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盛岡ハートネット第3回「お茶っこの会」が開かれました

盛岡ハートネット第3回「お茶っこの会」が開かれました
(2011年9月23日、盛岡市プラザおでって)

 盛岡ハートネット第3回お茶っこの会は9月23日、盛岡市のプラザおでってで開かれました。ゲストは、ハートネットがいつもお世話になっている、心の病と共に生きる仲間達連合会キララのみなさん。はるばる一関から13人に来ていただき、参加者数は計56人。定員20人ではありましたが…今回は特別、ということで、超満員でした。
 キララは8月下旬、一関市大東町でシンポジウムを主催。そのテーマは「震災における精神障がい者の医療や生活」で、当事者と支援者計4人が発表。「いろんなつながりを大切にしよう!」というメッセージが込められた、素晴らしい企画でした。そのキララのみなさんとつながろう、と、今回ゲストにお招きした次第。第1部は、キララ副代表の佐々木隆也さん、メンバーの今野昭平さん、キララの伴走者で保健師の北川明子さんからお話いただきました。

 3月11日午後2時46分。隆也さん、昭平さんは共に、東京にいました。キララは2010年にリリー賞を受賞しましたが、前年度受賞者として、今年のリリー賞授賞式にも招かれ、2人はキララを代表して、リリー賞授賞式の会場のある東京へ行っていたのでした。式も終わり、おみやげを買うために、東京駅近くの大丸百貨店にいた2人。そこに、大地震が起きました。
 岩手に戻れなくなった2人。隆也さんは実家が気仙沼ですが、帰宅困難者に開放された東京駅近くの公共施設で、テレビに映った故郷の惨状に「ただ涙するばかりでした」。
 新幹線が動き出す様子はなく、昭平さんの兄を頼った2人。「お兄さま御夫妻は、見ず知らずの私を温かく迎えてくれました。この時ほど、人の情けを感じたことはありません」と隆也さん。
 日帰りの予定で、精神科の薬も保険証も自立支援医療の手帳も持ってきてなかった2人でしたが、昭平さんが一関保健所に電話してみると、自立支援医療に関する事務連絡が震災当日に厚生労働省から出ているということで、その文書をファックスで入手。その事務連絡によると、本人と確認できれば保険証や自立支援医療の手帳なしでも1割負担で診察が受けられるということで、さっそく都内の精神科クリニックで薬を入手しました。
 2人はなんとか岩手に帰ろうと情報収集。新幹線の切符の予約の手配をした一関のJRの旅行会社から連絡があり、ついに3月18日、日本海側を経由して盛岡へ。県精神保健福祉センターで「職員の方々は、私たちを温かく迎えてくれました。いただいたおにぎりとお茶は本当に美味しかったです」。そして、盛岡から北上まではJRで、北上から一関まではタクシーで、やっと帰ってくることができたのでした。
 3月28日、隆也さんは実家のある気仙沼へ。気仙沼駅前までバスで行き、そこからタクシーで避難所へ。同級生、いとこの助けで、無事に両親との再会を果たしました。
 4月7日の深夜、震度6弱の余震。翌日、体育館に避難。「避難してこられた方々の何人かが同じ精神の当事者であったことも助かりました。当事者同士で他愛のない冗談を言い合ったり励まし合ったりしました。おかげで、続く余震にもあまり過敏にならずに済みました」。
 隆也さんは「私が東京から帰ってくることができたり、両親と会えたり、生きてこれたのは、多くの人のおかげです。昭平さんのお兄さま御夫妻、北川さん、主治医、都内の精神科医、支援センター職員、同級生、キララのメンバー、友人たち、そして親戚に対して感謝の気持ちでいっぱいです。あらためて、人と人とのつながりの大事さを痛感いたしました。やはり、人は一人では生きていけないのです。これからは妹と共に、高齢の両親を支えていき、なおかつ、キララの活動を通して、沿岸被災者のために、とりわけ精神の当事者のために、できることをしていきたいです」。
 昭平さんは「地震だけでなく、いろんな災害とかいろんなことあったときは、親戚や地域の人の協力と支えがあればこそできるんだなあというふうなことを学ぶ機会ともなったかなあ、というふうに思っています」。最近出かける際に心掛けていることは「ちょっと遠くに出かける時は近所の人に声を掛けて出かけるとか、あるいは薬、お薬手帳、保険証、懐中電灯、携帯電話の充電器を必ず持ち歩く」。そして「帰宅までの1週間は、2人で共に悩み、協力することもありましたが、無事に帰宅することができたのは、キララの仲間の励ましや、北川さん、地域活動支援センター職員さんがたのおかげと感謝すると共に、これまでのつながりを大事に、これからもそのつながりを大切にし、活動したいと思いますのでよろしくお願いします」と結びました。

 北川さんは、2人の話を踏まえ、2人が無事帰ってこれたポイントとして▽自分たちでJRのチケットを取って東京へ行った▽携帯メールでつながり合った▽ちゃんと人を頼った▽必要と思う情報をちゃんと求めた▽関係機関の連絡先をちゃんと知っていた-などを挙げました。その上で、以下、北川さんのお話のまとめです。「誰しもたくさんの力を秘めている」という、とても大切なお話でした。

 「…普段やれてないと、震災とかの非常時の時にもやれませんよ、っていうのは今回よく言われたんですね。それは私たち保健師も、普段やれてないことを、非常事態の時にはできないってことは、何回も言われたんです。それも確かに当てはまることがあるんです。だけど、非常時だからこそ、出せる力がある場合もあるなあ、ってことをすごく思うんですね。
 キララのシンポジウムを8月末にやったときに、陸前高田の当事者の方が来てお話しをしてくれたんですけど。避難所生活をずっと何カ月もやってた中で、とにかく人に付いていこうっていうのがあったんですね。とにかく人に付いていこう。炊き出しとかなんかやるんなら、それに付いて自分も炊き出しの係をやろうとか、そういう風に、人に必死で付いていこうというお話しがすごく印象的でした。
 普段だったら付いていかないかもしれないんだけども、人に付いていって、とにかく置いて行かれないようにしようっていう、とにかく必死にやるって力が発揮できてたんだなあと思うんです。だからみなさんも、普段やれてないけど、たくさんの力をたぶん秘めてるんですね。秘めているっていうのを、私たち回りにいるものが信じていればこそ、じゃあ2人だけで東京に行ってみてとか、いろんなことを応援したりとか、いろんな機会や可能性を感じられる機会を提供できるっていうか。
 私はキララのメンバーさんとのやりとりをしてきてすごく思うのは、やっぱり、みんな一人ひとり力を持ってるんですよ。すごく。私なんかが負けるような力がすごく、たくさんたくさん。ただ、それを発揮する機会がなかったりとか、気付いて、言語化してもらえない。「え、それってすごいじゃない!」って言ってもらえる機会が少なかったりしてるだけであって、すごく力のあるメンバーさんたちだなあ、とゆうふうに、私はいつも思っています。
 思ってるので、ついつい、きついことも言っちゃったりとかね。 え、いいのそれで? って、平気で高いものを要求しちゃったりして(笑)。後で、あ、失敗したなあ、言い方がまずかったかなあ、なんて思うんですけど。
 どんな言い方をすると悪いかとか、これは家族のみなさんとかになんですけど、関係ができてると、その人の心とか気持ちとかが分かってると、言った言葉の表現じゃなくて、その裏にある感じっていうか、気持ちも伝わっていくので。だから、どう言うか、じゃなくて、どういう気持ちを持ってしゃべるかなあ、なんていうふうに、自己弁護かもしれませんが、そういうふうに思ったりするところがたくさんあります。
 だから会場のみなさんもですね、これから先もおっきな地震が盛岡に来るかもしれないし、こないだの都会を直撃した台風が来ちゃって大変なことになるかもしれないけど、こうやってここに集まったり、誰かと一緒にここに来たり、つながりを自分からも求めたり、求められたら応えたりしていけば、いろんなことは乗り越えていけるかなあと思います。私たち保健師もいろんな人に助けられながらやってきてますので。
 テレビのコマーシャルにもありますよね、人は支えられて人になる、とかって。あれ見て、なるほどそうだなあって思うのは、地震があった今日このごろだなあ、とゆうふうに思います」
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 引き続き、4グループに分かれ、キララのみなさんにもそれぞれのグループに入ってもらって、お茶っこ(グループワーク)。まずは自己紹介、それから、震災のときどうだったか、それから、震災みたいな大変な時に、大切なことってなんだろう? について、語り合いました。最後に、分かち合い。それぞれのグループでどんなことを話したのか、話してもらいました。

「必需品としては電灯、ラジオ、携帯、カロリーメイト、水分、乾パン。保険証とお薬手帳。電池。その次に、いつも持ち歩くかどうかは別として着替え、缶詰、ローソク、ヘッドライト。登山用品がけっこういいらしい」
「電話番号だけじゃなくメールアドレスも交換しよう。公衆電話がけっこうつながるのでテレホンカードも。安否情報の使い方を覚えよう」
「反射式ストーブは便利。一家に一台」
「あわてない」
「きょうだいと仲良くすることに努めてる。ご近所づきあいも大切」
「風呂に水を張っておく。落ちてこないように物を固定しておく」
「自分のお金を自分で管理することが大切。体の変調に気付くことが大事」

 そのほか「情報が過剰になるとかえって大変なので、テレビを観すぎないようにした」「当事者の力に驚いた、当事者が一生懸命生きていることに感動した」「人とのつながりの大切さを感じた」「震災で父と母に感謝する気持ちが強くなった」「子どもが病気になったことでいろいろ学んだというお母さんの話が素晴らしいと思った」「半年経ち、地震のことを話せるようになったことがいいと思う」「物事は考え方次第で変わる。地震はあったけど、不幸中の幸いでこういうことできる、ああいうことできるというのもある」「何も出来ない自分を責めないで、自分を大事にすることが大事、そのためにも、心を落ちつかせることが大事」との感想もありました。

 グループ発表を受け、キララのみなさんにも「こういう場で心を開いて体験を話していくって大切だと思いました」「また来たいです」「自分がみなさんから教わることが多くて有意義でした」などなど、一言ずつ感想をいただきました。この「一人一言発表」って、いいなあと思いました。そこで、次回の「お茶っこの会」では、さっそく取り入れてみたいと思います。

 最後に、北川さんにまとめていただきました。
 「震災の時に大事なこと、大切なことって、けっこう物がたくさん挙がってたなあって印象に残って。私も最初は物だと思った。だけど、避難所にけっこう行ってると、どんどんどんどん支援物資が来るんですよ。最初はおにぎり一個パン一個だったのが、どんどん来るんですよ。保険証なくたって、受給者証なくたって病院に行けるし。懐中電灯なくたって、なんとかなったり。そうなったときに本当に大事なものって何かなあって考えてたったんですけど、やっぱり、安心できることなのかなあ、と。
 物があれば安心する人いたり、家族の安否が確認できれば安心したりできる人あるし、病院の先生の顔見て、あ、これで病気が悪くならなくていいぞ、って思って安心した人いたみたいだし、そういうふうに、有事、大変なこと起きたときには、どうやって安心を得るかっていうのが、私にとっては大事かなあ、なんていうことを、みなさんの感想を聞きながら思いました。
 あと、話すっていうことの中で、当事者でなんかやりたいよね、とか、当事者同士にこだわりたいときも絶対あるし、健常者…いい言葉じゃないけど、健常者と話したい時もあるし。でも大事なのは、分かってもらえた、っていうふうに思える人と、出会って話をする場や、機会がどれだけあるかなんじゃないかなあと思って。私もキララのみんなと付き合っているのは、私の言いたいこと、気持ちって、みんな、分かってくれてるような気がするし、みんなの言いたいこと、私も分かろうとするし、違うなと思うことは正直に言うし。そういうふうなのがあって、本当は当事者主体の会だったんですけど、心の病と「共に」生きるってネーミングにみんなが考えたんですが、「共に」生きるのはなにも当事者さんだけじゃないし、家族だってそうだし、病院の先生だってそうだし、ボランティアさんだってそうだし、みんなで、心の病っていうことを、真剣に考えながらやっていくようなかたちになってきて、なんかそういう心地よさっていうのはあるな、って思っていて、それで私も通い続けているっていうのがあります。なんか、持ちつ持たれつで、みなさんにはお世話になって。
 なんかとりとめないんですけど、そういうふうに、安心できる環境だとか、安心できるものだとか、そういうのを大事にしながら、私もまた、頑張ってやっていきたいなあと思っています。いい機会をいただきまして、ありがとうございました」

 キララのみなさん、北川さん、ありがとうございました。このつながり、これからも大切にしていきたいと思います。(黒田)
by open-to-love | 2011-10-10 22:26 | お茶っこの会2011 | Trackback | Comments(0)