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カテゴリ:欠格条項( 1 )

運転免許の更新について

ハイ!相談室です「運転免許の更新について」

今月の回答者:池原毅和(東京アドヴォカシー法律事務所)

問:今日は運転免許の更新についてお伺いします。わたしの息子は24歳に統合失調症を発病し、今年で27歳になります。息子は20歳のとき、運転免許証を取得いたしました。現在入院中ですが、状態は安定してきております。
 このたび、免許証更新の時期になりましたが、入院中でも手続きをすることはできるのでしょうか。息子も退院してよくなったらまた運転したいと希望しています。そこで、更新する時期に手続きをすることができなかった場合、どのように手続きをしたらよいのでしょうか。息子もわたしも、統合失調症であることが更新のさしさわりにならないか心配していますが、更新可能な時期や病状等について、何か条件があるのでしょうか。

答:入院などで更新に行けない場合
 運転免許証の更新をしなければならない時期に入院などをしていて免許証の更新に行けない場合に、免許証の更新等をする方法は次のように分けられます。
 免許証の更新から6カ月以内の場合、更新時期を過ぎてしまった理由が何かは問題にせずに、学科試験、実地試験なしで運転免許証の再発行を受けられます。この場合、手続きとしては免許証の更新ではなく、新たな免許証の発行になりますが、それまで受けていた運転免許の条件などは引き継がれます。
 更新時期から6カ月を過ぎ3年以内の場合、退院して手続きができるようになったときから1カ月以内に、入院していて更新手続きができなかったことを証明する診断書・本籍地の記載された住民票・写真を用意して手続きをとると、免許証を再発行してもらえます。
 なお、入院中でも外出が可能であれば、更新手続きに出かけて更新をしてくることはできます。更新手続きに本人が出向くことは必要ですが、入院中であるかどうかは更新手続きそのものとは関係ありません。
 このように運転免許証の更新の時期に入院していて更新手続きがとれなくても、学科試験や実地試験なしで免許証を改めて取得することは可能です。

道路交通法の規定について
 ところで、道路交通法は「幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの」、「発作により意識障害または運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」について免許の取り消し事由としています。「幻覚の症状を伴う精神病」には統合失調症が含まれますので、入院中で更新手続きができなかったことを証明する診断書に統合失調症のために入院していたことが書かれてしまうと、その症状の程度が安全な運転に支障を及ぼすおそれがないことを証明する診断書の提出を求められる可能性があります。

絶対的欠格事由から相対的欠格事由へ
 この道路交通法の規定は、以前は精神病の者については症状の程度を問わず運転免許を取得させないものとしていました。このように精神病などの障害を理由にして一律に資格を認めない法律の作り方を絶対的欠格事由と言います。絶対的欠格事由は、障害や精神病があればその程度に関わらず安全運転ができないと見なすことを前提として運転免許を一律認めないことにするので、精神障害者などに対する差別を法律が認めるものだという批判がなされてきていました。これに対して現在の道路交通法は、絶対的欠格事由という差別的な方法を改めて、幻覚や意識障害を伴う病気に限定したうえで、その症状が安全な運転に支障を及ぼすおそれがなければ免許の取得を認める方法に改正しました。このようにある障害があったら一律資格を否定するのではなく、その障害の種類や程度によって資格を認めたり認めなかったりする法律の作り方を相対的欠格事由と言います。
 相対的欠格事由は、絶対的欠格事由よりは差別が少ないとは言えますが、相対的にせよ欠格事由に当るとされた人からすれば、自分はだめかもしれないという気持ちを起こさせ、最初から諦めてしまうことにさせてしまったり、過大な不安を抱かせることにもなります。また、医師は症状を考えながら安全な運転に支障を及ぼすおそれがないかどうかを判断することを求められますが、厳密に言えばそんなことは判断できないことで、安全を考えれば運転しない方がよいという判断に傾くのが人情ということになるでしょう。従って、相対的欠格事由という法律の作り方も差別を解消するには十分であるとは言えません。もともと、幻覚症状の結果として交通事故が起こっているという客観的なデータがあってこうした相対的欠格事由が定められているわけではなく、幻覚症状が伴うようでは運転は危険ではないかと何となく観念的に想像されているだけで、逆の観念的想定としてはそんなに具合が悪ければ入院しているか、少なくとも運転などできない状態であるとも考えられます(私たちの日常的な経験ではこちらの方が真実に近いと感じられます)

書類を整えて更新手続きを
 法制度の中には運転免許以外にも、まだ、科学的な根拠のない偏見で欠格事由を定め精神障害者の社会参加を否定している事例がたくさんあります。運転免許についても状態が安定してきていれば、そのことを医師に証明してもらい安全運転に支障がないことを示して免許の取り消しをされないようにしていくことが必要です。
 実務的な運用は各地で多少違いがあるようで、本件のような場合に入院中の診断名に拘泥して、安全運転に支障がない旨の医師の診断書を常に求めるということでもないようです。交通時事故などを起こさないことはもちろん重要なことで、本人も家族もそのことには細心の注意を払うべきですが、統合失調症だから運転が危険だということにはならないので、本人の健康状態を見ながら最初に述べたような書類を用意して手続きを取ってください。
 万一、免許の取り消しとなった場合はその行政処分を取り消すための不服申立の手続きもありますから、自信を持って進んでください。
(月刊「ぜんかれん」2006年10月号 通巻477号)
by open-to-love | 2008-01-04 20:47 | 欠格条項 | Trackback | Comments(0)