精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ:相談機関( 16 )

Q28「精神障害に対する理解の促進」

□Q□精神障害者の作業所をつくる計画に対し、近所の人たちが「何となく不安だ」といって反対しています。精神障害を理解するためにどんな取り組みが考えられますか?

ポイント①誰もが、精神疾患や精神障害について正しい知識をもつ必要があります。
ポイント②住民と精神障害者とがふれあう機会をつくることで、住民の態度や行動の変容が期待できます。

■A■近年、うつ病を「心のかぜ」と表現したり、精神分裂病を「統合失調症」と呼ぶようになるなど、精神障害を身近なものとしてとらえ、正しく理解しようという気運が芽生えつつありますが、一方ではいまだに根強い偏見や先入観もあります。たとえば、全人口に対する精神障害者の割合は2%以上いるといわれますが、犯罪白書によると、刑法犯の検挙者に占める精神障害者の割合は0.6%です。つまり、精神障害者が犯罪を起こす確率が高いという根拠はどこにもないわけですが、社会のなかには「精神障害者=危険、犯罪を犯しやすい人」という間違った認識をもっている人が少なくありません(もっとも、人権にかかわることを確率や数字で線引きすること自体が妥当ではないと思いますが)。いずれにしても、これは偏見の一例ですが、このような偏見を正しい理解に変えていく取り組みが、今、社会全体に求められています。
 精神障害に対する理解の促進に関し、厚生労働省の検討会の提言『精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すために(心の健康問題の正しい理解のための普及啓発検討会報告書)』(2004年3月)では、次のような2つの基本的考え方をあげています。

 ①「正しく理解する」
 精神疾患は、生活習慣病などと同じように誰でもかかりうる病気であることや、予防や適切な治療で回復可能な病気であることなど、正しい基本情報を広く提供し、誰もが自分自身の問題としてもとらえながら、正しく理解できるようにする。
 ②「態度を変え、。行動する」
 精神疾患を正しく理解するだけでは不十分であり、理解にもとづいてこれまでの態度を変え(あるいはこれまで通りに)適切に行動できるようになることが重要である。無理解や誤解のある人は、当事者とふれあうことによって理解が深まり行動変容を期待できる。

 以上のように、態度や行動を変えていくためには、ただ「○○しましょう」あるいは「○○はやめましょう」というだけでなく、精神疾患を正しく理解するための情報や機会の提供が必要です。そうでなければ、たんに「誰かに言われたからする(しない)」ということになり、本当の意味での理解につながらず、必要とされている態度や行動の定着は期待できません。
 この点でいえば、まず、民生委員自身がきちんと精神疾患や精神障害者のことを学ぶ必要があります。実際、民生委員協議会独自で、あるいは他団体との共催で研修をする例が増えていますが、そのようなときも、医師や精神保健福祉士などの専門家の話を聞くだけでなく、精神障害者本人や家族の話を聞くことも重要です。また、グループホームや作業所などを訪ね、継続的に交流をもつことも有効です。民生委員としては、自らも学びながら当事者や家族の団体、自治体、施設や医療関係者、社会福祉協議会、学校などと連携をもち、身近なところで地域住民と精神障害者がふれあえる機会をできるだけ多くつくれるとよいでしょう。

小林雅彦、原田正樹著『民生委員のための地域福祉活動Q&A』
(中央法規出版、2006年7月)

※今度、民生委員さんたちを前に、講演することになりました。そこで、目下、勉強中です。(黒田)
by open-to-love | 2009-04-13 22:39 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)

民生委員・児童委員

民生委員・児童委員について

◆民生委員は、厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める方々であり、「児童委員」を兼ねています。

◆児童委員は、地域の子どもたちが元気に安心して暮らせるように、子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援等を行います。また、一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の委嘱を受けています。

 民生委員制度は、大正6年に岡山県に設置された「済世顧問制度」と、大正7年に大阪府で始まった「方面委員制度」が始まりとされています。平成19年は済世顧問制度発足から90周年という記念すべき年であり、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、民生委員制度創設90周年記念全国民生委員児童委員大会が開催されました。

(厚生労働省HP:生活保護と福祉一般)

民生委員・児童委員活動の歴史

制度のはじまり

[episode 1] 笠井 信一 氏
 大正5(1916)年5月、宮中で開催された地方長官会議の場で、当時の岡山県知事であった笠井信一氏は、大正天皇から「県下の貧しい人々の状況はどうか」とご下問を受けた。笠井知事はすぐに岡山県内の貧困の事情を調査し、悲惨な生活状況にあるものが県民の1割に達していることが判明した。この事態の重大さに同知事は、日夜研究を重ね、ドイツのエルバーフェルト市で行われていた「救貧委員制度」を参考にして、大正6(1917)年5月、「済世顧問設置規程」を公布、民生委員制度の源と言われる済世顧問制度が生まれた。
『民生委員制度40年史』(全国社会福祉協議会)より

[episode 2] 林 市蔵 氏
 大正7(1918)年秋の夕暮れ、大阪府下のある理髪店で50歳くらいの紳士が散髪していた。鏡に写る町の風景を見るともなしに見ていた紳士の目は、ある一点に釘付けになった。それは、40歳くらいの母親と女の子が夕刊を売る姿であった。散髪を終えた紳士は、その夕刊売りに近づき1部買ったあと、一言、二言話しかけ、その足で近くの交番に立ち寄った。
 紳士は、この夕刊売りの家庭の状況を調べさせたのであった。紳士は、当時の大阪府知事林市蔵であった。
 後日、巡査から次のような報告があった。街角で見かけた母親は、夫が病にたおれ、4人の子どもを抱え、夕刊売りでやっと生計を立てている。子ども達は、学用品を買えず、学校にも通っていない。林知事は、自らの貧しい生活を思い起こし、しばらくは、目をとじたままであった。このような母子は他にもいるはずだと思い、部下に調査を命じ、管内をいくつかの方面、今でいう地域に分け、それぞれの方面に委員を置き、生活状況の調査と救済などの実務にあたった。方面委員制度の始まりである。
『民生委員制度40年史』(全国社会福祉協議会)
『民生委員制度創設80周年記念誌』(熊本県民生委員児童委員協議会)より

○民生委員・児童委員活動の7つのはたらき
[1] 社会調査のはたらき担当区域内の住民の実態や福祉需要を日常的に把握します。
[2] 相談のはたらき地域住民がかかえる問題について、相手の立場に立ち、親身になって相談にのります。
[3] 情報提供のはたらき社会福祉の制度やサービスについて、その内容や情報を住民に的確に提供します。
[4] 連絡通報のはたらき住民が、個々の福祉需要に応じた福祉サービスが得られるよう関係行政機関、施設、団体等に連絡し、必要な対応を促すパイプの役割をつとめます。
[5] 調整のはたらき住民の福祉需要に対応し、適切なサービスの提供が図られるように支援します。
[6] 生活支援のはたらき住民の求める生活支援活動を自ら行い、支援体制をつくっていきます。
[7] 意見具申のはたらき活動を通じて得た問題点や改善策についてとりまとめ、必要に応じて民児協をとおして関係機関などに意見を提起します。

民生委員・児童委員の基本姿勢/基本的性格/活動の原則

○基本姿勢 [民生委員・児童委員は、3つの基本姿勢を守ります]
□社会奉仕の精神
社会奉仕の精神を持って、社会福祉の増進に努めます。
□基本的人権の尊重
民生委員・児童委員は、その活動を行うにあたって、個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守ることが、とくに重要です。人種、信条、性別、社会的身分または門地による差別的、優先的な取り扱いはしません。
□政党・政治目的への地位利用の禁止
職務上の地位を政党または政治的目的のために利用してはなりません。

○基本的性格 [民生委員・児童委員には、3つの基本的性格があります]
□自主性
職務上の地位を政党または政治的目的のために利用してはなりません。
□奉仕性
誠意をもち、地域住民との連帯感をもって、謙虚に、無報酬で活動を行うとともに、関係行政機関の業務に協力します。
□地域性
一定の地域社会(担当区域)を基盤として、適切な活動を行います。

○活動の原則 [民生委員・児童委員活動には、3つの原則があります。]
□住民性の原則
自らも地域住民の一員である民生委員。児童委員は、住民に最も身近なところで、住民の立場に立った活動を行います。
□継続性の原則
福祉問題の解決は時間をかけて行うことが必要です。民生委員・児童委員の交替が行われた場合でも、その活動は必ず引き継がれ、常に継続した対応を行います。
□包括・総合性の原則
個々の福祉の問題の解決を図ったり、地域社会全体の課題に対応していくために、その問題について包括的、総合的な視点に立った活動を行います。

○選任方法
民生委員・児童委員は、民生委員法ならびに児童福祉法にその設置が定められています。

 民生委員は民生委員法によって設置が定められ、児童委員・主任児童委員は児童福祉法によって民生委員が児童委員を兼ねることとなっています。また民生委員・児童委員の中に、児童福祉問題を専門に担当する「主任児童委員」が設置されています。民生委員・児童委員の任期は3年間です。

 民生委員・児童委員は、市町村に設置された民生委員推薦会によりその選考が行われ、都道府県知事に推薦されます。推薦会は、市町村議会議員、民生委員・児童委員、社会福祉や教育関係者、行政機関職員等がそのメンバーとなります。都道府県知事は市町村で推薦された人々について都道府県に設置された地方社会福祉審議会に意見を聴いたのちに、厚生労働大臣に推薦し、厚生労働大臣が委嘱します。

(全国民生委員児童委員連合会)
by open-to-love | 2009-04-07 10:38 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
こころかろやかHOTライン(相談機関一覧)
a0103650_16333542.jpg

a0103650_16335295.jpg

a0103650_1634793.jpg

a0103650_16342317.jpg

a0103650_16343785.jpg

a0103650_16344873.jpg

※小さくて、ちゃんと見えませんよね。遠からず、入力しますので、しばしお待ちを。(黒)
by open-to-love | 2008-09-04 16:35 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
相談室のご案内〈アイーナ6階〉

直通電話 019―606―1762

土・日も受け付けています

…気軽に、お電話してみませんか?…

たとえば…
 ◇職場の人間関係で、悩んでいます…。
 ◇夫婦間のこと(離婚、DVなど)で、困っています…。
 ◇ちょっと、誰かと話したいのですが…。
 ◇家族のことで、話をしたいことがあります…。

 ☎・・・はい、相談室です。

…お一人で悩まず、ご一緒に考えましょう…

〈ご相談内容〉月・水・木・土・日…9:00〜16:00
       火曜日と金曜日は……9:00〜20:00
       面接相談 予約制(606―1762で受付)
       法律相談 毎月第3木曜日(予約制)
〈場所〉 岩手県男女共同参画センター相談室
     盛岡市盛岡駅西通1丁目7番1号 アイーナ6階
a0103650_19422353.jpg

□学習 男女共同参画の普及・啓発や、広く県民の皆さんのライフスタイルに応じた研修、学習活動を行います。
 ○いわて男女共同参画フェスティバル
  毎年6月のいわて男女共同参画推進月間の主要事業として開催
 ○男女共同参画サポーター養成講座
  地域における男女共同参画推進活動を担う人材の育成
 ○各種講座
  ▽男女共同参画の意識啓発のための講座
  ▽女性の様々なチャレンジや活躍を応援する講座
  ▽仕事と子育て・介護の両立のための講座
  ▽配偶者からの暴力防止啓発講座
 ○出前講座
  センター職員が職場や地域、学校など、県内各地へ出向き、
  皆さんのご要望に応じた講義をお届けします。
□情報 男女共同参画に関する様々な分野の情報を広く収集し、いつでも気軽に活用できるようにします。
 ○図書コーナー(6階団体活動室1)
  ▽男女共同参画関連の図書・資料・ビデオ等の閲覧、貸し出し
   (県内各地への貸し出し可能)
  ▽再チャレンジ支援情報提供コーナーの設置
 ○センターだよりの発行
  岩手県の男女共同参画関連情報の提供
  センター事業に関する情報の提供
 ○ホームページの運営
  男女共同参画センターHP
  いわて女性のチャレンジ応援サイト
 ○男女共同参画センターメールニュースの配信
  配信登録者に、センター事業や県内のイベント情報等を、メールにて配信します
  (随時配信登録を受け付けています)
□相談
 ○一般相談
 ○女性のための法律相談
□交流
 オープンスペース、交流展示コーナー等を活用し、県民の皆さんの自主的な活動や各種団体の相互の連携・交流を推進します。
 ○団体活動の発表企画・支援
 ○登録団体・個人とのネットワーク強化

◇アイーナ6階には、子育てサポートルームもあります
◇当センターは配偶者暴力相談支援センターに指定されています
a0103650_19423733.jpg

by open-to-love | 2008-08-30 21:56 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
■12■単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
□26□精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■12■単科病院精神科(鈴木千枝子)

◇はじめに◇

 今日の精神科療法では患者への多様な対応と援助が求められ、専門的役割をもつ各種のスタッフによるチーム医療を行っている。その中で、臨床心理士は臨床心理学の知識と技法を生かして心理アセスメント、心理面接や心理的地域援助の領域を担当している。臨床心理士は、これらの専門的な役割によりクライエント(患者)に臨床心理的援助で寄与している。
 各病院により臨床心理士の位置づけや役割に違いがみられる場合もあるが、ここでは、心理療法と心理療法での他職種との連携を中心に述べる。

◇1◇単科精神病院における心理療法

①心理療法の基本

 心理療法はセラピストとクライエントの心的な相互交流による方法である。その関係性が基盤になり、クライエントは自分の問題に気づいて、問題や困難をクライエント自身で対処してやっていけるようになることが基本である。
 病院臨床の場では、臨床心理士は医師から依頼され心理療法を担当し、医師の医学的治療と平行・連携して心理療法が行われる。主治医は精神医学的治療や身体的治療の管理医として機能する。クライエントが心理療法を希望してきても、相談したい事柄やどんな心理的援助を期待しているのかは千差万別である。心理療法を開始するときに臨床心理士は、クライエントに対して心理療法の方法と目的、そして自分の役割を説明しクライエントの同意を確認することが必要である。単科病院精神科では、神経症から境界例や精神病の病態水準まで広い範囲に関わっている。方法としては、各種の心理療法、集団精神療法、心理的助言などが行われている。

②心理療法

 ◆1 インテーク面接(intake interview)

 インテーク面接は対象となる人を理解するのに必要な情報を収集し、その問題はどのようなパーソナリティと関係しているのかなどを分析・理解していく。そして、クライエントの抱えている問題を臨床心理的に把握し、見立てとかかわりを吟味する。

 ◆2 心理療法の治療的構造の設定と契約

 心理療法での治療構造の設定は対象者の特性、心理療法の目標などに応じて決定され、この構造が心理療法過程を規定する要因として働くようになる。臨床心理士とクライエントはお互いに役割を認識し、治療同盟が成立していることが重要である。

 ◆3 入院での心理療法

 入院の場合、クライエントは看護師をはじめ多くのスタッフ、さらに他の患者ともかかわりが生じる。そのため、心理療法ではクライエントと臨床心理士の二者関係だけでなく、クライエントと看護スタッフや他の患者との関係性の理解も必要となる。このことから対人関係や行動パターンを得ることにより、個人面接だけでは把握できなかったクライエントの特徴を理解できることがある。

 ◆4 心理療法過程で生じる行動化

 心理療法過程で生じる退行や行動化は、関わっている者にとってはむずかしい問題である。境界例などの心理療法で誰しも心が痛むような苦い経験をする。このようなとき、臨床心理士はクライエントが行動化によって何を表現しようとしているのか、何を治療者に伝えようとしているかの意味を思いめぐらすことが重要である。さらに、各スタッフの間で協議し連携していくことが大切である。このようなことがクライエントの逸脱行動を防ぐために役立つ。

 ◆5 精神病水準のクライエント

 単科病院精神科では、統合失調症など多くの精神病水準のクライエントが治療を受けている。このようなクライエントとの心理療法でのかかわりでは、いろいろな困難やとまどいを感じる場面が多いが、クライエントとの長期間の相互交流により少しずつ変化が生じてくることを筆者は経験している。

 単科病院精神科での心理療法は、境界例や精神病など重い病態水準の患者とのかかわりがあり、先に述べた心理療法の基本や◆1〜4がいかに大切かを実感している。

③集団精神療法

 集団精神療法はグループによる特性を生かして行う精神療法である。個人心理療法におけるセラピストとクライエントの相互作用だけでなく、グループを構成するメンバー同士の相互作用の中で個人の問題の解決を目指している。対人関係の改善や入院から社会復帰へ移行するための準備として有効である。
 デイケアをはじめ入院・外来で用いられている。

 心理療法にはさまざまな学派や技法があり、いずれの心理療法でも臨床心理士の役割はクライエントの困難や苦痛を代わって解決する救済者になるのではなく、クライエントが自分の問題に気づいて自分でやっていけるように心理的に援助することが重要である。

◇2◇心理療法での他職種との連携

 病院臨床では、各専門職によるチームでの役割遂行がさまざまな場面で行われている。医師からの心理療法の依頼は、どのような目的でどのような期待を臨床心理士にしているのかを示してもらうことが大切である。臨床心理士の側からも、自分自身への観点、理解、見通しを医師に伝える努力が必要となる。お互いの役割分担や観点が不明確なまま心理療法が進むと連携がうまくいかない。
 病院では医師の診察と平行して臨床心理士が心理療法を担当する。クライエントからは医師と臨床心理士の役割が曖昧に見える場合もあるので、クライエントから医師と臨床心理士の役割分担が明確にわかるように協力関係をもつことが必要である。
 看護スタッフは他の患者と共に24時間入院生活をケアしながら見守っている。このため、看護スタッフとの連携は心理療法に有用な情報をもたらしてくれる。
 いろいろな職種はそれぞれの専門性によってなりたち、専門的能力が活用されている。その連携により相補的に支え合い、クライエントを抱える環境として機能していく。そこにチーム医療の意義がある。

◇おわりに◇

 単科病院精神科の治療において心理的な問題の対応が求められており、臨床心理士の専門性を生かした心理療法による心理的援助が必要とされてきている。チーム医療の中で、心理療法が臨床心理士の専門業務として位置づけられてきている。

●参考文献
1)馬場礼子(1998):病院における心理査定の知識と技法・心理療法からみた精神神経科 山中康裕・馬場礼子(責任編集)病院の心理療法〈心理療法の実際第4巻〉金子書房
2)深津千賀子・北山修(1998):精神科診療の場面における医療スタッフ間の連携 小此木啓吾・深津千賀子・大野裕(編)精神医学ハンドブック 創元社
3)林清秀(1984):病院心理臨床とチーム医療 中川賢幸・藤土圭三(編)病院心理臨床 有斐閣
4)鈴木千枝子(2000):単科病院精神科 氏原寛・成田善弘(編)コミュニティ心理学とコンサルテーション・リエゾンー地域臨床・教育・研修〈臨床心理学3〉培風館
by open-to-love | 2008-08-12 22:25 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
■24■企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
□26□精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■24■企業内カウンセリング(松本よし子)

 近年、自殺は増加の一途をたどり、交通事故による死亡者の数を軽く越えている。その中には、働きざかりの人たちが多く含まれ、業務による心理的負荷を原因とした精神障害の発病や自殺に対しては、労災請求が行われる事案が増加している。また、1996年には過労による自殺で、企業に損害賠償責任を認める判決が初めて出されている(電通事件)。
 こうした中、1988年に労働安全衛生法が改正され、中央労働災害防止協会から「心とからだの健康づくり」を目指す、トータル・ヘルス・プロモーション・プラン(THP)が打ち出され、心身両面にわたる健康保持増進措置が推進されてきたが、さらに、2000年には「事業場におおける労働者の心の健康づくりのための指針」が発表され、安全配慮義務が企業の責務として明示されてきている。
 メンタルヘルス対策は、企業にとって避けては通れない重要な課題となってきているのである。
 アメリカでは、EAP(従業員援助プログラム)と呼ばれる、従業員のカウンセリングを外部専門機関に委託する制度が中心で、日本でも外資系企業を中心に、EAPを採用するところも見られるようになったが、日本では、企業内にカウンセラーをおくところが多く、1961年に日本産業カウンセラー協会が設立され、協会認定の産業カウンセラー資格の技能審査などを行っている。
 現在、企業内カウンセラーとして働く人は臨床心理士をはじめ産業カウンセラーの資格をもつ者も多いが、その所属部門や役割、仕事内容と取り組み方、待遇や採用形態などはさまざまであり、その企業の歴史や風土によって、また、担当者の専門性の違いによって、メンタルヘルス対策の展開には違いが生じている。
 しかし原則的には、企業におけるメンタルヘルス対策は、「予防対策」「実際に問題が起ってきた時の対策」「予防対策」の3つの局面に分けられ、企業内カウンセラーに期待される具体的な役割には以下のようなものがある。
(1)問題をもつ社員へのカウンセリング
(2)心理アセスメント
(3)専門機関への紹介 外部機関との連携
(4)環境調整
(5)復職後のケア
(6)職場関係者や人事部門へのコンサルテーション
(7)予防的心の健康相談
(8)教育啓発活動
(9)キャリアカウンセリング(進路や能力開発に焦点づけて援助を行うカウンセリング)

◇1◇企業内カウンセルングのむずかしさと留意点

 企業というう常に評価がつきまとい、それが直接的間接的に現実の生活の糧にはね返ってくる管理競争社会では、メンタルな問題は隠されやすく、相談室が設置されても、それが定着し活用してもらえるようになるまでにはカウンセラーのたゆまぬ努力と工夫が必要となる。
 筆者の相談室では、社内報への執筆によるPRや新入社員面接、管理監督者との懇談会などを行うことで相談室の敷居を低くすることに取り組み、徐々に、自発来談者の数が増えてきている。
 こうした取り組みの中で、しかし、企業という組織の中で働くカウンセラーは、その組織の影響を受けるということから逃れることはできない。すなわち企業には、学校でも病院でもなく、働く場として「経済効率を重んじ、目に見える成果を求める」という「企業論理」があり、カウンセラーといえどもこれに巻き込まれてしまいやすい。
 このためカウンセラー自身が、企業と社員との間で、どういうスタンスでどう取り組んでいくのかを、まず自らに問いかけ明確にしておく作業が必要であり、それが、対象者である社員に正しく知らされていることが、第一になされていなければならない。環境調整やコンサルテーションなどをしやすい、身近にいるカウンセラーだからこそ、カウンセリングの基本である守秘義務に関しても、どう取り扱っていくのかを具体的な役割の中で考えておくことが重要である。
 一方、来談するクライエントは、健康なパーソナリティから精神病レベルの人までさまざまである。
 乾は職場におけるストレスとして、配置転換や人事をめぐる問題や職場の人間関係など、企業体や職場組織への適応に伴って生じるストレスを「基礎的ストレス」、海外赴任やIT化、リストラの問題など、社会・経済・政治の変動によって企業や職場に新たに発生してきたストレスを「流動的ストレス」と呼び、分けている。そして特に、流動的ストレスに対する施策の必要性を提言していくことも、企業内カウンセラーの望まれる役割として述べている(注1)が、世相の影響をもろに受ける厳しい職場の現実状況においては、社員に降りかかってくるこうした多様なストレスが、その個人の事情とぶつかり摩擦を起こしたところで、さまざまな問題症状が発現してくることになるのである。
 こうした中、相談室には、ちょっとした人生相談という形ででも来談できるところが予防的な役割を果たせることにもつながるが、さまざまな問題がさまざまな形でもち込まれるため、まず、どの道筋で関わるのかの見立てをすることが求められる。医療機関にかかることが必要と判断されるケースにおいては、その後の治療がスムーズにいくように、本人と要医療の事情を十分に話し合い治療のベースにうまくのせることが必要となる。
 企業内の相談室で引き受けていく場合は、一般に問題解決志向のカウンセリングとなることが多いが、状況に応じて指示的にアドバイスするのか、傾聴に徹していくのか、あるいは環境調整などのため職場関係者へのコンサルテーションを行っていくのかなど、クライエントの求めていることを明確にし査定し、どう対応していくかを判断決定していくには、かなりの経験的習熟が必要である。
 特に企業の中にあって、種々、万能的な期待を寄せられがちな状況では、しばしばカウンセラーが周りの期待や思惑のほうに振り回され、カウンセラーとしての本来の立場を見失ってしまい不全感を抱かされる危険性があることに注意しておかなければならない。

◇2◇企業内カウンセリングの利点と今後の課題

 企業内カウンセラーは、その企業の風土や体質になじみ社員アイデンティティも部分的に共有しているところに、外部から関わる場合との大きな違いがある。
 この特質を活かして、より職場の現実を見すえた問題の取り組みに、クライエントっを方向づけることが可能である。また、経験年数を重ねるほどに、管理監督者との懇談会などを通じて得られたつながりを生かして、コンサルテーションをより有効に行うことができるようになる。多忙を極める労働状況では管理監督者からの相談に迅速かつ気軽に応じられることは、企業にとっても大きな利点であり、職場のメンタルヘルスにおけるキーパーソンともなる人たちを支えることは、企業内カウンセラーが貢献できる重要な役割の1つと言えよう。
 近来、境界例水準のクライエントの増加が社会問題となってきている。
 企業においてもこのレベルのクライエントが増え、環境調整も有効に作用せず、特に二次的疾病利得の問題ともからんで、職場では、対立や孤立が起こり、彼らは職場のお荷物と見られがちである。しかし彼らには、組織の構造的問題に敏感に反応しているところもあり、一方的に切り捨てていくことは、企業全体のより健全な成長に逆行することともなりうる。
 企業内カウンセラーにとって、組織の病理を見る目も養いつつ、こうしたケースへの粘り強いかかわりを工夫していくことは今後の課題となってきている。
 このためにも、相談室自体が組織の病理に組み込まれてしまわないよう、企業と社員の間で厳しく中立性を守ることは重要である。
 筆者は長期に病休をくり返すケースにおいて、企業内のカウンセリングを受けていることが、そのクライエントの対処責任回避の姿勢にのっとり、しばしば心理的な免罪符のようにとられていることに気づかされることがある。これは、心理臨床などの援助におけるパターナリズム(温情的干渉主義)とも関連してくる大きな問題であるが、こうした構造に気づき、ときには現実の代弁者として、厳しく治療的対決ができることも、企業内カウンセラーとして重要な役割となる機会が多いように感じている。
 いずれにせよ、長期のかかわりを要する境界例などにおいても、企業内相談室の存在は、勤務時間内に経済的負担なく、心理臨床的援助を受けられるという点において、日本の長時間労働の実態から見ると、有効なあり方の1つとも考えられるのではないだろうか。
 筆者は、社員であるクライエントを「自由と責任をもった社会人」として尊重し、基本的にはそのオートノミイ(自律性)の育成に寄与できるカウンセリングを目指しているが、現実には、さまざまな事情や限界の中での妥協を模索している営みと感じさせられることも多い。
 しかし、企業の相談室が定着しその歴史の中では、10数年前に会っていたクライエントから、カウンセリングで話し合ったテーマにふれての近況が社内メールで届けられることもあり、この仕事を続けてきたことの実りを感じさせられるうれしい瞬間である。

●参考文献
1)乾吉佑(2004):社会状況と職場の心理臨床 臨床心理学,4(1),金剛出版
by open-to-love | 2008-08-11 19:36 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)

領域と対象・電話相談

乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
■23■電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
□26□精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■22■電話相談(安藤延男)

◇1◇定義と分類

 「電話相談」とは、電話を介して(したがって対面的な人間関係を媒介せずに)クライエントの問題や悩みを解決するための相談サービスをいう。最近は、ファックスやメールなどの普及とともに、それらを利用することもある。これも、広義の電話相談としておく。
 相談内容を限定するかどうかで、専門的な電話相談と一般的な電話相談に二分できる。前者は「心の電話」や「サラ金110番」などが好例であり、多くの場合、精神科医や精神科保健師、弁護士などの専門家が相談の受け手を務める。それに対し後者の典型は「いのちの電話」である。「いつでも、どこでも、何でも」相談できることを標榜しているため、電話の受け手として多くの要員が必要である。おのずと「ボランティア」や非専門家(心理相談を専門としない人々)の役割分担が期待されてくる。もちろん、「いのちの電話」の場合でも、心理相談や人間関係の専門家のバックアップが非専門家によるサービスの効果を上げる場合が少なくない。専門家と非専門家の適切な協働関係が、相談業務の量的・質的な向上に不可欠である。
 電話相談活動の運営方式からの分類も可能である。相談サービスの提供者が行政機関か民間団体かで、そのあり方に微妙な相違の生じることがある。たとえば、行政機関の場合、相談サービス提供の時間を「24時間・年中無休」とすることなどは、なかなかむずかしい。ある政令都市の「子ども110番」サービスでは、24時間電話相談をうたっているが、夜間担当は近くの「いのちの電話」のメンバーが肩代わりするという人員配置の工夫を行っていることなどは、その好例である。
 以上、いくつかの次元から電話相談を分類してみたが、現実の電話相談活動がすんなりとどれか一つの範疇におさまるとは限らない。電気通信技術の急速な進歩と社会構造の変動によって、電話相談もさらに進化を遂げるものと思われる。

◇2◇いのちの電話

 日本の電話相談活動に先鞭をつけたのは、「いのちの電話」である。日本の戦後復興と経済成長、核家族化の進展、地域コミュニティの解体、各世帯への電話機の普及などが相互にからまりあいながら、危機への支援やニーズを産み出し、それが世にいう「いのちの電話」という危機電話相談の運動を孵化させたと見てよかろう。
 東京に初の「いのちの電話」が発足したのは、1971年秋である。その後、東京英語いのちの電話や関西いのちの電話、沖縄いのちの電話、北九州いのちの電話などが設立され、1977年に「日本いのちの電話連盟」(Federation of Inochi No Denwa : FIND)が結成された。今日、この連盟に加盟しているのは49センター、それに携わる相談員の数は合計8000名あまりである。
 なおこの連盟の特色は、「いのちの電話」という名称使用の認可条件として、次の事項を課する点にある。すなわち、(1)発起人が100人以上いること、(2)60時間(9カ月)以上の相談員養成課程をもつこと、(3)理事会等の責任体制を確立すること、などがそれである。つまりは、いのちの電話は民間のボランティア運動であり、自らの責任において業務を遂行し、組織を運営するとともに、サービスの「品質」を自力で管理することが期待されているのである。
 「いのちの電話の基本線」と呼ばれる次の6項目を知っておくのも、この電話相談の特徴を知る上で参考になる。すなわち(1)1日24時間、電話相談を受け付けます。(2)電話相談員は秘密を必ず守ります。(3)電話相談は無料です。(4)匿名でもかまいません。(5)必要に応じて、精神科医面接および心理面接を受けることができます。(6)直接電話相談に当たるのは、定められた訓練課程を修了した人々です。
 いのちの電話は、原則としていかなるケースもえり好みしない。全天候型の電話相談である。しかし窮極のねらいは、自殺予防のための「危機介入」(crisis intervention)
である。人生途上で人が困難な問題やストレス、欲求不満に出会った場合、多くは自力で解決し、元気に前進できるが、ときにはそうした窮地から脱出できず、長きにわたって低迷することがある。さらにそのような状態が続けば、人は自信を喪失し、無気力に陥り、適応能力も低下する。これが「危機」(crisis)と呼ばれる精神状態である。「危機介入」とは、そうした窮地からの早期脱出を支援する専門的な働きかけのことである。
 危機理論の詳細は他に譲るとして、この「危機」の語源には必ずしもネガティブな意味だけではなく、「安危の分かれ目」「分かれ道」「峠」などの中性的もしくは積極的な含みがあることを述べておきたい。つまり、危機をうまく克服すれば人格は成長するが、それに失敗すると人格は病的な退行をきたしてしまう、というのである。危機介入のタイミングの良否が、その後の当事者の精神健康の行方を大きく左右することを考えれば、いのちの電話のような「24時間、年中無休」の全天候型相談活動が、危機介入の有効な支援システムであることがわかる。電話による心理相談の典型として、「いのちの電話」(あるいは「日本いのちの電話連盟」)が果している役割は大きいと言わねばならない。

◇3◇電話相談の効用

 電話相談の効用の第一は、まず「危機介入」のためのセンサーの役割であろう。事例選別をしない(全天候型)相談ならでは、早期の危機対応はむずかしいからである。正統派の心理療法やカウンセリングが、クライエントのパーソナリティの再構成や行動の恒常的修正を目指すのに対し、電話相談は当面する危機の低減、あるいは危機以前の機能レベルへの回復に焦点を合わせる。つまり、短期で簡易な心理支援の提供であるからだ。それだけにクライエントは、自分と一緒になって問題解決にコミットしてくれている1人の他者との出会いを実感するはずである。「よき隣人」である。そういえば、イギリスには聖書の「よきサマリア人」にちなんで「サマリタンズ(Samaritans)」という電話相談がある。とにかく、話を聴いてもらえるだけでも、孤立や不安におののく人々には大きな支えとなるのである。この点、正統派の心理療法家や心理カウンセラーが、クライエントの「問題」に受動的、探索的なスタンスで深く関わろうとしているのとは対照的である。そもそも電話相談は「一期一会」的なやりとりの上に展開されるのが普通であるから、多くの場合、1ケースにつき1回から2回で相談が終わる。したがって、もし「治療」の目標を、病因となる「過去」の処理や「無意識」の解放などに設定し、神経症的パーソナリティの根本的変革を目指すのであれば、なにも「電話相談」などを利用する必要はないのである。
 第二の効用は、それがボランティアや非専門家によって担われる場合、専門家と非専門家の協働の場ができることの意義である。「心」または「精神内界」に関することなら、専門家に委ねればよい。しかし、一般的な「生活事件」(ライフ・イベント)の取り扱いについては、逆に非専門家のほうが有効な場合が多いという報告もある。つまり、非専門家よりも専門家が常にベターであるとは言えないのである。電話相談のサービスを目指す場合、専門家と非専門家の間の対等なパートナーシップを構築できるかどうかが、電話相談活動の成否を分けると言っても過言ではない。
 第三は、電話ボランティアの近隣地域への貢献の可能性である。電話相談に携わる時間を月に2、3回(1回約4時間)とした場合、それ以外の大部分の時間は、ボランティアといえども職場や地域の中の一般生活者となる。そうした実生活の場に、「生活事件」について一味ちがう対処力をもった相談ボランティアが「配置されている」と考えれば、そうした職場や地域は隠れた人的資源を保有していることになる。「電話相談と地域メンタルヘルス」とは、魅力ある戦略的なテーマではなかろうか。
 第四は、電話相談では、地域の社会資源を再評価し積極的に活用しようとする動きが活発なことである。もちろん、電話相談自体が社会的なインフラであり、社会資源の1つでもある。日本いのちの電話連盟のように、全国ネットワークをもつものは、「品質」の保証された相談サービスをどこからでも提供できる強みをもっている。一方、同一地域内の行政、企業、団体などには、意外な資源や可能性が死蔵されていることがある。こうした多様なポテンシャルを再合成し、運動推進のパワーに転化することは、民間電話相談のノウハウとして有用である。
 ちなみに、ささやかな電話相談といえども、それを立ち上げることは一種の「起業」である。それだけに、発起人は不安である。先行きは楽観できない。困ってしまう。そこで、いろいろなところに相談する。こんなとき、先発の同種相談機関からの助言はいkちばん参考になる。ムード的な不安が、資料に基づくリーズナブルな不安に転化できれば、不安はかえって推進力として機能するようになる。このように「安心して『困る』ことができる」仕組みこそ、きたるべき電話相談の社会への提供物にほかならない。

◇4◇電話相談の限界と課題

 なにごとにも限界はつきものである。それどころか、効用がそのまま限界であることすらある。限界と課題の1つに、相談員への報酬や経費弁済の問題がある。「手弁当」主義の古典的なボランティア運動論に対し、「有償ボランティア」などの用語も流通を始めている。
 2つ目は、「相談員の人間的成長」という心理的報酬である。それは、生きがいや社会参加などとともに、相談員のやる気を引き出すのに十分である。しかし、そうした関係が成り立たなくなった場合、電話相談への参加意欲もおのずからしぼむことになるだろう。「ボランティアシップの自己管理」が大切な理由である。
 3つ目は、「相談員の倫理と責任」の問題である。専門家集団の提供する電話相談ならば、ことは比較的単純である。しかし、専門家・非専門家の混成旅団による相談サービスではどうなるのか。今のところ「個人」よりも「組織」がサービスについての責任を追う、というのが1つのコンセンサスのようである。あくまでも指示的ではなく、精神保健コンサルティングの技法を駆使して、解決策の自己決定を支援するという枠内に限定しておけば、シリアスな倫理・責任問題は避けることができるのではなかろうか。

●参考文献
1)安藤延男(1988):いのちの電話 季刊精神療法.14(3).pp53−58
2)安藤延男(1996):心理的危機への介入 岡堂哲雄(編)新版心理臨床入門 新曜社 pp193−210
3)安藤延男(1996):コミュニティへの心理的支援ー臨床心理的地域援助 岡堂哲雄(編) 新版心理臨床入門 新曜社 pp211−226
by open-to-love | 2008-08-08 19:59 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
■26■精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■26■精神保健福祉センター(守屋小百合)

◇1◇精神保健福祉センターの業務

 精神保健福祉センター(以下センターと記する)は、「精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律」第6条に基づき、都道府県・指定都市における精神保健の向上および精神障害者の福祉の増進を図るための機関である。
 厚生労働省の定めた運営要領では、地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進から、社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のための援助を目標とし、以下の業務を行うとされている。

 1.企画立案

 地域精神保健福祉を推進するため、都道府県の精神保健福祉主管部局および関係諸機関に対し、専門的な立場から、社会復帰の促進方法や、地域における精神保健福祉対策の計画推進に関する事項を含め、精神保健福祉に関する提案、意見具申をする。

 2.技術指導および技術援助

 地域精神保健福祉活動を推進するため、保健所、市町村および関係諸機関に対して、専門的立場から積極的な技術指導および技術援助を行う。

 3.教育研修

 保健所、市町村、福祉事務所、社会復帰施設、その他の関係諸機関の精神保健福祉業務に従事する職員に対して専門的な立場から研修を行い、技術水準などの向上を図る。

 4.普及啓発

 都道府県規模で一般住民に対し、精神保健福祉の知識、精神障害者についての正しい知識、精神障害者の権利擁護などについての普及啓発を行うとともに、保健所および市町村が行う普及啓発活動に対して専門的立場から協力、指導および援助を行う。

 5.調査研究

 地域精神保健福祉活動の推進ならびに精神障害者の社会復帰の促進および自立と社会経済活動への参加の促進などについての調査研究を行うとともに、必要な統計および資料を収集整備し、都道府県、保健所、市町村などが行う精神保健福祉活動が効果的に展開できるよう資料を提供する。

 6.精神保健福祉相談

 センターは、精神保健および精神障害者福祉に関する相談および指導のうち、複雑困難なものを行う。心の健康相談から、精神医療に係る相談、社会復帰をはじめ、アルコール、薬物、思春期、痴呆などの特定相談を含め、精神保健福祉全般の相談を実施する。センターは、これらの事例についての適切な対応を行うとともに、必要に応じて関係諸機関の協力を求めるものとする。

 7.組織育成

 地域精神保健福祉の向上を図るためには、地域住民による組織的活動が必要である。このため、精神保健福祉センターは家族会、患者会、社会復帰事業団体など都道府県単位の組織の育成に努めるとともに、保健所、市町村ならびに地区単位での組織の活動に協力する。

 8.精神医療審査会の審査に関する業務

 以上のことからわかるように、センターは「地域精神保健福祉活動」の中核として、県全体の精神保健福祉の向上を目的として活動を推進していく機関である。また、上記の業務は個々ばらばらに位置するのではなく、相互に密接な関係があり、常に総合的な視野で実施されなければならないことは言うまでもない。

◇2◇ 職員の構成

 職員の構成として、医師、精神科ソーシャルワーカー、臨床心理技術者、保健師、看護師、作業療法士などを擁するとされており、精神保健および精神障害者福祉に関して、医療、福祉、心理、保健、看護など、それぞれの専門性を生かしながら総合的な観点から、判断し対応していくことが求められている。必要に応じて医師や、福祉、心理、保健の専門職が対応するが、医師による診療行為を除いては、それぞれの立場を複合的に取り入れた対応であると考える。

◇3◇領域と対象

 1.領域

 地域住民の精神保健の向上を目的とし、保健、医療、福祉などそれぞれの立場に偏ることなく、保健・医療・福祉の専門的な観点をもちながら、広い立場で住民の生活全体をとらえ、住民の心の健康の保持増進、それを支える関係機関の対応技術の向上、地域ネットワークづくりなど精神保健および精神障害者福祉に関して県全体が向上し、住民が安心して暮らせるための活動を推進している。
 県下1カ所であること、単なる医療機関・相談機関の役割ではないことなどが、センターの活動の特徴をおのずと作り出すことになっている。

 2.対象

 ①相談指導業務における対象

 a.複雑困難なもの
  相談指導業務においては、法律で複雑および困難なものを行うとされており、何を複雑および困難とするかは異論があるかもしれないが、筆者の在職する県では、複雑困難性の分析も視野に入れながら、他では相談・診察をあまり行っていない対象や新しい問題など相談援助の方法や見通しがいまだ確立されていない問題や対象を中心に受け入れてきている。

 b.問題提起者
 昭和46年開設当初から、問題対象者と問題提起者というとらえ方をしており、問題提起者の相談にのるという姿勢を貫いている。そのため、家族や地域でトラブルを起こす人の隣人、職場の同僚、上司、学校の教師などの相談を第一義的に受け付けているところが大きな特徴と言える。

 c.問題の内容
 相談の内容としては、昭和40年代は自閉症などの発達障害、昭和55年頃から10年間は不登校・家庭内暴力などの思春期の問題が大きな比重を占めていた。平成に入ってからは引きこもりの問題が中心となっており、最近では薬物依存の家族相談も加わっている。これらの問題に対する理解や対応方法などの開発を先駆的に行い、相談援助の充実を図るとともに、保健所や市町村の職員に対して研修や技術援助を行い、住民に身近な保健所や市町村において対応できるようにすることもセンターの役割である。その意味で住民からの直接相談は地域の新しいニーズを把握する上で大きな意味をもっており、常に広く先を見通した視点で業務を行うことが要求される。
 精神科救急、PTSD、障害者の人権擁護などが今後の課題として考えられる。

 ②その他の業務における対象
 主に精神保健福祉関係諸機関の職員を対象にコンサルテーションを行うとともに、その時代時代に必要な課題を常に模索しながら、県下の精神保健福祉の裾野を広げかつ充実していくために、今後何が必要となるか、一歩先を見通し、調査研究し、情報提供、啓発および研修に生かしていくことが求められている。
 業務の内容は多様で、平成13年度の活動報告の内容は以下の通りである。
○「市町村への技術援助について―市町村精神保健福祉関係職員研修を通して」
○「地域精神保健福祉活動の整備・促進に関する検討(第1報)」
○「社会的ひきこもりへの取り組みー『ひきこもり青年』の活動グループの経過を中心に」
○「薬物関連問題相談事業を開始して(その2)―平成12年度薬物問題に関する家族教室の実施報告」
○「中学校でのシンナー・薬物に関する調査」
○「虐待について考える」
by open-to-love | 2008-08-08 00:10 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)

領域と対象・保健所

乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
□10□女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
□26□精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
■30■保健所

■30■保健所(徳丸亨)

◇1◇保健所の精神保健業務

 1.精神保健業務の歴史

 保健所は地域住民の健康の保持・増進のために、地域保健法(旧保健所法)に基づいて、都道府県、政令市および特別区が設置する行政機関である。保健所は主に伝染病予防や母子保健を担った地区保健館を前身とし、1947(昭和22)年に設置されたが、その業務に「精神衛生に関すること」が加わったのは1965(昭和40)年の精神衛生法改正の時からであった。以来、保健所は精神保健の第一線機関として「精神保健相談」「訪問指導」「デイケア」「関係機関との連絡協調」などを実施してきたが、1997(平成9)年の地域保健法施行や1999(平成11)年の精神保健福祉法改正により、平成14年度から精神障害者居宅生活支援法(ホームヘルプ、ショートステイ、グループホーム)が市町村の業務となったことなどを経て、その役割は変わりつつある。

 2.精神保健福祉相談員

 精神保健福祉法では、保健所や精神保健福祉センターには精神保健福祉相談員を配置できることになっており、精神保健福祉士をはじめ社会福祉や心理の大卒者、医師、保健師などをその要件としている。この規定は1965年に生まれたが、現在もなお全数配置には至っておらず、また市町村には適用されないことから、自治体による格差が広がることが懸念される。精神保健福祉業務従事者について全国精神保健相談員会が2000(平成12)年に実施した調査によると、その職種は保健師が55%、福祉職が24%であるのに対し、心理職は6%となっている。

 3.相談の特徴

 保健所への相談をその主訴によって、第一次予防(発生予防)、第二次予防(早期対応)、第三次予防(リハビリテーション)に分類すると、第二次予防に関する相談がおよそ半数を占め、第一次予防と第三次予防に関する相談がそれぞれ4分の1となっている。また、その背景にある問題(疾病)による分類では、半数以上が精神病に起因する問題であり、その他アルコール・薬物関連問題、精神疾患に起因しない不適応やストレスの問題、児童・思春期の問題、高齢者の痴呆の問題などである。
 このことは、保健所では精神病による問題への早期対応に関する相談が多いことを示しているが、問題の内容が多岐にわたり、対象者の年齢層が幅広く、最初の相談者が家族であることっも大きな特徴である。また、最近はさまざまなアディクションや社会的引きこもりなどが注目され、相談支援を求められることが増えている。ここではいくつかの代表的な問題について、アプローチの特徴を述べたい。

◇2◇精神病による問題の相談

 1.早期対応

 精神病の早期対応に関する相談の多くは、その家族からのものである。家族は本人が示す症状に翻弄され、どう対処すればよいかとまどって相談に訪れる。精神病の可能性があれば、医療への橋渡しが目標となるが、症状が活発なときに本人に関わることはむずかしい場合が多く、工夫が必要である。

 ①相談の継続

 援助を求めてくる家族は保健所に頼めば入院させてもらえる、あるいは、家に来て本人を説得してもらえると期待していることも少なくない。しかし、実際にはここからさらに家族としてできることの再検討と実行が新たに始まることになる。これまで以上に努力を必要とすることもあり、相談への意欲を維持することが大切である。

 ②家族の対応

 これまでの家族の苦労をねぎらうとともに、本人への対応をふりかえって、不安を増幅させたり、イライラさせてしまうようなことがあったならば、それまでとは別の接し方を探り、病気・症状についての理解が深まるように援助する。これにより本人と家族の関係を良好なものに戻し、家族による受診説得の可能性を高めることができる。

 ③本人へのアプローチ

 受診・服薬を拒否している場合は、受診ではなく保健所への来所を勧めることもある。これには家族面接において、本人が困っていることや望んでいると思われることを把握し、来所への動機づけを図ることが必要である。また、相談に通っていることを家族から本人に説明したり、こちらから手紙を書いて保健所では誰とどんな話ができるのかを知らせておくことで、本人の不安を小さくすることができる。

 家庭へ訪問する場合は来所を促すときと同様、十分な準備を重ねた上で行うべきである。緊急性があり、家族の来所相談もないまま訪問する場合もまれにあるが、症状が活発なときに、初対面で受診を説得することは至難のわざである。本人にとっても不安や恐怖が高まる場面であり、細心の注意をはらって接し、本人の信頼を得ることが大切である。

 2.リハビリテーション

 リハビリテーションに関する相談では、通院先が住所地から遠く、地域の社会復帰施設に関する情報が得られない場合や退院後どう過ごしたらよいかわからないといったものが多く、本人・家族からだけでなく、医療機関や福祉事務所からの依頼も含まれる。
 保健所デイケアでは、さまざまな活動を通して、生活習慣の安定や体力維持とともに、グループ・サイコセラピーやSSTなどを用いて、対人関係の改善や社会的場面への適応を図り、精神障害者が地域で生活し続けるための支援を行っている。現在、東京23区では、月2回から週3回のデイケアが実施されている。

◇3◇アルコール問題に関する相談

 1.家族の回復

 アルコール問題の相談も家族から始まる。家族は依存症者の理不尽な言動・暴力に巻き込まれて深く傷ついている被害者であると同時に、依存症者が専門治療や自助グループなど回復への方向転換を導くためのキーパーソンでもある。

 ①心理教育

 この問題の解決のためには、家族がアルコール依存症についての正確な知識をもつことが不可欠と言える。常識的な接し方は飲酒をイネイブリングし、アルコール専門治療や断種には結びつかないからである。しかし、それまでよかれと思ってしてきたことと正反対のかかわり方である「飲んだときにはいっさい関わらない」ことを実行するのは、表面的な知識を得ただけではむずかしい。これを実行するときに依存症者から受ける脅しや懇願に巻き込まれることを防ぐためには、家族が自分自身の対人関係の特徴を深く理解する必要も生じる。

 ②家族グループ

 心理教育はグループで行われることが一般的である。グループでは一歩先を行く人の成功談や苦労話を聞いて参考にしたり、この問題が自分だけに起こっていることではないと知り、回復途上の家族に会うことで希望をもつことができる。

 ③個別相談

 相談初期の情報収集や家族が相談を受けることを動機付ける段階では、個別相談を行う。また、アルコール問題が入り口であったが、その家族としてではなく、DVの被害者、ACとして、共依存症などの当事者として援助を受けることが必要な場合にも個別相談が重視される。

 2.受診援助

 アルコール依存症者が自ら援助を求めて相談に訪れることはあまりないが、家族が適切な対応を続けた結果、本人が保健所を頼らざるを得ない状況にたどり着くこともある。はじめは酔った状態で現れることが多いので、アルコールが抜けた状態で話し合いができるように促し、飲酒が今の問題を引き起こしていることを、抵抗が大きくならないように注意しながら説明し、治療の必要性を伝える。その際、回復の可能性についても説明し、希望をもてるようにすることが重要である。

 3.断酒継続の支援

 アルコール依存症者の回復支援のためのグループ・ミーティングが行われている。断酒を確かなものにするために、専門治療や自助グループと併用する場合が多い。家族や周囲の援助者(ヘルパー、看護師、入所施設職員など)の努力によって、断酒ができない段階で参加し、それが断酒の第一歩となることもある。

◇4◇社会的引きこもりの相談

 社会的引きこもりとは、精神障害が第一の原因とは考えにくいが、社会参加せずに、自宅に引きこもる場合を指す。長期化することが1つの特徴であり、精神保健の対象としてクローズアップされてきている。引きこもりの背景はさまざまであり、引きこもり方も自室からほとんど出ないものから、家の中では普通に過ごしているものまであり、どのような援助が必要なのかを見極めることがポイントとなる。

 1.見立て

 引きこもりは精神障害やさまざまな身体疾患が背景にあることも多いため、医師によるアセスメントを経ることが適当と考えられる。保健所では、嘱託医師による「引きこもり相談」を実施したり、従来の「精神保健福祉相談」の中で対応している。

 2.家族グループ

 社会的引きこもりの問題でも、最初の相談者は家族であり、家族を通しての状況把握とともに、困っている家族を支えることが必要である。グループでは参加者同士の支え合いが生かされるよう配慮することが大切である。また、個別担当者とグループ担当者との連携を十分に図ることが必要である。

 3.本人へのアプローチ

 家族との相談から得られた情報によって、家族による働きかけのみを続ける、保健所の担当者が訪問する、当事者グループなどへの参加を促すなどの方法をとる。無理を強いず、粘り強く続ける必要がある。

●参考文献
1)伊藤順一郎他(2003):10代・20代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン 厚生労働科学研究事業 地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究
2)全国精神保健相談員会・全国精神保健福祉センター長会(2000):保健所精神保健福祉業務専任従事者実態調査
3)田中英樹他(1995):全国精神保健相談員会(編) 精神保健相談 萌文社
4)田中英樹(1996):精神保健福祉法時代のコミュニティワーク 相川書房
5)松本義幸(2001):市町村の役割への期待 公衆衛生,65(9)
6)山本和郎・原裕視・箕口雅博・久田満(編)(1995):臨床・コミュニティ心理学 ミネルヴァ書房
by open-to-love | 2008-08-06 20:28 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)
乾吉佑・氏原寛・亀口憲治・成田善弘・東山紘久・山中康裕編
『心理療法ハンドブック』(創元社、2005年)

第1部 総論
第Ⅱ部 理論と技法
第Ⅲ部 領域と対象
□01□児童相談所
□02□児童養護施設
□03□少年鑑別所
□04□少年院
□05□児童自立支援施設
□06□家庭裁判所
□07□教育センター
□08□学生相談
□09□大学心理相談室
■10■女性センター
□11□総合病院のコンサルテーション・リエゾン
□12□単科病院精神科
□13□精神科クリニック
□14□心療内科
□15□小児科・リハビリテーション科など
□16□精神科デイケア
□17□高齢者
□18□ターミナルケア
□19□個人開業カウンセラー
□20□スクールカウンセラー
□21□教師カウンセラー
□22□HIV/AIDSカウンセリング
□23□電話相談
□24□企業内カウンセリング
□25□被害者ケア
□26□精神保健福祉センター
□27□周産期の心理臨床
□28□遺伝治療
□29□リハビリテーション・センター
□30□保健所

■10■女性センター(村木邦子)

1.女性センターとは

 女性センターは、女性の地位向上のために設置された施設で、1960年代までは民設・民営が主だったが、「国連女性の10年」(1976〜1985年)以降、地方公共団体による公設・公営、あるいは、公設・民営のものが大半となった。公設の場合、国や地方公共団体の首長部局が設置したものと、教育委員会設置のものが主である。女性センターは、年々増加し、2002年10月現在で300を超えている(女性センター、および婦人会館、働く婦人の家は含まず)。それ以外に、女性センターという名称をもたずとも、市民センター、生涯学習センター、公民館などを拠点に、女性センターと類似の活動を行っているところもある。
 これら女性センターの行う事業には、講座やセミナーなど学習・研修事業、市民活動への助成・支援事業、情報収集・提供事業、相談事業、調査研究事業があるが、これらの事業のすべてに、ジェンダーの視点、つまり女性の問題を解決するような視点が貫かれ、それぞれが有機的に関連して、事業展開がなされることが要求される。

2.女性センターにおける相談業務

 女性センターにおける相談事業においては、伝統的な1対1の面接室による相談モデルでは担いきれない側面がある。1つには、女性センターで行われる相談には、ジェンダーの視点が不可欠であることから、フェミニスト・セラピーの手法に基づく必要があること、もう1つは、受動的に相談を持つだけでなく、アウトリーチや危機介入など、コミュニティ心理学の視点が不可欠だということである。
 女性センターにおける相談業務の基本方針として、河野(注1)は相談内容を安易に「問題化(病理化)」しないこと、ジェンダー分析、エンパワーメント、ネットワーキング、女性政策へのフィードバック、地域社会における啓発・啓蒙の6つを挙げている。これら6つの方針は、それぞれ密接に関わっている。伝統的には、女性は良妻賢母であるよう奨励され、それに合わない女性、適わない女性は、どこか病気であるととらえられ、社会の期待する女性イメージに適応するよう強いられる傾向があった。女性センターにおける相談においては、このような女性役割期待にとらわれず、むしろそれには批判的に、それぞれの女性が一個の人間として自己実現していくことを支援するという機能が必要である。
 女性センターにおける相談業務は、一般の相談室と比べ、女性の「何でも相談」として予防的役割を果たす必要がある(注2)。女性センターにおいては、性を中心とした身体の相談、セクシュアル・ハラスメントや不当解雇などの労働相談、親権や養育費などの交渉を含む離婚相談をはじめ、幅広い相談がもち込まれる可能性がある。したがって、相談員は、女性を取り巻く社会状況に敏感であり、もち込まれた相談は、心理的な次元で対処できるものなのか、それとも、他の専門家に早急にリファーすべき問題であるのかを見きわめなければならない。相談のすべてをクライエントの「心理的問題」ととらえ、心理療法を行っていては、大きなあやまちを犯すことになろう。これらの問題に対して、即座に現実的な援助機関へとつなげることで、心理的問題や症状が起こる予防的な役割を果たすことができるのである。
 ジェンダー分析の必要性は、上記のこととも関わっているが、特に、子育て、夫婦関係、性暴力やセクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス(DV)など、女性役割に関わる問題、女性への暴力に関わる問題に対して、ジェンダーの視点ぬきに対処がなされるとき、適切な対応ができないばかりでなく、相談員として、二次被害を与えてしまうだろう。いわゆる「DV防止法」(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」)が2001年に成立したこともあり、ここ数年、各地の女性センターでは、DVがらみの相談が増加する一方である。高畠(注3)は、有料の民間の相談所より、地方自治体が開設している無料の「生活よろず相談」や「女性相談(センター)」の窓口で、DV被害者と出会う可能性が高いことを指摘している。ジェンダーを視野に入れることなく、DV相談を受けるならば、「暴力を受ける女性にも、問題があるのではないか」「なぜ、そんな暴力的な男性のもとにい続けるのか」など、いわゆる「女性への暴力をめぐる嘘」(注4)にとらわれ、女性センターが女性センターとして機能しないことになってしまう。だからこそ、女性センターにおける相談業務においては、ジェンダーを視野に入れたフェミニスト・セラピーの手法が必要になってくる。
 エンパワメントという視点は、女性問題相談ばかりでなく、コミュニティ心理学や被害者支援などでも強調されるが、これは、被援助者を受動的立場において無力化するのではなく、1人1人が本来もっている力を信じ、それが発現するような援助をするということである。特に、社会システムの中で、劣った存在、弱者として位置付けられてきたために、自己評価が低く、自己主張できない、問題解決に能動的に立ち向かえないなどの傾向をもつ人に対して、それらを本人の病理や欠陥と結びつけないことが大切である。一方的に指示したり、問題解決を与えるような援助をするのではなく、より広い文脈の中で自分の問題をとらえられるような視点を与え、それらが個人的な責任ではないこと、その人自身が生来抱える欠陥などではなく、乗り越えていけるものだという勇気を与え、力を引き出していくような援助が有効である。
 状況によっては、他機関と連携して、危機介入する必要も出てくる。DV被害についての相談のように、緊急一時保護(シェルター)の利用が必要になったり、福祉制度の利用、弁護士や警察との連携などが必要になるかもしれない。このような場合、相談員は、単なる心理相談員としてではなく、ソーシャルワーカーに近い役割を果たすことになる。少なくとも、地域に根ざしたさまざまな社会資源についての情報をもち、ネットワーキングしていくことが不可欠である。
 現実には、相談員の研修が不十分であったり、情報が不足している状況にあるが、女性相談の業務に関する研究も、少しずつではあるが、蓄積されつつある。景山・石隈ら(注5)は、DV被害者の相談を受ける際、相談初期に役立つ「危機アセスメントモデル」の作成を試みている。「日本フェミニストカウンセリング学会」や「女性問題相談員連絡会」などの組織は、これらの研究に取り組んでいるので、常に情報収集や情報交換を心がけ、研修を受ける機会をもつことも大切だろう。

3.女性政策へのフィードバックと予防・啓発

 女性問題は社会制度と深く関わるものであり、個人レベルの問題解決に終止していたのでは、根本的な解決に結びつかない。女性センターにもち込まれる相談は、現代女性のおかれた状況を反映するものとして、女性政策にフィードバックしていく義務がある。たとえば、DV被害を受けた女性たちが主体的に問題解決に取り組んでいけるようなシステム、法の整備やシェルターの増設、シェルターでの支援プログラムの充実、生活再建をバックアップするような福祉制度、またDV加害者への適切な対応や治療など、必要なことはまだまだたくさんあろう。
 また、女性センターでは、問題が生じ、女性が相談に訪れるのを受動的に待つというのではなく、問題が生じる前に、予防のための働きかけ、問題が生じたときに、問題をこじらせる前に、適切な援助が受けられるようなしくみ、つまり、予防・啓発活動が不可欠である。既述したように、女性センターの事業には、相談事業以外に、講座、セミナーなど学習・研修事業もある。たとえば、問題を抱えながら、相談を躊躇している女性たちが、はじめは講座やセミナーに参加してみるというところから、相談につながるというケースもある。自分自身の問題がどこからきているのかわからず、悶々としている女性たちが、センターでの学習を通じて、自分の問題をある程度特定し、援助を求めるに至るというようなケースもあろう。あるいは、援助機関を求めている女性が、図書や情報提供の窓口で必要な情報を得るということもある。調査研究事業で、女性がおかれている状況をデータ化し、有効な援助方法を提言していくこともできる。女性センターのさまざまな機能が、有機的に関連して、事業展開がなされることが要求されるゆえんである。

●参考文献
(1)河野貴代美(1999):女性センターにおける相談業務ガイドライン 河野編 フェミニストカウンセリングの未来(新水社)
(2)長谷川七重(2000):女性センター相談室の役割と援助方法の独自性を求めて 女性ライフサイクル研究,10. 特集フェミニスト心理学をつくる―癒しと成長のフェミニズム
(3)高畠克子(2001):フェミニスト・セラピィ活動 山本和郎(編) 臨床心理学的地域援助の展開 培風館
(4)村本邦子(2001):暴力被害と女性ー理解・脱出・回復 昭和堂
(5)景山ゆみ子・石隈利紀(2001):ドメスティック・バイオレンス被害者に対する援助についての研究―「危機アセスメントモデル」の構築をめざして コミュニティ心理学研究,4(2).pp119-131.
by open-to-love | 2008-08-05 23:35 | 相談機関 | Trackback | Comments(0)