精神障害がある当事者、家族、関係者、市民のネットワークを目指して


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『精神保健福祉白書』…精神障害者退院促進支援事業ー香川県の場合

『精神保健福祉白書』2010年版 流動化する障害福祉施策(2009年12月刊行、中央法規)

第3章 地域生活支援

3ー1ー8 精神障害者退院促進支援事業ー香川県の場合

 香川県での退院促進事業の取り組みは平成15年に始まった。事業のねらいどおり、この取り組みがわが県にもたらした産物は大きい。多くの対象者の退院が実現したこと、波及効果として精神保健福祉のネットワークが広がり新たな資源が開発されたことが成果である。
 本県の事業の特徴をあげると、一つ目は、実施運営主体を県障害福祉課におき、全県レベルで事業を展開したことである。県が積極的に推進することで、保健福祉事務所、市町、県内ほぼすべての精神科病院、精神関係機関等が、官民を問わず本事業へ参加、協力する体制ができた。2つ目は、事業構造が重層的なことである。直接対象者支援にかかわる「支援チーム」、保健福祉事務所ごとに地域実務者が集まる「圏域部会」(月1回)、各圏域部会代表からなる「退院促進支援協議会」(年4回)、県内の長レベルが集まる「運営委員会」(年1回)などがあり、個々の支援の検討、事業評価、地域課題まで事業全体をあらゆる方向から討議検討できる。「支援チーム」は、自立支援員、病院スタッフ(主にPSW)、県や市町保健師などで構成され事業の核となっている。対象者の意欲と自己決定を支え、退院先を検討し、共に出掛け、ケア計画やケア会議を開催しながら退院までの紆余曲折の道のりを根気強く共に歩む。多くの関係者がかかわることで、家族の不安が軽減するなど退院を阻んできた要因が変化することはこの事業の醍醐味といえる。3つ目は、専門職ではなく市民が活躍していることである。精神保健福祉ボランティア、民生委員、元看護師、元教員などが知事の委嘱を受けて自立支援員となる。生活者としてのスタンスや対象者のペースに合わせた支援はとても有意義である。なかには事業終了後もボランティアとしてかかわりを続ける方もある。4つ目に、事業に併せて強化事業を実施し、地域基盤の整備に役立てたことも大きい。精神保健福祉センターが市民向けに自立支援員養成講座を開催したり、保健福祉事務所が専門職向けにケアマネジメント研修会などを実施した。また、当事者も各病院へ退院促進キャラバン隊として出向いたり、歴代の退院した対象者で交流会を実施したりした。
 6年間の事業結果は表の通りである。

平成15〜20年度支援結果
対象者 108人
退院 77人
入院継続 28人
中止 3人

平成15〜20年度退院先
対象者 108人
生活訓練施設 25人
福祉ホーム 3人
グループホーム 13人
老人施設 4人
退院支援施設 1人
アパート 15人
公営住宅 5人
自宅 10人

 数字に表れない部分は、地域のネットワークがいかに進んだか、開発された資源や不足している資源は何か、解決されない地域課題は何かと記述式に毎年評価をまとめている。病院の取り組みが加速、活性する一方で、その受け手となる地域の社会資源の不足や退院後の支援の継続性、家族支援、地域の住民レベルでの理解促進等が大きな課題となっている。今年度は、これらの積み残した課題を地域自立支援協議会と連携して解決に近づける必要がある。ある程度退院促進が進んだ結果、今後はより多く支援を要する方が対象となっていく。地域づくりと退院促進は一体であることを認識し、地域生活支援の体制づくりにつなげていきたい。(山田智子)
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タイトル : 看護師・准看護師の求人募集転職情報ネットナビ
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by open-to-love | 2010-04-09 20:50 | 社会的入院 | Trackback(1) | Comments(0)