族会作りを支援していく。地域家族会(家族会型)が主導し、病院家族会、地域家族会(作業所型)を巻き込んでいく。そんなイメージです。なぜ地域家族会(家族会型)が主導するかといえば、それはメンバーが若々しく、活力にあふれているからです。病院家族会と地域家族会(作業所型)には、とてもそんな余裕はありません。

 地域家族会のネットワークが定期的に情報交換し、情報発信し、保健師を招いた家族教室主催など自主事業を展開する。市町村への要望の窓口となる。さらに、家族会個々では力が弱く、定期的にニュースなど情報発信をできない現状にあるので、各家族会のみんなが少しずつ原稿を持ち寄り、ネットワークとしてニュースを発行する。それによって、病院家族会、地域家族会(作業所型)の弱点もある程度カバーできます。さらに、これまでの家族会は、一般に統合失調症の患者の家族が中心でした。ですが、目下社会問題になっているのは、統合失調症より鬱病などの気分障害と、それによる自殺です。岩手は自殺率全国ワースト3ですから、県は欝病の対策に懸命です。今後、家族会に欝病患者の親が参加することも予想されますが、そのとき、統合失調症患者の家族だけの家族会の中に一人、欝病患者の家族が参加することは、双方やりづらいでしょう。障害特性がまったく違いますから。でも、市町村や圏域単位のネットワークという幅広い枠組みであれば、鬱病患者家族会との交流など、将来的に連携していく道は開けると思います。

 さらに、ネットワークが出来たら、岩家連は、市町村や圏域間の情報交換、格差是正を県へ要望、全県的な大会や研修会開催、全国組織=全福連との窓口、全県的な生活実態調査など、全県的な事務に特化できるようになります。情報もいちいち個々の家族会におろさず、ネットワークにまとめておろすだけで済みますから、事務量も軽減するはずです。例えば、事務局はこれまで、何か文書を出す際に、54ある単位家族会総てに郵送していました。それが、将来各圏域や市町村にネットワークができれば、そのネットワークにまとめて1通出して、あとはそこから配布してもらうことだって可能です。

ともあれ、ネットワーク作りが自己目的化するのは避けましょう。何より問題なのは、人任せ体質の脱却です。行政はさっぱり何もしてくれない、全家連はつぶれちゃった、岩家連は何やってんだかさっぱり分からない、とかぐちってる場合じゃなく、じゃあどうすれば展望が開けるのかを、会員一人一人が本気で考えないと、岩家連は潰れます。障害を持つ当事者のみならず、私たち会員も、岩家連の会員としての当事者意識向上を図らなければ、どんなネットワークを作ろうとも、意味をなさない。医者任せはだめ、ベテラン会員任せはだめ、行政任せもだめです。それぞれの局面において、会員である家族が障害を持つ当事者を支えるため、自分ができることをやりつつ、押し付けではなく当事者のニーズを代弁することが求められています。自分たちでやるべきことはやった上で、権利を主張しましょう。

あんまり大上段に構える必要もありません。とにかく、隣近所の家族会から何人かずつが集り、おしゃべりする。「うちではこんなことやってんですよ」「うちの特徴はこんな活動ですよ」「へえ」…。そんな話から、互いの活動を参考にしたり、家族会同士で花見をしたり、作業所の見学をしたり、共通の悩みを確認したり、互いの情報を持ち寄り補完したり、そんなつながりが発展して、結果としてネットワークになればいいのです。

最後に、大きな話。岩家連は将来的には、当事者会を支援する家族会連合会への方向転換が必要です。今回の第30回県精神障害者家族大会のキャッチフレーズに、ある実行委員のメンバーが「地域で生きる。ありのままの私で」と提案しました。結局採用されませんでしたが、私はまさに、将来はこの幻のキャッチフレーズに示された方向で、岩家連は進んでいくべきだと思う。

日本はなぜ、いつまでも家族が中心なのでしょうか。精神の場合、かつて、当事者はいませんでした。つまり、病院に入ったきりでした。そして、偏見は変わらないけど、長期入院ではなく短期入院と通院が一般的になり、格差社会とストレスフル社会は進行しこころの病が一般化すればするほど、当事者の時代になっていく。

よく考えて見ましょう。親も伴侶も、一生当事者の面倒を見ることはできません。当事者より長生きする、という意欲は美しい。私もそのつもりです。何ら根拠ない自信もある。でも、人生何があるか分からない。そのとき、何があってもいいように、当事者に力を付けることこそが、家族の役割であり、努めです。いつまでも、親が中心の運動ではいけない。望ましい支援とは、当事者が望む支援であり、親がそれを十全に代弁しきれるわけがない。だから、いつの日か、当事者主体の運動、それを支える家族会運動という、あるべき形へ再編すべきです。そして、単体の家族会がバラバラではなく、小さな単位でネットワーク化されていれば、各地域の地域生活支援センターなどで取り組まれている当時者会の集まりと連携していくことも可能でしょう。

冒頭の話に戻りますが、全家連が解散し、そこから当事者の立場に立った「コンボ」と、家族の立場に立った「全福連」という、二つの全国組織が誕生した。内実はともあれ、この二つの流れを、僥倖ととらえましょう。岩家連は便宜上、全福連に加盟しています。ですが、会員個々は、双方の動きに注目していくべきでしょう。当事者の自立は、家族の自立と共にあります。家族が潰れれば当事者も潰れる。その逆もまた真なりです。
(2007年5月14日、精神保健を考えるいわての会総会でのミニミニ講演に加筆修正)
# by open-to-love | 2007-05-21 22:49 | 家族会長会議講演 | Trackback | Comments(0)
 5月14日、盛岡市本町の県精神保健福祉センターで開かれた「精神保健を考えるいわての会」総会にて、家族会活動の課題と展望について、話題提供しました。私が一年間弱、この世界に入って感じたこと、考えたことの、当面の帰結です。精神障害者の脆弱性と、岩家連の脆弱性と、全家連の脆弱性とが、あたかもそれぞれがそれぞれを象徴しているかのように語られる中、だったらその上で、いま、ここで、どうすりゃいいのか、ということを考え、話させていただきました。レジュメを紹介します。

家族会活動の課題と展望-支援法施行1年、全家連破産・解散、岩家連の危機の中で-

①全家連の自己破産、解散問題

支援法施行による名ばかりの平等ではなく実質的平等へ運動すべき時に、国との窓口である全国組織が解散という、異例の事態
全家連破綻の原因は、栃木県の温泉保養施設「ハートピアきつれ川」で赤字が膨らんだこと→つまり、善意頼みでは、世の中通じない、ということ。

②岩家連の危機的状況
高齢化→会員も理事もいい年、会員も減少(中途障害ゆえの構造的問題でもある)。
情報発信の不在(ホームページ、ブログ、リーフレット)ゆえ、新規会員増が見込めない。
運動体としての役割が欠落、支援法施行に伴うアンケート調査すらできなかった
貧弱な組織態勢=県組織と家族会個々のつながりがあるだけで、市町村や圏域レベルの中間ネットワーク不在→サービス主体も財源も、県から市町村に移ったのに、岩家連は制度変革に対応できず。専従事務局員1人がいくらがんばっても、情報の流れがスムーズにはいかない。

③ここで、改めて、家族会とは何ぞや?
本来の役割は「心のオアシス」
自宅と病院との往復から、新たな一歩。
我が家の場合と他の家の場合とを比較、相対化。(我が家が一番大変だと思ってたけど、ああ、よそもこんなに苦労してんだなあ、とか、いろいろ感じ、生きる力がわいてくる)

家族会の3タイプ
【病院家族会】
高齢化、新規会員減少
長期入院患者の減少→「3カ月で出るのにどうして1年分の会費を?」
長らく入院している患者の家族が中心で、新規会員が少ない→病院におんぶにだっこ体質、
ベテラン揃いで若い人は入りづらい、やってることがマンネリ化、毎月の「ぜんかれん」誌が届く以外のメリットが見えにくい(といっても、ぜんかれん誌は終った…)

【地域家族会(作業所運営型)】
高齢化、新規会員減少
作業所の担い手=家族会の担い手(退院しても行き場がない…背景には、自分たちでやらざるを得なかった、日本の精神障害者福祉行政の貧困さ)
作業所運営と新体系移行事務に手一杯、家族会としての活動まで手が回らない

【地域家族会(家族会型)】
いわゆる家族会本来の役割である「心のオアシス」という役割を担う→交流会、家族のためのSST教室など

新規会員増と適正規模のジレンマ=保健所主催の家族教室が終了したが、新たな患者は当然出てくるし、家族も出てくる。だが、その新規会員の受け皿として、既存の単体の家族会には限度がある。やっぱり単体家族会には十数人くらいの適正規模がある。(交流会では、たいてい一人一人近況報告するが、一家族会の会員が仮に50人になってしまったら、1人10分ずつ近況報告すると6時間超になってしまう。そりゃ無理だ)。

④岩家連の再生は家族会の再生から
岩家連と家族会個々が直結し、家族会同士のつながりが希薄。サービス提供主体の市町村に何か要望する際、その主体が不在。岩家連の財政難で、家族会長会議の開催数減少。この現状を何とかするためには、まず足元を固めなければならない。

【理想】市町村や圏域単位、例えば「盛岡市家族会ネットワーク」みたいなゆるやかな組織の構築を!

適正規模の家族会が個々に活動しながら、市町村や圏域単位のゆるやかなネットワークを構築し、自主的に家族教室を主催し新たな家族会作りを支援していく。地域家族会(家族会型)が主導し、病院家族会、地域家族会(作業所型)を巻き込んでいく。

[現状]単位家族会
      ↓
     岩家連

[理想]単位家族会(病院、地域(作業所型、家族会型))
      ↓
単位家族会のネットワーク(情報交換、情報発信、保健師を招いた家族教室主催など
自主事業展開、市町村へ要望)=病院家族会、作業所型地域家族会のデメリット解消
      ↓
岩家連(市町村や圏域間の情報交換、格差是正を県へ要望、全県的な大会や研修会開催、全国組織=全福連とのつながり、全県的な生活実態調査)

⑤当事者意識向上を
将来的には、当事者会を支援する家族会への方向転換が必要。→「地域で生きる。ありのままの私で」と願う当事者の自助グループを支える組織へ。
当事者性とは、障害を持つ当事者だけではない。家族の当事者性もともに必要→医者任せはだめ、ベテラン会員任せはだめ、行政任せはだめ。

【結論】自分たちでやることはやった上で、権利を主張しよう!
# by open-to-love | 2007-05-18 23:07 | 家族会長会議講演 | Trackback | Comments(0)
 月刊「ぜんかれん」の最終号が届きました。表紙に「4月15日発行」とありますが、私の手元に届いたのは、ほぼ1カ月遅れの5月16日でした。いつもならカラー表紙60ページくらいでしたが、モノクロ18ページでした。取り急ぎ小松正泰理事長の巻頭文を紹介します。他の内容については、追って。

「全国の皆様へ

 平成19年4月17日、平成19年度第1回理事会に於いて、全家連は破産を決議し、引き続き評議員会で報告、了承されたうえで裁判所への申し立てが行われました。
 精一杯のご協力を賜った債権者の方々に対し誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げます。
 私は平成15年2月の臨時評議員会に於いて理事長に就任致しました。その前年秋に全家連が過去に不正に流用していたことが発覚、全役員が引責辞任した後を受けての就任でした。
 当日、「全家連をつぶすまい。総力を結集して不祥事の汚名を返上し、立ち直ろう!」と叫んだことを鮮烈に記憶しています。
 しかし、その後4年有余の努力にもかかわらず、40年の歴史と伝統に輝く全家連が、刃折れ矢尽きて破産に至ったご報告をすることは誠に無念であり、慚愧の至りでございます。
 全家連の再生を願い、貴重なご寄付を下さいました皆さま、家族会活動のシンボルでもある恵友記念会館建設のために多額のご寄付をされました中村友保、智恵子ご夫妻、全家連をこれまで築いてこられた諸先輩方、家族会活動にご協力いただいた精神保健福祉関係者・関係団体の皆さま、家族会の発展のためともに活動を行ってきた都道府県連合会、全国の家族会の皆さま、ぜんかれん誌の皆さま、そして全家連の活動に関わっていただいた総ての皆さま方に、断腸の思いでお詫び申し上げますとともに、これまでのご支援に言葉では言い尽くせない感謝を申し上げます。
 皆さまから寄せられた尊いご寄付につきましては、目標額には及ばないながら、補助金不正使用に係わる返還金の一部に当てることで、債権者の方々のご理解が得られ、全家連は今日まで活動を継続できたのでございます。この間、全国大会、ブロック研修会、リハ会議などの開催、ぜんかれん誌などの出版、情報の発信、相談事業、そしていろいろ課題は残ってはいますが障害者自立支援法、3障害一元化が実現し、障害者雇用促進法改正により精神障害者も法定雇用率にカウントされ、多くの雇用援助メニューを加えることもできました。
 一方、今日の破産に至るまでの間、法的諸手続きの関係もあり、誠に不本意ながら皆さまに対し十分な経過をお伝えできなかったことを陳謝いたしますとともにご理解をお願いします。その詳細につきましては、後掲資料「全家連の歴史」「年表」等をお読みいただきたいと存じます。
 なお、全家連の4社会復帰施設(ZIP、かれん、たいとう倶楽部、ハートピアきつれ川)は、ほぼ従来通りの事業が他の法人に引き継がれ、利用する全メンバーが引き続き社会復帰、社会参加に向けた訓練を継続出来ておりますことを報告申し上げます。それは、行政の各担当部門のご尽力と、関係者のご努力、そして運営をお引き受けくださった「社会福祉法人 あしなみ」、「NPO法人 えん」、「社会福祉法人 全国精神障害者社会復帰施設協会(全精社協)」のご理解とご協力の賜であり、心より感謝申し上げますと同時に、これらの各施設・事業が新たな運営母体の下でますます発展を遂げられますことを念じてやみません。
 今後の精神障害者家族会組織につきましては、依然として困難な状況下にある全国258万人の精神障害者とその家族の現状打開のためにも、健全な家族会組織が、より有効かつ強力な活動・運動を推進することによって、全国の精神障害者及び家族の明るい未来が早急に実現することを願うばかりでございます。
 全国の皆さまのご支援・ご協力に重ねて深謝いたしますとともに、ますますのご活躍とご発展を心より祈念いたしまして 皆様への言葉とさせていただきます。 小松正泰

月刊「ぜんかれん」特別号 『ぜんかれん』の皆様へ
NO.483 2007年4月15日

目次
全国の皆様へ……………………1
全家連の活動の報告……………3
資料……………………………13
全家連の活動年表……………15
都道府県家族会事務局一覧…17

なお、裏面の注意書きは以下の通りです。
「これまで月刊誌及び書籍のご注文をいただいた際の送付先情報につきましては、個人情報保護のため、管財人管理のもとに破棄させていただきます。ご了承ください。」

きれいさっぱり、か?(黒)
# by open-to-love | 2007-05-17 22:14 | 全家連 | Trackback | Comments(0)

障害者権利条約が成立

国連委が障害者権利条約を採択 08年にも発効

 【ニューヨーク25日共同】障害者に対する差別を禁止し、健常者と同様の権利を保障する「障害者権利条約」の策定を進めている国連特別委員会(委員長、マッケイ・ニュージーランド国連大使)は二十五日、条約案を採択した。国連の主要な人権条約は七つあるが、障害者を対象にした人権条約は初めて。
 九月からの第六十一回国連総会第三委員会(人権)と本会議の承認を経て、二十カ国が批准した段階で発効。早ければ二〇〇八年ごろ発効する。世界には人口の一割に当たる約六億五千万人の障害者がいるとされる。
 特別委に参加した八代英太元郵政相は「各国の中でも日本が熱心で、日本の障害者にも大きな支えになる」と話した。(2006年8月27日)

障害者権利条約が成立 国連総会、全会一致

 【ニューヨーク13日共同】国連総会本会議は十三日、障害者に対する差別を禁じ、社会参加を促進する「障害者権利条約」を全会一致で採択、同条約は成立した。障害者を対象にした人権条約は初めてで、世界人口の約一割、約六億五千万人(国連推計)とされる障害者の権利拡大に寄与しそうだ。二十カ国が批准した時点で発効する。発効は二〇〇八年ごろになる見通し。
 条約は前文と本文五十条から成り、障害者が「すべての人権や基本的自由を完全かつ平等に享受」できる環境を確保するのが目的。こうした目的を達成するため「すべての適当な立法、行政措置」を講じるよう締約国に求めている。
 条約は①障害者の移動を促進するため建物や道路、交通機関における障害物の除去②教育における機会平等の確保③就職や昇進面での差別禁止―などを盛り込んでいる。
(2006年12月14日夕刊)
# by open-to-love | 2007-05-10 17:55 | 国連障害者権利条約 | Trackback | Comments(0)

ACT

ACTとは何か?

1 概要

 ACTは、重い精神障害を抱えることで頻回入院や長期入院を余儀なくされていた人々が病院の外でうまく暮らし続けていけるように、さまざまな職種の専門家から構成されるチームが援助するプログラムです。精神障害者の地域生活を支援するケースマネジメント(case manegement)の中でも、もっとも集中的・包括的なモデルの1つであり、プログラム利用者が実際に暮らす環境に出向く訪問の形でほとんどのサービスが提供されます。長年にわたる調査研究から、入院期間の減少や居住安定性の改善、サービスに対する満足度の向上などの効果が証明されており、その有効性から現在世界各国でこのプログラムが行われるようになってきています。
 英語の〝Assertive Community Treatment〟という言葉を略して「ACT(アクト)」と呼ばれることが多いのですが、私たちは日本語で「包括型地域生活支援プログラム」とも呼んでいます。直訳すると「積極的地域療法」などと呼ばれうるのですが、treatmentには医学的な「治療」の意味よりも幅広い「処遇」あるいは「待遇」のニュアンスがあり、保健・医療・福祉といった異なる領域のサービスを調整した形で地域の一機関が直接提供するプログラムであることから、「包括型地域生活支援プログラム」と名付けたのです。

2 特徴

1.個々の臨床で柔軟なサービス提供を可能とする構造上の特徴

2.ACTプログラムの具体的な特徴

①伝統的な精神保健・医療・福祉サービスの下では地域生活を続けることが困難であった、重い精神障害を抱えた人を対象としている。

②看護師、ソーシャルワーカー、作業療法士、職業カウンセラー、精神科医など、さまざまな職種の専門家から構成されるチーム(多職種チーム)によってサービスが提供される。

③集中的なサービスが提供されるように、10人程度のスタッフから成るチームの場合、100人程度に利用者数の上限を設定している。

④担当スタッフがいない時でも質の高いサービスを提供できるように、チームのスタッフ全員で1人の利用者のケアを共有し、支援していく。

⑤必要な保健・医療・福祉サービスのほとんどを、チームが責任をもって直接提供することで、サービスの統合性をはかっている。

⑥自宅や職場など、利用者が実際に暮らしている場所でより効果の上がる相談・支援が行われるように、積極的に訪問が行われる。

⑦原則としてサービスの提供に期限を定めず継続的な関わりをしていく。

⑧1日24時間・365日体制で、危機介入にも対応する。

(以下続く)
西尾雅明著「ACT(Assertive Community Treatment)入門 精神障害者のための包括型地域生活支援プログラム」(2004年、金剛出版)
# by open-to-love | 2007-05-07 16:35 | ACT | Trackback | Comments(0)