精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

カテゴリ:心神喪失者等医療観察法( 6 )

蟻塚亮二著『統合失調症とのつきあい方—闘わないことのすすめ』
(大月書店、2007年)

6章 日本の社会と障害

●日本の精神医療の問題点―国会での発言

 あるとき国会に参考人として呼ばれた。国会なんてどこをどう行けばいいのか分からないので、友人に聞いた。「ああ、コッカイね、カスピ海のとなりだよ」。
 指定された委員会室には空席が目立ち、場の空気は無気力に支配され、よどんでいた。私は医療観察保護法案に反対の立場からの意見を求められていた。この法案によると、精神障害を抱える人で重大な犯罪を犯した者は特殊な施設に収容され、かつ医師が「再犯のおそれあり」と判断すると退院できない。「精神障害をもつ人の人権は憲法の規定を無視してでも制限してよい」という法理論的にも問題をはらむ法律だ。
 私の属する日本精神障害者リハビリテーション学会でもさまざまな論議が進行していたが、その当時私は過労性うつ病の状態で、学会での論議には参加しなかった。ほとんど病気で、詳しい条文を分析する余裕はなく、私は日本の精神医療システムの現状と不備を取り上げて政府の愚策を批判した。
 以下は、2003年5月20日の参議院法務委員会議事録から抜粋した私の発言部分である。日本の精神医療の不備な現状がわかっていただけると思う。不穏当な口調を改め、一部を削除し、その場で言い漏らしたことを追加した。

 私、疑問に思うんですけど、今の精神保健福祉法が実態としては入院手続法でしかない。そもそも、その前身である精神衛生法という法律がありましたが、その中身は入院の手続きでしかなかった。どこに衛生があるんだ? ということです。その骨格を今の精神保健福祉法がずっと引きずっていて、相変わらず入院手続法でしかない。私は精神衛生法が改められて、精神保健法ができるときに非常に期待したんですよ。というのは、精神保健法に衣替えするからには、たとえば欧米のキャッチメントエリア方式、人口30万をキャッチメントエリアというふうに決めて、その中で救急からリハビリまでをシステムとして整備するというような政策的なものが入るのだろうと思っていたら、ぜんぜん入らなかった。たかだか3種類の社会復帰施設が規定されただけで、がっかりしました。
 そういう点で言うと、この法案に、今、国際的な潮流になっている精神科地域ケア、これが触れられてもいないし、まったく担保されていない。そういうことが非常に問題です。だとすると、今回の法律を作ったとしても対象となる患者は地域に帰って手厚くケアされるということがないわけだから、今回の法律もまた入院手続法になっちゃうんだろう。結局、この法律の対象になる方は長期入院を繰り返す、悪循環を繰り返すことになると思います。
 それから、これは日本の政府がおかしてきた非常に犯罪的な問題だと思いますが、日本の精神科ベッドは人口1億2千万に対して33万あるわけです。英国は人口5500万に対して精神科のベッドは2万5千程度しかない。日本の人口は英国の人口の倍ですから、もしも日本に英国並みの地域ケア・システムがあれば、日本で必要なベッドは5万か6万もあればいいわけですね。
ということは、33引く5は28だから、27〜28万の人たちが理由もなく精神病院に抑留されているわけですよ。本来、心の病気も体の病気も同じ病気であるはずなのに、精神の病気にかかった人は社会から切り離されて精神病院に長期抑留される。こんなことがあっていいのですか? 憲法違反です。この責任は政府が取らなきゃいけない。ハンセン病の場合と同じです。
 何でそうなったかというとわが国の精神病床の9割が民間精神病院によって運営されていますが、これは政府が責任を放棄してきたことにほかならない。世界中の国の中で精神医療を民間に丸投げした国というのは、日本しかないんです。英国で鉄道や水道を民営化したあのサッチャーですらも、精神と高齢者にかかわる医療は民営化しちゃいかんと絶対手をつけなかった。しかるに精神医療を民間に丸投げして堂々と続けてきたのが日本の歴史的な誤りだ。そのことがわが国の精神科の長期入院を生み出した。
 民間病院というのは、私も民間病院に勤めていますが、患者さんを一生懸命退院させようとすると、ベッドががら空きになりますね。がら空きになった分、収入は減るんですよ。そうすると人件費を出せない、だから安易に長期入院が増える、そういう仕組みになっています。だから精神医療は民間でやっちゃいかんのです。
 つまり、消防とか警察を民間にやらせたらどうなりますか? 消防が人件費をまなかうために自分が火をつけて走り回ればもうかる、それでやっと人件費を出せる、それと同じですよ。そんなばかなことを日本の政府はずっとやっってきたわけだ。そういう、精神科医療の民間依存体質を変えなきゃいけない。
 かりに民間に丸投げするにしても政府のやり方はあんまりだ。精神科病院の医療収入は他の一般病院の収入の半分ですよ。これでは、十分な医師・看護師その他をそろえて、いい医療をやれないのではないですか。逆に言うと、日本政府は、精神科の患者と精神科の病院とを、ともに「安かろう悪かろう」の状況に押し込めて、患者を治らない様に、長期に入院するように、退院しないように、病院はかろうじてつぶれないようにと、意図的にやってきたのではないか。こんなやり方はあまりにもひどい、世界中の物笑いです。
 1968年にWHOから派遣されたD・H・クラーク博士が、日本の精神医療の改善勧告を日本政府に提出しています。クラーク博士は日本の民間精神病院はよくなっていると、肯定的に評価していた。その上で、民間病院が精神医療の多くを担うにしても、診療報酬を上げること、特に外来診療の診療報酬を保証せよと勧告したのです。しかし、厚生省は露骨にこの勧告を声明まで出して無視したわけですね。自分からWHOに精神医療の改善勧告をだしてくれと依頼しておきながら、出された勧告を否定するという、なんとも失礼なことを厚生省はやったのです。これが問題です。だから丸投げされた民間中心の精神医療も、劣悪で安上がりのものになっている。
 厚生省による「病院への患者閉じ込め」政策にも関連して、地域で精神障害を抱えて生活している人たちに対する福祉的なサービスですが、これがまったく進歩していない。全国でいわゆる社会復帰施設のある市町村というのは1割しかないわけですね。そのような地域にどうやって「触法」といわれる人たちを帰していけるのか? 絶対に無理ですね。
 ということは、今の精神保健福祉法というのは、例えてみると穴のあいたバケツですね。穴のあいたバケツから水が漏れるものだから、仕方なくてまたちょっと小さめの穴のあいたバケツで補おうというのが今回の法律だと思うんですよ。何やっておるのかと思いますね。
 高木先生も言われましたが、地域のサービスを充実させれば、初犯は減ります。(中略)再犯は高木先生が言われたように、一般よりも低いわけですから、何らこの法律は必要ないと思います。
 結局、そうなってくると、この法律のめざすところというのは、相も変わらず安上がりの収容を続けることだろうかというふうに勘ぐりたくなりますね。
 それから今度の法案では、坂口大臣が言うには、1つの県に1つか2つの特殊な施設を作るということなんですけれど、問題が多々あります。1つは、手厚い医療をやるんだというが、医師が足りない。日本の精神科医というのは全医師数の中の4%でしかない。精神病床が33万、つまり全病床の25%くらいのベッドを4%の精神科医がカバーしている、これがそもそも無理なんです。
 何でそうなるのかというと、医学教育の中で精神医学に割ける時間数というのは4%ぐらいしかないんですね。医師の国家試験の中でも、産科、婦人科、小児科、内科、外科、公衆衛生は基幹科目とされていますが、そこに精神医学は入っていないんです。だから、精神科医になろうという人が少ない。そこは文部行政から直さないといけない。そしてなんとかして、精神科医の数を10%から12%くらいまでに増やしてほしいと思っています。
(中略)
 帰るべき家を持たない、仕事もないという状態で、精神病院に長期に入院しておられる方がたくさんいます。彼らは、もし治れば、病院を出て行かなきゃいけないし、看護してもらえない、ご飯も食べれない。そうすると、より精神病らしく振る舞うことを含めて「患者の役割」に安住する人が増えます。患者らしく振る舞い続けることが許される世界に安住していると、引き換えに、人間としての責任や義務、尊厳を失うことになります。
(中略)
 そもそも医療の世界においては、医師には治療をする義務があり、患者には治療を受ける権利と回復するために努力する義務があります。ところが、精神病らしく振る舞うことが許される世界では、上からの管理という締め付けが強くなり、患者さん自身の権利とか義務などという、医療の基本的な枠組みが見失われがちになります。精神病院は、そういう人間としての尊厳の基本に関わるものを、患者だということで剥奪しがちです。これが問題だというふうに思っています。同じようなことが、今回の法律の対象とされる人においても起こるのではないか。つまり犯罪を犯した患者さんにおいても、正当な治療を受ける権利と、回復するために努力する義務があるわけですが、それらがあいまいにされる危険をはらんでいる。
(中略)
 以上のように、別に保安病院とか新しい施設を作らなくてもいい。作ることの弊害のほうが大きいわけであって、むしろ地域を中心とした医療に、日本の精神科医療を再編成し直すことのほうが大事だ、そのことによってしか今回の問題は解決しないだろうと思っています。
 それから最後に、配布しました資料の「精神障害をもつ犯罪者のリハビリテーション」という英国の文献、これは私たちが訳した本の一部ですが、その188ページの8行目のところを見て欲しいんですが、「ある場合には20人以上の担当ワーカーが彼女のケアに動員されることも珍しくなかった」とあります。
 1人の、いわゆる犯罪を犯した患者さんのために、英国では必死になって地域で頑張ってケアしているわけです。そのときに、1日に20人以上も一生懸命走り回ってケアしたということですよ。
 そのようなことが果して日本でできるのか。できないですね。日本では、普段でも到底そんな地域ケアのシステムがないんだから、まして、法務省の一般犯罪者の厚生を目的にする保護観察所が今でさえ手一杯なのに、そこがこの法律の拠点になるなんていうことではまず絶対無理だと思います。以上、まだ言いたいことはいっぱいありますが、時間なので終ります。ありがとうございました。

 精神医療に関する限り、こんな国は人類の歴史上でかつてなかった。医療や福祉に割くお金を削り、経済競争力の向上と拝金主義だけを信じる日本はこれでよいのか?

※明快、かつ、シャープ。なるほどです(黒)
by open-to-love | 2008-10-18 20:01 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(1)
急な立地話に戸惑い 心神喪失犯罪者入院施設 花巻で住民説明会

 心神喪失などの状態で重大な他害行為を行った者の社会復帰を目的とした国立の入院医療施設を花巻市諏訪の国立療養所南花巻病院敷地内に整備を予定している厚生労働省は十七日、同市上諏訪の諏訪公民館で住民説明会を開いた。住民からは「なぜここが選ばれたか納得がいかない」「突然の話で賛成、反対の前にまず理解を深めるため今回だけではなく花南地区全域で説明会を開くべきだ」という要望が出た。
 住民説明会には、諏訪、大谷地地区の住民約四十人、厚労省から四人、市側からも出席した。
 同省障害保健福祉部精神保健福祉課の北川博一精神保健企画官が「裁判官と精神科医が合議をして国公立病院への入退院を指導する心神喪失者等医療観察法(昨年七月公布)に基づく整備で、閉鎖病棟で手厚く万全なスタッフなので心配いらない」としたうえで、指定入院医療機関は国と都道府県(独立行政法人を含む)に限定されており、「北海道・東北の精神疾患政策医療ネットワークの中核的な役割を果たし、春から独立行政法人となる南花巻病院がふさわしい」と説明した。
 これに対し住民からは「なぜ花巻が選ばれたのか理由が分からない」「安全とはいえ、凶悪犯罪者も対象なのでもっと広く住民に説明すべきだ。これは花巻全体の問題だ」「市は厚労省と同じに賛成なのか」など質問や意見が相次いだ。
 北川精神保健企画官は「実施設計が固まったならば、さらに住民説明会を開き具体的に説明して理解を得たい」と述べた。(2004年3月18日付)

新病棟 進まぬ理解 心神喪失で犯罪 更生へ今秋開設 花巻
厚労省計画 地元「詳しい情報を」

 花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院敷地内に、心神喪失などの状態で殺人
など重大犯罪を犯した人の社会復帰を目的とした入院医療施設の建設が進んでいる。これまで厚生労働省は計四回の地元説明会を開いたが、地域からは「どんな施設かまだ分からない」との声も上がる。全国各地に建設予定がある同施設は、大半が地元の反対などから思うように進まない中、今秋の開設を目指す花巻は先駆け的存在。住民の不安や要望に応える積極的な情報提供が求められている。
 施設は、七月に施行される心神喪失者等医療観察法に基づき設置される。新病棟は平屋の床面積約2400平方メートルで、病床は三十床。予備病床も三床備える。スタッフは医師四人(非常勤一人)、看護師四十三人、作業療法士や臨床心理技術者ら七人。建物は閉鎖病棟で、二十四時間体制で警備員が付き、フェンス、モニター、赤外線センサーも設置する。
 入院期間は約十八カ月。状態に応じて急性期、回復期、社会復帰期の三段階に分けて治療する。外出訓練時には、複数の職員が付き添う。退院後は、原則として地元に戻り、各都道府県の指定通院機関で治療を受ける。
 昨年三月の国の計画発表以来、十一月まで計四回の地元説明会を開催。「花巻市全体の
問題としてもっと広く説明するべきだ」「なぜ花巻なのか」などの声もあったが、同省などでは「おおむね理解が得られた」として、昨年末に着工した。
 同市諏訪の農業女性(64)は「更生のために必要な施設と理解するが、地元としては外出時などの安全面が一番心配」、同市大谷地の会社員男性(38)は「説明会が平日の昼間だったので参加できなかった」と詳しい情報を求める。
 今年三月に、地域の区長、病院職員、警察や小中学校などによる約三十人の地域連絡会議が発足。地域の声を吸い上げる機関として、病院側は入院者の数や退院状況を随時提供していく。
 同病院の瀬戸興次事務部長は「登下校時は外出を避けるなど、地域の要望にはできる限り配慮する。院内に窓口を設け、住民の不安を解消したい」と理解を求める。
 同省は、同様の施設を全国に計二十四カ所建てる計画だが、地元の反発などから現在は花巻を含めて三カ所しか着工できていない。花巻病院は、東京都の国立精神・神経センター武蔵病院に次いで二番目の開設になる。

 心神喪失者等医療観察法とは  心神喪失など「罪に問われない」状態で重大な犯罪を行った人の社会復帰が目的。これまでは釈放や措置入院となっていたが、入院施設の医療にばらつきがあることや、大阪教育大付属池田小事件をきっかけに体制づくりを求める声が高まった。入院対象者は裁判官と精神科医の合議により決める。全国の対象者は年間約300人で、開設後はすぐに満床になることが予想される。(2005年5月26日付)

心神喪失者医療観察法 入院施設整備に遅れ あす施行 運用に危機感も

 重大事件を起こしながら心神喪失などを理由に刑罰を科されなかった精神障害者について、地裁の判断で入院・通院による治療を強制的に受けさせ、再発を防止することを目的とした心神喪失者医療観察法が十五日、施行される。
 二〇〇三年七月の成立から既に二年。入院施設の整備が大幅に遅れており、法が定める施行期限ぎりぎりのスタートとなった。入院施設確保のため、施設の要件を一時的に緩和する法改正が早くも取りざたされ、関係者には「制度は十分機能するのか」との危機感が強い。
 心神喪失・耗弱状態で殺人、強盗などの事件を起こし不起訴とされたり、起訴されたものの無罪や執行猶予判決を受けた精神障害者が対象。検察官の申し立てを受け、地裁(裁判官と精神科医各一人による合議)が精神鑑定を実施した上で審判を開き、入院・通院などを決定する。審判は非公開だが、事件の被害者や遺族は地裁の許可を得て傍聴することが可能だ。
 入院決定を受けた場合、国公立病院などに新設される専門病棟で治療を受ける。病院は半年ごとに入院継続の申し立てをし、地裁が判断。退院の可否についても、地裁が病院や本人の申し立てに基づき決定する。
 通院決定を受けた場合や退院が認められた場合は、保護観察所の「精神保健観察」を受けながら、専門病院に通院する。期間は原則三年。
 法務省の推計では、心神喪失者医療観察法による新規の入院対象者は年間三百人程度。厚生労働省は、法施行後三年間で入院施設二十四カ所(計約七百二十床)を整備する予定だったが、地元住民による反発が強く、本年度中に整備の見通しが立っているのは国立の三カ所(計九十九床)だけだ。
 秋以降に入院決定が出始めるとみられるが、年末には専門病棟の病床数が不足する可能性が高く、厚労省は精神保健福祉法に基づく措置入院の精神障害者を受け入れている公立病院を利用できるようにする法改正を検討している。

全国2番目、花巻に今秋開設

 本県では、花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院敷地内に、今秋の開設を目指し入院施設の建設が進んでいる。最も着工が早かった東京都の国立精神・神経センター武蔵病院に次いで二番目の開設となる。
 施設は、平屋の床面積約2400平方メートルで病床は三十床。予備病床も三床備える。スタッフは医師四人(非常勤一人)、看護師四十三人、作業療法士や臨床心理技術者ら七人。建物は閉鎖病棟で、二十四時間体制で警備員が付き、赤外線センサーなども設置する。
 地元説明会では「安全面は大丈夫か」「市全体に説明するべきだ」などの声が出た。今後は、住民や警察、小中学校などでつくる「地域連絡会議」が中心となり、病院側と随時情報交換する。

心神喪失者医療観察法とは…
 2001年6月に大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)で起きた児童殺傷事件で精神障害による入通院歴がある男が逮捕されたのを機に、入退院の判断が実質的に医師に任され、退院後の通院などの措置も未整備だった現行措置入院制度の抜本的見直しを求める声が強まり02年3月に法案を閣議決定。日弁連や野党などは「対象者が必要以上に長期間入院させられる恐れがある」と反発、国会審議は3会期にまたがり、参院法務委員会で与党による強行採決などを経て03年7月に成立した。(2005年7月14日付)

心神喪失者の入院医療施設 不安解消へ病棟公開 患者管理手厚い体制
 花巻病院敷地内に来月開設 住民「万全対応を」

 花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院(澁谷治男院長)の敷地内に建設されていた心神喪失者等医療観察法(今年七月施行)に基づく入院医療施設がほぼ完成し、十六日、報道関係者や地域住民らに公開された。開設は十月一日。重大犯罪を犯した人が入院対象となることから、不安を訴える住民もおり、その解消へ最大限の対策が求められる。
 同病棟は、心神喪失など罪に問われない状態で殺人など重大犯罪を犯した人の社会復帰を目的に、厚生労働省が全国二十四カ所に建設を計画する中の一つ。国立精神・神経センター武蔵病院(東京都)に次ぎ全国二番目の開設となる。
 施設は鉄筋コンクリートの平屋、延べ床面積約2400平方メートル。「十字」形の構造で、患者の状態に応じた急性期(六床)、回復期(十四床)、社会復帰期(八床)と、身体障害者と女性用の共用(五床)に区分されている。
 スタッフは精神科医三人(常勤)と看護師四十三人のほか、臨床心理士や作業療法士ら七人。二十四時間体制で警備員が付き、カードキーや生体(血流)認証による施錠で入出を管理する。窓は強化ガラス。周囲は高さ3メートルのフェンスが二重に囲み、監視カメラや赤外線センサーも設置した。
 入院期間は約十八カ月。社会復帰期には複数職員が付き添って外出訓練も行う。
 これまで四度の住民説明会のほか、病院や警察、学校関係者、住民代表らで構成する地域連絡会議も開き、地域理解促進に努めてきた。開設後は有識者による外部評価会議を設置し、意見を運営に反映させる。
 澁谷院長は「連絡会議などを通し、地域住民の方々にはかなり理解いただけたと思う。今後は個人情報に留意しながら情報開示に努め、順調に、事故のないよう運営したい」としている。
 一方、近くに住む六十代男性は「決して歓迎はしていない。建物自体は大丈夫かもしれないが、問題は外出時。万一の際の対応策がよく分からない。病院や警察がしっかり連携して対応し、状況もきちんと説明してほしい」と厳しく注文する。(2005年9月17日付)

心神喪失者入院施設を公開 国立病院機構 花巻病院30日に内覧会

 花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院(澁谷治男院長)は三十日、市民らを対象に、同病院敷地内に建設された心神喪失者等医療観察法に基づく入院医療施設の内覧会を開く。
 同病棟は、心神喪失など罪に問われない状態で殺人など重大犯罪を犯した人の社会復帰を目的に、厚生労働省が全国二十四カ所に建設を計画する中の一つ。開設は十月一日で、全国二番目となる。
 内覧会は今月十六日に続き二度目で、三十日午前十時―正午、午後一―三時の二回。管理体制などを広く公開し、運営への理解促進に努める。同病院は「人数把握のため、できれば事前に申し込んでほしい」としている。2005年9月27日付)

心神喪失者医療に理解を 花巻で施設開設前夜祭

 花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院(澁谷治男院長)は一日、心神喪失者等医療観察法(今年七月施行)に基づく入院医療施設を開設する。三十日には内覧会と前夜祭を開き、住民理解の促進を図った。
 前夜祭のうち作業療法棟体育館で開かれた講演・交流会には関係者、住民ら約二百人が参加。交流会は、退院後を支える指定通院医療機関の医師や県弁護士会所属の弁護士、盛岡保護観察所の社会復帰調整官がパネリストを務め、それぞれの立場から病棟開設後の課題を指摘した。
 参加者からは「情報の透明性を高め、地域と共有してほしい」「(社会復帰期に実施する)外出は登下校時を避け、万一に備え連絡網整備を」などの要望が出た。澁谷院長は「不安は遠慮なく常設の相談窓口に伝えてほしい」と強調した。
 同病棟は、心神喪失など罪に問われない状態で重大犯罪を犯した人の社会復帰を目的に、厚生労働省が全国二十四カ所に建設を計画。開設は全国二番目となる。(2005年10月1日付)

月内にも受け入れ 国立病院機構花巻病院 心神喪失者の病棟

 花巻市諏訪の独立行政法人国立病院機構花巻病院(澁谷治男院長)は一日、心神喪失者等医療観察法に基づく入院医療施設の開設式典を行った。同様の施設は全国二番目。三日には職員配置など体制が整い、月内にも初の入院対象者を受け入れる見込みだ。
 新病棟体育館で行った式典には来賓、関係者、地域住民代表ら約百三十人が出席。澁谷院長は「入院医療の目的は対象者の精神症状改善と同様の行為の再発防止、社会復帰促進。職員一同、病棟の歴史的意味合いと責務を自覚し、円滑な運営に努力する」とあいさつした。
 国立病院機構本部の河村博江副理事長が式辞。赤羽卓朗県保健福祉部長、渡辺勉花巻市長らが祝辞を述べ、関係者がテープカットした。同病棟の入院対象は、心神喪失など罪に問われない状態で殺人など重大犯罪を犯した人。今後は地域の理解と協力を得ながら総合的・専門的医療を行う。

 ○…心神喪失者等医療観察法に基づく全国二番目の入院医療施設を一日開設した花巻市の国立病院機構花巻病院。澁谷治男院長は「わが国の司法精神医療は、先進諸国より数十年の遅れが指摘されている」と述べた上で「厚いマンパワー、恵まれた施設環境が用意された。質の高い、透明性を確保した理想的な司法精神医療が行われると信じている」と強調。新たなモデル医療を、全国に情報発信する構えだ。(2005年10月2日付)
by open-to-love | 2007-05-06 12:42 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(0)
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」案に対する意見書

 奈良弁護士会は、本年11月20日の常議員会における議決に基づき、標記法案(いわゆる『心神喪失者等「医療」観察法案』、以下「政府案」という)に対し、以下のとおり反対意見を表明する。

1 政府案の概要
 政府案は、放火、強制わいせつ、強姦、殺人、自殺関与・同意殺人、傷害、強盗にあたる行為(以下「対象行為」という)を行い、心神喪失または心神耗弱を理由として、不起訴処分にされた者、あるいは無罪または刑を減軽する旨の確定裁判を受けた者について、継続的な医療を行わなくても対象行為の再犯を行うおそれが明らかにないと認められる場合を除き、検察官は、原則として地方裁判所に審判を求めなければならず、そこに設置される裁判官と精神科医である精神保健審判員からなる合議体が、「医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」には、決定により入院もしくは入院によらない医療(いわゆる通院)により指定医療機関において治療を受けさせる、というものである(政府案2条、6条、9条、11条、33条、41条、42条、43条等)。
 上記入院は、入院期間の更新により無期限に及ぶ可能性があり、上記通院は3年ないし5年にわたり得る、という処遇制度である(同43条、44条、49条、51条等)。           

2 政府案の主な問題点
① 疑似医療の強制隔離策
 政府案にいう「審判」は、「継続的な医療を行わなければ心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがある」か否かを判定するというのであり(同37条1項、42条1項1号等)、これは医療よりも治安のための隔離を優先させた「再犯のおそれ」を指すものでしかなく、精神障害者の治療や社会復帰に力点を置く判断ではない。
 また、現在の精神医学では、将来における再犯の危険性の正確な予測は不可能であるともいわれるのに、「指定医療機関」での「医療」(同42条1項1号、43条1項等)は、精神障害者に無期限に及ぶ可能性のある不定期刑類似の身柄拘束処分を課するものといえ、重大な人権侵害を招くおそれがある。
② 適正手続条項の潜脱 
 政府案は、本人に対し、刑罰による場合に実質的に匹敵するような自由の制限をもたらし、重大な人権制限を招くおそれのある手続を設けるものであるにもかかわらず、上記審判において、弁護士である付添人や本人に証拠取調請求権が認められていないなど(同24条、25条2項)、憲法31条以下の規定による適正手続の保障、人身の自由の保障が確保されていない。
③ 地域医療・福祉の保安化・刑罰化
 政府案は、「入院によらない医療」(同42条1項2号)、いわゆる通院の処遇のための中心的な機関を保護観察所としている(同54条、59条等)。しかし、保護観察所は、刑の執行猶予者や仮釈放者に対する保護観察の実施を主たる任務とし、犯罪の予防を目的として活動する機関であり(執行猶予者保護観察法3条、犯罪者予防更正法18条、33条等)、犯罪の予防を目的として活動する刑事政策を担う機関であって、精神医療の専門機関ではない。保護観察所の現状から見て、「対象行為」とされる重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者の処遇ができる専門性と力量を認め難い。このような機関を通院処遇の中心的な機関に位置づけようとする政府案は、観察下の通院措置なるものが結局は刑罰類似のものであることを認めるものである。また地域医療・福祉の主要機関が保護観察所の管理・介入を受けることにより、精神障害者の地域医療・福祉全体が犯罪防止と保安のための機関に組み入れられていく危険をはらんでいる。
④ 隔離施設としての専門治療施設
 そもそも、精神障害者の医療においては、犯罪にあたる行為を起こした者への特別な「医療」などは存在せず、一般の精神医療と変わらず、医療内容も一般の精神障害者と重大な犯罪にあたる行為を行った精神障害者を区別する理由はないとされている。然るに、重い罪にあたる行為を行った精神障害者だけを、「対象行為」を行った「対象者」(政府案2条2項、3項)として、新たに設置される専門の治療施設たる「指定医療機関」(同2条)において「医療」を受けさせることは、「指定医療機関」が事実上刑務所類似の保安専門施設と解され易く、そこに入、通院する者を差別し特別のレッテルを貼る結果となりかねない。

3 精神医療の充実こそ本筋である
 わが国において、精神障害者は、今なお根深い偏見と無理解のため深刻な差別と人権侵害を受け続けている。このような現状に対し、日弁連は、この奈良の地で昨年11月に開催された日弁連第44回人権擁護大会において、「障害のある人に対する差別を禁止する法律」の制定を提言した。上記政府案は、障害のある人に対する差別と人権侵害を増大させるおそれが強く、上記提言の趣旨に反すると言わねばならない。
 精神障害者により時として起こる不幸な事件を防止するためには、退院患者やいまだ精神医療の援助を受けていない精神障害者に対する偏見や差別をなくし、人権に配慮した精神医療の充実という観点から問題の解決を図るのが本筋である。
 日弁連は、かねてから、精神障害者に対しては、精神医療を充実してこそ、時として起こる不幸な事件を防止できるという主張を一貫した基本方針とし、当弁護士会もこれに賛同するものであり、上記治安重視の政府案を是認することはできない。
 また、政府・与党は政府案を一部修正する意向を示しているが、上記の問題点は一部の修正によって解決しうるものではない。
 以上のとおりであるから、当弁護士会は、精神障害者に対する重大な人権侵害のおそれがある政府案を廃案とすることを強く求めるものである。

2002年11月20日

奈良弁護士会
会長  本多久美子
by open-to-love | 2007-04-30 11:49 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(0)

① 新しい法律の目的は何ですか。

 本制度は,最終的には対象となる人の社会復帰を促進することを目的としています。
 精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通常の刑事責任が問えない状態のうち,まったく責任を問えない場合を心神喪失,限定的な責任を問える場合を心神耗弱と呼びます。このような状態で重大な他害行為が行われることは,被害者に深刻な被害を生ずるだけでなく,その病状のために加害者となるということからも極めて不幸な事態です。そして,このような人については,必要な医療を確保して病状の改善を図り,再び不幸な事態が繰り返されないよう社会復帰を促進することが極めて重要であると言えます。
 これまでは,精神保健福祉法に基づく措置入院制度等によって対応することが通例でしたが,①一般の精神障害者と同様のスタッフ,施設の下では,必要となる専門的な治療が困難である,②退院後の継続的な医療を確保するための制度的仕組みがないなどの問題が指摘されていました。
 この制度では,①裁判所が入院・通院などの適切な処遇を決定するとともに,国の責任において手厚い専門的な医療を統一的に行い,②地域において継続的な医療を確保するための仕組みを設けることなどが新たに盛り込まれています。

② どのような人がこの制度の対象となるのですか。

 本制度は,心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人が対象となります。
 「重大な他害行為」とは,殺人,放火,強盗,強姦,強制わいせつ,傷害(軽微なものは対象とならないこともあります。)に当たる行為をいいます。
 これらの重大な他害行為を行い,①心神喪失者又は心神耗弱者と認められて不起訴処分となった人,②心神喪失を理由として無罪の裁判が確定した人,③心神耗弱を理由として刑を減軽する旨の裁判が確定した人(実刑になる人は除きます。)について,検察官が地方裁判所に対して,この制度による処遇の要否や内容を決定するよう申し立てることによって,この制度による手続が開始されます。
 これらの対象となる行為については,個人の生命,身体,財産等に重大な被害を及ぼすものであり,また,このような行為を行った人については,一般に手厚い専門的な医療の必要性が高く,仮に精神障害が改善されないまま,再び同様の行為が行われることとなれば,本人の社会復帰の大きな障害ともなります。
 そこで,国の責任による手厚い専門的な医療と,退院後の継続的な医療を確保するための仕組み等によって,その円滑な社会復帰を促進することが特に必要であるとして,本制度の対象とされたものです。

③ 対象となる人の入院や通院はどのような手続で決定されるのですか。

 この制度では,対象となる人の入院や通院を,地方裁判所で行われる審判で決定することとしています。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行い,不起訴や無罪になった人については,検察官から地方裁判所に,適切な処遇の決定を求める申立てがなされます。申立てを受けた裁判所では,裁判官と精神科医(「精神保健審判員」といいます。)それぞれ1名から成る合議体を構成し,両者がそれぞれの専門性をいかして審判を行うことになります。
 審判の過程では,合議体の精神科医とは別の精神科医による詳しい鑑定が行われるほか,必要に応じ,保護観察所による生活環境(居住地や家族の状況,利用可能な精神保健福祉サービスなどその人を取り巻く環境をいいます。)の調査が行われます。裁判所では,この鑑定の結果を基礎とし,生活環境を考慮して,更に,必要に応じ精神保健福祉の専門家(「精神保健参与員」といいます。)の意見も聴いた上で,この制度による医療の必要性について判断することになります。
 また,対象となる人の権利擁護の観点から,当初審判では,必ず弁護士である付添人を付けることとし,審判においては,本人や付添人からも,資料提出や意見陳述ができることとしています。

④ 指定医療機関とは何ですか。指定医療機関での医療はどのようなものになるのですか。

 この制度における医療は,厚生労働大臣が指定する指定入院医療機関又は指定通院医療機関で行われます。これらを併せて「指定医療機関」といいます。
 入院決定を受けた人について,入院による医療を提供するのが「指定入院医療機関」です。指定入院医療機関は,国公立病院のうちから指定され,当面,全国で24か所程度が整備される予定です。指定入院医療機関では,30床程度の小規模の病棟において,対象となる人の症状の段階に応じ,人的・物的資源を集中的に投入し,専門的で手厚い医療を提供することとしています。
 入院中に,指定入院医療機関又は本人等からの申立てにより,入院による医療の必要性がないと認められたときは,裁判所により直ちに退院が許可されます。入院を継続する場合にも,少なくとも6か月に1回はその要否について裁判所が判断することとしています。
 一方,退院決定又は通院決定を受けた人については「指定通院医療機関」において,必要な医療を受けることになります。指定通院医療機関は,公立病院のほか,地域バランスを考慮しつつ,一定水準の医療が提供できる民間病院も含めて指定される予定です。
 これら指定医療機関が提供する医療については,いずれも全額国費により賄われることとされています。

⑤ 保護観察所がこの制度に関与すると聞きましたが,どのような役割を担うのですか。

 この制度では,対象となる精神障害者の社会復帰を支援する関係機関の一員として,新たに「保護観察所」が加わります。
 精神障害者の地域ケアには,医療機関のほか,精神保健福祉センター,保健所など精神保健福祉関係の多くの機関が関わっているところですが,この制度では,対象となる人をめぐり,これら関係機関の連携が十分に確保されるよう,保護観察所が処遇のコーディネーター役を果たすこととされています。
 具体的には,関係機関と協議の上,対象となる一人ひとりについて,地域社会における処遇の具体的内容を定める「処遇の実施計画」を作成したり,地域での医療や援助に携わるスタッフによる「ケア会議」を随時開催するなどして,必要な情報の共有や処遇方針の統一を図ることとしています。このほか,本人と面談したり関係機関から報告を受けるなどして,その生活状況等を見守り(「精神保健観察」といいます。),地域において継続的な医療とケアを確保していくこととしています。
 これらの業務を適切に実施するため,保護観察所には,精神保健や精神障害者福祉等の専門家である「社会復帰調整官」を,新たに配置することとしています。

⑥ 指定入院医療機関からの退院はどのようにして進められるのですか。

 この制度では,指定入院医療機関に入院した人が,その地元等において円滑に社会復帰できるよう,入院当初から,退院に向けた取組を継続的に行うこととしています。
 具体的には,保護観察所が,指定入院医療機関や地元の都道府県・市町村などの関係機関と連携して「生活環境の調整」を行い,退院地の選定・確保や,そこでの処遇実施体制の整備を進めることとしています。
 対象となる人の社会復帰の促進のためには,退院後の医療を確保することはもとより,必要な生活支援を行うことも重要です。このため,精神保健福祉センターや保健所などの専門機関を通じ,その地域における精神保健福祉サービス等の現況も確認しつつ,具体的な援助の内容について検討することになります。
 調整の過程では,退院先の社会復帰調整官が,定期又は必要に応じて指定入院医療機関を訪問し,本人から調整に関する希望を聴取したり,指定入院医療機関のスタッフと調整方針などについて協議します。また,入院中における外泊等の機会を利用して,本人と退院後の処遇に携わる関係機関のスタッフとが面談する機会を設けるなど,地域社会における処遇への円滑な移行に配慮することとしています。

⑦ 地域社会における処遇はどのようにして進められるのですか。

 地域社会においては,指定通院医療機関が本制度の「入院によらない医療(通院医療)」を担当し,必要となる専門的な医療を提供することとなります。
 対象となる人の病状の改善と社会復帰の促進を図るためには,この必要な医療の継続を確保することが重要です。本制度では,継続的な医療を確保するため,保護観察所の社会復帰調整官が,必要な医療を受けているかどうかや本人の生活状況を見守り,必要な指導や助言を行う(「精神保健観察」といいます。)こととしています。
 ところで,対象となる人の社会復帰を促進するためには,医療を確保するだけでは十分ではありません。本人がその障害と向き合いつつ社会生活を営んでいくためには,必要な精神保健福祉サービス等の援助が行われることが大切です。
 これら地域社会において行われる通院医療,精神保健観察及び精神保健福祉サービス等の援助の内容や方法を明らかにするため,保護観察所では,関係する機関と協議して,対象となる一人ひとりについて「処遇の実施計画」を作成することとしています。地域社会における処遇は,この実施計画に基づいて,関係機関が相互に連携協力して進めることとしています。

⑧ 関係機関の連携が重要だと思いますが,この制度ではどのようにして連携を確保することとしているのでしょうか。

 地域社会における処遇が円滑かつ効果的に行われるためには,これを担う指定通院医療機関,保護観察所,精神保健福祉関係の諸機関が相互に連携協力して取り組むことが極めて重要です。
 本制度では,保護観察所が,指定通院医療機関や都道府県・市町村を始めとする精神保健福祉関係の諸機関と協議して,対象となる一人ひとりについて「処遇の実施計画」を作成することとしています。この実施計画では,地域社会において必要となる処遇の内容と関係機関の役割を明らかにすることとしています。
 また,処遇の経過に応じ,保護観察所は,関係機関の担当者による「ケア会議」を開くこととしています。ケア会議では,各関係機関による処遇の実施状況などの必要な情報を相互に共有しつつ,処遇方針の統一を図ることとしています。
 関係機関相互の連携協力が重要であるとはいっても,このような体制が一朝一夕に整うはずはありません。このため,保護観察所では,あらかじめ指定通院医療機関,都道府県・市町村など精神保健福祉関係の諸機関との間で連絡協議の場を持つなどして,必要な情報交換を行い,平素から緊密な連携が確保されるよう,努めていくこととしています。

⑨ 処遇の実施計画には,どのような内容が盛り込まれるのですか。

 保護観察所が,指定通院医療機関や,都道府県・市町村などの精神保健福祉関係の諸機関と協議して作成する「処遇の実施計画」には,対象となる一人ひとりの病状や生活環境に応じて,必要となる医療,精神保健観察,援助の内容等が記載されます。
 具体的には,例えば,医療については,治療の方針,必要とされる通院の頻度や訪問看護の予定などが,精神保健観察については,訪問・出頭の頻度や指導・助言の方針などが考えられますし,援助については,精神障害者社会復帰施設や居宅生活支援事業,デイケア等の利用の予定,必要な福祉サービスの内容などが考えられます。また,病状の変化等により緊急に医療が必要となった場合の対応方針や,関係機関及びその担当者の連絡先,ケア会議の開催予定なども盛り込むことが考えられます。
 実施計画の内容については,本人への十分な説明と理解が求められますし,作成した後も処遇の経過に応じ,関係機関相互が定期的に評価し,見直しを行うことが必要です。また,本制度による処遇終了後における一般の精神医療・精神保健福祉への円滑な移行についても視野に入れて,その内容を検討することも大切になると考えられます。

⑩ 関係機関によるケア会議は,どのようにして行われるのですか。

 地域社会における処遇を進める過程では,保護観察所と指定通院医療機関,精神保健福祉関係の諸機関の各担当者による「ケア会議」を行うこととしています。
 ケア会議を通じ,関係機関相互間において,処遇を実施する上で必要となる情報を共有するとともに,処遇方針の統一を図っていくこととしています。
 具体的には,処遇の実施計画を作成するための協議を行うほか,その後の各関係機関による処遇の実施状況や,本人の生活状況等の必要な情報を共有し,実施計画の評価や見直しについての検討を行います。また,保護観察所が裁判所に対して行う各種申立て(本制度による処遇の終了,通院期間の延長,入院)の必要性についての検討や,病状の変化等に伴なう対応などについても検討されるべき事項になると考えられます。
 ケア会議は,保護観察所が,定期又は必要に応じて,あるいは関係機関等からの提案を受けて開催され,関係機関の担当者のほか,場合によっては,本人やその家族等も協議に加わることが考えられます。
 ケア会議で共有される本人に関する情報の取扱いについては,個人情報の保護の観点から特段の配慮が必要となります。

⑪ この制度による地域社会における処遇は,どのようにして終了するのですか。

 本制度による地域社会における処遇を受けている期間(以下「通院期間」といいます。)は,裁判所において退院決定又は通院決定を受けた日から,原則3年間となります。ただし,保護観察所又は対象者本人等からの申立てに応じ,裁判所において処遇終了決定がなされた場合には,その期間内であっても,本制度による処遇は終了することになります。
 一方で,3年を経過する時点で,なお本制度による処遇が必要と認められる場合には,裁判所の決定により,通じて2年を超えない範囲で,通院期間を延長することが可能とされています。
 処遇終了決定や通院期間の満了などにより,本制度に基づく地域社会における処遇が終了したとしても,引き続いて一般の精神医療や精神保健福祉サービスが必要である場合が通例であると考えられます。
 本制度による処遇の終了に当たっては,一般の精神医療や精神保健福祉サービス等が,必要に応じ確保されるように,本人の意向も踏まえながら,関係機関が相互に協議するなどして,十分に配慮することが大切と考えられます。

⑫ この法律と精神保健福祉法の関係について教えてください。

 この制度による入院決定を受けて,指定入院医療機関に入院している期間中は,精神保健福祉法の入院等に関する規定は適用されません。
 一方,通院決定又は退院決定を受けて,地域社会における処遇を受けている期間中は,原則として,この法律と精神保健福祉法の双方が適用されます。地域社会における処遇の実施体制は,精神保健福祉法に基づく精神保健福祉サービスを基盤として形づくられるものとも言えます。
 また,任意入院,医療保護入院,措置入院などの精神保健福祉法に基づく入院についても,地域社会における処遇の期間中は妨げられることはありませんので,これらを適切に行う必要があります。例えば,本人の病状の変化等により緊急に医療が必要となった場合などは,まず,精神保健福祉法に基づく入院を適切に行い,一定期間,病状の改善状況を確認するといった対応が考えられます。
 精神保健福祉法に基づく入院の期間中も,精神保健観察は停止することなく続けられ(通院期間も進行します。),この場合,指定通院医療機関や保護観察所は,本人が入院している医療機関と連携し,必要とされる医療の確保とその一貫性について留意することとしています。
(法務省保護局HP)
by open-to-love | 2007-04-30 11:41 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(0)

医療観察制度

●「医療観察制度」とは

 「医療観察制度」は,心神喪失又は心神耗弱の状態で(精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通常の刑事責任を問えない状態のことをいいます。)殺人,放火等の重大な他害行為を行った者の社会復帰を促進することを目的として新たに創設された処遇制度です。
 平成15年に成立した「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」に基づき,適切な処遇を決定するための審判手続が設けられたほか,入院決定(医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定)を受けた者については,厚生労働省所管の指定入院医療機関による専門的な医療が提供され,その間,保護観察所は,その者について,退院後の生活環境の調整を行います。
 また,通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた者及び退院を許可された者については,原則として3年間,厚生労働省所管の指定通院医療機関による医療が提供されるほか,保護観察所による精神保健観察に付され,必要な医療と援助の確保が図られます。
a0103650_1143337.jpg

●社会復帰調整官

 保護観察所においては,本制度による処遇に従事する専門スタッフとして,精神保健福祉士の有資格者など同法の対象者の社会復帰を促進するために必要な知識及び経験を有する「社会復帰調整官」が新たに配置され,本制度による処遇を実施するとともに,地域社会において関係機関相互の連携・調整役を担うこととされています。 (法務省保護局HP)
a0103650_1143245.jpg

by open-to-love | 2007-04-30 11:37 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(0)

心神喪失者医療観察法

 殺人など重大な罪を犯したのに、心神喪失の状態であったという理由で不起訴や無実となった触法精神障害者を、必要に応じて専門病棟に強制入院させ、手厚い治療を行うことを定めた法律。2005年7月より施行されている。入退院を決める審判は、裁判官と医師が2人1組で行い、別の医師の鑑定意見書などを基に入院期間などを判断する。判断のための「鑑定ガイドライン」は、試案では「再犯防止のために長期的なリスクアセスメント(危険性の事前評価)を重視する」として、過去の捜査記録や生活歴を判断材料にあげているが、いまだ完成版はできてない。日本弁護士連合会は「誤って再犯の恐れがあると判断され、長期入院となるケースがかならず出る」という意見書を厚生労働省に提出している。新制度は「社会復帰のための医療」を掲げているが、「治安のための長期拘束」につながるのではないかという疑念も指摘されている。 (YAHOO辞書)
by open-to-love | 2007-04-30 11:33 | 心神喪失者等医療観察法 | Trackback | Comments(0)