精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


by open-to-love
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

トピックス(全福連・2008年10月)

トピックス(全福連・2008年10月)

■知っておきたい精神保健福祉の動き

□急ピッチで進められている自立支援法見直し審議ー社会保障審議会障害者部会

○第40回(10月8日)は「相談支援」が論点。自治体からは現行の相談事業は一般財源化以降、市町村で地域格差が広がっており、都道府県の役割の検討が必要との意見が出されました。当会は精神障がいの特性から出向くことの困難さを訴え、訪問型の相談支援の必要性を述べました。また、精神の場合、日常的な医療相談が多く、福祉、医療の相談に対応できる人材の育成を要請しました。ケアマネジメントに関しては、自立支援法下の役割と位置づけをこの見直し作業の中でするべきとの意見が多く出されました。

○第41回(10月22日)は、「就労支援」と「所得保障」が論点。就労移行支援や就労継続支援は、現場においては相互の役割が明確でなく、サービスの効果的な利用が図られていない、就労支援を充実・活性させるためには、就労移行支援と福祉的就労の両方を強化し、これにより就労支援全体の底上げを図るなど、現場からの声が多くありました。当会は、精神障がい者の就労に関しては、働く場での支援と生活の場(日常生活)での支援があってこそ就労継続できるもので、生活と就労の支援が両輪で稼働する必要を述べ、精神障がい者の就労継続・定着のために障害者就業・生活支援センターの未設置の地域への配置を早急に進めることを発言しました。時間の関係で「所得保障」は次回の論点となりました。

○第42回(10月31日)の論点は「所得保障」「障害者の範囲」「利用者負担」です。「所得保障」では障がい者の就労も進まない中で、日常の生活には公的な所得の保障が必要であるとの意見が各障害者団体から出されました。精神障がい者には無年金者が多いことに当会が言及しますと、他の団体、委員からもこの問題は課題として取り組むべきとの意見が多くありました。「障害者の範囲」は発達障害、難病も入れるべきでその認定等については、今後の議論となりますが、かなりの作業が必要であると思われます。「利用者負担」では軽減策が実施されているとは言え、この負担のために利用したくても利用できない障がい者もいることを考えると、廃止すべきとの意見も出されました。

□相談支援について集中的に論議―今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会

 10月17日、第11回が開かれました。議題は「相談支援について」です。精神障がい者とその家族には非常に重要な相談支援です。市町村相談事業は一般財源のなかから行われるもので、市町村の首長の意向が反映されるという背景と、市町村がやっているところは22パーセントで、あとは委託で実施されているという実態があります。補助金で行われる市町村相談支援機能強化事業は約半数が未実施という状況です。この事業の専門職員の人数も、1人から3人がもっとも多く70パーセントを占めており、頼もしい相談体制とは言えない状況でありました。この相談支援については今後体制を強化していく方向について確認するとともに、相談支援を行う人材に関しては、専門性の重視と数の確保の両面での討議がされました。また当事者や家族同士のピアカウンセリングの活用も図る必要があることが国の検討内容に含まれます。当会としても精神障がいには相談員制度がなく、制度となることはもちろん、国が率先して家族相談を活用することを要望しました。ケアマネジメントに関しては、サービス利用計画作成費の対象者が、現在はかなり絞られていることから、その対象を拡大し、よりきめ細かく障がい者の抱える問題に対処できるようにすべきとの提案がなされました。期待されるところです。

□障害者権利条約と障害者自立支援法の関係とは?―労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に対する研究会

 第6回(11月7日)が開催され、3団体(日本障害者協議会、DPI日本会議、全国社会就労センター協議会)からのヒアリングがありました。権利条約では「合理的配慮」は「あらゆる形態」の雇用に適用するとうたわれているので、一般就労にも福祉的就労にも適用されるべきと発言があり、見直しが審議されている障害者自立支援法の検討のなかにも言及されることが厚生労働省から説明がありました。「合理的配慮」は労働時間の配慮、通院保障など個人の状況に応じた切れ目なく、期限のないことが必要で、一事業者の責任のみに求められるのではなく、過度な負担となっても「合理的配慮」を実施できるように国の財政的な支援が必要との意見があり、全くそのとおりと感じました。

□学生無年金訴訟「初診日問題」のこれから

 10月31日、最高裁第二小法廷(吉田裁判長)は、北海道の原告4人(精神障がい4人、身体障がい1人)に棄却判決を言い渡しました。任意加入制度は憲法違反ではなく障害基礎年金は支給できないという内容です。精神障がいの原告は20歳前の発症を理由に「初診日問題」も争点にしてきましたが、最高裁はとりあげず、20歳過ぎてからの「初診日」として他の身体障がい3人と同様の判決となりました。
 福岡(1人)、東京(2人)、岩手(1人)、北海道(1人)の精神の原告による「初診日問題」の裁判は終りました。福岡は地裁段階で勝訴(受給決定)、4人は高裁・最高裁まで争い、岩手は勝訴(受給決定)、3人は敗訴という結果です。5人の方々は大学入学後に発症し、本格的な受診や治療は20歳過ぎという事情では共通していますが、地裁・高裁・最高裁の判断が分かれました。これは発病=受診になりにくい精神障がいが無年金にならないために障害基礎年金制度をどう変えるのかという裁判官からの問題提起です。無年金者を生んだ任意加入制度の責任を国はどう果たすのかという根本的な問題と合わせて「初診日問題」も、司法の場から国会へと厚生労働省・社会保険庁へ、投げ返された形です。
 裁判で明かになった問題を整理し弁護団・支援者による国との交渉がこれから始まります。家族・当事者からの意見・要望を提起していくチャンスです。

■お知らせします みんなねっとの活動

□盛況のうちに終了ーみんなねっと東京大会開催

 10月29日〜30日に、東京厚生年金会館において「第1回全国精神保健福祉家族大会〜みんなねっと東京大会」を開催しました。本大会は、「元気な家族・活力ある家族会をめざして」をテーマに掲げ、家族会の原点に立ち戻り、家族会の目標を再確認することを目的とした、記念すべき第1回目の大会でした。
 本大会には、延べ2000人を超える参加者が全国から集い、ホールが満席になるほどの盛況ぶりでした。
 内容は、当会理事長の大会テーマに沿った基調講演やノーブルクリニック・やんばる所長であり、精神科医の蟻塚亮二氏による「統合失調症とのつきあい方…闘わないことのすすめ」と題した記念講演、また、日本で初めて障害者差別禁止条例が成立した千葉県の堂本暁子知事の第1回大会特別講演が行われました。さらに、家族、地域、医療、就労の各分科会と障害者権利条約に関する基礎講座を開催しました。
 参加者からは、「関係者の熱意と努力が伝わった」、「家族として関心ある話が聞けた」など嬉しい声を聞くことができました。
 次年度は長崎県での開催です。2009年10月29日〜30日に長崎ブリックホールで予定されています。

全福連「みんなねっと」通巻19号(2008年12月)
by open-to-love | 2008-12-11 20:01 | 精神保健福祉トピックス | Trackback | Comments(0)