精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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カテゴリ:盛岡ハートネットニュース( 7 )

盛岡ハートネットニュース第7号

「キラりん一座盛岡デビュー!」第8回例会

 盛岡ハートネット第8回例会「キラりん一座in盛岡」は1月31日、盛岡市のプラザおでってで、約100人の参加で開催。東磐井の当事者会「心の病と共に生きる仲間達連合会キララ」(佐藤正広代表)メンバーによる「キラりん一座」の第3作目となる新作演劇「心 天気になあれ! Part2」を披露していただきました。大雪でしたが、ホールの中はあったかくて、いい天気になりました。

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 演劇は、リュウタとその母親の心の葛藤を軸に展開。高校生のとき学校に行けなくなり、卒業後に統合失調症で入院したリュウタは、何回か仕事につくが長続きしない。通い出した当事者会でやっと自信と希望を取り戻し始めた。一方、母親は、以前のように仕事探しを焦らなくなったリュウタを見て、将来への不安を強める。主治医には「お母さん、焦らないで」と言われるのだが、やっぱり焦ってしまい、リュウタにあれこれ口出ししてしまう。
 悩んだあげく、当事者会に顔を出してみることにした母親。そこには、笑顔のメンバーたちがいた。「俺たちみ~んな障害者。正真正銘。手帳付き。俺は2級。統合失調症歴40年」「俺は1級だもんね」と自らを語るメンバーたち。心を開き、リュウタの将来に対する不安を打ち明けた母親に、「障がい者だけど助け合って会を進めている」「必要なのは仲間と知識と良い経験」とメンバー。その楽しそうな雰囲気に、母は、リュウタにとって当事者会がいかに大切かを実感。「リュウタは、みなさんのところに雨宿りさせてもらってたんですね」。その言葉に、メンバーは「止まない雨はないもんな。つらいこと経験してるからこそ、できることあるよ!」。曇りがちだった母の心に晴れ間ができる…。
 キララメンバー一人一人の「心の声」を、北川明子さん(保健師)が脚本に昇華。そして、キャストとして、当事者として、その脚本を演じ切ったキララのメンバー。支援者と当事者との信頼関係があるからこそできる演劇、だからこそ観客に伝わる、当事者会の大切さや「母と子は分かり合える」とのメッセージ。最後にステージ上に勢ぞろいしたキララ一同、「薬づけだよ人生は」(「浪花節だよ人生は」の替え歌)を合唱。佐藤代表が「みんなでここに立てて幸せです」と締めくくり、大きな拍手が送られました。

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 当事者メッセージでは、キララメンバー2人が話しました。菊地さんは、統合失調症で引きこもりがちだったが、キララの演劇をみて「凄いな」と思い、当事者会に参加。「キララに参加するようになって少しずつ一人で街に出かけられるようになった。キララは自分の人生を探すところ」。うつ病の三浦さんは「ストレスから会社を辞め、北川さんに相談に乗ってもらい、感謝している。キララの集まりに参加したらみんな生き生き活動していてびっくりした。集まりに出ることが元気のバロメーター。キララに参加する前の自分は、どうして自分は心の病気になってしまったか、いつも嘆いてばかりいた。今は、障がい者だからこそできることはなにかを考えてる。病気になって、人の痛みをいくらかでもわかるようになった。だから私もみんなを幸せにできるように頑張ります」と、晴れやかに発表。
 北川さんも「自信や希望を育てる障がい者・当事者活動について」と題しスピーチ(実は本人は「キララが主役だから私のスピーチはいらない!」と固辞したのですが、無理矢理お願いしました)。当事者会が形ばかりではなく「当事者主導の当事者会」になるためには「当事者のやる気というエッセンス、支援者のピリッとしたスパイス、時には強火で時には弱火で、じっくりと、ゆっくりと、コトコト煮込んで、味見をしながら、してもらいながら、悩みながらみんなで作っていくものだなあ~と実感しています」と指摘。ほのぼのとした語り口ながら、数々の現場体験を踏まえた北川さんならではの、滋味深い話でした。
 アンケートには「私も当事者ですが、みなさんのように頑張って前向きに生きていこうと思います」「出演者それぞれが個性的で楽しかった。皆さん、魅力的! 脚本も素晴らしい」「思っているだけではだめで、表現することがすばらしいし、意味があると感じた」「ご自身から出るものは、胸にひびきます」「また観たい」「菊地さん三浦さん、北川さんの信頼の深さを感じました。当事者、支援者という立場を越えての信頼が」「北川さんにもとても興味が湧きました。かっこいいなあと思いました(本当に!)」。キララに今後どんな演劇をやってほしいかという設問には「リストラされて元気がないので復帰できる事の劇」「ドクターや支援者にバカにされたことがあります。リアルな劇」「ひとりでも多くの人に障害を分かってもらえる劇」など続々。
 「盛岡でも当事者会があればいいな」という声もありましたが、実は盛岡にもあるのです。その会が、今後いかにキララのように輝くかを、当事者、家族、市民、とりわけ支援者!が考えるためにも、盛岡公演は実に意義深かったことでしょう。キララ頼みでも北川さん頼みでもなく、自分達が、自分達の地域でどうやっていくか、考えましょう。
 おしゃべり交流会については、「もっと時間がほしかった」という声が多くありました。すいません(ですが、この日、キララメンバーは早い人で朝6時半に出発、午後5時に盛岡を出発して、北川さんが家に着いたのは翌日午前1時。これでもギリギリの時間設定だったのです)。
 ちなみに、キララは2004年に結成。演劇公演はじめ月1回の定例会、年1回の「明るく生きる精神保健シンポジウム」主催、大原水かけ祭りなど地域活動への参加、体験冊子の作製販売、レクリエーションなど多彩に活動。2008年3月、一関保健所大東支所廃止で活動拠点が失われましたが、千厩酒のくら交流施設に引っ越しし、活動を続けています。「支援」を求めることより「連携」、「保健福祉」以上に「地域」とのつながりを大事にした活動へ。新たなステージを歩み始めたキララを応援しましょう。
  ◇      ◇       ◇
 さて、最近ニュース発行が滞っておりました。すいません。ハートネットが有名になってきて、講演やら何やらで忙殺されておりました。以下、かいつまんで報告です。
 ▽第7回例会「奥家連(奥州市家族会連合会)との交流会」(2008年10月8日、県立博物館内・喫茶ひだまり)
 65人が参加。奥家連は家族限定の集まり、ハートネットは誰でもいいですよの集まり。盛岡と奥州、家族と当事者の対話のテーマは「困ってること、幸せなこと」。困ってることは「病気」「親亡き後」「年金」「薬の副作用」など、やはり疾患中心。一方、どんなときに幸せを感じるかについては「一日が無事終わり、晩酌できる時」「スポーツで汗を流せる時」「日常のおだやかなちょっとした時」「家族が楽しいとき」などなど。幸せって、障害のあるなし関係なくみんな同じなんだなあ、としみじみ実感しました。
 ▽キララ主催「明るく生きる2008・こころのシンポジウム」(9月27日、一関市千厩 酒のくら交流施設)
 黒田がパネリスト参加。当事者会活動を原点に、演劇を通じ社会に精神障害への理解を呼び掛けるキララと、家族会主導で結成され、当事者・家族・関係者・市民との対話、相互理解を目指すハートネット。出自は異なるけれど、「開かれた活動」では共通していると話してきました。ちなみに、その場で「キララのみなさん、盛岡で演劇やってください」と呼び掛けたら、盛岡公演が実現したのでした。
 ▽もりきたエコムネット学習会「地域での福祉ネットワークづくりを考える」(11月22日、盛岡市西部公民館)
 山口みどりが体験発表。息子さんの発病という辛い過去を乗り越え、母として、喫茶ひだまり指導員として、ハートネット事務局として、「つながり」を持ちながら前向きに生きている現在までを振り返り「大丈夫! 決してあなた一人ではありません」とにこやかに語りました。
 ▽「ふれあいin八幡平」(12月5日、西根地区市民センター)
 黒田が、歯に衣着せぬ物言いで知られる八幡平市の保健師藤村裕子さんのお招きで、岩手日報社の承諾を得て「家族&記者」として講演。「障害者自立支援法は当事者主体をうたっているが、精神保健福祉法の入院手続きと実態は依然として家族依存。その結果、受診・回復遅れになることが多い」と、受診から社会復帰まで、当事者主体のトータルな制度設計の必要性とともに、岩手の保健師伝統の家庭訪問の重要性を指摘。「『この病気に生まれたる不幸とともに、訪問しない保健師の街に生まれたる不幸』なんてことないよう、藤村さんは自身のノウハウを、市の枠を越えて次代に伝えてね」。藤村さんは厳しい目で頷きました。
 ▽「第7回地域生活支援セミナーinにのへ」(2009年2月1日、二戸市民文化会館)
 オープニングの、地元中学生による障害理解をテーマにした演劇は素晴らしかった(その契機を生んだ相談支援専門員の力量、なかなかです)。その後、当事者の初森旦さんと黒田が講演、対談。お互い身も蓋もない体験談を披露した上で「当事者と家族と関係者のみならず、広く社会へ精神障害を理解してもらう地道な取り組みが重要」で一致。黒田は「二戸には初森さんみたいなすごい当事者がいるんだから、ハートネットみたいな集まりをやりゃいいじゃん」と提言しました。
 ▽介護労働安定センター第2回ヘルパー2級研修「高齢者・障害者(児)等の家族の理解」(3月10日)
 阿部稲子、黒田が講話。阿部は、娘さんが病気になった経験など激動の半生を笑顔で振り返り、訪問看護やホームヘルプサービスを使った体験談とともに、統合失調症の幻覚や幻聴の疑似体験も。黒田は、精神障害者や家族は根深い偏見から家に閉じこもりがちで、人間関係が専門家に限定され、広く社会との接点がなかなか持てない現状を踏まえ、ヘルパーは専門性を磨きつつも「普通」の感覚を大切に、「社会の風」として活躍してほしいと期待を込めました。(文責・黒田)
by open-to-love | 2009-03-12 20:04 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネットニュース第6号

「自殺対策 団結を!」第6回例会=シンポジウム「こころとお金の悩み解決」

 盛岡ハートネット第6回例会「シンポジウムーこころとお金の悩み解決」(盛岡市共催)は8月26日、盛岡市のプラザおでってで、県内外から約190人の参加で開かれました。2007年の自殺者が3万3093人と、10年連続で3万人を超えた日本。80%がうつ病など精神疾患に罹患し、遺書があった場合の原因・動機(延べ数)は男女とも健康問題が最多ですが、男性の場合経済・生活問題が31%。さらには、2008年3月現在のサラ金利用者1126万人、多重債務者378万人…。各種統計から類推すれば、多重債務とうつ病と自殺との関連性が浮かび上がります。実際、そういう声も寄せられています。自殺率ワースト4位の岩手で、このグレーゾーンに切り込み、精神医療と消費生活サイドの実効性ある連携で自殺防止に取り組もうと開いたシンポジウム。その意義は、会場満杯の参加者数が自ずと明らかにしていると思います。
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 まずは、智田文徳さん(精神科医、岩手医大、岩手晴和病院、「盛岡いのちの電話」理事)=写真左=が「うつ―自殺解決モデルについて」と題して講演。自殺者の80%以上は精神疾患に罹患し、うつ病患者の自殺率は一般人口に比べて数十倍高い。自殺の引き金として、うつ病、人間関係のストレス、喪失体験(肉親・親しい人との離別、失職・転職、引っ越しなど)があり「逃れることのできない状況に追いつめられることが、その人の性格やうつ的な気分にプラスされて、自殺念慮を引き起こすことになる」と指摘。うつ病治療の三本柱に▽薬物療法(抗うつ薬)▽精神療法▽環境調整(休息、何もしない)を挙げました。
 自殺防止のため、うつ病の早期発見・治療が喫緊の課題なのですが、多くは未治療。日本でうつ病で適切な治療を受けている人の割合は25%、岩手県の自殺死亡者医療機関受診状況によると、男性の4割が生前医療機関へ受診していなかったのです。本人が病気であると気付いていなかったり、精神科の敷居の高さで、受診しづらかったり。
 周囲が気づく変化としては▽以前と比べ表情が暗く、元気がない▽体調不良の訴えが多くなる▽仕事や家事の能率が低下、ミスが増える▽周囲との交流を避けるようになる▽遅刻・早退・欠勤が増える▽趣味やスポーツ、外出をしなくなる▽飲酒量が増える―など。接し方の基本は▽受容的に接する▽話をよく聞く▽一緒に考える―です。一方、ダメな接し方は▽頑張れと励ます▽「気のせい」と否定する▽決断させる―。何はともあれ、身近な人にうつ病の徴候があったら、智田さんはじめ専門家につなぎましょう。
 久慈地域での自殺防止対策も紹介。関係機関の「つなぎ役」としてのリエゾンナースがいるとのこと。さらには、実務者中心の久慈地域メンタル・ヘルスサポートネットワークがあり、メンバーは精神科医、保健師、介護士ら相談関係者約30人。毎月1回、1時間半集まり事例検討や意見交換し、健康教育(紙芝居作成)などの活動もしている。久慈地域でも最初は多くの人にとって自殺問題はタブーであり、話題にすることすらためらいがあったが、保健師さんたちの「自殺による犠牲者を1人でも減らしたい」との思いが変え、今の活動の原点になったとして「どんな地域でも自殺は必ず減らせます」と結びました。
   ◇        ◇        ◇
 精力的な仕事ぶりが岩手のみならず全国にも知られる吉田直美さん(盛岡市消費生活センター主査)=写真右=には、多重債務問題についてお話いただきました。自殺と同様、借金もこれまで個人の問題とされてきましたが「借金問題を背景に、自殺や殺人事件など社会にとって好ましくないことがたくさん起きる。多重債務は社会問題なんです」。
 今年3月現在、盛岡市内にはサラ金利用者約2万6000人、多重債務者は約8700人。「相談に来て下さい。一気に解決に向かいます」。相談すると、消費生活センターが法律家に取り次ぎ、法律家が貸金業者に対し「私がこの問題を扱いますよ」という「受任通知」を出す。すると、貸金業者からの取り立てが一旦停止する。「うちなら、この手続きが1日で完了(午前に相談に行けば、夕方には受任通知)し、翌日からサラ金の取り立てに怯えなくていい」。
 2009年12月、貸金業法改正の完全施行により、年収の3分の1以上の借金ができなくなります。盛岡市の場合、相談者の平均借金額は約200万円、年収約200万円。そうした人の借金限度額は約60万円になる。「サラ金でこれまでやりくりしていた人が、とたんに首が回らなくなり、せっぱ詰まった状況になるのではないか」
 同センターへの年間相談件数は約2000件。吉田さんは数々の事例を紹介し「多重債務問題だけ単体で抱えている人は少なく、多くが借金とDV、借金と低所得、借金と精神疾患など複合した問題を抱えている。借金だけきれいにしても、他の問題を解決できないと根本的な解決にはならない。借金とうつ病には、深い関係がある」
 ちなみに、吉田さんは若かりし頃、青年海外協力隊でソロモン諸島に行った経験があります。そこは「ハッピー・アイル(幸せな島)」。電気もエアコンもテレビも車もパソコンもない。そして、自殺もめったにない。ソロモン人が自殺する理由はただ一つ、それは「かなわぬ恋」。ひるがえって、日本。あちこちに消費者金融の看板や闇金の張り紙があり、ポンポコポンポコお金を借り、ギャンブルができる。そして、自殺者3万人…。「お金は便利な道具だが、価値の中心にしてはならない。日本をソロモンのようなハッピーアイルにしたい」と、力強く宣言されました。
   ◇        ◇        ◇
 会場のみなさんを交えたシンポジウム「連携して自殺を防ごう」から、主な論点を紹介します。
 論点①久慈の「リエゾンナース」的存在は、盛岡にいるのか?「久慈地域メンタル・ヘルスサポートネットワーク」的な実務者の集まりはあるのか?
 答えは「否」。ならば、せっかくこの場に集まったみなさん同士が、それぞれの機関なり個人が抱えている事案を連携して解決していきましょう。そんなあなたは「リエゾンナース」であり、そんなやりとりが広がっていったら、それが「メンタルヘルスサポートネットワーク」になることでしょう。ちなみに、今回のシンポジウムを通じ知り合った智田さんと吉田さんの間では、連携が始まりました。心強い!
 論点②医療機関受診者の自殺をいかに減らすか?
 智田さんの発表によると「男性の4割が生前医療機関(精神科・他科)へ受診していなかった」とのこと。逆読みすれば「5割超は生前医療機関へ受診したにもかかわらず自殺した」ことになる。まずは早期発見・早期受診を進めることが最優先であることに異論はないのですが、同時に「受診者の自殺」も大問題。そこで問われるのが、まさに「連携」ではないでしょうか。それは、精神科相互、精神科と他科に限らず、医療機関と相談機関との連携でもあります。
 論点③消費生活センター窓口における精神疾患がある人(あるとみられる人)への対応をどうすればいいのか?
 これは消費生活センターに限らず、他の相談機関窓口でも共通の悩みであろうと思います。これについては、智田さんの講演が参考になりますね。あと、今シンポを機に、県精神保健センター職員を講師に招いての盛岡市消費生活センター職員研修が始まりました。これまた心強い。
 論点④ギャンブル依存症は、どうしたら治る?
 今シンポは精神疾患の中でもうつ病の話が中心でしたが、ギャンブル依存症と多重債務とのかかわりも非常に深刻です。智田さんによると、治療は困難。薬だけで治るわけではなく、当事者同士の支え合い、家族はじめ周囲の根気強いサポートも必要です。さらには社会。端的に言えば「ソロモンにはパチンコ屋があるか?」ということになるわけですが、誰しも簡単にギャンブル依存になれる社会情勢が、問題解決を困難にしているのです。(折しも9月22日付岩手日報朝刊の連載「どうなる岩手競馬」の見出しは「売り上げ低迷 魅力あるレース課題」でした…)。ちなみに11月16日、プラザおでってで、ギャンブル依存症をテーマにしたシンポジウム(横浜市のNPO法人ワンデーポート主催)が開かれるそうです。関心ある方、ぜひ参加しましょう。
 このほか、相談員のメンタルヘルス、「いのちの電話をぜひ24時間体制に」といった会場からの声もありました。
 いずれ、課題のどれ一つとして、この場で解決できませんでした。しかし、解決困難な課題にどう向き合うかについて、智田さんと吉田さんの姿勢から共通項が見出せたと思います。智田さんは「おのれの限界を知ることが大切」、吉田さんは「消費生活センターは多重債務解決支援ではなく、多重債務解決を通じた生活再建支援なのだ」と強調されました。いずれも、あらゆる相談現場に通じる姿勢。おのれの限界を知り、得意分野で力を発揮しつつも、その課題が解決したらおしまいではなく、その人が抱える他の課題解決のために他分野と連携して、その人が生活再建に向かうまでをゴールとする。お二人のこうした謙虚な姿勢を、私たちは学びたいと思います。
 最後に、会場からの、ある女性の勇気ある発言を紹介します。「多重債務で主人を亡くしました。苦しみ、悲しみ…何を信じていいのか…。これ以上、こういうことが起きないでほしい。社会がよくならなければ、どんどん起きる。何とかするために、連携というより、団結してほしい。日本全体がおかしくなっている。みんなで団結しなければ、大きな輪をつくらなければ、間に合わない」。
 日本をよくするためには、足元から。盛岡の地で、団結しましょう。彼女の切な訴えを、無にしないように。
   ◇           ◇
 シンポジウムでは、演劇同好会「虹」が、多重債務を考える寸劇「吾が輩は猫である。負債はまだない」(脚本・横幕智裕)を初披露し、「分かりやすい」「演技がいい」と大好評。今後、各地での上演を期待しております。
 当日、資料が足りなくなってしまい、大変失礼しました。欲しい方は事務局までご連絡いただければお届けします。なお、シンポジウム企画書、講師の発表レジュメ、配付資料、アンケート結果などすべてブログに収録していますので、そちらもご覧いただければ幸いです。(文責・黒田)
by open-to-love | 2008-09-25 11:42 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネットニュース第5号

薬を減らして、その分「まごころ」

盛岡ハートネット第5回例会
講師・もりおか心のクリニック 上田均院長、高橋政代副院長
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 「セレネース、インプロメン、レボトミン、トロペロン、バルネチール、テグレトール、グラマリール、ビカモール、アーテン、酸化マグネシウム、パントシン、乙字湯、ベサコリン、ウブレチド、白虎加人参湯、リズミック、レボトミン、ベゲタミンA、ピレチア、プルゼニド、ラキソベロン」
みなさん、これが何のことか分かりますか? 答えは、ある患者が一日に飲む薬。これが、日本での従来型抗精神病薬の多剤併用・大量療法の処方例です。これを薬漬けと言わずしてなんと言う?…

 盛岡ハートネット第5回例会は6月4日、盛岡市本宮のもりおか心のクリニックで開かれ、過去最高の約70人が参加しました。超満員のデイケアルームで開かれた上田均院長の講演「これからの統合失調症薬物療法~日本の常識は世界の非常識」は、タイトル通り刺激的な内容でした。
 上田先生は各種データを基に、日本が国際的にもずば抜けて抗精神病薬の投与量が多い実態を指摘。そして、投与量が増えても、多剤併用しても、治療反応率(薬が効く率)は上がらないこと、その代わり副作用(錐体外路症状)のリスクは上がることも話しました。つまり、薬の種類と量がいくら増えても、病気に効く根拠は何もないどころか、かえって副作用がひどくなってしまいかねないのです。「例えば糖尿病の場合、日本のどこでも専門医ならスタンダードな治療が受けられる。でも、こと統合失調症にかんしては、当たりはずれが大きい。そして、患者さんのその後の人生を大きく左右してしまう」。
 なぜこんなことが起きるのか? 薬をいっぱい出せば病院がもうかるからかなと勘ぐりたくなりますが、上田先生は「決してそうではなく、むしろ人情ではないか」と推測します。ある患者さんが医師に「幻聴が取れない」と訴えると、医師は「じゃあ違う薬を追加してみよう」。患者が「ちょっと不安が強い」とこぼすと、医師は「ではこの薬を…」という感じで、医師が患者さんの症状を和らげようと頑張れば頑張るほど、薬の量はどんどん増えていく、そんな悪循環が背景にあるのかもしれません。
 ちなみに、単剤療法の問題点・技術的に困難な点について全国の精神科医を対象にした調査データによると、「多彩な症状のコントロールに限界がある」(73%)、「併用療法から単剤療法への切り替えが難しい」(36%)、「併用療法が使い慣れているので」(10%)などだそうです。
いずれ、患者にとって、薬の量は少ないにこしたことはない。最近は、リスパダール、ジプレキサ、ルーラン、エビリファイなど、副作用の少ない新規抗精神病薬が登場。上田先生は、こうした薬の単剤適正用量による薬物治療を実践。さらには、同じ志を持つ仲間とともに全国を行脚し、今回のような講演をしています。でも、上田先生のような医師はまだまだ少ないんじゃないでしょうか。
 「多剤併用・大量療法から新規抗精神病薬の単剤・適正な用量による治療への切り替えは、医者の力だけではできない。家族や地域のみなさんの協力が必要」と上田先生。
 では、患者や家族に出来ることは何でしょうか。まずは、自分の薬を知ることから始まると思います。今まで当たり前と思って飲んでいた薬。それは「日本の常識」かもしれないが、「世界の非常識」かもしれない。なぜ自分は、あるいはわが子はこの薬を飲むのか、どういう効き目や副作用があって、どのぐらいが適量なのか? 医師まかせではなく、納得して飲むこと。つまり、主体的に病気の治療へかかわること。そうした患者や家族が増えていけば、「日本の常識」も変わっていくことでしょう。そう、それがインフォームド・コンセントです。
    ◇     ◇     ◇
 さて、もりおか心のクリニックは県内初のデイケア併設型精神科クリニック。参加者の中には、初めて「もりここ」を訪れ、きれいで明るい雰囲気、いわゆる〝精神病院らしくなさ〟にびっくりされた方もいたのではないかと思われます。その「もりここ」を上田院長とともに切り盛りする、副院長で看護師の高橋政代さんにも「クリニック時代の精神看護」と題して講演していただきました。
 精神科医療が地域で行われる時代。高橋さんの「クリニックは、最初の入り口としての役割が期待されている。患者、家族としては、病院よりクリニックの方が、仰々しくなくて行きやすい」という言葉に、うーん、納得。
 クリニックのメリットに▽来院に当たって敷居が低い▽同じ医師が継続して対応できる▽なじみの関係になり相談しやすい。デメリットとしては▽ベットがなく入院できない▽医師が一人のところが多く相性が合わないことも▽医療スタッフの数が少ない…などを挙げ「クリニックにはマンパワー的にも設備的にも限界があるが、きめ細やかな関係づくりができるメリットは大きい」と述べました。
 ベットがないため「入院が必要な患者さんをどのようにして入院につなげるか四苦八苦している」とのこと。でも、それは当事者にとってはメリットでもある。「以前の入院によるトラウマで、入院施設がないのがホッとする患者さんもいる」からです。
 さて、「精神科医療の入り口」であるクリニックは、患者も家族も医療者も一番大変な急性期の救急対応を担っています。さらに、地域と、ベッドのある病院をつなぐ役割も。そこで大切なのは「他施設・他職種・関係機関との連携とネットワーク作り」。その意味で、クリニックの看護師はものすごく大変な仕事であるともいえましょう。
 クリニックの現場から見える現実は、過酷です。「生命の危険、自殺未遂や自傷他害だけが救急ではない。患者が感じる救急と医療者が考える救急はズレがある。『自分は死んだ方がいい』『消えたい』といった自殺企図でさえも、『できれば生きたいけど消えたほうがましなくらい辛い』という生命への執着が本当は強い人も多い。だからこそ介入し、治療につなげ、また前向きに生きる気持ちに戻ることが大切」と高橋さん。心掛けているのは、声掛けやタッチング。そして何よりも大切なのは「まごころ」。童話『北風と太陽』を引き「患者さんにとって私たちが『SOS発信できる相手』であることが限りなく大事。太陽のようなあったかい関わり、あなたがこの苦しみから楽になれますようにとのメッセージを送ることが安心感を与え、早期の回復へと導くと考えている」と語りました。
 「クリニックが休診の時、夜間救急に通い点滴を打ってもらているような大変な人が、ある日突然何かに納得し、ふっきれたようにさわやかになることがある。止まない雨はないんです」という優しいメッセージが、参加者の間に静かな感動を広げました。
   ◇     ◇     ◇
 薬にせよ看護にせよ、患者へのきめ細かなかかわり実践されているお二人。質疑応答では、当事者から「親とのより良い関わり方」について質問がありました。上田院長は「自分は親に心配をかけてきたつもりはないが、親は『風邪ひいてないか』とか、いつも心配するんですよね。それが親子」としみじみ。高橋さんは「私の親は、五十を過ぎた私に『ちゃんと働いてるか、先生を粗末にしてないか、先生にさからっちゃだめだよ』といつも言うんです。最近は、ありがたいなって思えるようになってきた。今は親の一言一言がうるさいって思っても、もう少し歳を取れば、親の気持ちが分かりますよ」。
 この二人の回答に、なるほどと思いました。こういう質問に対し、大抵は「適度な距離を保とう」とか、一般的な答えが返ってくるものです。しかし、二人は違う。まずは自分の体験を語り、上から目線で「こうしなさい」と答えを押し付けず、あくまで目線は対等。この姿勢が、まさにクリニックにおける医療者と当事者の関係なのではないか。
 こんなクリニックがあちこちにできて、みんなが精神科に行きやすくなり、社会の風通しがもっともっとよくなればいいですね。

   ◇◇◇ お知らせ ◇◇◇
 盛岡ハートネットのリーフレット完成=A43つ折り、カラーとモノクロの2パターンあります。表紙のイラスト、いい感じ。活動内容、よくある質問、ブログなどを分かりやすく紹介しています。ご入り用の方は、事務局まで気軽に申し付け下さい。
 シンポジウム「こころとお金の悩み解決」(第6回盛岡ハートネット例会、盛岡市と共催)=8月26日午後1時から4時30分、プラザおでって3階おでってホール。
 精神科医の智田文徳さんが「うつ病治療と自殺防止」、盛岡市消費生活センターの吉田直美さんが「多重債務解決と自殺防止」をテーマに講演。それから会場のみなさんを交え「うつ病治療と多重債務解決で自殺を防ごう」をテーマに語り合います。みなさん奮ってご参加下さいね。    (文責・黒田)
by open-to-love | 2008-07-24 09:33 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネットニュース第4号

「高森信子先生の家族SST教室」第4回例会

 みなさん、唐突ですが、「水戸黄門のテーマ」を歌いましょう! 「人生楽ありゃ苦もあるさ~」。うーん、暗い。ただでさえ暗くなりがちな精神障害者家族。「楽なんてないよな、苦ばっかりだよな」と、ますますドヨーンとしてしまいます。
 そこで、講師の高森信子先生(SST=社会技能訓練=リーダー、川崎市在住)は言うのです。「じゃあみなさん、今度は『どんぐりコロコロ』のメロディで『水戸黄門のテーマ』を歌ってみましょう。さん、ハイ!」
 すると、「人生楽ありゃ」…あれ、全然違いますね。何だかハイキング気分、思わずみんなの表情が明るくなります。これが、難しい言葉で言うと「行動療法」ということ。つまり、中身=「水戸黄門のテーマ」は同じでも、入れ物=メロディを変えるだけで、こんなに変わる。こんな感じで、当事者との接し方でいろいろと困っていることでも、ちょっと見方を変えればずいぶん違う。それをトレーニングしてみましょう、きちんと身に付けると、だいぶ家の中も風通しがよくなりますよ、というのが、高森先生の考案した「家族SST」なんです。
 盛岡ハートネット第4回例会は、その高森先生を講師に招き、3月23日に盛岡市若園町の市総合福祉センターで、市内外の家族を中心に20人の参加で開かれました=写真。
 高森先生は、統合失調症の主要な症状である「幻聴」が起きる4要素に①不安②孤立③過労④不眠-を挙げます。統合失調症治療の基本は薬物療法。でも「不安や不眠には薬が効くが、孤立を和らげるためには家族の『ビタミンI(愛)』よ」。
 でも、あんまり愛しすぎてしまっても、当事者にとっては、逆にウザかったりする。本人のためと思ってガミガミ説教すると、逆効果だったりする。そこで大切なのは「まずは当事者の思いをきちんと聴く」ことです。そして「叱るのではなく、ほめる」こと。
 何より「今を認める」こと。例えば「お茶碗をきちんと洗えたら認めるのではなく、それができない今でも認める。生きているだけで立派なんですよ。そして、小さな、できることの積み重ねが回復への道をつくります」。
 さて、精神疾患は中途障害。発病前、元気ですくすく育ち親の言うことを何でもよく聞いて、といったわが子のイメージがあるだけに、その子が20歳前後に発症すると、それはそれはショック。でも、高森先生は笑顔で言います。精神障害者の家族になることは「概念砕き」なのだ、と。「自分の中に出来上がった『人生とは』『自分とは』といった概念が、病気により突如砕かれてしまう。でも、だからこそ、精神障害者の家族は、すべての障害に対して優しい人になれる」と。そう、前向きにとらえれば、私たちは、このギスギス社会を優しい社会に変えていく可能性を秘めている人たちなのです。
 引く手あまたの高森先生はこんな感じで、ご高齢でありながら、日本全国を飛び回り講師活動しています。本当に頭が下がります。またぜひ盛岡に来てほしいですね。でも、高森先生に頼ってばかりでは、先生この分じゃ過労で倒れてしまいます。先生に学んだことを私たちが家庭に持ち帰り、実践し、そして、困ってる人に、教えてもらったことを教えてあげましょう。こんな感じで輪を広げましょう。それこそが、先生が望んでいることだと思います。
 困難を抱えている近所の人に手を差し伸べられるのは誰か。それは、同じ病気で困った経験があり、さらにその困難を乗り越えたあなたです。

 さて、今回の第4回ハートネット例会ですが、いつものような講演と交流会の二本立てではなく、家族限定、定員20人でこじんまりと行われました。経過について、以下、山口みどりさんに報告してもらいます。

 今回このお話は昨年12月7日、盛岡市のアイーナで開かれた「障がい者地域移行推進モデル事業講座」の際、阿部稲子さんから私に「岩家連が来年3月、高森先生の講演を予定してるみたいよ」との情報が伝えられたことからスタートしました。このお話、ただ黙って見逃す手はない。「ハートネットでも、ぜひ!」と、にわかに動き出しました。
 岩家連に問い合わせますと、高森先生は3月22日、岩家連主催のワークショップで盛岡に来る。その翌日は夕方までフリーとの事。よって、23日をハートネットでいただくことになりました。
 1月11日に阿部さんと私が打ち合わせし、当日のプログラムや、岩家連主催のワークショップに対し、ハートネットではどんなことをするのかを検討。岩家連の企画は全県対象で定員も多く、一般的な話になりそうなので、私たちはそこからちょっとステップアップして、本当に困っている人限定の、少人数の集まりにしよう、ということにしました。15日にはスローキュアナチュラルハウスで打ち合わせし、申し込みは岩家連と一括でやってもらうことにして、ビラの内容を精査。2月1日に阿部さんがビラを100部プリントし、岩家連の封筒に入れてもらい、2月12日の第3回ハートネット交流会でも配布しました。
 3月10日、私が岩家連へ電話し、出席者数の中間確認。16日に地域活動支援センター滝沢で阿部さんと打ち合わせ。17日に高森先生へメールし、高森先生が盛岡駅に到着した21日夜、宿泊先のホテルで阿部さん、黒田さん、私で最終打ち合わせ。
当初、講師料3万円を参加者数で割って、参加費1人1500円と設定していましたが、そこに朗報。岩家連事務局の八重樫正美さんから「岩家連から『家族会育成費』という名目で講師料を出せることになりましたよ」というわけで、急遽1人1000円に抑えることができました。
 そして、いよいよ23日当日の「ハートネット版・家族SST・あなたの愛を言葉で伝えてますか?」。参加された方から「とても理解しやすかった」「こういう機会があったらまたぜひ参加したい」と好評で、高森先生の著作も完売となるなど、盛況の1日となりました。
 ハートネット終了後、高森先生を阿部さんとお見送り。会場から駅までの車中、阿部さんの「盛岡ガイド」はなかなかでした。新幹線のホームで「I LOVE  YOU」のサインを掲げてくれた高森先生、次の講演先・青森へと向かわれました。
 見送り後、阿部さんとお疲れさまのコーヒーブレイク&反省会。①実参加者が予定に見合わない場合は赤字になる。費用の確保のため、行政または関係機関との連携を考えたり、資金確保のためのバザーを開いたらどうか。助成金の申請をするため、連合会として規約を作るなど形式的な整備が必要。②1年に1回開催するなど「継続」が大切③終了時間の告知を徹底し、参加者に意識してもらうことが必要…などの反省点を語り合いました。
 なお、当日の歌の伴奏を、ピアノ教師で県立博物館内「喫茶ひだまり」指導員でもある中澤浪子さんにお願いしました。急な曲目変更にも即座に対応してくださり、また今回の依頼も快く引き受けてくれました。ハートネットファンの1人でもあります。本当にありがとうございました。また、ぜひともよろしくお願いします☆
 ◇         ◇
 というわけで、いつものハートネットなら、定員なし、家族に限らず誰が来てもいいですよ、というスタンスでやってましたが、今回はそうはいかず…。多くの人に声掛けできず、すいませんでした。
 ではみなさん、6月4日にお会いしましょう。ハートネット第5回例会は、充実の講演2本立て。もりおか心のクリニック院長の上田均先生に「これからの統合失調症薬物療法~日本の常識は世界の非常識」、副院長の高橋政代先生に「クリニック時代の精神看護」と題して講演していただきます。

 ◇ お知らせ ◇
 ▽第31回岩家連大会 7月14日、釜石市民文化会館。特別講演は日本笑い学会理事・関東支部長の鐘振夫(ベル・フリオ)さんです。
 ▽DPI日本会議総会in岩手(岩家連、盛岡ハートネット後援) 6月14・15日、盛岡市・アイーナ。15日にはシンポジウム「障害者差別禁止法と自治体条例の制定に向けて」、午後は地域生活支援、交通・まちづくり、権利擁護、教育、労働、DPI女性障害者ネットワークによる映画上映&意見交換会が開かれます。
(文責・山口、黒田)
by open-to-love | 2008-05-15 01:09 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネットニュース第3号

「ありがとう八重嶋さん」第3回例会

(2008年2月12日、もりおか女性センター別館 42人参加 講師・紫波町保健師 八重嶋幸子さん)

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 第3回盛岡ハートネット交流会は2月12日、盛岡市肴町のもりおか女性センター別館で開かれました。講師は、紫波町のベテラン保健師八重嶋幸子さん=写真=。市内外から42人が参加し、紫波町の多彩かつ充実した精神保健福祉活動について、さらには、いつも話題に上る精神障害者の早期受診問題についてもお話いただきました。

 紫波町は、人口34456人、10613世帯。高齢化率22・2%で、出生250人、死亡350人。自立支援医療受給者数235人、精神保健福祉手帳所持者は96人となっています。社会資源は単科の精神科病院が1つ(平和台病院)、就労支援事業所1カ所(さくら製作所)があります。グループホーム利用者は3人、ヘルパー9世帯(10人)、金銭管理などをやってもらう地域福祉権利擁護制度は7人、就労に向けた社会適応訓練事業は1人が利用しています。
 紫波町には、さまざまな集まりがあります。まずは精神障害者家族会「紫幸会」が1973(昭和48)年に発足。地域家族会としては、県内で一番最初にできました。なお、当時の会長は、岩家連の初代会長でもあります。当事者会「さくら会」は1978(昭和53)年4月に発足。これまた、県内では先駆けですね。さらには、ボランティアグループ「ゆいっこの会」が1998(平成10)年2月から活動しています。
 絵画教室、ソバ打ち体験、さらには人気のスリム教室。また、三障害連携によるコンサートなどの行事、クリスマス会など行事は盛りだくさん。また、障害関係者だけの世界に閉じこもらず、積極的に社会と関わることで理解を深めてもらうため、老人クラブのスポーツ大会、ふれあいフェスタ、紫波一中生との「ゆうごうセミナー」、中学生がさくら製作所で職場体験するなど、これまた盛りだくさん。なお、多くの町民にイベントへ関わってもらうポイントは「子どもも参加できる行事にすれば、その親も一緒に来る」のだそうです。なるほど。
 うーん、紫波町はすごい。ですが、八重嶋さんは「私がすごいんじゃない。紫波町の保健師は代々やってきたこと」と事もなげに言うのです。
 紫波町は昔から、保健師が家庭訪問を積極的にやっていました。家庭訪問をすると、じいちゃん、ばあちゃんと仲良くなる。仲良くなると、本当に困っていることを相談される。それが、家に込もっている精神障害者でした。ちなみに当時は、精神保健福祉にかかわる事務は県の所管。市町村ではなかった。でも、紫波町はやっていた。県から「精神は保健所の仕事だ」とクレームが来たこともあったそうですが、八重嶋さんの諸先輩は「住民の健康を守るのが保健師の仕事。心の病だって、住民の健康問題だ」とはねつけてきたのだそうです。
 つまり、紫波町が素晴らしいのは、法律がどうこうじゃなく、歴代の保健師が住民の目線に立って仕事をしてきたという素地があるということです。だからこそ、今の包括的な精神保健福祉活動があるのです。これぞ、地方自治のあるべき姿であり、かつ、市町村が精神保健福祉サービスの主体となった今こそ、その素地がますます生きることでしょう。
 さて、そんな紫波町における精神障害者(あるいは、精神疾患があると思われる人)の入院・通院支援はどうなっているのか? 「私(八重嶋さん)が家に顔出すと、当事者が『あっ、そろそろ病院にいかなくちゃ』と察してくれる」のだそうです。すごい話。つまり、保健師がまめに家庭訪問していれば、そういう関係性が築けるんですね。また「アベックみたいに手を引っ張って連れて行く」こともあるそうです。八重嶋さんは事もなげに言いましたが、参加者からは思わず「えっ、すごい」との声が漏れました。というのは、みなさん、当事者が急性期のとき、警察が介入して大騒ぎで措置入院となったなどの辛い経験があるだけに…。
 また、お医者さんの前でついつい緊張してしまう当事者のため、八重嶋さんが診察に付き添うこともあるそうです。(なお、保健師の家庭訪問活動や早期受診支援については、2月22日付岩手日報朝刊家庭欄の連載「共生社会へ」も参考に。記事で取り上げられている八幡平市の保健師藤村裕子さんも、八重嶋さん同様、名物保健師です)
 最後に、悲しいお知らせがあります。八重嶋さんは、まだお若いにもかかわらず、3月末をもって退職されます。講演終了後、私たちの感謝の気持ちを込めて、八重嶋さんに記念品を贈らせていただきました。贈呈者は、長年の付き合いがある盛岡市のコスモス作業所所長の田山智子さん。韓国ドラマをこよなく愛す八重嶋さんのため、記念品は「ヨン様クッション」にしました。ぜひ、毎晩、このクッションで寝てくださいね。
 第二部の交流会は、なかなかの盛況でした。さくら製作所提供のコーヒーとババロアがとっても美味しかった上、同製作所メンバーにもグループに入ってもらい、盛岡と紫波、家族と当事者との交流にもなりました。時間が差し迫ってしまい、事務局が「みなさん、そろそろ…」と切り出したら、一斉に「えーっ」との声。みなさん、話し足りなかったことと思います。時間配分のミスです。すいませんでした。
 さて、後日届けられたアンケートに、こんなことが書いてました。「孫悟空の分身の術を使って、ミセス八重嶋を増やそうという夢を見た」。この方、よほど紫波町の取り組みに感激して、夢にまで出てきたようです。そのお気持ち、分からないでもありません。でも、八重嶋さん待望論よりも、その取り組みをヒントに、私たち自身ができることから、さまざまな社会資源を組み合わせ、「八重嶋型」あるいは「紫波型」ならぬ、「盛岡型」のネットワークづくりを一歩一歩進めていきませんか? そのためのハートネットですからね。
 ともあれ、八重嶋さん、本当に長年、お疲れさまでした。ゆっくり休んで下さいね。そして、またそのうち、フットワーク軽く復活されることを、一同期待しております。

◎お知らせ◎
▽ハートネットの取り組みを発表
 2月8、9日、繋温泉ホテル紫苑で開かれた「岩家連いきいき交流会」&家族会長会議で、事務局の黒田が小論「家族会ネットワークをつくろう―盛岡ハートネットの取り組みから」を発表しました。全国、そして本県の家族会活動の現状と課題、そしてハートネットの取り組みのもようと将来展望を長々とまとめています。興味ある方はご一報下さい。また、パソコンを使われる方は、ブログに掲載してますので、そちらからどうぞ。トップページ右下の「PDF」からダウンロードできます。

▽高森信子さんSST教室
 SST(社会技能訓練)リーダーの高森信子さんが3月23日、SST教室を開きます。盛岡ハートネット主催で、午前9時半から午後2時半。会場は若園町の盛岡市福祉総合センターで、参加費1500円。岩家連主催のSST教室(22日)に合わせ、「せっかくだから翌日もやってほしい」とハートネットが高森先生にお願いして、実現しました。定員30人という小さな集まりですから、みなさんが「今、こんなことに困ってます」といった個別具体の事例について、高森先生にバンバン質問できるチャンスですよ。

▽7月17日(木)に釜石で岩家連大会
 第31回岩手県精神障害者家族大会は7月17日、釜石市民文化会館で開かれます。詳細はこれから。取りあえず、カレンダーに◎印を付けておきましょう。次回のニュースをお楽しみに。

▽障がいを持つ人がイヤな思いをしたことのアンケート
 第3回交流会で、「障がい者への差別をなくすための県条例を進める会」より、アンケートへの協力要請があり、参加されたみなさまに書いていただきました。協力ありがとうございました。このアンケートは、同会が取りまとめ、県議会に提出したそうです。そして、回答全体のうち、精神の当事者や家族の回答がかなり多かったそうです。やっぱり、精神はいろいろありますね…。
 なお、障害者差別禁止条例については、日本では千葉県議会で初めて成立しており、もし岩手で実現すれば、全国2番目みたいです。国連の障害者権利条約の動きも含め、ブログにはさまざまな情報を網羅していますので、ぜひお読み下さい。条例は、障害者の地域移行を進める大前提です。条例制定の動きを注目し、積極的にかかわり、みんなでいいものをつくっていきましょう。

 さて、次回の交流会は、5月ごろを予定してます。みなさん、またお会いしましょう。
(文責・黒田)
by open-to-love | 2008-03-16 12:30 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネット第2号

「困ってなくても来てね」第2回例会

(講師:ソーシャルサポートセンターもりおかPSW 廣田政彦さん)

 みなさん、ソーシャルサポートセンターもりおか(SSCM)はご存じですか? 盛岡市本町通1丁目9の14、JT本町通ビル3階に、2007年8月にオープンしました。いろいろ相談に乗ってくれるところらしいぞ、というわけで12月5日、盛岡市肴町のもりおか女性センター別館で開いた第2回盛岡ハートネット交流会に、同センターの精神保健福祉士(PSW)廣田政彦さん=写真=にお越しいただき、施設のPRを兼ねて「困ったら相談しよう」と題し講演していただきました。市内外、遠くは一関市から35人が参加。廣田さんは「何か知りたいとか、誰かに話したいとか、何かしてみたいとか、何となくとか…困ってなくても来て下さいね」と優しく呼び掛けました。

ソーシャルサポートって?
 まずは、ソーシャルサポートとは何か。「ソーシャル(社会的)サポート(支援)の機能・プロセス理論であるとともに、公的サービス以外のもの(当事者、ボランティア、地域住民など)を含めたネットワーク構築理論の総称」とのこと。
 で、何をしているかといえば、まずは相談支援事業。例えば、福祉サービス利用支援やネットワーク(連携)づくり。また入院者の地域生活移行支援やケア会議などを通じて、関係者の連携を推進するとともに、当事者、家族等への支援を通じ、ネットワークを構築していく。その際、医療機関などの関係機関と協力しケアマネジメントの手法を用いて支援するということだそうです。
 ちょっと難しいですね。廣田さんは、カレー屋さんに行ったときのことを例に、分かりやすく説明してくれました。カレーを食べたくて店に行ってメニューを開いたら、辛さがさまざま選べ、トッピングも多種多様。そこから自分の好みでいろいろ選べる。そんな感じで、カレー屋の客=自分が、メニュー=制度や社会資源を参考にしながら、お店の人=PSWのアドバイスを受けつつ、おいしく食べる=自分の人生を歩んでいく、という感じです。むろん、精神の場合はカレー屋さんほどいろいろなメニュー=選択肢があるわけではないでしょうが…。
要するに、退院したけどいろいろな悩みや不安があるとき、ソーシャルサポートセンターに電話したり行ってみると、廣田さんら専門家がいて、相談に乗ってくれ、医療や福祉制度や作業所のことを教えてくれたり、問題を一緒に考えてくれる、ということ。「予約はできるだけ事前に連絡いただけると助かります」。相談料は基本的に無料なんだそうです。
 さらに、将来的には、「地域活動支援センターⅠ型」をやりたいとのこと。それは、当事者が日中集まって、リフレッシュしたりエネルギーを補充したりする場所です。さらには「携帯電話をどう使う」といった生活のノウハウを学ぶ場所としての「自立訓練(生活訓練)」をやりたいなあ、とのことでした。そういえば、ビルの一室にある同センターの部屋は結構広くて、まだ使ってないスペースが結構ありましたっけ。そこを使って、これからいろんなことをやるみたいです。

家族の力も重要です
 さて、今回は主に家族の集まりということで、廣田さんは家族の心構えについて、いろいろ話をしてくれました。「患者の回復・再発防止には、医療福祉スタッフのみならず、家族の協力も必要」なのです。より効果的な援助のため必要なことは「家族のゆとりある生活」。病気が引き起こしやすい家族の感情を、▽病気の説明をきちんと受ける機会に乏しく、とまどい、理解に苦しむ▽本人の苦しそうな様子を見ると、助けてあげられない自分がいらだたしくなる▽何とかしたいと一所懸命なのに、本人の様子が変わらず、情けなくなり腹が立つ▽何かにつけて本人のことが気がかりで、いつも頭から離れない▽病気自体が不安定な様子なので、はらはらさせられる…と指摘されました。
 そのため「ご家族自身が健康診断や通院の時間を確保しましょう。睡眠を十分とり、食事もしっかりとり、身体を動かすことを心掛けましょう。適切で積極的な休養を。私たちは、自分にゆとりがあればこそ、頑張りが利いたり、人に優しくすることができたりします。自分自身の人生をどうぞ大切にしてください。そして、身近な方々とのお付き合いは遠慮しないで、皆さんらしいやり方で楽しんでください」と呼び掛けました。

平日夜間の相談電話開設中
 あと、耳より情報です。9月1日から平日夜間、岩手県精神科救急情報センター(019・624・6791)を開設しているのだそうです。大抵、日中は調子よくても、夜に具合が悪くなる当事者さんが多いですから、朗報ですね。受付時間は平日午後5時から同10時。今後は土日祝日も受付予定ですが、開始日程は未定なそうです。ただし「かかりつけの医療機関がある人は、まずそちらに相談を。休日や夜間に受診相談などを受けるための電話なので、時間をかけた継続的な相談はご遠慮願います」とのこと。
 さて、精神障害者に対する誤解や偏見は、まだまだ根強いものがあります。質疑応答では、マスコミ報道の在り方について質問がありました。廣田さんは「事件記事に『○○容疑者は、精神科病院に通院歴があった』という記述がある。通院歴が事件とのつながりがあれるならば必要だけど、個人的な情報でもあるし、どうなのか。でも『○○容疑者はその日の朝、カツ丼を食べてた』というのは、むろん記事にはならない。通院歴があったと書かれると、通院していたから事件を起こした、と読者は受け取ってしまう」と問題提起されました。なるほどです。
 あと、今回ハートネットでお話されたように、他の家族会が講師依頼しても来てくれるかとの問いには「ぜひ呼んでください」とのことでした。心強いですね。病気のこと、年金のこと、親亡き後のこと…家族会の集まりでは、いろんな話が出ます。いつも同じメンバーで悩みを打ち明け合うだけではなく、たまには専門家をお招きしていろいろアドバイスをもらうのも、いいことですね。


「盛岡はいい街ですね」
 さて、第2部おしゃべり交流会。今回のお茶菓子は、盛岡市本町通、三盛堂さんのおいしい和菓子。参加者は小グループに分かれ、悩みや近況を語り合い、交流を深めました。終了後、各グループから一人ずつ、話した内容や感想をお伺いしました。「当事者や家族が集まり、癒し、癒やされ、情報交換する場は大切」「障害ある人もない人もみんな一緒に、という地域づくりを頑張りたい」「当事者の将来のことを考え参加したが、みなさんそんなに将来のことを考えてなくて、なんだかホッとした(笑)。参加されたみなさんがとても明るい。盛岡はいい街だな、と実感した」「ハートネットのような場に来られない人、まだどん底にいる人がたくさんいる。そんな人たちを、心の苦しみをはき出せるような場に引き出すにはどうしたらいいのか?」などの感想や問題提起がなされました。
 なお、この日は、廣田さんの同僚のPSW高橋悟さんも参加されてました。しかも、参加費を払っていただいての参加です。ありがたい。その高橋さん、突然の指名にもかかわらず「一戸町の『地域活動支援センターのぞみ』で勤務していたが、ソーシャルサポートセンター開設とともに、8月からこちらに来た。矢巾町出身なので、地元に戻ってきた感じがする。医療、福祉、そして当事者や家族のみなさんと関係を作りながら、頑張りたい」とフレッシュに自己紹介されました。
 最後に、再び、廣田さん。「話すことで、考えが変わり、悩みや苦しみが軽くなったり、ものの見方が変わったりする。困っていても、困ってなくても、人に伝えることは大事。そこから何かが変わってくる。また交流会がある際には、参加したいと思う。ハートネットを継続し、大きなものにしていってほしい」とエールを送っていただきました。ありがとうございました。
みなさん、ソーシャルサポートセンターに限らず、悩みは抱え込まず、相談しましょう。ですが、くれぐれも、自分の悩みを人任せにするのではなく、最終的に問題を解決するのは自分自身である、ということをお忘れ無く。
 では、第3回交流会でまたお会いしましょう。

◎お知らせ◎
▽「家族のための精神保健講座」
1月30日(水)午後2時~4時
「こころの病気について」
2月13日(水)午後2時~4時
「よりよい生活のために家族のできること」
▽「こころの健康づくり講演会 もっと知りたい『うつ病』の話~こころ疲れていませんか?」
2月7日(木)午後2時~4時
会場・プラザおでって3階大会議室
問い合わせ・盛岡市保健センター成人保健係
(019・654・5563、内線385)
▽「岩家連いきいき交流会」&家族会長会議
8日午後1時~4時半、9日午前9時~12時半
内容・講演「みんなねっと設立と今後の事業展開について」(全福連・良田かおりさん)などなど
問い合わせ・岩家連(019・637・7600)
▽「高森信子さんSST教室」
3月22日(岩家連主催)
23日(盛岡ハートネット主催)
内容は、これからのお楽しみ…
by open-to-love | 2007-12-29 14:10 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)
盛岡ハートネットニュース第1号(創刊号)

「私たちの味方ですか?」 盛岡ハートネット結成=第1回例会
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(盛岡ハートネット第1回交流会で、盛岡市の精神保健福祉サービスについて話す講師のみなさん)


 盛岡精神障害者家族会連合会「盛岡ハートネット」第1回交流会は2007年10月9日、盛岡市若園町の市総合福祉センター老人教養室で開かれました。初めての試みであり、参加者数はまったく予想付かず「まあ、多くても20人ぐらいかなあ」と軽く考えていたら、開場の午後1時半から来るわ来るわ、実に60人。机もお菓子も資料も足りず、事務局は大慌てでしたが、みなさんが自主的に手伝ってくれたおかげで、何とか予定通り午後2時の開会に間に合いました。参加者は、市内を中心に滝沢村、岩手町などから家族会員、当事者、福祉関係者ら、30代から80代までの多彩な顔ぶれ。充実の2時間半となりました。
 開会の辞として、ハートネット事務局の黒田が「みなさん楽しくやりましょう」と実にそっけないあいさつ。第1部は話題提供として「分かりやすい盛岡市の精神保健福祉サービス」をテーマに、講師の盛岡市障害福祉課課長補佐の佐藤政敏さん、保健主査の小川睦子さん、市保健センター保健主査の石井里美さんにお話いただきました。
 まずは、佐藤さんが「盛岡は、地域活動支援センター(小規模作業所)など日中活動の場が不足しているのが現状。相談態勢もまだこれから。みんなで課題をきちっと押さえて、みんなで話し合い解決するため、こういう交流会を非常に大事にしたい」と意欲をみなぎらせました。
 次に小川さんが自己紹介。見た目は若いですが「保健師歴二十数年」の小川さん、元々は旧都南村の保健師。合併で盛岡市の保健師となり、市保健センターに勤務しました。「人口規模が大きくて、他の市町村と同じレベルでは考えられない。連携の部分も難しい」と実感したそうです。
 精神保健福祉の事務はもっぱら県(盛岡の場合は盛岡保健所)が担っていましたが、2002年から、その窓口(事務)が市町村に移管されました。その担当は、小川さんが勤務していた市保健センターとなりました。2006年4月から障害者自立支援法が施行され、小川さんは本庁舎の障害福祉課に異動し、その事務を担っています。
 支援法について国の考えは「これまでは施設に対してお金が下りていたが、それを人(利用者)に使っていこうとする、利用者本位の法律。サービス支給決定の透明化、明確化も図られた。これまで33もあり非常に複雑だったサービス体系が、6つに再編され、分かりやすくなった」などと解説。精神障害が身体・知的障害の福祉サービスと一元化されたことについては「同じ土俵で、身体・知的との比較ができるようになった。精神はこんな部分が足りないとか、並べてみると分かる。その点は良かったのではないか」と語りました。
 「サービス支給決定の透明化」は、障害程度区分認定が導入されたことです。例えば、精神障害がある本人や家族から「ホームヘルプを利用したい」とかいう希望があった際、小川さんらがその本人に会い、全国一律の106項目にわたる聞き取り調査をして、それを基に審査会を開いて障害程度を認定し、サービス支給量を決めるということです。認定審査会は、盛岡市の場合は医師、施設職員、学識経験者ら15人が3班に分かれ、月に3回開き、1回につき5人ずつが審査しているそうです。
 支援法施行に伴い、保健センターから障害福祉課に異動になった小川さん。「精神だけではなく、身体・知的との重複障害を持っている人がたくさんいることを実感した。また『家族の高齢化で、自分が死んだらどうしたらいいだろう』という相談も多い」「支援法以前は、精神障害者手帳がないとサービスを受けられなかった。ヘルパーさんに来てもらいたいといっても、まず障害者手帳の申請から始まった。門前払いは、担当者としても辛かった。でも、支援法の今は、障害者手帳がなくても、自立支援医療受給者証(精神通院、いわゆる黄色い手帳)があれば、サービスが支給出来る。以前より出しやすくなった」などと、担当者としての思いを率直に語ったのが好感を持てました。
 さて、県内では支援法に基づき、市町村や圏域ごとに、各地で自立支援協議会が立ち上がっています。それは、地域全体で障害者の自立を支えていくため、各関係者が知恵を結集する組織。盛岡の場合は、盛岡広域圏で昨年9月に発足。協議会の中には、就労支援部会が立ち上がり、近く地域移行部会も始まるのだそうです。なんだか総花的で、役所によくある「なんとか審議会」みたいな、偉い人が集まる組織とどこが違うのかよく分からない印象がある自立支援協議会ですが、就労支援部会とか地域移行部会とか、目的が明確な小さな組織には、期待できそうな気がしますね。
 次に、市保健センターの役割について、石井さんが話しました。「治療や社会復帰以前の、心の相談に乗る場所。例えば『すごく落ち込んでいるんだけど、どうしよう』とか、障害があるのかそうでないのか、はっきりしないところからの相談窓口。市民への普及啓発にも取り組んでいる」と紹介。つまり、本庁の障害福祉課は、すでに医師に「統合失調症」などの診断名をもらっていたり、手帳を取得している人を支援する場所であるのに対し、保健センターはそれ以前、障害かどうか分からないけどなんだかおかしいけれどどうしたらよいのか分からない…という、非常に微妙な、ある意味本人も家族も最も困難な時期にお世話になる場所、という位置づけのようです。
 盛岡市は来年度から中核市になり、県からさまざまな事務が移管されます。競馬会館跡地には、盛岡市保健所が出来ます。そこで何をするのかが、私たち家族の関心の的ですが、詳しい事はこれから、とのこと。今の時点で決まっているのは「相談支援窓口、緊急対応、入院までの支援に、市保健所がかかわっていくことになる」のだそうです。「県でも力を入れている自殺防止にも取り組む。保健師、看護師の窓口相談に加え、月に1回、精神科医師による相談日も設ける」と展望を語りました。市保健所が何をしていくのか、詳しいことが決っていないからこそ、こうした交流会の場で寄せられたさまざまな現場の声を盛岡市の担当者が制度設計に反映させ、「困ったらあそこに行けば何とかなる」という、精神保健福祉の拠点に育っていくことを願ってやみません。

 以下、質疑応答の一部を紹介します。
 参加者「自殺未遂者のケアの具体的な方策が見えてこない。未遂者は、さいわい助かったとしても、繰り返す。家族を含めて支援していく必要がある」
 市「自殺防止対策は、まだまだ足りない。警察からは盛岡保健所(県)に連絡が行き、そちらが主体になって動く。その人が退院後のフォローも大切だが、市はいつその人が退院したのかも分からない。民生委員を含め、みんなでフォローしていきたい」
 参加者「20年間今のところに住んでいるが、民生委員を見たことも、相談に行ったこともない。子どもが病気で、どこにどうやって聞けばいいか、保健所や市役所にじゃんじゃん電話を掛けたが、はっきりとした答えはなかった。本人は今、せっぱつまって電話している。自分も疲れて入院しそうになった」
 市「民生委員は、地域で困っている人の相談に乗るのが仕事で、行政とのパイプ役。だが、どこまで活動するかは難しい。プライバシーの問題もあり、あまりやりすぎると嫌がられる。障害への関わり方は非常に微妙で、例えばある家に障害がある人がいるらしいと分かって訪問したら、家人に『誰から聞いた!』と言われてしまうことだってあるだろう。でも、一方で、家族の力だけではどうすることもできず、密かに助けてもらいたい人もいる。ともあれ、保健センターでも障害福祉課でも、困ったときは遠慮なく相談してほしい」
 参加者「あらゆるところに相談に行った。親の力では、子を病院には連れて行けない。どうすればいいのか」
 市「…難しい質問です。保健所でも保健センターでも、手を引っ張って連れていくことはできない。家族だけが連れて行ける。保健師としてできることは、おうちにお邪魔して、本人とお話しし、説得すること。警察の力を借りるのが一番早いが、でも、そうならないうちに、という気持ちも分かる。…とても難しい問題です」
 上記のような、極めて切実なやり取りが、予定時間をはるかに超えて続きました。親の高齢化、病院への移送の問題、とても、この短時間で対応策が見出せる問題ではありません。私の個人的な意見としては、精神保健福祉法に定められた「保護者」規定が撤廃されない限り、そして、精神障害に対する社会の理解が深まらない限り根本的な解決にはならないと思います。ともあれ、今後、あらためてこうしたテーマで語り合いましょう。

 第2部はおしゃべり交流会。参加者はお茶とお菓子を楽しみながら、小グループに分かれ、撤収時間の午後4時半まで交流。佐藤さん、小川さん、石井さんにもそれぞれ入ってもらい、互いに親睦を深めました。なお、こちらのやりとりについては、クローズとします。ニュースには取り上げません。

 最後に、交流会開催に至る経緯について、簡単に触れることにします。
 盛岡市内には8家族会、葛巻町から紫波町までの広大な盛岡圏域には計15家族会があるのですが、相互の連携が乏しく、それぞれ細々と独自に活動してきました。私が家族会にかかわったのは昨年の6月、家族の発病からです。たかだか1年半の経験しかありませんが、岩家連の集まりなので見聞きしたり、あちこちの家族会に参加した限り、その多くが、会員の高齢化と新規会員の減少に伴う、会員の固定化と活動内容のマンネリ化に悩んでいました。なかでも、県都・盛岡市内は、一番家族会が多く、社会資源もまた集中しているにもかかわらず、相互の連携はまったくと言っていいほど乏しかった。同じ市内、同じ圏域内、いわば隣近所同士なのに、互いの顔を合わせるのは、岩家連大会など全県的な集まりの機会に限られているのです。都南村から盛岡市に来た小川さんの「人口規模が大きくて、他の市町村と同じレベルでは考えられない。連携の部分も難しい」という実感は、まさにその通りだと思います。ちなみに、当時の私の率直な実感を一言で言えば「よくぞここまで放置されてきたな」でした。各家族会の惨憺たる状況を見るにつけ、自分の辛さなぞ、どこかに吹き飛んでしまいました。
 さる7月12日、盛岡市で第30回記念県精神障害者家族大会が開かれました。その準備のため、15家族会も力を結集。一人一人の頑張りで、予想をはるかに超える広告収入を得た上、本番も大成功でした。大会準備を通じ、これまでほとんど連携のなかった家族会員同士が互いの顔を見知ったという点でも、非常に有意義でした。実行委の反省会では「大会で培った家族会同士の連携を大切にしよう」「大会は終わったけれど、つながりまで終わらせちゃもったいない」「定期的に集まりを持とう」と前向きに話が盛り上がりました。
 そこで、実行委に参加した家族会員有志がゴニョゴニョと準備を進め、今回の盛岡精神障害者家族会連合会「盛岡ハートネット」第1回交流会を開催することになったのです。集まった人同士でお茶を飲みながらおしゃべりして親ぼくを深め、他の家族会のユニークな活動に刺激を受けたり、精神医療福祉制度や社会資源の耳よりな情報を仕入れることで、参加者個々が所属する家族会活動に生かしてもらおう、と願っています。
 そんな願いを込めた第1回の交流会は、大成功だったと思っています。とりわけ印象深いのは、質疑応答で、あるご高齢の参加者が市の3人に向かって「「以前は保健所の人がよく作業所に来てくれ、応援してくれた。昔は保健婦さんは身近な存在だった…(3人は)私たちの味方ですか?」と発言したことでした。そのシビアな問い掛けの背景には、精神障害者もその家族も、長らく周囲の無理解と福祉制度の枠外に置かれ、幾多の哀しみに耐え続けてきたことがあったのではないでしょうか。こんな質問が出ること自体が、これまで、家族会と行政の間にものすごく深い溝があったことを物語ってはいないでしょうか。
 そして、その問い掛けに対し、佐藤さんがニッコリ笑顔で「味方です」と答えました。御名答。こうした率直なやり取りの積み重ねこそが、盛岡、ひいては岩手の精神障害者福祉の課題の所在を明らかにし、課題解決への一歩となり、関係者が手を取り合って、共生社会へと発展していくことにつながると思います。
 参加された皆様の感想と、それに基づく事務局の反省点については、別途「アンケートまとめと考察」をご覧下さい。
 では皆さん、またお会いしましょう。楽しくおしゃべりしましょう。次回は12月を予定しています。

(当日配布の資料中で「盛岡近郊の施設一覧」に一箇所間違いがありました。グループホームの「フレンドピュア」の利用は「男性」になっていましたが「女性のみ」です)

♡盛岡ハートネットのルール♡
 ♡代表は選びません。参加された皆さん一人ひとりが主役です
 ♡参加費の領収書は出しません。払うか払わないかは任意です
 ♡安心して楽しくおしゃべりをしましょう。プライバシーは厳守です
 ♡大事なことはみんなで決めましょう。みんなのハートネットです
by open-to-love | 2007-10-13 21:29 | 盛岡ハートネットニュース | Trackback | Comments(0)