精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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カテゴリ:精神障害予防( 2 )

コンボお知らせメール便:遺伝?育ち?精神疾患はどうして起こる?〜第31回こんぼ亭月例会

盛岡ハートネットのみなさま、こんにちは。コンボ広報チームです。大晦日まですでに2週間をきっていますね。今年、コンボの仕事納めは、今週の金曜日、12月25日です。なお、「こころの元気+」新年号のお届けですが、今年は年末年始の郵便事情が例年になくたてこんでいるようです。そのため、地域によっては通常のお届け(15日前後)より若干遅れることがあるかもしれません。どうぞご容赦ください。そして、楽しみにお待ちください。

★HEADLINES★
(1) 第31回こんぼ亭:「精神疾患はどうして起こるのか?」〜申込受付中〜
(2) アンコール放送決定! 〜NHK ハートネットTV〜
(3) コンボ耳より情報:ハートカフェ@渋谷 〜1月のテーマは摂食障害〜
(4) リリー賞: 応募締め切りもうすぐ〜12/31消印有効〜
(5) コンボイベント最新情報

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 ★第31回こんぼ亭月例会★
 『遺伝?育ち?精神疾患はどうして起こるのか?
    〜研究成果にもとづく遺伝カウンセリング〜』
     2016年1月23日(土)
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 次回1月のこんぼ亭は、お客様に尾崎紀夫先生(名古屋大学医学部付属病院精神科・遺伝カウンセリング室)をお招きします。精神疾患はどうして起こるのか? 親から子に伝わる「遺伝」や「遺伝子」のせい?それとも親の「育て方」や「環境」のせい?尾崎先生は、当事者の方やご家族から精神疾患と「遺伝」や「育て方」がどのように関係するのかといった相談を受けていらっしゃいます。
 このような相談への対応を「遺伝カウンセリング」と呼び、精神疾患の分野でも少しずつですが広まってきているそうです。今回は、精神疾患がどうして起こるのか、研究成果はどこまで進んでいるのかをお話しいただきつつ、みなさんとご一緒にこのテーマについて考えたいと思います。ご家族、当事者、専門職の方をはじめ、興味のある方、ぜひご参加ください!

  ☆詳細はコンボのHPから
  → https://www.comhbo.net/?page_id=4603
  ☆チラシはこちらから(裏面が申込用紙になっています)
  → https://www.comhbo.net/wp-content/uploads/2015/11/comhbotei31-flier.pdf
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 お客様(出演者)
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 ★尾崎紀夫(精神科医;名古屋大学 大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野 教授)
 ☆ご案内役(こんぼ亭「亭主」): 伊藤順一郎(精神科医;メンタルヘルス診療所しっぽふぁ〜れ 院長)
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 事前申込受付中
 〜1/15(金)まで〜
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 【日時】 2016年1月23日(土)
       12:30開場 13:00〜15:30 ※30分ほど延長する場合があります。
 【会場】 かめありリリオホール(東京都葛飾区亀有 3-26-1)
      〇アクセス: JR常磐線、東京メトロ千代田線 亀有駅南口おりてすぐのイトーヨーカ堂9階
 【参加費】 事前申込3000円(コンボ賛助会員は2000円)、当日3500円
 【お問合せ】 NPO法人コンボ「こんぼ亭」係
         TEL: 047-320-3870
         EMAIL: comhbotei@gmail.com

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★アンコール放送決定★
 「こころの元気+」、NHKのEテレハートネットTVで再び!
    〜来年1月19日(火)夜8時〜
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 先日11月にNHKのEテレ、ハートネットTVで放送された「こころの元気"届けます〜メンタルヘルスマガジン 100号!」の、アンコール放送が決まりました! 見逃した方、もう一度見たい方、ぜひご覧ください。お友達や知り合いの方にも、ご紹介いただけたら、とても嬉しいです!
   ◎NHK Eテレ 「ハートネットTV」アンコール放送
     "こころの元気"届けます〜メンタルヘルスマガジン 100号!〜
          放送日: 2016年1月19日(火) 20:00〜20:29
          再放送: 2016年1月26日(火) 13:05〜13:34
   ☆詳しくは番組のホームページをご覧ください
   http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2015-11/17.html

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 ≪コンボ耳より情報≫
 ☆NHK厚生文化事業団主催☆
   ハートカフェ@渋谷「今こそ知ってほしい!摂食障害」
      2016年1月全4回シリーズ
 〜「こころの元気+」連載中の鈴木高男さんも登場!〜
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 学校や会社帰りにお茶を飲みながら、テレビや新聞ではなかなか聞くことのできない、最新情報やディープな話を聞いていっしょに考えませんかという「ハートカフェ」シリーズ。1月は全4回シリーズで「摂食障害」を取り上げます。第3回の1/21(木)には、「こころの元気+」で「家族の相談カフェ〜困ったことは
マスターに聞け〜」を連載中の鈴木高男さん(茶房つむぎのマスター、摂食障害ポコ・ア・ポコ代表)が登場し、家族の立場から話されます。関心のある皆様、ぜひお立ち寄りください。
 ☆全4回(毎週木曜日): 2016年1/7、1/14、1/21、1/28
 ☆詳細や各回のテーマはこちらから
   http://www.npwo.or.jp/heart-cafe/
 【日時】 2016年1月 毎週木曜日 18:30〜20:15
 【会場】 渋谷区勤労福祉会館 2F(東京都渋谷区神南1-19-8)
 【参加費】 無料
 【お申込】 上記ウェブサイトから事前申込みができます(各回定員30名;先着順)
 【お問い合わせ】 電話:03−3476−5955(NHK厚生文化事業団)

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  ◎第12回 精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)◎
    〜応募締切せまる!〜
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 精神障害者の社会参加や自立に向けて取り組む個人やグループの活動を支援する「第12回 精神障害者自立支援活動賞(通称:リリー賞)−ひとりひとりの輝くあしたへ−」の締切は、12月31日(当日消印有効)です。皆様のご応募をお待ちしております!
  ☆応募方法などの詳細はコンボのHPから
  → https://www.comhbo.net/?page_id=4299
  ☆募集パンフレット(申込用紙つき)のダウンロードはこちらから
  → https://www.comhbo.net/wp-content/uploads/2015/09/lilly12-bosyu.pdf
 【お問合せ】 ☆お気軽にお問い合わせください☆
    NPO法人コンボ内 リリー賞募集事務局
    TEL:047-320-3870/FAX:047-320-3871

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 コンボ★イベント
 最 新 情 報
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 ◎こんぼ亭第32回月例会◎
 『経営者と担当者が伝える! うまくいく就労と復職のポイント』
 【日時】2016年2月27日(土)
 【会場】荏原文化センター(東京都品川区中延 1-9-15)
 【出演】成澤岐代子(株式会社良品計画総務人事担当 )、芦田庄司(アクテック
  株式会社代表取締役社長)、ほか
 ☆詳細とチラシは近日中にコンボのHPにアップいたします

 ◎PNPP◎
 「ピア・ネットワーク・プロモーション・プロジェクト」
 ☆詳細はコンボのHPから
 https://www.comhbo.net/?page_id=2433
 ☆チラシ(申込用紙つき)のダウンロードはこちらから
 https://www.comhbo.net/wp-content/uploads/2015/12/PNPP2015-common-flier-all.pdf
 【PNPP@長野】2016年1月14日(木)〜松本市〜
 【PNPP@京都】2016年1月28日(木)〜京都市〜
 【PNPP@茨城】2016年2月1日(月)〜土浦市〜
 【PNPP@群馬】2016年2月23日(火)〜前橋市〜
 【PNPP@島根】2016年2月29日(月)〜松江市〜
 【PNPP@宮城】2016年3月18日(金)〜仙台市〜
 【PNPP@愛媛】2016年3月29日(火)〜松山市〜

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  コンボの活動にご協力をお願いします
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 さまざまなイベント・研修会や情報提供など、NPO法人コンボの活動は、皆さまからのご理解・ご協力に支えられています。コンボへの皆さまのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
 【賛助会員として】
   ☆会費は1年間5,000円です
   ☆賛助会員のお申込みはこちらから
    → https://www.comhbo.net/?page_id=190
 【書籍・DVD等の購入を通じて】
    → 《書籍》https://www.comhbo.net/?page_id=2537
    → 《DVD》https://www.comhbo.net/?page_id=2298
 【寄付を通じて】
    → https://www.comhbo.net/?page_id=182
 ※賛助会員のお申込み、書籍・DVD等のご注文、ご寄付はお電話・ファックス・郵送でもお受けしております。
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  《競輪 RING!RING!プロジェクトの補助を受けています》
   「こころの元気+」の制作&PNPP(ピア・ネットワーク・プロモーション・プロジェクト)
  《日本財団の助成を受けています》
   ACTチームへの調査及びアウトリーチ支援に係わるスタッフ養成事業
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●「こころの元気+」最新号の情報はこちらからご覧になれます。
https://www.comhbo.net/?page_id=8336
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認定NPO法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)
Website: http://comhbo.net
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下記のサイトより過去のお知らせメール便がご覧になれます。
http://comhbo-mail.blogspot.com/
by open-to-love | 2015-12-22 21:39 | 精神障害予防 | Trackback | Comments(0)
医療費適正化と精神障害予防

(国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部 伊藤弘人)

はじめに
 医療費問題と精神障害予防というテーマを受け、本論では精神障害の予防が医療費適正化の解決策の一つであることを述べる。まず、精神科医療費にどのような問題があり、その適正化の方向性と課題を整理する。次に、精神障害予防が医療費適正化に寄与することを論じた後、精神障害予防の可能性を考える。

精神科医療費問題とその適正化の方向
(1)外来医療の進展
 4年前に本誌において、精神科医療を医療経済の観点から考察した(「日本の精神科医療と医療経済」『こころの科学』109号、77―81ページ、2003年)。当時、国民医療費に占める精神科医療費の割合は1990年代半ばで底(5%)を打ちその後微増していること、その理由は主に外来医療費の増加、とくに15〜44歳の年代の外来医療費の増加であることを示した。1990年代は、精神科外来医療が進展した年代であった。その背景には、国民が気軽に「メンタルヘルス・クリニック」を受診するようになったことと、精神科・神経科診療所が増加したことがある。デイケアと組み合わせると経営的に成り立つために、多くの精神科医が病院を退職して精神科診療所・クリニックを開業した。
 外来医療の進展を含む社会の変化により、精神科入院医療へのニーズも変化してきた。入院ニーズは、①これまでの歴史的な経緯のために長期在院となってしまった群(Old Long Stay Patient)と、②これからも初発患者の中にある一定割合で出てくる在院が長期化する可能性がある群(New Long Stay Patient)、および③短期で入退院を繰り返す多様なニーズのある群、への分類を提案してきた。それぞれの群に必要な施策は、①社会復帰施設の充実と生活の質(QOL)向上施策、②濃厚な地域ケアの充実、および③多様なニーズに対応した急性期医療の充実、であることを論じた。
(2)精神科救急・急性期医療の進展
 今回本論の依頼を受け、改めて分析してみると、おおむね4年前に指摘した方向に進んでいたが、あわせて興味深い新しい傾向が見出された。まず、図1に示す通り、国民医療費に占める精神科医療費の割合の着実な増加が確認できた。2002年の精神科医療費は1兆7667億円で、全医療費の5・7%であった。新たな診療報酬の取得状況の動向から考えると、この傾向は大きな診療報酬改定がなかった2005年度までは少なくとも続いていると考えられる。
 一方で、各年代層の医療費の割合を分析すると、新たな傾向が明かになった。2002年頃まで低下傾向にあった15〜44歳の全入院医療費に占める精神科医療費の割合が、その後増加に転じていることである。図2に示す通り、2004年ではこの年代層の全入院医療費は19%であり、長期在院者の割合が多い45〜64歳の割合(20%)に肉迫しつつある。
 図2には、14歳以下の年齢層でも、増加傾向が見られており、44歳以下の年齢層における全入院費の中で、精神科入院医療費の割合が増加する傾向が明らかなのである。先に分類した、②のNew Long Stay Patientの患者数は、現在では限られていることから、今回見られた増加は、③の「新しい患者層」が精神科急性期入院医療を利用したことによる影響と考えられる。
 精神科急性期入院医療の進展は、保健医療機関における診療内容に対する公定価格である「診療報酬」において、急性期医療をあつく評価してきたことによる。1996年に創設された「精神科急性期治療病棟」や2002年に創設された「精神科救急入院病棟」は、入院期間を3カ月以内にすることを病院側に求めて高い診療報酬を設定している。とくに後者の救急入院病棟は、低く設定されてきた精神科入院医療の中で、一般医療と肩を並べる水準の診療報酬となっている。1990年代の外来医療の進展に続き、2000年初頭は、精神科救急・急性期入院医療が広がった年代ということができるのである。
(3)医療費問題:国民ニーズに合った精神科医療
 外来医療と救急・急性期医療の充実は、国際的にみても精神保健医療が進む方向であり、その着実な進展をこれからも期待したい。しかし、このような医療費構造の変化は、さまざまな点でひずみを生み出していることを、あわせて認識する必要がある。
 第一に、①のOld Long Stayの患者層の入院医療費も増加していることである。この群の主要な年代は60歳前後であり、図2に示すように45〜64歳の精神科医療費割合は増加している。また65歳以上の高齢者、とくに認知症を有する患者も精神科入院医療の中で増加してきている。すなわち精神科入院医療費の増加には、「これからの患者層」の急性期医療の増加と、Old Long Stayの患者層の入院医療費の増加、という2つの側面が併存しており、問題を複雑にしている。
 政府は、Old Long Stay患者を、本人の意向を尊重しながら、病院から地域への生活へ移行させる政策を推進している。長期入院患者の地域移行政策(脱施設化と呼ばれることもある)は、先進諸国ではすでに完了しているので、わが国でも必須で強力に推進すべき政策である。とくに2004年に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(精神保健福祉対策本部)、それに続く「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」において、その政策の方向性が示され、診療報酬改定や障害者自立支援法および介護保険法においても、その趣旨が反映されつつある。
 この政策は、長期入院医療費の抑制と地域精神保健福祉費用の充実という医療費の配分バランスの変化とセットになっているため、精神科の入院医療費の増加に素朴に疑問を感じる政策担当者や関係者も少なくない。総医療費を抑制しようというインセンティブが強く働いている今日、「これからの患者層」の急性期医療費の増加と、Old Long Stayの患者層の入院医療費の抑制という2つの側面を、関係者は理解する必要がある。
 第二は、精神科医の偏在の問題である。診療所を開業する精神科医が増加し、精神科医療へのアクセスは格段に改善してきたことは、一方で大学病院や病院で精神科医療を担う精神科医の減少を招いている。医師の臨床研修制度の導入によって、新人医師は大学病院ではなく地域の医療機関での研修を望むようになった。これまで医師を地域の医療機関に派遣してきた大学医局における、卒業生の関連医療機関への派遣機能が希薄になってきたのである。また、入院医療、とくに急性期入院医療には当直があり、また患者の状態が不安定であるため、いつも病棟へ指示できる生活を余儀なくされる。一方、診療時間が日中のみの診療所は少なくなく、高収入が得られる。大学病院や急性期入院医療に従事する医師が、家庭で「お父さんいつ開業するの?」と妻子に問われることも少なくない。その結果、患者より先に精神科医が診療所へ「地域移行」して、入院医療の担い手が少なくなってきているのである。精神科医の病棟での忙しさが経済的にも報われる仕組みをつくる必要がある。
 第三の問題点は、医療保険のカバーする範囲である。世界にまれにみる医療へのアクセスのよさを誇るわが国の医療保険制度は、今後も維持していく必要がある。すでにPET検査や人間ドックなどの健康診断を、保険を使わず自由診療で受けている者は少なくない。今後どこまでの医療サービスを保険でまかなうかについては、議論していく必要がある。

精神障害予防
(1)精神障害予防という新しい考え方
 精神障害の予防については、統合失調症の早期診断・早期治療を進めようという国際的に新しい考え方が出てきた。この考え方のベースにあるのは、統合失調症を早期に診断して治療をすると予後がよいという研究成果に基づく。統合失調症の発症から治療開始までの期間を短くすることは、再発を抑制するために効果的であるばかりか、再発のときの医療費を抑えられることになる。オーストラリアのビクトリア州ではこの治療戦略を州政府が支援して一定の成果をあげたため、英国も1999年以降の医療政策に反映させ、精神疾患早期の訪問治療チームによる相談や診断・治療を開始している。
 統合失調症の早期診断・早期治療は、治療者の前に浮かび上がってきた事例から始めるという考え方が、どちらかというとこれまでの主流であった。専門家は治療の必要性は認識しているものの、自傷他害のおそれがあるか家族が治療の必要性を認識しているかでない限り、精神医学的診断・治療をすること自体が課題であると考えてきたのである。
 しかし、岡崎祐士(2006)が指摘する通り、ビクトリア州や英国での統合失調症の早期診断・早期治療の基本的な考え方は、10歳台前半で精神病症状を体験した子どもへ必要な相談や支援を行うことによって、病気の発症や病状の軽減ができる、というものである。もちろん多くは一過性で、対象となるすべての子どもが精神障害を発症するわけではないが、児童のときにこのような症状の理解を深め、対処方法を獲得することは、その後の長い人生において、多くの選択肢を与えることができるという前提があると考えられる。この考え方は、次に論じるように、生活習慣病予防と同じように精神障害予防を進めることを意味している。
(2)精神障害予防の意味
 そもそも、わが国の精神保健医療政策は、あまりに精神障害者対策に重点が置かれすぎていたのかもしれない。これまで精神障害者対策は、精神障害者に対して適切な医療・保護の機会を提供するという観点から講じられてきた。大切な施策であることに間違いはないが、その中に「予防」という視点は強くなかったように思われる。
 その背景には、精神科医療の専門家の前に浮かび上がってこない事例はそっとしておこうという意識が、専門家の中に働いてきたからかもしれない。この点は、「事例性」と「疾病性」という二次元で考えると理解しやすい。事例性と疾病性の有無によって4つに分類すると、精神科医療は、事例として浮かび上がってきた精神障害のグループ(事例性あり・疾病性あり)を対象としてきた。一方で、事例として浮かび上がってこない精神障害(事例性なし、疾病性あり)へのかかわりを、躊躇してきたのである。
 その理由は、治療を受ける動機が本人・家族に希薄であること、医療を受けることの本人・家族にとっての意味や影響が予測できないこと、そして医療を受けたことによる効果が不明確であること、などが考えられる。精神障害にまつわる偏見にさらさないために、本人の動機が明確になるまで待ったほうがよいのではないか、と考える傾向があるのかもしれない。
 近年精神障害予防の効果が明かになりつつあることは、以上の姿勢を検討し直す必要性を示している。専門家は、精神障害の早期診断・早期治療は効果があるというメッセージを、国民に明確に示すことが求められる。そのメッセージをどのように受け止め、判断し、行動するかは、本人や家族の自由であるものの、事例として浮かび上がっていないグループにも、これらを明確に伝える役割が専門家にはあるということを、精神障害予防という考え方は提起している。

医療費適正化と精神障害予防
 精神障害の予防は、「予防」という観点のみならず、診断・治療の費用を抑制するという観点からも、推進が期待されている活動である。慢性疾患が増加している今日、保健医療は国際的にも予防に関心が向けられている。米国の保険会社では、被保険者の健康増進活動を援助するところも出ているが、これには治療費より健康増進活動支援の費用の方が安価になるという判断が背景にある。英国において早期支援・早期治療サービスへ重点的に資金が投入された背景には、入院医療や重度精神障害者への地域ケアのコストの問題があるといわれている。
 たしかに、わが国での入院治療は1日1〜3万円である。20歳で発病して70歳まで長期入院となると、「1人あたり」2〜5億円の医療費が必要である。単純に考えても、もし早期支援・早期治療サービスで「たった1人」の入院期間が半分に減るだけで、1〜2・5億円を予防活動や地域ケア費用として投じることができる。地域ケアは集団への医療費削減効果が期待できるため、精神障害予防は医療費適正化に寄与する。
 ただし、精神障害予防に効果的な具体的プログラムを開発する必要がある。どのような方法が、児童への早期発見のアプローチとして適切なのか。精神病症状の体験をした時に、どこへ相談すればよいのか、その時どのような支援をするのが効果的なのか。これらの疑問に回答できる仕組みを構築する必要がある。この特別企画における西田敦志の論考は、この疑問への回答の手がかりとなろう。「できるだけ早い治療の開始」と「治療中断の回避」の重要性から、若者がアクセスしやすい環境と訪問型治療を軸とする治療体制の整備のモデルを作り、それをどう普及させていくかが問われているといえよう。
 現代は核家族化が進み、生活上の対処技能を子どもへ教えるという家庭の機能が低下しつつある。本来は家庭で獲得する対処技能を、学校で集団活動を通じて学ぶことも多く、さらには仕事を通じて職場で身につけることも少なくない。これらの生活上の対処技能を習得するという機会を、さまざまな公的・民間サービスが提供する必要がある。
 精神障害予防が現実的になりつつある今日、精神障害予防プログラムを、対処技能を獲得するひとつの機会として広く位置付けることが考えられる。国民の理解を得るために、幅広い対象に対してやわらかいメッセージを伝えることからはじめ、参加も任意である仕組みの構築が求められるであろう。このような精神障害予防は、国民の福祉の向上につながる最も効果的で長期的な施策といえるのではないだろうか。
(『こころの科学』133 2007年5月号 特別企画「早期治療をめざす」)
by open-to-love | 2007-12-02 00:44 | 精神障害予防 | Trackback | Comments(0)