精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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「いのちとこころを支えるいわて」第29号

「いのちとこころを支えるいわて」第29号

平成21年8月1日発行
発行:岩手県精神保健福祉センター
岩手県自殺予防情報センター

NEWS

自殺未遂者への支援体制を整備しよう

 これまで多くの先行研究で自殺の危険因子が明らかになってきており、中でも自殺未遂歴は最も強力な危険因子の一つとされています。また、致死性のない自傷行為も重要な危険因子です。自殺未遂者のおよそ10人に1 人は将来同様の行為を繰り返し、自殺によって命を落とすと言われ、自殺念慮者に対する心理的介入は、自殺のリスクを1/100 に減少させると言われています。このため自殺関連行動への働きかけは自殺対策において不可欠な要素です。平成19年6月に策定された自殺総合対策大綱でも、救急医療体制の整備、相談体制の充実、地域における医療保健福祉ネットワーク構築などの必要性について言及しています。
 地域における自殺未遂者、自殺に傾いた人への出会いと支援の方法には、行政や支援関係機関における窓口で面接や電話相談、メール相談、民生委員や行政による訪問の際の対応、傾聴ボランティアの活動時の出会いと専門機関への紹介、医療機関におけるケアや精神科への紹介などの対応が挙げられます。各部署において適切な対応ができるようにしなくてはなりません。また、各保健所に設置している自殺関連相談窓口を中核としたネットワーク作りなど、各地域ごとに連携の流れを共有化し、見えるようにする必要があります。
 地域におかれましては研修や確認の機会を持っていただけますよう、お願いいたします。

二戸医療機関で自殺未遂者介入事業が始まりました

 これまでの未遂者支援は、岩手医科大学病院をはじめとした三次救急がメインの救急センターや精神科医療機関による専門的なものが中心でした。このため、岩手県では20年度に県内の全救急告示医療施設57ヶ所を対象に自殺未遂者実態調査を実施しました。
 その結果、救急外来患者総数208,122人に対して未遂者は述べ597人でした。自殺者の10倍の未遂者がいると言われていますが、登録や診断評価の際の誤解、救急センター未受診などの理由から、少ない検知結果となったと考えられます。597人の中では、女性の割合が多いこと、20~30代の若年層に多いこと、企図の手段は過量服薬、刃器の順に多いこと等、三次救急のデータ結果と同じ傾向であることがわかりました。こうした結果を踏まえ、21年度は「地域自殺対策推進事業」の一環として、一次・二次救急において自殺
未遂者への支援に取り組むことになりました。
 この事業では、二戸医療圏内の一戸病院、二戸病院、軽米病院の3救急基幹病院の救急外来受診者約7,000人を対象とします。この中から、救急外来で自傷行為者、自殺未遂者、疑われる人やその家族に、受診や相談勧奨の専用電話窓口が記載されているパンフレットを配布します。精神保健福祉センター内に設置した専用電話にアクセスしてきた方に対して相談対応をし、問題解決に向けたケアマネジメントを実施します。事業実施にあたって、医療スタッフの皆様と勉強会を実施しています。
 7月6日(月)には早速、一戸病院で実際にパンフレットを配布する外来看護師の方への研修会がありました。「自傷を繰り返す人にもパンフレットを渡してよいのか。」「主治医がいる患者にはどうなのか。」など、積極的な質問が出されました。現場の皆様から配布にあたっての課題や問題点を挙げていただき、二戸モデルとしてのノウハウを蓄積していきます。


資料紹介

ガイドライン
「自殺未遂者への対応」
-救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き- 日本臨床救急医学会 編
この手引きは、救急部門において自殺を企図した患者へのケアを行なうときに、関与する救急部門のスタッフが参照するためにまとめられました。患者の自殺を図ろうとする危険性を測り、精神状態の変化を把握し、再企図への危険因子を探るなど、医療チームとしての適切なケア方法が示されています。同時に、患者にとって安全な退院、引き続く外来診療、精神科専門医への円滑な連携を試みる方法が記載されています。救急医療に携わる方々が自殺未遂者のケアについて理解を深め、積極的に実践されることを祈念して作成されました。左記のページにてダウンロードができますが、冊子としてもご用意がありますのでご利用の方はお知らせください。

ダウンロードができます。 ↓
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiruhp/manual/0905011.pdf

フィールドレポート

21年度岩手県自殺対策モデル地域を決定

 平成20年の自殺死亡率は県がまとめた概数によると、二戸保健所管内が最も高く、46.7(人口10万人対)となっています。岩手県では21年度に二戸地域をモデル地域に選定し、自殺多発地域におけるきめ細やかなうつ予防教室等の実施や、ボランティアの養成、自殺関連窓口を中核とした自殺対策のネットワークの強化、自殺未遂者支援事業等、地域や人などの対象を絞った取り組みを行う予定です。先述の未遂者介入事業と合わせて、二戸地区の自殺者が減少することを期待します。

インフォーメーション

★ 思春期研修のご案内(8/18) 会場:エスポワールいわて
「思春期における自傷行為(リストカット)について」
講師:仙台市精神保健福祉センター 林みづ穂所長

★ 北東北自殺予防民間団体等活動交流会のご案内(8/29・8/30)
会場:秋田県藤里町ゆとりあ藤里 基調鼎談・分科会
 青森・岩手・秋田3県における自殺対策に関する様々な活動事例や課題を情報交換し、交流を深める集いです。今年は秋田県藤里町にて開催いたします。
*支援者の方へ:ボランティア・民間団体へのご紹介・連絡をお願いいたします。

http://www.kokoro-inochi.com/kitatouhoku.html
お問合せ・申込み 精神保健福祉センター 019-629-9617
by open-to-love | 2009-08-04 17:50 | 自殺予防ニュースレター | Trackback | Comments(0)