精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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家族のための相談コーナー「外に出る働きかけが欲しい」

家族のための相談コーナー

「外に出る働きかけが欲しい」

「みんなねっと」編集委員 良田かおり

Q.今日は息子のことでお話しさせていただきたいのですが、よろしいですか?

A.どうぞおっしゃってください。息子さんに関するお悩みですか?

Q.はあ。息子は32歳です。統合失調症と言われました。初めのころは幻聴とか妄想とかあったのですが、今はいくらか治まっています。たまに幻聴があって大声で叫ぶこともありますけど、大体静かに家で過ごしています。横になっていることが多くて、たまに絵を描くくらいでこれといったことはしていません。

A.そうですか。病気のほうは幾分落ち着いたんですね。通院はお一人で行かれるのですか?

■人が怖くてひきこもっている

Q.私が車で一緒に行きます。一人ではだめなんです。年に2回ぐらいとても具合が悪くなる時があって、その時は病院にも行けないので私が薬をもらってきます。その時は大変です。家族もくたくたになります。それにほとんど家から出ませんのでね、これから先どうなるのかと思って不安なんです。人が怖いようで、電話にも出ませんし、もちろんチャイムが鳴ると逃げるように奥の部屋に行ってしまうんです。もう4、5年こういう状態が続いています。最初の頃はデイケアに行ったりしてたんですけど、対人関係がうまくいかなかったらしくて、今はどこにも行きたがりません。

A.なるほど、それがお悩みなんですね。息子さんは全く家から出られないのですか?

Q.たばこやコーヒーを買いに近くのコンビニには時々行きます。暗くなってからですね。近所の人と顔を合わすのが嫌みたいなんです。子どものころから住んでるところですし、あの子の友達もみんな結婚したり就職したりしてますから、そんなこともあるかもしれません。
 あの子は学校に行ってた時はスポーツもできるし、まあ成績もいいほうだったので、結構人気者だったんです。それが病気になってしまって、太ってしまいましたし。本人も悩んでいると思います。

■将来のことを考えて

A.お母さんご自身は、そこらへんのことは気持ちも整理がついておられるのですか?

Q.正直言って初めのころは隠したい気持ちで一杯でした。でも病気になって10年以上になります。親もだんだん歳をとっていきますし、将来のことが心配です。このままどこにも行かない生活でどうなるのだろうかと不安です。生活支援センターというところもわりと近くにありますし、どこかにつながってほしいなと思います。私も5年前に家族会に入会しました。今はあの子がもっと生活を広げてほしいと願っています。今は隠したい気持ちもそれほどありません。仕方がないと思っています。

A.そうですか。ご自身で少しずつ克服されてきたのですね。ご立派だと思います。将来一人になった時が心配というのはもっともですね。デイケアでお友達はできませんでしたか。職員の方との関係はどうでしょう。何かつながりはありませんか?

Q.お友達から今もたまに携帯に電話があるようです。でも会ったりはしていません。職員の方も最初はお誘いの電話もありましたが、もう5年になりますから、今は全くありません。

A.なるほど、今はご家族との交渉はあっても、社会的には孤立してしまっている状況なのですね。お母さんのご心配はよくわかります。外に出られないということについて、主治医の先生はどうおっしゃっているのですか?

■症状があっても自立できる?

Q.家でなんとかなっているからいいほうだよとおっしゃいます。でも私は親はいつまでも生きていられませんから、症状があっても、具合が悪くなることがあっても、一人で生活できるようになってほしいんです。そうしないと、息子は親がいなくなったら、入院しなくてはならないかもしれません。それはかわいそうだと思うんです。

A.全くその通りですね。症状がなくなることが自立の要件になったら、自立は遠い話になってしまいますね。症状が変化しても、社会とつながりを持つことはできるはずですからそれを目指したいですね。
 ご本人が外出を望んでいれば、障害者自立支援法の行動援護というサービスを利用して買い物などに出掛けられるのですが、ご本人に希望がないとできませんね。それに息子さんの場合は、なじみのない人との行動は無理なようです。誰か少しずつ息子さんの気持ちをほぐしていって、外出につなげていく必要があります。
 訪問看護というサービスもありますが、通院先の病院にありませんか?地域の訪問看護ステーションが精神障がいのある人にも訪問している場合がありますから調べてみるといいですね。残念ですがいま日本ではこうした訪問型のサービスがあまり用意されていないのです。

Q.そうなんですか。以前「みんなねっと」で、訪問していろいろな働きかけをしているクリニックの話を読みましたけど、いろいろな所にあるわけじゃないんですね。残念です。ちょっと期待していたのですが。

■とっかかりは好きなことから

A.ところで息子さんは絵を描かれるということですが、絵がお好きなんですか?

Q.はい。発病する前に少しパステル画を習ったことがあるんです。今も思い出して描いています。親が言うのも何ですが結構上手なんです。

A.そうですか、それはいいですね。何か好きなことがあるというのはよいことだと思います。作品を生活支援センターに展示してもらうなどして、本人が行くきっかけになるといいですね。褒めてもらったりするのは気持ちがいいことですから、今まで描いたものをとっておいてください。役に立つかもしれません。生活支援センターでは絵画教室などをやっていませんからね。やっぱりとっかかりは好きなことだと思います。

Q.そうですね。今まであきらめていたので調べてみることもありませんでした。センターのほうにも相談してみようと思います。息子も親が言うと動きませんけど、どなたかに誘っていただければ変化があるかもしれません。少し気持ちが楽になりました。ありがとうございました。
(よしだ かおり)
全福連「みんなねっと」2010年8月 通巻40号

※全福連事務局長の良田かおりさんは2010年10月6、7日に盛岡市のマリオス・アイーナで開かれる第3回全国精神保健福祉家族大会(みんなねっと岩手大会)の2日目(7日)午前9時30分から、マリオス小ホールでの第1分科会「家族会活動」の司会を務められます。なお、話題提供者は盛岡ハートネット事務局の山口みどりさんです。みなさん、応援に来てくださいね!(黒田)
by open-to-love | 2010-09-25 20:33 | ひきこもり | Trackback | Comments(0)