精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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カテゴリ:八幡平講演( 7 )

他者の痛みに共感しながら、語っていけたら…12月5日、「ふれあいin八幡平」講演「家族として記者として」感想その2

※こないだ私が八幡平市で講演してきた内容をブログに載せたところ、また別の方から、感想をいただきました。夫がうつ病で育児中の女性です。全文を紹介します。


 八幡平市での講演の内容、読ませていただいて、とても心に響きました。感想を書こうかな…と思っているうちに、ある女性の方からの反応…という記事が紹介されていて、考えこんでしまいました。


 私は「こどもは全てを分かっていて親を選んで生まれてくる」という言葉が好きで、「この子達が選んでくれたんだなぁ…」と思いながら、毎日育児しています。

 病気は違いますが、我が家でも主人がうつ病であることは、こども達には少なからず影響を与えています。特に長女は、パパは毎日薬を飲まなきゃならない、忘れると突然電池が止まる(彼女の表現です)時がある、さっきまでキゲンよく遊んでくれていたのに突然不機嫌になり口をきかなくなることがある、昼も夜も布団をかぶりずっと寝ている時がある、…等々、自分の父親はこういう人なんだな、と彼女なりに受け止めているようです。父親の病気の波に付き合わせてしまうことは、申し訳ないと思うこともありますが、家族なのだから親子なのだから、お互いありのままにいくしかない…と思ってます。それに、こども達はやっぱりパパが大好きですしね。(それに、ママである私もたまに不機嫌になりますから、こどもにとっては病気でも病気じゃなくても、あまり変わらないのかも…とも思います。)

 主人が発病して一年くらいの間は、私も追い詰められると、通り掛った橋の上から、落ちたい、と思う時が何度かありました。娘に「ママ、もうダメかもしれない」と泣いたこともありました。きれいごとではいかない、吐くほどの辛さを味わった人じゃないと、他人の辛さに共感することはできないんじゃないか…と思いました。

 私は自分がすごく辛かったと思ってましたが、その後いろいろな人の体験を読んだり聞いたりして、自分なんかまだまだだな…と思うようになりました。

 幼くても4歳の子は4歳なりに、5歳の子は5歳なりに…こどもはこどもの世界の中で、親の病気を受け止めていると思います。この先も、そうしながら成長していくでしょう。それはこどもを(自分の持ち物のように)家に縛ることとは違うだろうと。こどもは自分の人生を歩みつつ、(病気まで含めた)親とも共に生きていくのでは…と思ってます。
 人間なのだから、弱くて当然。他者の痛みに共感しながら、語っていけたら、強いですよね…

 黒田さんが書いていらっしゃったように、黒田さんは黒田さんの体験。私は私の体験。みんなそれぞれの体験を力にして、しなきゃならないことを見つけていくのが大事なのかな…と思ってます。

※こうして、お二人の女性から、感想をいただきました。私の講演に対する受け止め方がそれぞれ異なり、おそらくはそれぞれが生きる状況も異なるであろうお二人。私としては、どっちがいいとか悪いとかじゃなく、等しく、感謝です。いろんな人がいろんなことを言う。楽しいことも、厳しいことも、目をそむけたくなるような辛いことも。たとえそれぞれがいまいますぐは結び合わなくっても、いつかは、ちょっとは結び合うかもしれない。盛岡ハートネットも、このブログも、そんなプロセスの可能性を閉ざさない場でありたい。
 開かれていれば、人はいくらでも、強くも、優しくもあれる。そう思います。(黒田)
by open-to-love | 2008-12-17 16:57 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)
 私が12月5日、「ふれあいin八幡平市」で講演した「家族として記者として」について、その講演パワーポイントと要旨を組み合わせてブログに掲載したところ、さまざまな感想が寄せられました。その中で、ある女性から寄せられた反応について、紹介させていただきます。

 「以前、私は、黒田さんとお嬢さんが一緒にいるところで会ったことがありました。そのとき、黒田さんはお嬢さんに『将来何になりたいのか』と聞きました。子どもらしい返事が返った後、黒田さんは『病院で働いてお母さんのことを世話するのはどう?』って言いました。たわいもない親子の風景。でも、すごくお嬢さんが気の毒でした。家制度と女性問題。でも、それは叫んでいる人の足元に転がっている」

 若干解説を加えますと、この方は、以前、私が娘にそう言ったことを踏まえ、そして、今回私が講演の末尾で、提言②として、精神保健福祉施策と女性施策の連携の必要性について語ったことを対比して、このように指摘されたのだと思います。端的に言えば、「家」の問題を指摘する黒田自身が、娘を「家」に縛ろうとしているのではないか? それは、矛盾しているのではないか? ということでしょう。

 私としては、この方の指摘の通りだと思います。実際、その時に限らず、自分が疲れてふらふらしてるときなんか、「もしオレがころっと死んだら」なんてつい考えるときがあって、ときどき「お母さんをよろしくね」とか、娘に言っちゃってました。反省。

 私は(弱ってないときは、ですが…)、娘には、自分の人生を生きてほしいと願っています。でも、自分には至らないところがあります。講演中でも言いましたが、私が話したことの基盤は、私の体験。そして、あくまで「オレはオレの体験しかしゃべれません」。私の体験とは、それが主体的であれ、他動的であれ、私の選択であり、それは、すでに限界を内包しています。つまり、この方の指摘の通りです。よって、それこれを含めて問題の所在を明かにするため、この方の感想をここに紹介させていただきました。精神保健福祉施策と女性施策の連携に向け、みなさん、私の講演趣旨とこの方の指摘双方を読み比べ、何が課題となっているのかを考え、ご自身に引き付け、ご自由に判断されてください。私の講演趣旨がすべてではありません。(黒田)
by open-to-love | 2008-12-11 21:37 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)
「家族として記者として」…下

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さて、こっから、ちょっと小難しい話になります。みなさん、自立支援法については、悪法だのなんだのと言われてますからご存知かと思いますが、ここで、精神保健福祉法をご存知の方?(挙手、ほとんどなし)
実は、こうした法律があったんです。精神って、2つの側面があって、一つには病気、もう一つは、それに伴う障害。病気の方は主に精神保健福祉法で、障害の方は主に自立支援法って感じです。そもそも精神が障害になれたのは、1990年代前半の障害者基本法からであって、それまでは精神障害者じゃなかった。じゃ、何だったのかというと、精神病患者だけだったんです。

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 1つ目は、先に述べたこととかかわりますが、精神病患者は、障害者基本法で精神障害者として福祉サービスを受けられることになったけど、先行する身体・知的とは別枠で、ろくになかったんですよね。だからこそ、家族会が一生懸命作業所を作って、当事者の自立を支えてきた苦難の歴史があったわけですが、支援法で、初めて共通のサービス体系に入れてもらったというわけです。
 2つ目の「利用者本位のサービス体系」というところが、「当事者主体」のゆえんです。

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でも、この図、よく使われる行政資料ですが、みなさんどう思いますか?
「地域」の点線の中には、実にいろいろ書いてある。グループホームとか、訪問サービスとか、就労支援とか…。でも、その右上の「入院」って「↑」があります。そこには、何も書いてなくて、ただ単に「↑」だけ。つまり、ここには何のサービスもない、ということ。ここが、この図のポイントです。
一番下に横に長く「相談支援」と書いてますね。この図によれば、相談支援は直接「入院」にはかかわらず、「精神障害者保健福祉手帳」を介して「精神科病院」に接している。
ちなみに、手帳の受給資格が発生するのは、初診から一定期間を経てから。つまり、その意味でも、「入院」に関しては「相談支援」はノータッチってこと。

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この最後の行に、「受診支援してくれる保健師」と書きました。それが、八幡平市の藤村さんです。受診支援とは、記事にも書きましたが、精神疾患を発症した、あるいは、精神疾患かもしれない方の家に行って、病気かどうか見極めた上で、受診するよう説得してくれることです。
保健師ならみんな受診支援やってくれるかといえば、そんなことない。私があちこち見聞した限りでは、受診支援できる保健師は、むしろ少ないとみた方がいいでしょうね。八幡平市の方、恵まれてんですよ。知ってましたか?

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ここで、質問。オレが見聞した事例を挙げますので、どの入院(任意・医療保護・措置)なんだか、当ててください。
「布団でぐるぐる巻き」…これは、古典的な手法。医療保護入院です。
「なだめすかして懇願して」…本人はしぶしぶですが、任意入院、すなわち、自ら納得して入院したことになります。
「当事者が警察に助けを求めた」…これは、措置入院でもなく、医療保護入院でもなく、悲しいかな、任意入院になってしまうのです。明かに主体的ではありませんが、少なくとも、理由はどうであれ、自ら救いを求めて入院してますよね…。
「親が倒れた」…これは、最悪。精神保健法に定める入院手続きのいずれにも当てはまらず、答えは「親が入院」です。その後、当事者はどうなったのか?…私は知りません。
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いつまでも家にいて、受診させられず、そのままずっと会社を休んでいたらわが家はどうなったことか…なんて、言い訳にはならない。

末尾に「もし受診支援を知っていたら」とは書きましたが、いずれにせよ、私は八幡平市民でも、紫波町民でもなかったですから…知ってようが知ってまいが、あんまり関係なかったかもしれませんね。

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 振り返れば、私は妻が「もしかして病気なのかなあ」と感じたとき、本屋さんに行って、パッとその関係の本を10冊ぐらい、買い漁りました。後で別の家族の方に聞くと、結構、本を買い込む方って多いみたいです。でも、頭にはさっぱりはいらないということも、共通してましたけどね。
先に「統合失調症とは」として皆さんにお見せした定義、あの本は、そういう状態の時に買ったのでした。いろんな体験をした今なら理解できますが、当時は、さっぱり分からなかった。平常な精神状態だったとしても、難しい記述ですよね。それが、受診に至る前の段階の、平常ではない精神状態の時に、誰が理解できるでしょうか? ですから、あえて冒頭に、あのような難しい記述をみなさんにお見せした。みなさん、理解できましたか? 仮に、もっと分かりやすい本にたまたま巡り合えてたとしても、それでも、私が理解できたか、定かではない。とにかく、必死で理解しようと努力はしました。

「もはや後戻りはできない重大な選択」…すなわち、もし病気じゃなかったら、統合失調症じゃなかったら、にもかかわらず、受診させ、診断名を付けられたら…うらまれるどころじゃありません。それこそ、家庭崩壊。

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上記のテーゼ「精神障害は精神疾患に先行する」。この明かに論理的に逆転したテーゼは、家族の心情としては、正しいと思います。ぜひ、このパラドックスを専門家の方にご理解していただきたいところです。

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「強制入院に伴う家族の対立」。さっき挙げた事例のうち、3番目の「親が私を殺す、助けて」を思い起こしてください。このケースは、おそらく、当事者の陽性症状がかなり進行し、親とは完全に敵対関係になってしまっている。ここまでなってしまってからの入院。入院して落ち着いたといっても、すんなり当事者さんが家に帰れますか?「任意入院」でありながら、双方の深刻な心のキズ。当然ながら、早期受診・診断・治療には程遠い。よって、回復も時間がかかる。そして、「敵」となってしまった親との関係を修復するには、つまり、親は本当は自分のことを愛してくれているのだ、と気づくまでには、非常に時間がかかるのです。ここまでなってしまっては。なぜ、ここまでになるまで、周囲は放置していたのか。

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教職員のうつ病による休職は、過去最悪ペースで推移していると新聞は報じています。

「ACT」は、アクトと読みます。知ってる人?(挙手2人)

最近、岩手のみならず、全国的に医師不足が問題になっています。でも、岩手って今に限らず、ずっと昔から医師不足だったんですよね。でも、頑張ってきたのは保健師です。沢内村の生命尊重行政、それだって、保健師の力が大きい。そんな伝統が、保健師に代々受け継がれてきたのでした。それが、藤村さんであり、元紫波町保健師の八重嶋さんらです。その根幹が、家庭訪問です。

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さて、ちょうど「保健師ジャーナル」で最近、その「家庭訪問」を特集していました。こんな専門誌読んでるなんて、オレも相当マニアックかもしれません。

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原因②は、いわゆる世代間格差ですね。保健師に限ったことじゃない。
③は、書いた通りですが、おいおい、どうなってんだ!と思います。「他の専門職種」が充実したとして、保健師をおいて、どんな職種が受診支援できるというのでしょうか?

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で、これが、藤村さんの「どこでも訪問」を紹介した連載記事です。左側の「問われる経験、知見」という見出しがついた囲み記事で、受診支援について書きました。
去年の4月から月1回連載した「共生社会へ」ですが、回を重ねるたびに行数が増えていって…この回は連載11回目ですが、かなり長くなってしまいました。それだけ思いが込もっているというか…。

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その記事で書いた、藤村さんの言葉を紹介します。なお、本当はもっとキツい言葉でしたが、新聞に書く以上、若干和らげています。
行政保健師は、行政にいるからこそ、施策に反映できる。相談支援専門員という職種ができましたが、それは、あくまで社会福祉法人とかの職員が、そういう立場で動いてるってこと。行政とのつながりにはワンクッションある。相談支援専門員の声を、直接施策に反映させることはできません。

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藤村さんが退職したらおしまい、じゃダメ。八幡平市がよければ、それでいい、でもないですよね、藤村さん。他の市町村に、ノウハウをきちんと伝えてください。
「実にこの病を受けたる…」って、みなさん、ご存知ですか? 100年前、東京帝国大の呉秀三が、精神障害者の劣悪な処遇を調査し告発した「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」という本の中に、書いてるんです。当時は、精神障害者は、座敷牢に入れられてた。牛馬みたいに。有名な言葉です、「この病を受けたる不幸の外に、この国に生まれたる不幸」。それを、パクってみました。

なぜ、藤村さんがガンガン言えるのか? ちなみに、私が藤村さんと出会ったのは、県の退院促進がらみの研修会でした。そのとき、会場で真っ先に手を挙げて、ガンガン言ったのが、藤村さんでした。そこで、あっ、この方と知り合いになろう!と、休憩時間に私が名刺を渡した…それが出会いでした。
現実の苛酷さに比して、制度が十全だったためしは、ありません。藤村さんがガンガン言えるのは、現場を肌で感じているからです。現実がどうなんだかを伝えるということは、いいことです。その姿勢を貫いてほしい、なんてオレが言うまでもないですがね。

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 先に「精神障害は精神疾患に先行する」というテーゼを掲げました。家族が巻き込まれる、ということも。よって、精神疾患・障害の問題とは、家族の問題でもあります。家族の問題とは、得てして女性の問題なのです。子どもが当事者の場合、夫は得てして、どっかの首相が言ったみたいに「だらだら飲んで食って何もしない」なんて言葉で、当事者に対していらだちをぶつける。「家でごろごろしてないで稼げ稼げ」なんてはっぱをかける。でも、当事者は、それどころじゃない。母親は、双方の板挟みになって苦悩する。「お前の子育てが悪いからこうなるんだ」なんて言われたりして。さらには、DVが起きてしまう。こうした諸問題は、精神疾患・障害の問題でありつつ、「家」=家父長制の意識レベルでの残存による女性の抑圧の問題、という側面もある。これについては、連載「自立支援の名の下に パートⅡ」の4回目、「共生社会へ」の最終回で取り上げました。コピーを付けてますので、後でお読み下さい。
 今、女性施策の進展に伴い、各地に女性センターとか、男女共同参画センターとか、あとは配偶者暴力相談支援センターとかができてます。「家」の問題の顕在化と解決への取り組みが政策レベルで進んできたのと同時に、じゃ、その「家」にこれまで入ってきたのは誰か? そう、保健師です。

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 制度化というのは、反面、危うさを秘めている。法律できたからセンターを作った、センターを作ったから何か事業しなくちゃない、というのはトップダウン型の思考。そうなっちゃいけません。で、保健師とは、本来、ボトムアップ型の思考。訪問することで現場をよく見て、現実はこうだから、施策はこうでなくちゃない、という風にやってきたわけです。こうした「スタンス」のレベルでも、双方の連携は進んだ方がいいし、進まないと危ないっす。

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さて、最後に。当事者の自立のため、家族は何ができるのか? ないのです。ガックリです。でも、自立するのは当事者だから、家族がいくらやきもきしたって、仕方ないんです。逆に言えば、当事者の選択肢を狭めないこと、自己決定権を奪わないことはできます。でも、今の社会って、当事者の選択肢は、すごく狭いですよね。だから、多くの人が病気を隠している。オープンにしたって、いいことないすから。でも、家族であれば、自分が死ぬ前に、なんぼでも当事者の選択肢を広げましょうよ。家族のつらさ、そして、素晴らしさを、家族じゃない人、フツーの人にも、伝えて行きましょうよ。その「場」が、例えば、ハートネットです。

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おまけ。私は講演で、さんざん、あーせいこーせいと保健師さんにプレッシャーをかけ続けてきました。でも、あんまりしゃかりきになっても、体が続かない。支援者のメンタルヘルスもとっても大事です。むろん、家族だって、当事者だって、リラックスしないと煮詰まってしまう。そんな時、音楽ってとってもいいです。
さて、その藤村さんも、ものすごく忙しい日々の中、こうしてリラックスしてる。その姿勢を、みなさん、学びましょう。

(と、藤村さんが三味線を演奏してる晴れ姿の写真がスクリーンに…藤村さん、「あ!!!」。このとき、会場が最も盛り上がったのは、言うまでもありません)

これは、藤村さんがこないだ、県民会館で開かれた岩手三曲協会65周年記念に出演されたときの写真です。私は今、学芸部の音楽担当記者ですから、ばっちり撮ってました。藤村さんが「三味線やってる。今度出る」って言ってたんで、てっきり津軽三味線でベンベンベンベンだと思ってたら、何と、チントンシャンだったんですね〜。音楽担当記者として一言付け加えさせていただきますと、藤村さんはやや緊張されていたようでしたが、いい音出してました(笑)

というわけで、藤村さんはとかく「おっかない」と言われてまして、まあその通りかと思いますが、根はとっても優しい人なのです。

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というわけで。
八幡平市のみなさん、むろん、盛岡ハートネットに参加されても大歓迎です。百聞は一見にしかずですから、ぜひ、例会に遊びにきてください。でも、何たって盛岡は遠い。一番いいのは、それぞれがお住まいの地域で、いろんな人が集って、みなさんのハートネットを作ることです。家族、当事者、関係者、市民…いろんな立場の人が集って、おしゃべりする。ちょっとずつ、相互理解を深めていく。それが、共生の地域づくりです。
ご清聴ありがとうございました。

会場からの質問…
「どうしてそんなに早く、妻の病気を受容できたのか?」

「思うに、新聞記者は、幸い、いろんな人に会える仕事です。取材と称してあちこちに行けます。あと、つながりを求めて家族会にも入りました。すると、自分より困ってる人っていっぱいいるんだな、ということを知った。わが家が一番大変なわけじゃない。それが大きいと思います。
 加えて、妻は自分より7つ年上なんで、生物学的に女性は男性より7つぐらい長生きするから、同じくらいにコロッと死ぬでしょう。だから、子どもの発病より、はるかに受容は楽なのではないかと思います。親が先に死に、当事者が残された場合、そのきょうだいとの関係など、いろんなことが想定され、それやこれや考えるだけで、大変です。でも、うちの場合は、たとえば娘に過大な責任を負わせなくっても、まあ、生物学的に大丈夫でしょう。娘は娘の人生を生きればいい。そんなわけで、オレは恵まれています。
 ところで、自分と同じ様に伴侶が病気の人と、なかなか出会いません。離婚してるケースが多いからなんじゃないすかね。それとも、引きこもってるんでしょうかね。家族会に顔出しても、ほとんどが当事者の親御さんなんです。よく分かりませんけどね」
(当日の発言に加え、時間なくて話せなかったことを一部加筆)

講演を終えて:保健師の仕事って、すごく地味だし、なかなか光が当たることはありません。まして、精神疾患がらみの受診支援は、プライバシーの問題もあり、まず公に語られることは少ない。でも、すごく大事な仕事です。とりわけ家族にとっては。
 八幡平市の保健師藤村さんの招きで、私は「家族として記者として」というタイトルで講演する機会を得ました。そして、この日会場には、紫波町の元保健師八重嶋幸子さんもいらっしゃっていました。「北の藤村、南の八重嶋」という言葉が保健師の間で語られていますが、その2人を前に不肖この私が「保健師とは何ぞや」ってな話をするのは、相当なプレッシャーでもあり、かつ、光栄でもありました。
 仮に、私が紫波町に招かれ講演したとしたら、主語は「藤村さん」ではなく「八重嶋さん」となり、もし藤村さんがその講演を聴いたとしたら、「黒田さん、八重嶋さんのことを持ち上げ過ぎじゃないか」とおこられんじゃないかな、とも思います。
 当事者にとって、家族にとってよりよい精神保健医療福祉とは? とかくイギリスやらアメリカやら先進諸外国の取り組みをまねっこしたがる傾向がありますが、それ以前に、実は足元に範はある。それが、保健師の訪問である、というのが、私の持論であります。そこから、2つの提言が生まれます。
 1つは、精神保健福祉法と自立支援法を、ともに「当事者主体」のシステムとして組み上げること。自立支援法は、とかくその理念と、中身との解離が批判されてきました。私も、連載「自立支援の名の下に パート1」で問題提起しました。ただ、支援法の問題とは、中身ばかりではない。その前提となる障害者差別禁止法を作らずに地域以降を進める自立支援法を作っちゃったという問題(これについては、連載「自立支援の名の下に パー2」の基調となっています)、介護保険のケアマネ的存在をろくに育成せずに支援法をつくっちゃったという問題(絶対的に足りない相談支援専門員。何より、保健師増やせ、と言いたい)、さらには、先行する関係法令との整合性の問題(とりわけ、精神においては、支援法と精神保健福祉法との連関)が挙げられます。今回の講演で取り上げることができた課題は、その一部にしか過ぎません。
 2つ目は、精神保健福祉施策と女性施策の連携により、精神疾患・障害ー家庭ー女性の負のスパイラルを顕在化し、女性を「家」から解放するシステムを組み上げる一歩とすること。
 心ある方、とりわけ、心ある保健師さんが、私の思いのいくばくかでも汲み取っていただければ、幸いです。(岩手日報記者&盛岡ハートネット事務局 黒田大介)
by open-to-love | 2008-12-06 18:32 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)
「家族として記者として」詳報…上

(2008年12月5日13:15〜14:30、西根地区市民センターホール、約100人参加)

市長あいさつに続き…

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まずは、このようにみなさんの前でお話できる機会を与えていただき、感謝です。なお、新聞記者は書くのはそれなりに得意ですが、しゃべるのは慣れてません。あと、人生初のパワーポイントです。動かなくなったり、画面消えちゃったら、助けてくださいね。

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えー、私の専門はずっと文学でした。つまり、精神保健福祉に関する知識はゼロでした。
2年半に“家族”になって、そこからのスタートです。
みなさん、学生無年金訴訟ってご存知ですか?当時、私は警察担当で、たまたま記事書いたんですが、その後、どうしてこういうことが起きちゃうのか、この立場になってよく分かりました。
学芸部家庭欄担当は、希望したわけじゃなく「とにかくどこでもいいから6時に帰れる部署に」というのが希望でした。

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当初、このタイトルで行くつもりだったんですが、藤村さんが「ダメ」とのことでしたので…。
家庭欄担当当時、藤村さんを取材するにあたっていろんな人に「藤村さんってどんな人」と訊いたのですが、答えは決まって「おっかない人」。ふむ。よって、私も講演を頼まれれば、おっかないんで「はい」と即諾するわけですが。
でも、今年の1月、取材で家庭訪問の現場にご一緒させていただくと、ほんとは藤村さん、優しいんですよね。この写真みて分かるように。なお、記事はお手元の資料に入れてますので、あとでじっくりお読み下さい。
でも、藤村さんの言葉遣いはちょっと、というか、かなり乱暴。訪問現場では、女性が藤村さんの顔を見るなり「ああ…首が痛い、腰が痛い…。雪かきして転んじゃった」と訴えたんですが、対して藤村さん「無理すんな。春になりゃ解ける」と言ったんです。記事で書いたのはここまでで、実はそれから「雪かきしねったって死なね!」って言ってました。

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ちなみに、わが家は現在、オレが36歳、妻は7つ上で43歳、統合失調症、精神保健福祉手帳1級、通院中。娘が5歳の3人家族です。妻も娘もかわいいです。

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さて、統合失調症ってご存知ですか? ここに思いっきり専門的な記述を載せましたが、ま、薬飲んでりゃなんつーことない病気です。
たとえば、今、この会場に100人ぐらい、もうちょっとぐらいの方がいて、私が一人でここに立って、みなさんに話をしていますよね。で、みなさん、想像してみてください。もしこれが逆だったら?みなさん一人一人が私に向かって話し掛けて、それを私一人が聞いていたら?相当うるさい。あっちこっちであーだのこーだのしゃべるから、何言ってるのかよく分からない。100人に一気にしゃべられても困るから、そんなの聞きたくない。でも、声は勝手に聞こえてくる…統合失調症って、まあ、そんな病気です。
でも、きちんと薬飲めば、たいてい声は止まります。

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オレは朝飯食わないんですよね。朝が苦手ですから、時間がない。ちなみに、こうして私がしゃべってる今、娘は保育園です。講演終わったら、お迎えです。夜10時に買い物するのは、生協が11時に閉まるからです。
みなさん、オレって毎日大変だと思います?そんなことないですよ。家族って、こんなもんですよ。
日中、オレは会社、娘は保育園、妻は家でのんびりしているわけです。そういや、こないだ、麻生首相が経済財政諮問会議で「だらだら飲んで食って、何もしない人の医療費何で私が払うんだ」なんて言って、批判されてました。他人様の価値観をとやかくは言いませんが、少なくとも、麻生さんは、精神障害者家族に向かないタイプと思われます。

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やっぱ、新聞記者で新聞読めないのは、つらいっす。

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でも、家族という立場になって見聞するに、けっこう壊れてます。例えば、私は会社を休めたが、うちよりもっと小さな会社で「そんなことで仕事休むな!」って上司に言われたら?オレが正社員じゃなくパートとか派遣だったら?両親とか親戚の理解がなかったら?
 「母原病」って言葉知ってますか? アホな精神科医の造語ですが、要するに「母親の子どもへの接し方に原因があって、甘やかしとか愛情不足とかで、不登校になったり、精神的な病気になる」って考え方です。医学的には否定されてます。

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つまり、わが家は恵まれていました。

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これまでは、例会日や、他団体のシンポジウムのパネラーを頼まれた際は、会社の休みをとって活動していました。今回は、家族や盛岡ハートネット事務局としての立場のみならず、「記者としてもしゃべってくれ」というわけですから、市長名で、うちの社長名で講師派遣依頼文書を出していただき、了承されました。よって、公務です。会社の車で来てます。私としては、人生初のパワーポイントのみならず、「裏」ではなく初めて公務で公然と話しできるという意味でも、記念すべき日です。

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レパートリーっていっても、冬は鍋ばっかりですけどね。

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さて、で、家族としてやっている、盛岡ハートネットの紹介をします。結成から1年2カ月になります。「場所もなし」とは、私たちには事務室がないし、例会も、あっちこっちの会場を借りてやってるということです。「ニーズに基づき企画」とは、例会のたびにアンケートをとって、次はどんなのがいいですか?という設問に対し、いろんな声が寄せられますので、それに沿ってやってます。オレは代表ではありません。単なる事務局です。オレの組織じゃない。オレが好き勝手にやりたいことをやってるわけではないです。
きょうは、私と一緒に事務局をやってる阿部稲子さんが会場にいらしてます。阿部さん、ちょっと立って、にっこりしてください。
(阿部さん、立って、にっこり)
次回は来年1月31日、東磐井からキララを招き、新作演劇をやっていただきます。これは、これまで多くの方からアンケートで「当事者の話を聴きたい」という声が寄せられていることを踏まえたものです。みなさん、ぜひ来てくださいね。
この世界に入ってしばしば聞くのは「金がない」「行政はさっぱり支援してくれない」「だからできない」…。でも、ハートネットは補助金なくても、やってます。金がなくてもできることはある、それは、ハートネットのあり方そのものが証明しているかと思います。そして、行政にはその分、行政のやるべきことをきっちりやってもらわなくちゃないですね。

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みなさん、岩家連って知ってますか?全家連って知ってますか?(挙手、ちらほら)
ほとんど知られてない、それ自体が問題です。
まずは、家族会とは何ぞや。それは、「心のオアシス」です。同じ心の病をもつ当事者の家族が集まり、悩みを語り合い、分かち合い、近況報告したり、勉強したりする集まりです。病院家族会とは、例えば岩手保養院とか、観山荘病院とか、それぞれに家族会があって、そこの病院利用者の家族が参加できます。地域家族会とは、市町村単位の集まりです。また、作業所を運営するために結成された家族会も、地域家族会の中に入ります。盛岡市のユリノキ会がそうですね。
そうした小さい単位の家族会(単位家族会)の全県的な集まりが、岩手県精神障害者家族会連合会、通称「岩家連」。がんかれんと読みます。昨年、結成30周年を迎えました。その岩家連とか、秋田県の県連とか、東京都の都連とかが集まったのが、全家連(ぜんかれん)でした。

その岩家連は、会員千人を切りました。
全家連は破産・解散となりました。全家連がやってた温泉ホテル「ハートピアきつれ川」というところが赤字で、借金がふくらんじゃって、とかいろいろあって、前代未聞の公益法人破産・解散という事態になった。オレは家族会に参加して1年のときでしたから、なんだなんだ、いったいこの世界はどうなってんだ、という感じでした。
で、全家連亡き後、新しく出来たのが、ここに挙げた2つの組織。なんで1つじゃなく2つなのか、この2組織の関係はどうなっているのか?よく分かりませんが、全家連解散のごたごたが影響してるんでしょうね。まあ、岩家連としては、それぞれとつながっていることが大切かなあと思います。

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精神障害者は増えてるのに、家族会の会員は減っている。なぜか? 先に挙手していただいたように、そもそも存在が知られていない。加えて、新しい家族が入りたくなるような活動をやってない、ということでしょう。むろん、私としては、30年以上にわたって岩家連を支えてきた諸先輩の歩みの重みを、ないがしろにしようとするわけではありません。きっちり現状認識しないと、解決策は見いだせない。

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単純計算すると、全国には統合失調症127万7700人、うつ病851万8466人、計979万6166人。仮に4人家族として、3918万4664人! こりゃ、ウソだろ。日本の総人口の3分の1になっちゃう。
ともあれ、何人いるかは、だれにも分からない。うつ病については、その4分の3が未受診という調査もあります。かつ、手帳取ってる人は少ない。精神の場合、手帳取ってもそんなにメリットないし、バレるのがいやだから取ってないって人も多いことでしょうから。少なくとも、いっぱいいるってことです。

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今まで話したのをイラスト化すると、こんな感じになります。このイラストは、私と同じくハートネット事務局をやってる山口みどりさんに作ってもらいました。

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 ハートネットのリーフレットの絵は、知り合いのお母さんに描いていただきました。♡マークの下に、2人が背中を向けて座っています。でも、2人、仲良しって感じ。その間を、いい風が吹いている、って感じ。いい絵です。

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 ハートネットは、事前申し込み制をとっていません。プレッシャーになったりすると、何ですから。すると、蓋を開けてみるまで、何人来るか分からない。8月に第6回例会として、盛岡市と共催でシンポジウム「心とお金の悩み解決」ってのをやりました。うつ病と多重債務解決で、自殺を防ごうというのが趣旨で、盛岡市消費生活センターの吉田直美さんと、精神科医の智田文徳さんにお話いただきました。その時、まあ来ても100人ぐらいかな、でも、資料足りなくなるとなんだから、150部つくろう、ということにしたのです。ところが、集まったのは200人ぐらい…。資料足りなくて、バタバタしました。うーん、なかなか難しいものです。
 家族会は、ほとんどがわが家と同様、統合失調症の家族です。でも、世の中にはいろんな精神疾患がある。とりわけ今問題になってるのは、うつ病。でも、5人とか10人とかの家族会に、一人ぽつんとうつ病のご家族の方が来ても、なかなか話が合わないんですよね。ハートネットは、40人とか190人とか、例会によってばらつきがありますが、少なくとも単位家族会よりは参加者が多いですから、スケールメリットが生じます。そこの中に1人や2人、話が合う人がいるだろう。少なくとも、その可能性は増えるだろう、と思ってます。あと、行政関係者ら専門家の方も参加されますから、そういった意味でも、誰が来ても大丈夫なんです。

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このイラストも山口さんに作ってもらいました。ハートネットの囲み線を目立たせたいなあ、と思ったんですが、どうやって色付けていいのかが、分からない。そこで、イラストをプリントアウトし、赤い色鉛筆でぐるっと色付けて、それをデジカメで複写してパワポに取り込んだんですが…こうして拡大してみると、いかにも色鉛筆で線引いたのが分かってしまう…。
ともあれ、岩家連、加盟家族会のみならず、当事者、家族会に入ってない家族、関係機関、市民の方、どなたが来てもいいですよ、ってのがハートネットです。かつ、ハートネットは岩家連とは全くの別組織じゃなく、対立しているわけでもない。それはそれとして、ゆるやかにみんながつながるネットワークなのだ、ということが、このイラストで、お分かり頂けると思います。
全福連ー岩家連ー単位家族会という縦のつながりに対して、盛岡ハートネットはヨコ、水平の、フラットな関係なのだ、ということです。
(「下」に続く)
by open-to-love | 2008-12-06 18:18 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)
ふれあいin八幡平 講演「家族として記者として」資料②(記事&ニュース)

◆「共生社会へ 障害福祉 岩手の今」
(2007年4月~2008年3月 家庭欄・全12回)

⑪「家庭訪問」(八幡平市)

住民の生活、肌で実感 「現場」で知る本当の姿 

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 「電話で済ますな。保健師は現場を回り、地域住民の生活を肌で感じなければだめ」「ブランドのバッグ買うのもいいけど、研修会に行って自分を高めるためにも金を使いなさい」―。八幡平市の保健師藤村裕子さん(57)は、歯にきぬ着せぬ物言いで知られる。
 保健師歴三十年。その言葉は、数々の現場経験に裏打ちされているだけに、重みがある。その根幹をなす業務が家庭訪問だ。藤村さんは「どこでも訪問」と呼ぶ。
 今月中旬、市役所から車で四十分かけて向かった先は、雪深い同市安代地区の、四十歳代の女性宅だった。
 旧西根町の保健師だった藤村さんは、二〇〇五年九月の八幡平市誕生に伴い同市の保健師となり、〇六年春から安代地区の家庭訪問を開始。女性宅へは昨年春、相談電話をきっかけに、初めて家庭訪問した。
 女性は母と二人暮らし。二人とも持病を抱え、買い物や料理もままならない。それでも、何とか自分たちだけの力で生活していた。そこに訪問した藤村さんがホームヘルプの利用を勧めたが、女性は断った。他人の世話になることへの抵抗感からだった。
 「断ったのに、藤村さんは何度も何度も家に来たのさ」と女性は振り返る。転機は昨年末。体が痛み起き上がれない女性に代わって、藤村さんが台所に立ち、卵焼きとみそ汁を作ってくれた。
 「自分たちで頑張るのもいいけど、大変な時は、人にやってもらうのもいいもんでしょ?」
 その卵焼きが「ちょっと甘くておいしかった」。初訪問から八カ月。女性はついに、今年からホームヘルプ利用を始めた。
 それから一カ月。この日、藤村さんの顔を見るなり「ああ…首が痛い、腰が痛い…。雪かきして転んじゃった」と訴える女性。藤村さんは「無理すんな。春になりゃ解ける」。言葉遣いは乱暴だが、口調は優しい。
 「おっかねえけど、役人っぽくなくて面白い」。女性の藤村さん評だ。
 盛岡市に生まれ、父を早くに亡くした藤村さんは苦学の末、保健師になった。「苦労は財産。だからこそ、住民の苦しみも分かる」
 年間で延べ二百軒近く訪問。「生活の場にこそ電話では分からないその人の本当の姿がある。訪問を拒否する家庭にこそ行かなければならない。地域をくまなく歩き、見て、施策に反映し地域全体の健康を増進する。保健師は素晴らしい仕事」
 市役所に戻るとデスクワーク。藤村さんには、生活福祉部地域福祉課長補佐・同課障害福祉係長などの顔もあるのだ。
 障害者自立支援法への対応、障害福祉計画策定など膨大な事務の傍ら、訪問活動は欠かさず、障害福祉係の職員には「現場を回れ」と気合を入れる。「現場を知らなければ、施策は机上のプラン。そして、家庭訪問は岩手の保健師が代々受け継いできた財産」。物言いは厳しいが、思いは熱く、素顔は優しい。

精神障害者の早期受診支援 問われる保健師の真価 市町村格差拡大懸念

 保健師の仕事の根幹である家庭訪問だが、精神障害者やその可能性がある人の早期受診支援において、その経験と知見の真価は問われる。
 精神障害者の早期社会復帰へ鍵を握るのは、早期受診・治療。だが、それは至難の業だ。本人が病識(病気の自覚)を持ち、自らの意思で受診するのが理想だが、ある統合失調症患者の家族は「この病気の特徴は本人に病識がないこと。偏見も根強く、病院の敷居も高い。現実はそんなに甘くない」と指摘する。
 病識がなければ、家族が本人を説得し受診させるほかない。例えば…。「ぼくは病気じゃない。みんながぼくを気違いにしようとしている」と激しく抵抗する本人を家族が取り囲み、羽交い締めにして車に乗せ、病院へ連れていく…。その光景の記憶は、本人や家族の心に深い傷跡を残す。
 それでもまだいい。家族が高齢化し、本人を説得する体力も気力もなかったら…。本人が引きこもり、家族が抱え込み地域から孤立し、病状が悪化したら…。悲劇だ。
 ここにこそ、保健師の本領が発揮される。相談を受けた家庭を訪問し、本人に精神疾患があるかどうかや事態の緊急度を見極め、必要に応じて関係機関とも連携しながら受診を説得する。藤村さんは三十年間で、毎年一、二人の精神障害者を受診につなげてきた。
 「何とか病院に行ってほしいと必死になれば、相手に伝わる。失敗は一度もない」と事もなげ。だが、具体的な方法は「一人一人違う。マニュアルはない」。結局、経験と知見なのだ。
 自立支援法施行により、相談支援体制の充実が図られている。だが、それは昔から、保健師が家庭訪問として取り組んできたことでもある。
 共生社会推進に向け、障害福祉サービス提供主体である市町村が今後、新たな制度とこれまでの蓄積をいかに組み合わせるかが要となる。それゆえ、地道に訪問に取り組んできた市町村と、そうではなかった市町村との格差拡大が懸念される。(黒田大介)

■岩手日報学芸部家庭欄担当記者として…主な連載(2006年6月~2008年3月)
□「自立支援の名の下に 揺れる県内障害者小規模作業所」
(2006年8月7日~11日付夕刊社会面 全5回)
①社会復帰善意が支え
②強いられる自助努力
③喜びなき初の「平等」
④画一的判定に戸惑い
⑤現場の蓄積どう反映
□「自立支援の名の下に 新法1年 障害当事者らの思い」
(2007年5月14日~18日付夕刊社会面 全5回)
①社会の偏見で心に壁
②負担増やす国の施策
③善意頼みに苦悩深く
④生活困窮しても笑顔→提言②「障害福祉施策と女性施策の連携を」
⑤健常者との議論重要
□「共生社会へ 障害福祉 岩手の今」
(2007年4月~2008年3月 家庭欄・全12回)
①「相談支援専門員」(遠野市)
②「グループホーム」(奥州市)
③「小規模多機能事業所」(一関市)
④「セルフ・アドボカシー」(花巻市)
⑤「ホームヘルプ」(盛岡市)
⑥「当事者が主役」(紫波町)→提言①「精神保健福祉法と自立支援法の連関を」
⑦「重症心身障害児者」(大船渡市)
⑧「権利擁護」(宮古市)
⑨「疑似体験」(盛岡市)
⑩「就労支援」(一関市)
⑪「家庭訪問」(八幡平市)→提言①「精神保健福祉法と自立支援法の連関を」
⑫「母  親」(盛岡市)→提言②「障害福祉施策と女性施策の連携を」
□「自立求めて DV 本県被害女性の軌跡」
(2008年1月11日~18日付朝刊家庭欄 全6回)
①執拗に「バカ」「死ね」
②民間の活動 法に結実
③知人宅に避難、夫が追跡
④精神的ダメージ深く
⑤支援、ボランティア頼み
⑥生への意欲

■家族として…ハートネットニュース(例会のもようを収録)
 第1号(2007年10月9日、講師・盛岡市障害福祉課のみなさん)
 第2号(2007年12月5日、講師・SSCMの精神保健福祉士さん)
 第3号(2008年2月12日、講師・紫波町保健師 八重嶋幸子さん)
 第4号(2008年3月23日、講師・SSTリーダー 高森信子さん)
 第5号(2008年6月4日、講師・もりおか心のクリニック 上田均院長&高橋政代副院長)
 第6号(2008年8月26日 シンポジウム「こころとお金の悩み解決」)
(添付資料以外の記事、ニュースがほしい方は、黒田まで連絡下さい)
by open-to-love | 2008-12-04 20:48 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)
「記者として家族として」レジュメ

(2008年12月5日 「ふれあいin八幡平」講演 盛岡ハートネット事務局&岩手日報記者 黒田大介)

◆家族として、記者として…まずは自己紹介

◆家族として、記者として…藤村さんファンとして

◆家族として、記者として、話したいこと

◆わが家の構成(現在)

◆わが家の一日

◆立場の変遷…わが家の場合

◆自分がつらかったこと

◆そのとき、考えたこと

◆なぜ(少なからぬ)家庭が崩壊するのか?

◆わが家は、なぜ崩壊しなかったか?

◆記者と家族の両立とは

◆家族になって良かったこと

◆盛岡ハートネットとは…

◆精神障害者家族会の現状

◆精神障害者家族会の課題

◆岩手県に精神障害者・家族は何人?

◆精神障害者家族会の全体像と課題

◆つながりは必要

◆そこで、盛岡ハートネット

◆盛岡ハートネットのイメージ図

◆提言①…障害者自立支援法と精神保健福祉法の連関を

◆障害者自立支援法の理念

◆障害者自立支援法のポイント

◆Q.現状(全体像)…みなさんどう思いますか?

◆精神保健福祉法の入院手続き

◆事例をいくつか

◆わが家の場合

◆私に限らず、一番つらいのは受診前

◆「精神障害は精神疾患に先行する」

◆「当事者主体」の入院(受診)とは

◆そのために必要な取り組み

◆家庭活動の意義

◆ところが! 家庭訪問は減少傾向

◆藤村さんの「どこでも訪問」(連載「共生社会へ」)

◆八幡平市モデル「保健師がやる障害福祉」

◆そんな藤村さんへの期待

◆提言②…障害福祉施策と女性施策の連携を

◆根強い女性差別の構造

◆最後に…当事者の自立のため、家族ができること

◆おまけ…リラックスも大切! 音楽はいいですよ

◆みなさんのハートネットをつくりませんか?
by open-to-love | 2008-12-04 20:25 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)

ふれあいin八幡平

-12月3日から12月9日は障害者週間です-

「ふれあいin八幡平」

 八幡平市では、平成19年度に「ふれあい・わかちあい・ささえあい」の地域づくりをめざして障害者計画を策定しました。今年度は障害者週間に合わせて「ふれあいの地域づくり」をテーマとした催しを次のとおり開催いたします。
どなたでも参加できますので、ご近所の皆様お誘いあわせのうえご参加くださるようご案内申し上げます。

日時:平成20年12月5日(金)12時~16時
場所:西根地区市民センター

ふれあいバザー 12:00~13:00、15:15~16:00

福祉事業所や親の会が出店します!
 ポパイの家、そよかぜの家(製品販売)
 あゆみの会(福田パン、餅菓子)
 まつぼっくり(自家焙煎コーヒー)
 中山の園(製品販売)
 地域活動支援センターふらっと

講 演 会 13:15~14:30
演題:「家族として記者として」
講師:岩手日報社 黒田 大介氏
講師紹介
 奥さんの病気発症を機に岩手県内の障害者の状況を取材し、連載記事を掲載しました。現在も家族として記者として活動しています。

ふれあい音楽コーナー 14:30~15:15
楽器演奏
 ポパイの家、そよかぜの家
ふれあい体操
 音楽に合わせて楽しく体を動かしましょう

相談コーナー
障害福祉に関する相談コーナーを開設します。
社会福祉士、精神保健福祉士が担当します。

喫茶コーナー
おいしいコーヒー・ケーキもあるよ

点字プリンター体験できます
福祉機器展示コーナー
(今回は視覚障害者用です)

*講演会の開催時間に合わせてバスを運行します。ご利用ください!
 往路:12:00田山支所発 12:25安代支所発 12:50松尾支所発 13:00市民センター
 復路:16:00市民センター発 16:10松尾支所着 16:35安代支所着 16:50田山支所着


  主催 八幡平市
  後援 八幡平市社会福祉協議会、岩手県社会福祉事業団中山の園、八幡平市手をつなぐ育成会 あゆみの会、八幡平市身体障害者福祉協会、NPO法人まつぼっくり、就労継続支援B型事業所そよかぜの家、就労継続支援B型事業所ポパイの家、地域活動支援センターふらっと、盛岡広域圏障害者地域生活支援センターMy夢

※講師は、オレ。なお、市外からの参加も歓迎だそうです(黒)
by open-to-love | 2008-11-29 09:09 | 八幡平講演 | Trackback | Comments(0)