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映画「精神」盛岡上映会トーク…こらーる岡山メッセージ①

映画「精神」盛岡上映会トーク…こらーる岡山メッセージ①
(2010年5月30日・プラザおでって)

主催:映画「精神」盛岡上映会実行委
共催:盛岡ハートネット・CILもりおか・SSCM

映画『精神』で考えたこと(吉沢毅さん)

 昨年11月10日、岡山県精神保健福祉大会(岡山県精神保健福祉協会主催)が開催されました。医療関係者、支援者ら約450人が参加。大会では精神障害者支援などに貢献した、まきび病院の一色隆夫先生など25人7団体に県知事表彰などが贈られました。
 そして式に続いて、こらーる岡山を舞台にした映画『精神』が上映。上映に先立って、映画に出演した吉沢毅さん(ゆーとぴあ岩田元代表)が映画出演に込めた思いなどをスピーチされました。以下、その全文です。(黒田注:その文章を、盛岡上映会に送っていただきました!)

 私は映画の登場人物として、精神障害者の多くは、日々平々凡々と暮らしているということを強調し、私の映画『精神』に関する、見たり、聞いたり、考えたりしたことを、お話したいと思います。
 こらーる岡山で映画に映ることを拒否した人のことについてお話したいと思います。監督がカメラを向けることに8~9割の人が拒んだということです。抗議した人もいました。

 なぜ拒否したかというと、会社などに自分が精神障害者と解かると困るからです。親戚兄弟は、自分たちの身内に精神障害者がいることを恥と思うからです。会社は精神障害のことが解からず、病気を理由に解雇になる恐れがあるからです。一つ会社を辞めさせられると、次の面接から負の連鎖が始まります。

 この映画『精神』は、初め『精神病』という題でした。想田監督が、『病』を削ったのは、単にこの映画は精神病者に限定しないで、これは健常者にとっても他人事ではなくて、自分たちも考える必要があると思ったからです。監督はポスターでは、「あなたは正気ですか?」というキャッチフレーズを使っています。私は、当事者・家族・医療関係者以外の人たちがたくさん、見て下さっていると聞いて、うれしく思います。

 マスコミは、少数派、精神障害者、在日の人、同和地区の人などは一緒くたにして、あたかもその全体が悪いかのように報じますし、一般の人もそのように理解しています。精神障害者は何をするか解からない、恐い存在と認識している人が、多いです。

 健常者の犯罪は、個人の責任になります。精神障害者の犯罪は、前は「精神障害者A」が犯罪を犯したと報道されていました。これでは精神障害者みんなが犯罪を犯すととられかねません。犯罪率は、健常者より精神障害者のほうが、低いという事実にも関わらず。健常者の責任が個人にきすのならば、精神障害者の犯罪も、通院・服薬などを報道で強調せず、個人に責任があるべきと報じるべきです。この映画は、マイナスイメージの報道の中にあって、健常者も環境さえ整えば、自分も映画の中の人のような行動をしかねない存在であることを、認識されるような気がします。

 この映画は、モザイクなしに、病者を映し出しています。ある意味で、画期的です。知ってる人がNHKの取材を受けたのですが、撮影前に部屋を片づけたり、撮らないでと言ったところにはカメラを向けなかったそうです。私の話をしますと、例えば「この場面はとらないで」と言った、部屋の荒れた場面も映されていました。NHK的ではないなと思いました。でも、認めた上で出ていますから、映画は見られていい面しか、とれていません。登場する人が容認する範囲からは、出ていないのです。そういう意味では、この映画は一面的であると云えましょう。

 日本の精神科医療は、精神科診療所だけでは語れません。精神科病院の中に、カメラが入らねば、本当の現実を見ることができません。しかし、日本の精神科病院の中に、カメラを入れる勇気のある病院が、あるでしょうか?

 5年前、厚生労働省は社会的入院の人7万2千人を退院させるという10年計画を発表しました。しかし、退院促進は遅遅として進まず、その対策はなされなかったと、私は思っています。

 5年たって厚生労働省は、客観性に欠くからとか、痴呆の人が増えたからとか、出発点に問題があったかの様に言いますが、客観性がないのは、医者からのアンケートを集約したものですから主観的ならざるを得なくなり、痴呆の人の件は、施設内退院や死亡退院も厚生労働省は視野に入れていたのですから、理由になりません。

 入院中心から地域へと精神医療が変わっていくとすれば、先ず、マンパワー・予算・箱物の充実を期待します。
 解かりやすく言うと、相談支援や休憩場所や医療を24時間提供してくれるコンビニや、医療・福祉の宅配便が必要だと思います。この二つを実現するためには、何度も言いますが、働き手・お金・施設が必要です。

 映画は2時間を越す作品なので、前説はこれ位にしておきます。
 ゆっくりご鑑賞ください。
by open-to-love | 2010-06-01 20:14 | 映画『精神』盛岡上映会 | Trackback | Comments(0)