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目先を変え、家族が外とつながることがきっかけに…

家族のための相談コーナー 今月のテーマ「ひきこもり」

目先を変え、家族が外とつながることがきっかけに…
(「みんなねっと」編集委員 高村裕子)

病状は安定しているが家から出ない
Q統合失調症の27歳の息子のことで相談よろしいですか。今通院していますが、大学時代からひきこもっていて、家から出ない日が続いています。
Aそうでしたか。お母さんとしては、この先が心配になりますね。学校に行けなかった理由を、息子さんは何かおっしゃっていましたか。
Qもともとあまり自分のことを話す子どもではないので…。でも、どうにか卒業することはできました。そのあと、友達に嫌がらせを受けているとか、警察に見張られているなどと言い始めて、私達家族もびっくりして、慌てて病院に行きました。
Aそれは息子さんもご家族も大変な状況でしたね。今のご病気の状態はいかがですか。
Qはい、おかげさまで薬が合ったのか、安定していると思います。でも、月2回の通院は私が付き添っていますし、薬も私が用意して、ようやく飲むといった状況です。
Aそうなると、かなりお母さんの負担が大きいですね。
Qそうなんです。私も以前はパートで働いていたのですが、今は息子の通院の付き添いや食事の支度などに時間をとられてしまうので、結局辞めてしまいました。
Aそれではお母さんも息が詰まりますね。息子さんは一日どんな風に過ごしておられますか?
Qそうですね、横になってテレビを見ていたり、自分の部屋でパソコンをしているようです。父親とはほとんど会話はなくて、私にも「うん」「あぁ」とあいづちを打つくらいです。それから、たまに近くのコンビニに行って、タバコやジュースくらいは買いに出ています。

病院のデイケアにも行きたがらない
Aそうなると、なかなかご家族以外の方と話す機会がありませんね。服薬で病状が少し落ち着いてきているようですから、徐々に外に目を向けられるようになると、生活にも幅が出てきそうですね。お住まいの地域で本人が活動できる場所をご存じですか。
Qデイケアは病院にポスターが貼ってありました。息子にも勧めてみましたけれど、「そんなところはばかばかしくて行きたくない」と言われてしまいました。でも、ずっと家にいてばかりいると、この先何もできなくなるんじゃないかと心配です。
Aお気持ちよく分かります。お母さんと同じように心配されて相談される方も多いですよ。家族のほうが焦ってしまいますね。本人に病気の自覚がなかったり、あまり病状が重くない場合、息子さんのようにリハビリには行きたくない、かといって学校や仕事も難しい。そんな状況でひきこもってしまう方が多いようです。少し息子さんのプライドも邪魔をしているかもしれませんね。そんな時家族としては、もうちょっと頑張れるんじゃないかと期待して、あれこれ言いたくなってしまいますが、家族が説得すればするほど、本人は反抗しがちになることがあります。
Qウチだけかと想っていましたが、息子と同じような人が多いと聞いて、少しほっとしました。これからどのように息子に対応していったらいいのでしょうか。
Aなかなかお母さんの言うことは聞いてくれないものですね。むしろ家族以外の人で、例えば主治医の先生や病院のソーシャルワーカーさん、あるいは病気を理解してくれている友達などから働き掛けてもらうと、案外すんなり受け入れられることもありますよ。毎日通うことが難しい時には、本人の行ける時にちょっと立ち寄れる、地域生活支援センターという場所もあります。見学もできると思いますから、どんな活動をしているのか一度見てみるのも方法の一つです。

本人の体調に合わせてゆっくりすすめる
Q息子はパソコンをしているので、パソコンを使っているところに行ってもらえたらいいのですが。
Aそうですね。息子さんが希望していれば働き掛けてみることも必要ですね。ただ、外に出て行くことだけが必ずしも良い結果になるとも限らないんですよ。本人が外へ出たがらないのは、対人関係の苦手さや不安感があって、人ごみは怖いという方もいます。
Q息子は調子のいい時もあるのですが、病気になってからは、私と一緒にいても何となくソワソワして落ち着きがなかったり、学生の頃のように友達と会ってお茶を飲むこともしなくなりました。
A通院の時にお母さんに付き添ってもらうのも、息子さんに一人で外出する心配があるのかもしれませんね。ずいぶん良くなったように見えても、本人自身はまだ回復途中で、積極的に行動するのが難しいということもあります。特に統合失調症の方は、心配のあまりなかなか行動に移せなかったり、疲れやすい状態にもありますので、本人のゆっくりしたペースを理解してあげることが大切ですね。

まずはお母さんが外に目をむけることで
Q疲れやすいのは、この病気の特徴なんですね。知りませんでした。
A最初は誰でもそうですよ。息子さんの今後については、主治医の先生ともよく相談しながら、体調に合わせて進めてみてください。それと、お母さんが家族会などに出て、リフレッシュすることが必要かもしれませんね。
 以前、同じようにひきこもっていた息子さんの話を聞いたことがあります。その息子さんは、ほとんど家から出ることはなかったそうですが、お母さんは家族会に入って講演を聞いたり、作業所でバザーをやったりと、家族会につながっていろいろな活動をされていたそうです。そこでの話をいつも息子さんにしているうちに、最初は興味を示さなかった息子さんが、ある日、「俺も作業所に行こうかな」と言って通い始めたそうです。以前にデイケアや作業所を勧めた時は「そんなところに行く必要がない」と言っていたのに、お母さんもびっくりされたそうです。家族自身が外に出ていろんな人とのつながりを持つことや活動に加わることが、本人の気持ちを変えるきっかけになることもある例です。
Qそうなんですね。私も毎日息子のことばかり考えてしまっているんですけど、家族会に入っていろいろな方のお話しを聞いて参考にしてみようと思います。
Aまずはお母さんが病気の知識や情報を得るところから始めてみましょう。その中で、少しずつ息子さんの気持ちの変化を信じて見守りましょう。
(月刊「みんなねっと」2007年10月号 今月のテーマ「ひきこもり」)
by open-to-love | 2007-10-31 16:49 | ひきこもり | Trackback | Comments(0)