精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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DV、共依存、離婚

★あすを求めて ―殴られる彼女たち★② 職場では温厚な彼… 暴力でストレス発散 離れられない心利用

 上司に盾突かず、部下の愚痴は辛抱強く聞く。自分の意見は控えていた。近畿地方の書店店員だった二十代のころの健治は、周囲から温厚な人と見られていたはずだ。
 しかし、無理に周りに合わせたストレスは五歳下の恋人、大学生の佳奈に向いた。交際から一年で殴ってから別れるまで五年、暴力は続く。
 以来、暴力は途切れず、四十代になった今、元妻の勧めでDV加害者の男性が更生しようと努力する集まりへ通い始めた。「どうしてこうなったのか」。立ち直るため、当時を振り返った。
 ドクン、ドクン。血管が波打ち、こめかみが熱い。気付くと怒鳴り、物を壊した。「煮えたぎったものが爆発してスッとした」。好きなときに会えるよう大学をやめさせ、居酒屋で殴り続けて肋骨(ろっこつ)を折った。暴力の最中に「まずい」とは感じた。しかし、殴っている実感はない。われに返ると落ち込んだ。
 原体験に、酔って暴れては家具を壊し、のこぎりを手に家族を追い回した父がいた。「あいつよりまし」と思う一方、「同じことをしてる」と悩む。父の虐待のせいか、人とかかわるのが怖い。傷つけられるのを恐れ、職場では自分を殺した。
 「我慢した分、彼女だけは受け入れてほしい」。身勝手は分かっていたが、離れられない佳奈を利用した。佳奈にとって、健治は初めて結ばれた特別な存在だった。
 暴力の後は優しくした。それは彼女へのメッセージ。「言う通りにすれば機嫌がいい」「できないおまえは何だ」とアメとムチを使い分け、思い通りにする手段だった。
 彼女の親が怒鳴り込んで一度別れたが、佳奈は一カ月で「やっぱり放っておけない」と戻った。“愛情”を測るために傷つけ、佳奈が許すとしがみついた。見捨てられるのは何より怖かった。
 その後、別の女性と結婚したが、暴力が元で離婚。元妻の勧めで通うDV加害者の集まりでは、互いの加害体験や暴力の背景を語り合う。最近、ようやく「男らしくしないと」「周囲に合わせよう」と思い込んでいたと気付いた。「こんなこと話したら嫌われる」。そう思い目を背けてきた父の暴力の話は、多くの参加者が共感してくれた。情けない自分でも受け入れてもらえたと感じた。
 誰かに認めてほしくて、ずっと虚勢を張り続けていた。暴力の根っこにようやく気づいた。
 「暴力は振るわない」とはまだ言えない。「好きな人を思い通りにする欲求から逃れられるだろうか」。今、気持ちを口に出す努力をしている。「もう大事な人を傷つけたくない」 (文中仮名)

 共依存とは アルコール依存症の夫と支える妻の関係から使われ始めたが、DVも女性に甘えて暴力を振るう男と、支えることに存在意義を見いだし、離れられない女性の構図があるとされる。マインドコントロールのような状態であることに気付かない女性が多い。
(2007年6月26日付夕刊)
by open-to-love | 2007-07-23 16:51 | 障害福祉と女性問題 | Trackback | Comments(0)