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「震災と報道…心のケア、文化財、音楽」…④

「震災と報道…心のケア、文化財、音楽」…④考察

盛岡大ジャーナリズム論講義(2012年1月21日)

 私は「3・11」以来、これまで計6回、さまざまな立場と観点から、震災と心のケアについて話す機会がありました。7月の県立大の精神保健福祉援助実習、同月の「これからのくらしと仕事支援室」のパーソナルサポーター養成講座(県民生活センター)、9月に東京で開かれたリカバリー全国フォーラム2011(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボなど主催)での、震災をテーマにした分科会(9月・東京)、11月の岩手大人文社会科学部のメディア文化論、同月のNPO法人レインボーネット主催、宮古地区精神障害者家族懇談会(宮古保健所)、2012年1月の盛岡大ジャーナリズム論でした。
 その都度、どう伝えるか、どこまで踏み込んで伝えるか、悩みながらでした。主催者のオーダーはむろんですが、話す場…内陸だったり、東京だったり、被災地だったり。対象…専門職だったり、学生さんだったり。そして時期…被災地から遠く離れ、月日が経てば経つほど、そこが、日常性に覆われていればいるほど、被災地の実情を伝えたい、関心を持ってもらいたい、と思います。そのために、被災地の生々しい写真、今なおどんなに大変かという話をすればいいのかといえば、それがあまりに生々しいと、ある人にとってはストレスになってしまう…。そんなジレンマに悩みながら、話しました。
 それぞれに難しさがあって、例えば今回のように「教育」の枠組みで話すのもまた、難しい。一般市民対象の講演会なら、「話を聞いていて辛くなったら自由に退席していただいて構いませんからね」と前置きして話せますが、授業であれば、単位取得にからんでしまいますから、そうもいきません。
 それぞれの機会に、私の話を聴いた方で、もし、つらいことを思い出したりした方がいらっしゃいましたら、本当にすいませんでした。
 今回の盛岡大の学生さん、そして、岩手大の学生さんには、3・11以降に主に私が書いた心のケア関係・文化財レスキュー関係、音楽関係の記事を時系列に配布しました。例えば、今回の場合は…

 3月12日付「三陸沖M8.8大津波 死者数百、不明多数」
 3月16日付「避難者の名簿 釜石市・大槌町」
 3月29日付「沖縄の心のケアチーム、宮古で活動」
 4月11日付「被災地いわてへ ピアニスト小山実稚恵さん寄稿」
 5月 4日付「文化財レスキュー始動 被害は広範囲」
 6月 2日付「大矢邦宣先生が釜石十一面観音像レスキュー」
 6月30日付「世界の平泉② 大矢邦宣先生インタビュー」
 7月29日付1ページ特集「救おう文化財 県内各地でレスキュー作業」
11月18日付「歴史に学び復興を 県教委の鎌田勉さんインタビュー」
12月17日付コラム「展望台…個、言葉、コルトレーン」
12月20日付「いわて学芸回顧②音楽 心の復興に大きな力」
12月20日付1ページ特集「復興期の心のケア&陸前高田の保健活動」
12月22日付「いわて学芸回顧④文化財 レスキューと世界遺産平泉」

 でした。そして、配布した記事の中で、どれが一番心のケアですか? という質問に答えてもらいました。その際の回答が、実に多様だったのがうれしかったです。どしてこの記事選んだの?と聞いたら、学生さんそれぞれに、それぞれの考えがある。それもまた、うれしかったです。
 大事なのは、どの答えが正しくて、どの答えが誤り、ということはない、ということ。一人一人の考えは、広義/狭義の心のケアに包含されます。かつ、一人一人が自分の考えを持ちながら、相手の考えも尊重するような関係性を、さらに言えば、人それぞれが考えるペースも尊重するような関係性を構築していくことこそ、目下、被災地で保健師らが地道に取り組んでいる、心のケアの土台である新たなコミュニティーづくりの要点であることでしょう。
 「震災と報道」というテーマにからめて言えば、被災地にずっと居続ける地元紙もまた、心のケアをPTSDの治療といった狭義の枠組みに押し込めることなく、互いを尊重しあう関係性に根ざした新たなコミュニティー構築に寄与できればいいなあと思います。(黒田)
by open-to-love | 2012-01-17 01:00 | 黒田:心のケアと報道 | Trackback | Comments(0)