精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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カテゴリ:心の病入門編( 8 )

コンボ『改訂新版 あせらず・のんびり・ゆっくりと 自分の夢・希望への一歩』
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発行:地域精神保健福祉機構(コンボ)
執筆:土屋徹(office夢風舎)
   坂本明子(久留米大学精神神経科学教室)
   内野俊郎(久留米大学医学部)
監修:伊藤順一郎
(A4判40頁、 500円)

本書の内容
第1章 病気の経過と回復までのプロセス
第2章 薬の作用とじょうずなおつきあいの仕方
第3章 薬の役割~副作用とその対処~
第4章 再発をなるべく減らすために
第5章 これからの生活のために

この本の目的
 病気や障害の経験をもつ人が再発を防ぎ、より充実した生活をおくるために、どうしたらよいのかがわかるようになることそれがこの本のめざすことです。

この本の特長
 この本は病院などで行われている本人向けの学習会用テキストとしてつくられました。統合失調症とつきあっていくためには、病気のことを理解する必要があります。
 この本は病気のご本人が知っておくとよい基礎知識を、たくさんのイラストや図などを盛り込んで、できるだけわかりやすく説明してあります。
 また、自分が何をしたらよいのかを整理するために、いろいろと書き込んでいく箇所もあります。
 このテキストを作成した筆者3人は、統合失調症の病気の方たちがどうすれば、病気のことを理解し、うまく病気とつきあっていくことができるようになるのか、ということを長年にわたって研究・実践されている方たちです。
 その3人が普段使用しているテキストをさらに、加筆・改訂をしてつくりあげたのがこのテキストです。しっかりと活用して、自分の病気のことをきちんと知るための一助としてください。

この本を読んでわかること
 統合失調症という病気がどのような症状があり、どのような経過をたどるのか
 薬の作用や、副作用への対処などのつきあい方
 再発を予防するための知識(再発のサインを知る)
 夢と希望に満ちた生活を送るために大切にするべきこと
 あなたの応援団をふやすための工夫
by open-to-love | 2013-12-13 21:17 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
大人の絵本「大丈夫、大丈夫」こころの元気+特別バージョン

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予約販売受付中!
by open-to-love | 2012-10-09 20:55 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)

幻聴妄想かるた

「幻聴妄想かるた」(医学書院)
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by open-to-love | 2012-02-04 22:30 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
厚生労働省報道発表資料(2010年9月)

心の不調に気づき、治療や生活を支援するウェブサイト開設

9月10日からの自殺予防週間にあわせ、心の不調に気付いた時の対処法などを紹介する「みんなのメンタルヘルス総合サイト」と若い世代向けの「こころもメンテしよう」のウェブサイトを、厚生労働省ホームページ内に開設しました。
 ご自身やご家族の心の不調で悩んでいる方は、サイトにぜひアクセスしていただき、病気になったときの支援サービスや生活に役立つ情報などをご活用ください。
※サイト開設については、ツイッターでもお知らせしています。

○みんなのメンタルヘルス総合サイト

 心の不調に関する説明や、病気になったときに受けられるさまざまな支援サービスの紹介など、治療や生活に役立つ情報を分かりやすくまとめた総合サイト

http://www.mhlw.go.jp/kokoro

○こころもメンテしよう~10代・20代のメンタルサポートサイト~

 10代・20代とそれを取り巻く方々(家族・教育職)を対象に、本人や周囲が心の不調に気付いたときにどうするかなどを分かりやすく紹介する若者向けサイト

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/mobile/index.xhtml(モバイル版)
by open-to-love | 2010-09-23 22:08 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
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by open-to-love | 2010-02-05 18:59 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
正体不明の声ハンドブック 治療のための10のエッセンス(2002年)

原田メンタルクリニック 東京認知行動療法研究所 院長 原田誠一

こんなことはありませんか?
 毎日の生活の中で「まわりに人がいないのに誰かの『声』が聞こえてくる」ことはありませんか。道路で見知らぬ人とすれ違った時や、知っている人がいない電車の中で、自分について話をしているのが聞こえてくることはありませんか。
 このようなおかしな体験が一度だけならば「気のせいかな?」と軽く受け流せるでしょうが、度重なって起こるとつらく深刻な問題になります。一部の精神障害を持つ方は、自分だけに繰り返し聞こえる正体不明の「声」によって、苦しめられ悩まされることが多いのです。

「正体不明の声」の正体を知ろう
 このパンフレットでは、繰り返し聞こえるこうした「声」を「正体不明の声」と呼んでみました。
 精神科では「正体不明の声」に関する相談を受けることがしばしばあります。「声」は精神科の治療によって消していけますが、治療をスムーズに進めるためには、「声」を体験しているご本人やそのご家族に「正体不明の声」に関する知識をもっていただけると、とても役に立ちます。
 そこで、「精神科医は『正体不明の声』をどのようにみているか」をハンドブックにまとめて、皆さんに知っていただこうと考えました。ここでは
●どのような条件が重なると「正体不明の声」が出現するか?
●「声」の正体は何か?
●そのままにしておくと、どのような悪影響がみられるのか?
●どのように対処するとよいか?
などを中心に、10項目に分けて書いてみました。
 この小冊子が、少しでもみなさんのお役に立てると幸いです。

1「正体不明の声」が生じるわけ:「4つの条件」=不安、孤立、過労、不眠
 「正体不明の声が聞こえる」ことは、①不安②孤立③過労④不眠が重なって、しばらくの間続くときにしばしばみられる現象で、そう稀なことではありません。
 例えば、山や海で遭難した人の手記を読むと、「正体不明の声」が聞こえる体験がよく出てきています。遭難した人は、不安で孤立しています。疲れきっていてもぐっすりとは眠れない状態で、まさにこれら4つの条件にさらされます。
 また、白血病などの病気で無菌室での治療を受けていると、1週間くらいすると今まで心の健康を損ねたことがない人でも「正体不明の声」を聞く場合があります。無菌室での治療にも、4つの条件がそろっています。
 遭難や無菌室というと特殊な出来事ではないかと感じるかもしれませんが、日常生活にも「正体不明の声」が生まれる条件が潜んでいます。「受験、入学、就職、留学、家族からの孤立、引っ越し、人間関係のトラブルや破綻」などの「生活の節目」に、不安、孤立、過労、不眠の4つの条件が揃い「声」が生じがちです。
 「正体不明の声」は精神科の治療をとおして消していけますが、放置してこじらせると精神科に移行して治りにくくなる場合があるので、注意が必要です。
 生活の節目で見られやすいストレスあれこれ
●何かと忙しくせわしない
●日常生活や人間関係が大きく変化する
●新しいことや苦手なことにチャレンジする必要がある
●心配事や失敗のリスクが生じて、ある程度の期間それに耐えなくてはいけない
●実際に失敗やミスをして、困ったり傷つくことも多い
●自分で最終的な責任を負わざるをえない

2精神科では「正体不明の声」を「幻聴」「幻声」と呼んでいます
 精神科では、正体不明の声が聞こえることを、「幻聴」または「幻声」(幻の声が聞こえる体験)と呼んでいます。
 幻聴の現れ方には、以下のようないろいろな種類があります。
 幻聴の現れ方のいろいろ
●まわりに人がいないのに聞こえる「声」
 外から聞こえてくる「声」
 耳もとや頭の中で聞こえる「声」
 のどや首、胸やお腹から聞こえる「声」など
●目の前にいる人から聞こえる「声」
●返事をすると答えが返ってっくる「声」
●決まった場所や場面で聞こえる「声」
 学校、家の近所、入浴中、トイレで聞こえる「声」など
●他の音と一緒に聞こえる「声」
(機能的幻聴または同調性幻聴といいます)
 例:テレビやラジオの音声、人の話し声、車の通過音、換気扇の音などと一緒に聞こえる「声」
●視覚的なイメージを伴う「声」
●一人の「声」/何人かの「声」/大勢の「声」
●知らない人の「声」/知っている人の「声」など

3「幻聴」のルーツは本人の気持ちや考えです
 幻聴では他人の声が実際に聞こえるわけですから、それを「本当に他人が話している声」と受け止めるのは自然です。しかし、実は幻聴のルーツは「本人の気持ちや考え」であって、「実際の他人の声」とは違うのです。この区別がとても大切です。
 幻聴のルーツになりやすい気持ちや考えのトップ3を、下の表にまとめてみました。私たち誰もが日常生活の中で考える内容ですね。
 夢をみている時に、夢の中に登場する人物の「声」が聞こえるように感じることがありますが、その「声」のルーツは自分の気持ちや考えですよね。「夢と似た現象が、起きているときに生じるのが幻聴だ」と考えてみるとよいかもしれません。
 幻聴のルーツになりやすい気持ちや考えトップ3
●後悔したり、自分を責めたりする考え
●自分でも気付きにくく、陰になりやすい気持ち(ある人に感心する一方で、心の底で覚える反発心など)
●他人の考えや言動の想像(「あの人は、私をこんな風に思っているのではないか?」という想像など)

4「幻聴」のもたらす悪影響①
 幻聴を「実際の他人の声」と受け止めるといろいろな誤解や混乱が生じて、その人の生活がつらく不自由になりがちです。
 1.直接のいろいろな悪影響=不愉快、誤解、思い違い、混乱、行動化
 幻聴がしょっちゅう聞こえると、やかましくてうっとうしいですし、物事に集中しにくくなります。また、幻聴では「悪口、中傷、脅し、命令、考えや行動を先取りするような内容、予言めいたこと、荒唐無稽な内容」などが聞こえたりするので、様々な不快感、誤解、思い違い、混乱などが生じやすいのです。さらに、つい「声」に返事をして独り言を口にして、周囲からおかしな目でみられることもあります。
 また、誰もいないのに「正体不明の声」が聞こえてくるものですから、「テレパシー」「神や霊からのお告げ」「超常現象」「電波」「催眠術」などと勘違いして誤解がひろがる場合があります。
 2.個人情報漏洩体験の出現=幻聴から「自分のプライベートな情報がまわりに知れ渡り噂になっているという疑惑」(個人情報漏洩体験といいます)が生じる悪影響
 知らない人たちが自分について話をしている「声」が聞こえる場合、その「声」を真に受けると「自分に関する情報が知れ渡り噂になっている」と誤解しがちです。また、テレビやラジオの音声と一緒に「声」が聞こえるタイプの幻聴があります(機能的幻聴の一種です)が、それを真に受けてしまうと「テレビやラジオで自分のことが放送されている」とか「放送局が自分のことを調べている」などの思い違いが生じて、やはり自分に関する情報が知れ渡っているという誤解につながります。
 3.思考伝播の出現=幻聴から「自分の気持ちが誰かに時々刻々筒抜けになっているという疑惑」(思考伝播といいます)が生じる悪影響
 幻聴のルーツは自分の考えなので
●どこかで自分のこと、自分の心の動きに正確に合っている
●ピッタリ合ったタイミングで聞こえる(例:「おなかがすいたなあ」と思うと「食いしん坊!」と聞こえる)
●どこにいても聞こえる
●相手と会話できるように感じられる
●自分しか知らないはずの内容が聞こえてくる
ことがあります。それで幻聴を真に受けると、自分の気持ちが誰か幻聴を発している人…しばしば正体不明で不気味な人…に時々刻々伝わり、筒抜けになっていると感じやすいのです。
 また、自分の気持ちが筒抜けになっていると感じると、人間は誰でも理由やわけを考えるのが当然ですから、
●隠しマイクで盗聴され、組織的に監視されている
●テレパシーや超能力で気持ちを読まれている
●新しい科学機械で人体実験されている
などと誤って考えがちです。
 自分の気持ちが誰かに伝わり筒抜けになるという不安・恐怖が生じることは、幻聴がもたらす大きな悪影響の一つです。

5「幻聴」のもたらす悪影響②
 4.妄想の出現
 「自分のプライベートな情報がまわりに知れ渡り噂になっている」とか「自分の気持ちが誰かに伝わっている」と感じて疑心暗鬼の目でまわりを見回すと、偶然の出来事が皆自分と関係あるかのようにみえてくることがあります。それが重なると、いろいろな偶然の出来事の中に自分への特別な意味を感じて信じ込み、違う見方の可能性をすべて否定してしまいがちです。これは「妄想」と呼ばれる事態です。
 また、幻聴で実際にはありえない内容が聞こえてきて、それを信用して妄想を抱いてしまうこともあります。
 「不安、孤立、過労、不眠の4つの条件」と「幻聴」と「妄想」の3者には、互いに相手を強め合う働きがあり、悪循環が生じがちです。
 妄想のいろいろな現れ方
●いやがらせをされる
●噂される
●調べられる
●追跡され尾行される
●盗聴される
●じろじろ見られる
●あてつけをされる、など

6「幻聴・妄想」治療の基本
 幻聴・妄想は、精神科の治療というご本人、ご家族と精神科スタッフの共同作業をとおして消していけます。それには、「幻聴・妄想治療の4つの柱」を守ることが大切です。
 幻聴・妄想治療の4つの柱
①日常生活のすごし方に注意を払う(「不安、孤立、過労、不眠」を減らす)
②当面、精神安定剤を服用する
③精神科の専門家との相談を継続する
④幻聴の受け止め方を工夫する

●3つの悪循環を断ち切る
 ①不安、孤立、過労、不眠の4つの条件と②幻聴③妄想の3者が互いに相手を強め合う悪循環を断ち切りましょう。幻聴や妄想を放置するとこの悪循環が生じてしまうため、こじれてしまいがちなのです。放っておいても自然に治る軽い風邪や下痢などと違って、幻聴や妄想がある状態から回復するためには治療が必要であるということをご理解ください。
 精神科医、看護婦、心理療法士、作業療法士、保健師、ケースワーカーなどの医療スタッフは、幻聴や妄想を消していくための専門的知識・情報の提供者であり、ご本人やご家族の不安を減らし孤立を避けるための相談相手ですので大いに活用してください。
●精神安定剤は悪循環を断ち切り回復を助ける
 「精神安定剤」を飲むことも必要です。安定剤は、「不安」を蹴らして「不眠」を治し、こころと脳の「過労」状態を改善することをとおして悪循環を断ち切り回復を援助します。

7「幻聴・妄想」のクスリによる治療
●幻聴・妄想の治療に使われる抗精神病薬
 抗精神病薬は幻聴や妄想などの精神病体験を生み出すきっかけとなる「不安、孤立、過労、不眠の4つの条件」に対して、次のように働くと考えられます。
 抗精神病薬の効果
 鎮静作用(過度の不安や興奮を抑える)→「不安」を和らげて、「不眠」を治し、こころと脳の「過労」状態を治す
 賦活作用(人との交流を避けて孤立する、気分が落ち込んでやる気がでない、などを改善する)→「孤立」しがちな傾向を改善する
 以上を通じて、幻聴や妄想がある状態でみられる悪循環を断ち切り、回復を援助します
 抗精神病薬は、脳の神経細胞にあるドーパミン受容体をブロックすることにより、治療効果をあらわすと考えられています
●抗精神病薬の限界と問題点−特に副作用について−
 すばらしい効き目をもつ抗精神病薬ですが、完全に治らない段階で時期尚早に服薬をやめると、ぶりかえし(再発)がちです。抗精神病薬をきちんと服用し自分の判断だけで服薬をやめないことが、幻聴や妄想の治療の一番大切な基本です。また、副作用かもしれない症状がみられたとしても、それを理由に服薬を中止しないで主治医にご相談ください。
 抗精神病薬の問題点、副作用と副作用対策
問題点
●服薬後、効果が出るまでに数週間から数カ月かかる場合がある
●治療効果に個人差がある
●抗精神病薬を服用している間は飲酒が制限される、など
副作用
●眠気
●立ちくらみ
●頭の回転が鈍る
●のどが渇く
●手足が震える
●じっとしていられない
●便や尿が出にくい、など
副作用対策
●クスリの量を変える
●クスリの種類を変える
●副作用止めのクスリを一緒に飲む、など

●新しく登場した「非定型抗精神病薬」の特徴
 最近登場した「非定型抗精神病薬」は、「第2世代抗精神病薬」とも呼ばれる新しいタイプのクスリです。今までの抗精神病薬と比べて、治療効果が高く不快な副作用も少なくなりました。
 現在、わが国で使用できる非定型抗精神病薬には、次のものがあります。
一般名(商品名)
リスペリドン(リスパダール)
クエチアピン(セロクエル)
オランザピン(ジプレキサ)
ペロスピロン(ルーラン)
アリピプラゾール(エビリファイ)
 しかし、非定型抗精神病薬もまた「魔法のクスリ」ではありません。少ないとはいえ副作用がありますし、人によっては効果が十分みられない場合もあります。
 これらの新しいクスリに関心があって情報を得たいと思ったら、まず主治医にご相談ください。
●クスリの効果を増やすための工夫
 ご本人、ご家族が病気に関する知識を身につけると、クスリの治療効果が増します。さらに、ご本人が幻聴への望ましい態度を理解して実践することも大切ですので、次の章以降で見ていきましょう。

8「幻聴・妄想」に対処するための生活上の注意
 幻聴や妄想を消していくためには、まず現在の生活から「不安、孤立、過労、不眠」を減らすように心掛けましょう。あせらず無理をせず養生に努めて、「過労」や「不眠」を避けて十分寝るようにしてください。
 また、知りたいことや心配なことがあったら医師、看護婦、ケースワーカー、作業療法士、臨床心理士、保健師などに遠慮なく相談してください。

9「幻聴」の受け止め方:幻聴は実際の他人の声ではありません
 幻聴を消していくためには、「声」が聞こえても、「実は、実際の他人の声ではない」ことを忘れないようにしましょう。
 聞こえているけど、これは実際の他人の声ではないのだと受け止めることができると、「自分の気持ちが誰かに伝わり、筒抜けになっている」という恐怖感が薄らぎます。
 すると、「黙っていれば、自分の気持ちや情報がむやみに他人に伝わることはない」という安心感を取り戻せます。

10「幻聴」への態度:気にかけず、相手にしない
 「声」の内容をなるべく気にかけず、相手にしすぎないようにするのも大切です。声の内容を気にかけたり、むきになって頭の中で相手に反論したりすると、幻聴が出現する頻度が増えたり、内容がエスカレートしがちです。また、せっかく幻聴が止まっているのに、「聞き耳を立てる」とか「話しかける」ことによって幻聴が生じてしまう場合があります。気になっても、こうしたことはしない方が無難です。
 役に立つ対処法あれこれ
●頭の働きをちょっと止めてみる
●家族や友人と雑談する
●カラオケで歌う、ハミングする
●体操や水泳を楽しむ
●入浴やシャワー
●テレビを見る、ラジオを聞く
●耳栓やヘッドホンを使う
●お気に入りの服や靴を身につける
●「静かにしてね」とお願いする
●頓服薬を飲んで一休みする
●好きな音楽を聴く、演奏する
●散歩、ジョギング、サイクリング
●掃除や庭仕事をする
●飲食、喫煙、ガムをかむ
●読書をする、日記をつける
●のどを手で押さえてみる
●姿勢をしゃんとする
●初恋の人を思い出す、など

幻聴に対処する方法がいくつかみつかると、だいぶ楽になります。あなたに合った対処法を探してみてください。

●このハンドブックは、著者が考案した「幻覚妄想症状に対する認知療法」のエッセンスを抜粋した要約版です。本治療法の全容を知りたい方は、下記の本をご参照ください。
原田誠一著「幻覚妄想体験の治療ガイド/正体不明の声ー対処するための10のエッセンス」(アルタ出版)
by open-to-love | 2007-05-30 23:34 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)
「精神障害者の生活を支えるために」

はじめに
 このパンフレットには「精神障害者の生活を支えるために」という名前がついていますが、ほんとうは、このパンフレットを手に取る、すべての方の役に立つよう作成したものです。
 6ページまでは、こころの健康の基礎知識です。
 7ページから12ページは、精神障害者の生活を支える制度についてわかりやすくまとめました。
 13ページ以降は、精神障害者のことをとおして、生きることを支える社会のあり方について書いてあります。
 このパンフレットは、「こころの健康を育てる地域の会」のメンバーが、精神科医療の専門家の助言を得て作成したものです。メンバーは医師、保健師、市民の一員として地域づくりに取り組んでいる精神保健福祉士、それに精神障害者の絵が大好きなデザイナーです。
 悩むことは生きることです。
 このパンフレットが少しでも、皆様のお役に立てば幸いです。
 平成14年10月
 「こころの健康を育てる地域の会」を代表して
 国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部長 竹島正

こころとは?
 私たちはたえず、見たり、聞いたりして、いろいろな情報を取り入れ、それについて瞬時に反応したり、ゆっくり考えたりします。これを支えているのがこころ(精神活動)です。こころ(精神活動)とは、私たちの身体の中にあって、私たちの毎日の活動を支えているものです。
 たとえば買い物をしていて、ほしいなあと思う。でも高いと思って買わないこともあれば、迷いながらも買ったりする。あるときは希望に満ちて、あるときは悲しい気持ちでいっぱいになる。これがこころです。
 私たちは、たえず認知し、判断し、行動することを繰り返しています。それを支えているのがこころ(精神活動)です。
 こころ(精神活動)のはたらきは脳が担っています。専門的には「高次脳機能」といいます。

こころの病とは?
 こころが病むとは、認知し、判断し、行動することの繰り返しが、脳の障害や、ひどい疲れのために損なわれ、日常生活に影響が出ている状態をいいます。
 「こころの病」とは、脳のはたらきがうまくいかない状態と理解してください。

こころの病のなりたち
 同じくらいのストレスを経験しても、「こころの病」になる人もいれば、まったく平気な人もいます。
 「こころの病」になるかならないか、また「こころの病」になった場合の重さや病気の経過は、その人の個性や特徴、ストレスの大きさや性質、ストレスに出会ったときのその人の心身の状態、ストレスへの対処の仕方やどのような援助が得られたか、によって異なります。
 ストレスが相当大きくても、周囲の支えがあり、適切な休養や対処があれば、「こころの病」は軽くて済みます。
 「こころの病」は、決して人間らしさの根源が侵される病ではありません。
 「こころの病」は誰にでも起こり得る、ふつうのものであることを理解してください。「こころの病」になっている人も、あなたがとなりにいるごくふつうの人なのです。

「こころの病」のいろいろ
 コンピューターを例にとると、「こころの病」は次のように対比できます。
①コンピューター本体にあらわれた異常です。こころ(精神活動)をつかさどる脳の組織自体が明らかな損傷を受けた場合や、身体の病気やアルコール・薬物などの影響によって、脳のはたらきがうまくいかない状態です。痴呆症、事故による脳の損傷、アルコール依存症などがこれに当たります。
②コンピューターがよくフリーズしたり、ネットワークの異常を繰り返して、円滑に作動しなくなった状態です。こころ(精神活動)をつかさどる脳の組織自体の損傷は小さいですが、脳のはたらきが機能面でうまくいかない状態です。気分障害、精神分裂病(統合失調症)などがこれに当ります。
③コンピューターの機能が使用環境にうまく合わない状態です。脳の組織自体の損傷や機能の障害は見られないのですが、疲れや不調、こころ(精神活動)のはたらきの偏りのために、うまく社会の求めにこたえられない状態です。トラウマ反応(急性ストレス障害、外傷後ストレス障害)、神経症性障害、知的障害や性格の偏りなどがこれに当ります。

 ※このパンフレットでは、こころが病むことの意味をわかりやすく伝えるために「こころの病」という呼び方を用いました。

 脳とコンピューターの違いは? コンピューターはソフトを入れないと動きませんが、脳はソフトを入れなくても動きます。しかも脳はソフト自体をつくり出し、更新していくことができます。脳とコンピューターはずいぶん違います。

「こころの病」の呼び方
 こころを病むとは、認知し、判断し、行動するという繰り返しが、脳のはたらきがうまくいかないために損なわれ、日常生活をうまく維持できない状態のことでした。
 こころを病んだ状態は、「精神病」「精神障害」「精神疾患」などの名前で呼ばれています。
 精神病:脳の障害や極度の精神的疲労のために、すっかり混乱してしまい、現実的で皆と共有できる判断力を維持できず、自分自身の安全や他者への配慮を欠いている状態をいいます。
 精神障害:「精神病」よりも範囲が広くなります。脳のはたらきがうまくいかないために、自分自身の安全や他者への配慮はある程度できるものの、日常生活が維持しがたい状態です。日常生活において福祉サービスを必要とする状態にも使われます。

 精神疾患:「精神障害」とほぼ同じ意味です。こころの病のために、日常生活に影響が出ている状態を、医学的な立場から述べたものです。

 精神保健福祉法における精神障害者:精神保健福祉法では、精神障害者を「精神障害者とは、精神分裂病、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう」と、「精神疾患を有する者」という医学的概念で規定しています。精神保健福祉法における精神障害は、国際疾病分類(ICD-10)の「精神および行動の障害」全体が精神疾患の範囲とされています。個々の制度や条文によって対象となる精神障害者の範囲は異なります。たとえば措置入院は、医療および保護のために入院させなければ自傷他害のおそれがあると判定された精神障害者が対象になります。また福祉サービスの対象は、精神疾患によって、日常生活あるいは社会生活に支障を有する精神障害者となります。

精神障害と治療、リハビリテーション
 ここから12ページまでは、精神障害者(こころの病のために精神科医療の継続と日常生活における福祉サービスを必要とする人たち)について述べます。
Q:病気の治療にはどのようなものがありますか?
A:主な治療は薬物治療です。加えて、病気や回復の様子に応じて精神療法(カウンセリングなど)やリハビリテーションを併用していくことが再発予防につながります。
Q:薬の副作用が心配です。
A:どのような薬にも副作用があります。副作用を心配するあまりに、自分勝手に薬を止めることは病気の再発につながることが多いようです。最近ではより効果的で、副作用が少ない新しいタイプの薬も出ています。
Q:薬は一生服用しなければいけませんか?
A:糖尿病や高血圧と同じように、再発予防のためには長い期間、服用することが大切です。「薬をやめる」ことではなく、病気と仲良くつきあうための手助けとして薬を利用してください。
Q:カウンセリングとは何ですか?
A:普段の診察の中で、自分の生活や不安、将来の目標などを主治医、精神保健福祉士などと一緒に考えたり、話し合ったりすることです。
Q:リハビリテーションにはどのようなものがありますか?
A:「こころの病」によって、〝人づきあいが苦手〟〝集中力がない〟〝段取りが悪い〟などの後遺症が残る場合があります。この後遺症には、リハビリテーションが必要です。精神科デイケアや社会復帰施設等で、軽作業、レクリエーション、スポーツ、社会生活技能訓練(日常生活におけるコミュニケーションの技術などを学ぶ)をとおして、地域で生活するための力をつけます。

平成11年(1999年)精神保健福祉法改正について
 精神障害者が、安心して精神科医療や在宅福祉サービスを受けられるよう、精神保健福祉法が改正されました。主な内容は次の通りです。
1)精神障害者の人権に配慮した医療の確保
 精神科医療審査会の審査機能の強化などが行われました。
2)移送制度の創設
 緊急に入院が必要な精神障害者の移送制度が法制化されました。
3)精神障害者の保健福祉施策の充実
 精神障害者の在宅福祉サービスを、住民に身近な市町村において実施することとなり、保健所は市町村の支援を行うことになりました。そして福祉サービス利用の相談・助言を行うため、精神障害者地域生活支援センターが制度化されました。
4)保護義務の軽減
 保護者の自傷他害防止監督義務を廃止し、自らの意思で治療を受けている患者の保護義務の免除等が行われました。

 精神障害者の在宅福祉サービスを市町村において実施すること、精神保健福祉センターにおいて精神医療審査会の事務等の業務を行うことについては、平成14年(2002年)4月1日からの施行です。その他は平成12年(2000年)4月1日からの施行です。

市町村で行う在宅福祉サービス
Q:市町村で窓口になる在宅福祉サービスは、どのようなものがありますか?
1)精神障害者居宅生活支援事業の実施
 精神障害者のホームヘルプサービス、家族が一時的に介護困難になった場合のショートステイ、地域で共同生活を行うグループホームの提供を行います。
2)在宅の精神障害者の相談、助言、あっせん、調整等
 精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業、精神障害者社会適応訓練事業の利用に関する相談と助言を行います。また必要な場合は、これらの施設や事業が利用できるよう、あっせんや調整等を行います。
3)精神障害者保健福祉手帳の申請受理等
 手帳を所持する人が、日常生活における福祉サービスを必要とする状態にあることを示すことで、福祉的な支援につなげていくための制度です。手帳が交付されると、所得税や住民税の障害者控除があるほか、一部の公共施設や公共交通機関の利用料が減免されます。
4)通院医療費公費負担に関する手続きの申請受理等
 在宅精神障害者が継続して医療を受けやすくするための制度です。承認されると、医療保険と合わせて利用することで、通院医療費の95%が公費負担になります。

Q:市町村役場が窓口だとあまりにも身近すぎて相談しにくいのです。また通院医療費公費負担申請や相談内容が外部にもれることはないですか?
 市町村および関係する機関の職員には守秘義務があります。法律上の手続きを経ることなく、相談内容を第三者に伝えるようなことは一切ありませんのでご安心ください。また相談は来所だけでなく電話や手紙でも受付けています。場合によっては匿名の相談でもかまいません。プライバシーに配慮した対応をしておりますので気軽に相談してください。

 精神障害者居宅生活支援事業(精神保健福祉法第50条3の2)
 精神障害者居宅生活支援事業の種類は次のとおりとする。
精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)
 精神障害者の社会復帰の促進を図るため、精神障害のために日常生活を営むのに支障のある精神障害者につき、その者の居宅において食事、身体の清潔の保持等の介助その他の日常生活を営むのに必要な便宜であって厚生労働省令で定めるものを供与する事業とする。
精神障害者短期入所事業(ショートステイ)
 精神障害者であって、その介護等を行う者の疾病その他の理由により、居宅において介護等を受けることが一時的に困難となったものにつき、精神障害者生活訓練施設その他の厚生労働省令で定める施設に短期間入所させ、介護等を行う事業とする。
精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)
 地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行う事業とする。

居宅生活支援事業の具体例
 実際の在宅福祉サービスはどのように行われているのでしょうか。ホームヘルプサービスを受けている男性の事例を紹介します。
 Aさん 43歳男性 一人暮らし 精神分裂病(統合失調症)
 Aさんは一人暮らしということもあり、普段の食事は外食が多くなりがちでした。先日、近所の診療所を受診したところ、肥満傾向にあり食生活を見直すように指導を受けました。困ったAさんが病院の精神保健福祉士に相談したところ、「ヘルパーさんをお願いしたらどうか」とアドバイスを受けました。
 Aさんは町役場の保健師さんを訪ね、自分の気持ちや困っていることを伝えました。保健師さんは早速Aさん宅を訪問しました。そのあと、Aさん、保健師、病院の主治医、精神保健福祉士と話し合いを持ちました。その結果、Aさんはヘルパーさんの家事援助サービスを週3回利用できることになりました。
 「どんな人が来るのだろう」と心配していたAさんでしたが、最初の訪問では、ヘルパーさんの他に役場の保健師さんも一緒でしたので、リラックスして話をすることができました。
 訪問時には食事の支度や掃除をお願いしています。最近、ヘルパーさんがAさんに、電子レンジの使い方、簡単な調理方法を教えてくれたので、ゆで卵や味噌汁など簡単な料理は自分でもできるようになりました。次第に、Aさんは外食に行く回数が減り、標準体重に近づいてきました。
 何よりも、一人暮らしのAさんにとっては、ヘルパーさんとの世間話が楽しみで訪問が待ち遠しいようです。今では、ヘルパーさんはAさんのよき理解者であり、「生活者の先輩」として応援してくれる、かけがえのない存在になっています。

「こころの病」をもつ人の状況
 全国で「こころの病」のために入院または通院している人は約204万人と推定されています。そのうち入院している人は約33万人、通院している人は約171万人です。
 新たに入院となった人の多くは2〜3カ月で退院しています。また入院せずに精神科デイケアや社会復帰施設等を利用して回復していく人も多くなりました。
 しかし精神障害者社会復帰施設が制度化された昭和62年(1987年)より前に入院した患者さんは、なかなか退院できないまま高齢化しています。平成11年(1999年)患者調査によると、「条件が整えば、退院が可能な人」が約7万2千人いると推定されています。

精神障害と偏見、治るとは
 「こころの病」は誰にでも起こり得る、ふつうのものです。しかし長い間、人間らしさの根源である「こころ」が侵される「不治の病」と誤解されてきました。そのため本人も、家族や周囲の人も、相談や受診に抵抗を感じていました。その結果、治療が遅れ重症化を招いていたのです。
 確かに「こころの病」に人生の途中で出会ってしまうと、それまでは普通にあった社会生活や人間関係が、うまくできなくなることがあります。しかし正しい治療を受けて症状が落ち着いてくれば、糖尿病や高血圧のある人たちと同じように、病気とつきあいながらも、その人らしく、生き生きとした人生を送ることができるようになります。これが「こころの病」が治るということではないでしょうか。
 誰かが「こころの病」になると、その人だけでなく、まわりの人も疲れます。こころの病は「つかれの病」であることも知っておいてください。ご心配なときは、あなたの地域の市町村役場、保健所、精神保健福祉センター、身近な精神科病院や精神科クリニックにご相談ください。きっとあなたの力になってくれます。

これからの課題
 平成14年(2002)年4月から在宅福祉サービスの窓口が、私たちの身近な市町村になりました。「こころの病」をもつ人が、生まれ育った地域の中で〝生き生きと〟生活していくためには、市町村が中心となって、個々に応じた生き方を支援していくことが大切です。
 保健(保健所)、福祉(市町村、精神障害者地域生活支援センター等)、医療(精神科の病院、精神科クリニック)が、それぞれの専門性や役割を発揮しながら、相互に十分な連携を取って協力し合いましょう。
 「こころの病」に関する長年の誤解や偏見を解消するには、こころの健康についての啓発活動を活発に行い、少しでも多くの住民の方々の理解と協力を得て、NPO法人や市民グループを育てていきましょう。
 「こころの病」をもつ人、家族、住民、行政が共に一生懸命考えながら行動し、住まい(グループホーム)や働く場所(作業所・福祉的就労の場)などをつくっていきましょう。
 お互いに信頼関係のある、細やかなネットワークをつくることで、障害がある人もない人も、共に〝生き生きと〟生活していけるまちになるでしょう。

生きることを支える
 私たちの社会には、こころの健康の問題がたくさんあります。
 自殺による死亡者数は4年続けて3万人を超え、特に中高年の男性が増加しています。虐待による相談件数は過去10年間で10倍強に増えました。ひきこもり、家庭内暴力なども増加しているという報告があり、仕事の場でストレスを感じる人も多くなっています。
 みんな暗い話題ばかりです。
 自信をなくした人が増えているのです。
 だからこそ〝生きることを支える〟活動が必要といえます。
 「こころの病」は、〝脳のはたらきがうまくいかない状態〟であると同時に、〝疲れて自信をなくした状態〟でもあります。その意味で、きわめて人間的なものです。
 「こころの病」をもつ人も、もたない人も、みんなで支え合えるあたたかい社会をつくりましょう。

こころの健康を育てる地域の会(代表:国立精神・神経センター精神保健研究所精神保健計画部長 竹島正)編著「精神障害者の生活を支えるために」(岩手県、平成14年10月)
by open-to-love | 2007-05-25 17:49 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)

精神科のクスリ

精神科のクスリ(ぜんかれんHP)

【第1回】総論~種類・歴史~

(1) 種類はどのくらい?

いま日本で使われている精神科関係のクスリは約90種類あります。同じ成分のクスリを複数の製薬会社がつくることがあり、それぞれ別の名前で販売しているので、薬品名では280ぐらいになります。

内訳としては、大まかに以下のように区分できます。

意欲の減退や周囲に対して関係を閉ざしがち、幻覚や妄想、何かに操られている感じなど、狭い意味での精神症状に対して 「抗精神病薬」

気分が著しく沈んだときに 「抗うつ薬」

不安発作や著しい焦燥感などに 「抗不安薬」

睡眠障害に 「睡眠薬」

てんかん発作の抑止に 「抗てんかん薬」

繰り返し起こる気分の波や感情の高揚し過ぎを押さえるために 「気分安定薬」
抗精神病薬の副作用としての手の震え(薬剤性パーキンソン症候群)などを軽くするために 「抗パーキンソン病薬」

 以上のうち、抗てんかん薬を精神科のクスリに入れるのは異論もあるかもしれませんが(国際分類ではてんかんは精神疾患に含まれない)、ここでは便宜上含めることにしました。
 これらのクスリは、もちろん精神科だけで使われるのではなく、抗不安薬、睡眠薬はほぼ全科の医師が使っています。抗うつ薬についても各科の医師の約半数が使い、抗精神病薬と抗てんかん薬に関しても3分の1以上が使用しています。時代とともにだんだんとポピュラーなものになりつつあると感じます。90種類のクスリのうち第二次大戦前につくられたものは、5,6種、多くのクスリは1960年前後以降、とりわけ現在主流になりつつある抗精神病薬と抗うつ薬の中のいわゆる新型薬に限っていえば1990年前後以降(日本ではここ10年以内)に使用されるようになったものです。種類はまだまだ不足ですが、ようやく選択肢も増えてきたところです。

(2)簡単な歴史

 戦前からあったものの代表はフェノバルビタールというクスリです。これは睡眠薬であり、同時に不安を軽くするクスリとして使われましたが、何よりもてんかんの発作を押さえるクスリとして大きな価値をもっていました。
 精神科の病気の代表格の1つである統合失調症に効く薬が登場したのは、第二次大戦後の1950年代の初めです。これがクロールプロマジンというクスリで、貧しかった日本でほんの少々使えるようになったのは1955年頃のことでした。だがこのクスリの登場が、精神科の治療を変える大きなきっかけとなったのです。
 クロールプロマジンは、外科手術の前の鎮静薬として誕生したのがその始まりでした。本格派の抗うつ薬の一番バッターで今日でもよくつかわれるイミプラミン(1958年登場)は、そもそも統合失調症のためのクスリとしてつくられたものといわれます。気分安定薬として有効なリチウム(1960年代に評価が定まる)は、その前に多くの病気に効く民間薬として長い歴史があったといわれます。抗精神病薬として広くつかわれているスルピリドはもともとは胃十二指腸潰瘍のクスリとして生まれたものです。
 ”クスリは思わぬところで効いたことからしばしば発展する”そんなことと関係があると思いますが、戦前からの抗てんかん薬であるヒダントインや先述のイミプラミンや他の抗うつ薬が原因不詳の頑固な神経痛の状態に効いたり、胃十二指腸潰瘍薬であり抗精神病薬でもあるスルピリドが難治の慢性頭痛に効いたりなどということもあります。
 抗てんかん薬として登場したカルバマゼピンやバルプロ酸は、前記のリチウムと並んで今や気分安定薬の中核でもありますし、同じく抗てんかん薬として登場したクロナゼパムやいくつかの抗うつ薬がパニック発作の治療薬としてもとても有効であることもよく知られていることです。
 偶然の機会とそれに出合った人の強い開拓への意思、そして経験の蓄積が、ほかの分野と同じように精神科の薬物療法の世界をだんだんと形づくってきました。

(3)抗精神病薬、抗うつ薬・感情調整薬、抗不安薬は何に対して効いているのか

 ご承知のように私たちは人類として、さらにさかのぼれば生物として生き残った一人一人です。気の遠くなるような長い時間、私たちは、例えば身にとって危険な状況をいち早く察知する能力や、必要に応じアクセルを踏んだり逆にブレーキをかけたり行動を調節する能力、あるいは逃げるべき状況が生まれたとき間髪を入れず退避準備を完了させる能力を身に備えるようになりました。危険を右によけ左に避けながらつくってきたそれらは、それはそれは精巧な装置です。それゆえにこそ、それらの機能が時として大きく損なわれることがあります。
 荒天下で暗夜にヨットで単独航海した時とか、同様の事態で単独登山した時に幻視や幻聴が起きるなどはその一例です。これらは異常な環境の中で、危険察知能力が異常に高まって、周りで起きていることに必要以上に意味を与えてしまうことから生まれます。当然、無事に航海や登山が終われば解消しますが、同じ精神状態が脳の機能の変化として起きることがあります。これが精神病状態で、脳内のネットワーク活動を支えるある種の神経細胞の分泌物(脳内ホルモンとか神経伝達物質と呼ばれる)の作用が強くなり過ぎるために起こる機能昂進状態と考えられています。抗精神病薬はその過剰作用を制御するものといわれます。
 また私たちの体は、生き抜くために心身の活動性を高めたりきつくブレーキを踏んだりしても、必要がなくなれば元に戻るようにできているのですが、時としてその復元機能がうまく働かなくなることがあります。この中のブレーキ踏み続け状態(うつ病の状態)では、前記とは別の神経細胞の分泌物が、せっかく分泌されたものの再吸収され過ぎてしまったためがために起きるものともいわれます。その再吸収を防いで神経間の情報伝達のスピードを回復させる(ブレーキを解除する)のが抗うつ薬ということになります。
 さらに、自然界では強い生物に出合ったとき、どの動物もとる反応はそこから逃げ出すことです。逃げるためには筋肉に十分な酸素を補給しなければなりません。そのために体が反射的に行うのは、血圧を上げ心臓の収縮を頻回にすることです。ところが目の前に強い生物がいなくても、同じことが起こることがあります。これがパニック発作です。ある種の神経細胞の分泌物が、上記の反応をふだんは制御しているのですが、それがうまく行かなくなったときにその機能を補強し神経細胞の行き過ぎた活動を抑えるのが抗不安薬ともいわれます。
 キメはまだまだ荒いのですが、以上は、経験だけでなく、想像でもなく、目で確かめることで得られた結果です。このように精神症状を引き起こす脳内の機能の変化とクスリとの関係がわかってきたのが、今と10年前、20年前と違うところです。脳科学の確実な発展から、きっともっとよく効くクスリをつくることができると、世界の多くの科学者が考えています。
by open-to-love | 2007-05-06 13:06 | 心の病入門編 | Trackback | Comments(0)