精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love

2009年 02月 13日 ( 3 )

人が生きていく力

増野肇(ルーテル学院大教授)

一人の青年から教えられたこと

 私が精神科の医師になって、まもなくのことだったと思います。今から30年くらい前のことになります。
 往診を頼まれて、一人の統合失調症の青年と面接をしました。いろいろな話をしていくなかで、
 「あなたが今一番希望することは何ですか」
 とたずねました。その青年は、しばらく考えてから
 「早く歳をとっておじいさんになることです」
 と言いました。
 理由を聞くと、
 「そうなれば何もしないですむし、早く死ねますからね」
 と今度はすぐに答えました。
 私は、彼のそのときの苦しさが、そんなにも強いものだとはじめて知り、何も言えなくなりました。若い人というのは、たくさんの可能性を持った人だと思っていた私には、思いもつかない答えでした。
 そのようなきびしい人生があるということ自体がとても恐ろしいことでした。そのときから、生きていく意味や楽しさを人々はどうしたら見いだせるようになるのだろうと、考えるようになった気がします。
 それは、精神科の医師として、治療を実施していくうえで必要なことだというだけではありません。
 教育の現場にいると、多くの大学生が生きる意味が見いだせず、無力な状態にいるのを目にします。引きこもる人が増え、自死を企てる人が増えていることも、その現れ方だともいえます。
 生まれつき臆病で、気が小さかった私自身が、どうしてこのような不安を乗り越えてきたかについてお話をして、参考にしていただきましょう。

不安はいつでもある

 一つは、森田療法から教わったことです。不安常住(不安はいつでもある)、あるがままという生き方です。
 森田正馬先生は、生まれつき気が弱く臆病でした。子どものころ、村のお祭りで見た地獄の絵の恐ろしさから地獄恐怖に陥りました。
 医学生時代には、授業で教わるいろいろな病気に自分もなるのではないかと心配して、教授たちから、
 「お前は神経衰弱だから、学校へ来ないでよい。家で休んでいなさい」
 といわれます。しばらく家で休んでいましたがいっこうによくならず、ついに病気を治すことをあきらめて勉強に取り組んだら試験をパスしただけでなく、身体の状態の方もよくなったという体験があり、そのときの体験が森田療法の創造につながったのです。
 森田療法では、不安を取り去ろうという人間の意思ではできないことに努力することが、かえって不安が強くなるという事実に注目します。
 目上の人と話すとか、たくさんの人の前で発表をするとか、そのような大切な場面では緊張し、不安になることは当然のことです。それはよりよく生きたいというその人の気持ちの現れなのです。
 気を大きくしようといった無理な努力をしないで、不安の背景にある本来の気持ちーよりよく生きたいという欲求にしたがって、今やれることをびくびくはらはらしながらでもいいから取り組んでいくことが重要なのです。
 不安や緊張したときは、緊張したままで、今やれることに力を入れていると、いつの間にか不安も緊張も少なくなっていくということがわかり、少しずつ生きていくのが楽になりました。

心理劇という治療法

 次に、私が専門としたのは心理劇(サイコドラマ)でした。これは、心の中のイメージを舞台という安全な場で表現していく治療法です。楽しいこと、好きなことをイメージして、それを表現していくのです。現実はつらくても、舞台の上では、どんなことでもできます。
 たとえば「もう一つの地球」という技法があります。現在の世界とは違うもう一つの地球があることを想定して、そこでは自分は何をしているだろうかと想像します。現実の世界では絶対にできないことでも、舞台の上ではできるのです。
 あるいは、小さい頃体験したすばらしい出来事や、昔の思い出の場所を再現することもできます。心に残る思い出の映画のシーンや音楽や、好きな小説の世界を再現する技法もあります。
 好評なのは、小さいときから自分を見守ってくれていた守護天使をイメージして、天使の役割を演じ、天使からの励ましやサポートをもらうこともできるのです。
 すぐに亡くなった人には、この世ではもう会うことはできませんが、心理劇の舞台では再会してお話をすることだってできるのです。
 これらを可能にするのは、人間の持っているイメージを生かして、楽しい気持ちを引き出す方法なのです。このようなイメージを一人だけでやっていると、それは妄想の世界になってしまいます。そこで、仲間と一緒にお芝居の舞台としてやることが必要なのです。

つらいときは仲間と

 森田療法も心理劇も、一人でやるのではなく、グループの中で仲間と実施することが大切です。
 人間は集団の動物であり、一人で生きていくのはたいへんです。病気によって、いろいろな人と疎遠になっている皆さんは、よい仲間と出会う必要があります。よい仲間づくりができれば、他の人の考えや、やり方を通して、自分の世界を広げて豊かにできるのです。
 つらいときに、一人で背負うのではなく、仲間と背負うのであれば楽になります。楽しいことも、一人でなく、仲間と楽しめば倍になって返ってきます。
 一人では思い付かないことも、仲間といれば、いろいろなヒントが得られます。そのような仲間づくりをしてみてください。仲間づくりには、心理劇(サイコドラマ)が役立つのです。
 今は、社会の状況が悪化し、仕事がなかなか見つからないで苦労している人が大勢います。
 そこで、横須賀の作業所「ぱれった」の真似をして「仕事探しクラブ」というグループを発足させて、皆で障害者職業センターなどの見学に行きました。いろいろな作業所も勉強しました。
 しかし、それでも、なかなかよい仕事に就けません。そこで、先ほど述べた森田療法の流儀に従って、無理に探すのをやめて、それぞれがしたいことをやろうということになりました。
 大相撲を観にいったり、寄席を楽しんだり、競馬場を見学したり、もんじゃ焼きを食べにいったり、こんなことをやっていると、毎日の生活がとても楽しくなってきました。
 そうすると、ゆとりができてくるのでしょうか、仕事に就ける人も出てきました。無理にがんばらないで、仲間と楽しむ場をつくっていくと、自然とゆとりができてきて、物事がうまく動き出すものです。これも、一つの森田療法的な生き方ではないかと考えています。

セルフヘルプグループ

 同じ悩みや同じ課題を持った人たちの集まりを、セルフヘルプグループといいます。
 1935年にアメリカで誕生した、アルコール依存の人たちのグループAA(匿名のアルコール依存者の会)が始まりとされていますが、それが、ニューヨークの精神障害者の人たちやスタッフを刺激し、ファウンテインハウス運動という形で、いろいろな病気の人のセルフヘルプグループが活発になっています。
 そこでのやり方は、皆さんにとってよい、安心できるグループをつくるのにとても参考になります。
 15人ぐらいの仲間が、毎週でも毎月でも集まって話し合いをしますが、そのとき、傷つけたりしないで、お互いの理解が深まる方法を取り入れています。
 それが「言いっぱなし、聴きっぱなしのグループ」です。全員が、必ず一言は話すこと、人が話しているときは、口をさしはさまないで、一生懸命に聴くこと。この二つがルールです。
 順番に話して一回りしたら、他の人の話から思い浮かんだことを追加して話します。
 このやり方でやると、全員が安心し、自分のことを話せるようになり、お互いが理解できるようになります。そして、そこから、皆が一番やれそうなことも浮んでくるのです。
 皆さんのまわりで、このようなグループワークをぜひやってみてください。わからないときには、相談に来てください。
 みんなで、安心して話し合い、休めるグループを地域の中につくっていきましょう。

コンボ メンタルヘルスマガジン「こころの元気+」2009年1月(通巻23号)
特集「生きていくチカラ」
by open-to-love | 2009-02-13 20:25 | 増野肇 | Trackback | Comments(0)
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by open-to-love | 2009-02-13 09:18 | べてるの家 | Trackback | Comments(0)
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彼はべてるで何を学び、どう自分と
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http://mcmedian-urakawa.blogspot.com/2009/02/blog-post_6445.html

伊藤知之
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by open-to-love | 2009-02-13 09:16 | べてるの家 | Trackback | Comments(0)