精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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「精神障害者家族として、民生委員に期待すること」⑤

「精神障害者家族として、民生委員に期待すること」⑤

■5■一つの原因に決めつけないようにしよう

 例えば「虐待と思ったら、実は自閉症の二次障害としての自傷行為だった」、「家庭内暴力と思ったら実は精神疾患を発症していた」、「精神疾患と思ったら、その背景にDVがあった」…。事例1に限らず、民生委員はいろんな現場に立ち会うことがあることでしょう。そんな時、一つの原因に決めつけないようにするためには、その人が自分の価値観に固執せず、多様な価値観に開かれた心、今ここで起きている現実が理解し難くとも、とりあえず、ひとまず受け入れる広い心を持つ必要があります。
 みなさんはこれまでさまざまなご職業を経験され、豊富な人生経験を積まれ、民生委員として活躍している。例えば、学校の先生として長らく尽力され、ご自身の確固たる信念や教育理念の下、多くの児童生徒の健全育成に励まれてきた方もいらっしゃることでしょう。その手腕を地域のために生かしたい、というお気持ちは素晴らしい。ありがたい。その上でですが、世の中には実にさまざまな人がいて、実にさまざまな問題に悩んでいる方がいます。精神疾患・障害の世界は、その最たるものではないでしょうか。
 ですから、民生委員のみなさんには、ご自身の経験や価値観からすべてを判断しようとせず、これまでの人生経験からはまったくかけ離れた現実、困難があるかもしれないのだ、という柔軟な姿勢で事態に臨んでほしいと思います。人の眼は実に主観的で、一つの原因に決めつけてしまうと、そこしか見えなくなって、他の可能性を排除してしまうものです。この家庭で起こっている問題は、ご自身の人生経験からして、原因はこうだ!としか見えない、だから、あなた!こうしなさい!と断定的に言いたくなっても、そこでグッと我慢して、一歩下がって、そうではない可能性もあるという姿勢で見つめると、初めていろんなものが見えてくる。それが、相手の立場に立ち、相手の置かれた状況、相手のニーズを尊重してかかわる「支持的なかかわり」です。

 自分に引きつけて言えば、もし私自身が、妻が精神疾患になったことに対し、それまでの自分の価値観に縛られたままであったら、環境の激変に耐えられず、妻の発病も受け入れられず、わが家はバラバラになって、ここでこうして、みなさんの前でお話していることもなかったでしょう。
by open-to-love | 2009-05-29 11:16 | 黒田:民生委員協議会講演 | Trackback | Comments(0)